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【発明の名称】 液晶パネルの製造方法
【発明者】 【氏名】小山 佳英

【氏名】高木 稔

【要約】 【課題】液晶セルに対して、液晶材料をより均一かつ効率的に充填して、セルギャップの均一性を損なわない優れた品質を有する液晶パネルを得ることができる液晶パネルの製造方法を提供する。

【解決手段】一対の透光性基板を貼り合わせてなる液晶セル10aに対して、内部を真空吸引しながら液晶材料を注入する際に、液晶セル10aを、水平面に対して平行となるように配置する。あるいは、液晶材料を注入する注入口が形成されている側の辺を上方とし、かつ、内部を真空吸引するための排気口が形成されている側の辺を下方として、水平面に対して傾斜するように液晶セル10aを配置してもよい。これら配置によって、液晶材料の偏在を抑制し、セルギャップをより一層均一にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】一対の透光性基板を貼り合わせてなる板状の液晶セルに対して、該液晶セル内を真空吸引しながら液晶材料を注入する液晶パネルの製造方法において、上記液晶材料の注入時に、液晶セルが水平面に対して平行となるように配置されることを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【請求項2】一対の透光性基板を貼り合わせてなる板状の液晶セルに対して、該液晶セル内を真空吸引しながら液晶材料を注入する液晶パネルの製造方法において、上記液晶材料の注入時に、上記液晶セルが、液晶材料を注入する注入口が形成されている側を上方とし、かつ、液晶セル内を真空吸引する排気口が形成されている側を下方とするように、水平面に対して傾斜して配置されることを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【請求項3】傾斜して配置される上記液晶セルと水平面とで形成される傾斜角θの範囲が、排気口が形成されている側を基点とした場合に、0°<θ≦90°であることを特徴とする請求項2記載の液晶パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オーディオビジュアル(AV)機器やオフィスオートメーション(OA)機器などに用いられる液晶表示装置が備える液晶パネルの製造方法に関するものであり、より具体的には、液晶パネルに液晶材料を注入する液晶材料の注入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、AV機器やOA機器などに用いられている表示装置に対しては、軽量化、薄型化、低消費電力化、高精細化、および表示画面の大画面化などが要求されている。そして、これら要求を実現するために、CRT(Cathode Ray Tube)方式表示装置を始めとして、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置、発光ダイオード(LED)表示装置などの各種の表示装置の開発と実用化が進められている。
【0003】上記各種の表示装置のうち、液晶表示装置は、一対の透光性基板の間に液晶層を形成してなる液晶パネルを備えており、この液晶パネルに電圧を印加して液晶分子の配列を変化させ、該液晶パネルに照射される光を変調させることによって画像を表示している。それゆえ、この液晶表示装置は、他の表示装置に比べて厚さ(奥行き)が格段に薄くできるとともに、消費電力も小さくでき、さらに、フルカラー化が容易であるなどの利点を有しているため、現在幅広い分野で用いられており、上述した各要求を実現化し得る表示装置として期待されている。
【0004】上記液晶表示装置が備えている液晶パネルは、一対の透光性基板を対向させてシール材などで貼り合わせて液晶セルを形成した後に、該液晶セルに液晶材料を注入して所定の厚さ(セルギャップ)を有する液晶層を形成することによって製造される。
【0005】ここで、上記液晶層の形成については、従来より、平板状の液晶セルの一辺に設けた注入口から液晶材料を注入すると同時に、反対側の一辺に設けた排気口から液晶セル内を真空吸引する方法がよく用いられている。この方法の具体的な例としては、たとえば、特開平8−262461号公報に開示されている液晶注入方法および装置が挙げられる。該公報では、図9に示すように、平板状の液晶セル100を水平面から見て直立させた状態としている。
【0006】この状態では、液晶セル100の長手方向の辺の一方が水平面に接し、他方が水平面から離れている。また、長手方向に直交する方向の辺はどちらも水平面に直交するようになっている。この状態の液晶セル100における側方の一辺、すなわち、水平面に対して直立している2つの辺のうちの一方において、その下方側に注入口101が設けられている。これに対して、他辺、すなわち、上記注入口101が設けられている側の辺に対向するもう一方の辺において、その上方側と下方側に排気口102が1箇所ずつ、計2箇所設けられている。
【0007】つまり、特開平8−262461号公報に開示されている方法では、水平面に対して立てた状態にある液晶セル100に対して、側方に位置する辺の注入口101から液晶材料を注入すると同時に、注入口101に対向する側方に位置する辺の排気口102から該液晶セル100内を真空吸引することによって、液晶材料の充填を行っている。また、注入される液晶材料には正圧が加えられているため、単に排気口102から真空吸引するよりも迅速に液晶材料を充填することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記特開平8−262461号公報の方法などの従来の方法では、液晶材料の封入に際して、液晶セル100を水平面から立てた状態としている。そのため、液晶セル100内に封入される液晶材料が重力により影響を受け、下方側に液晶材料が偏在して部分的にセルギャップが大きくなってしまう。このセルギャップの不均一性は、液晶セル100のサイズが大きくなるほど顕著に現れ、たとえば、液晶セル100のサイズが13.8型以上の大型となると不均一性は極めて顕著に現れる。
【0009】また、図9に示すように、注入する液晶材料に加えられる正圧が圧力Pxであり、排気口102からの真空吸引が排気速度Pyでなされているとすると、これら圧力Pxと排気速度Pyとの関係により得られる液晶パネルのセルギャップが決定される。しかしながら、この関係によっては液晶層のセルギャップが変化してしまい、セルギャップの不均一性がより一層顕著になる。
【0010】すなわち、圧力Pxと排気速度Pyとがバランスよい関係であれば、液晶材料は円滑に注入されていき、セルギャップを変動させることがない。これに対して、圧力Pxと排気速度Pyとのバランスが崩れて圧力Pxが強くなると、液晶セル100内に注入される液晶材料の勢いが強くなり過ぎて、液晶セル100内にセルギャップを維持するために設けられているスペーサが移動してしまう。その結果、セルギャップを均一に保持することができなくなる。このスペーサの移動は注入口101付近で特に顕著に現れる。
【0011】液晶パネルのセルギャップが不均一となると、該液晶パネルを用いて画像表示を行った場合に、画面上に表示ムラが発生し、画像の表示品位を非常に低下させることになる。そのため、液晶パネルでは、セルギャップを全体的に均一とすることが非常に重要となっている。
【0012】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶セルに対して、液晶材料をより均一かつ効率的に充填することにより、セルギャップの均一性を損なわない優れた品質を有する液晶パネルを得ることができる液晶パネルの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の液晶パネルの製造方法は、上記の課題を解決するために、一対の透光性基板を貼り合わせてなる板状の液晶セルに対して、該液晶セル内を真空吸引しながら液晶材料を注入する液晶パネルの製造方法において、上記液晶材料の注入時に、液晶セルが水平面に対して平行となるように配置されることを特徴としている。
【0014】上記請求項1記載の方法によれば、従来の方法とは異なり、液晶セルへの液晶材料の注入に際して液晶材料が偏在しないように、該液晶セルを重力が作用しないように配置している。そのため、液晶セルへの液晶材料の注入時に該液晶材料の偏在の発生を抑制し、より一層均一なセルギャップを実現した高品位の液晶パネルを得ることができる。
【0015】本発明の請求項2記載の液晶パネルの製造方法は、上記の課題を解決するために、一対の透光性基板を貼り合わせてなる板状の液晶セルに対して、該液晶セル内を真空吸引しながら液晶材料を注入する液晶パネルの製造方法において、上記液晶材料の注入時に、上記液晶セルが、液晶材料を注入する注入口が形成されている側を上方とし、かつ、液晶セル内を真空吸引する排気口が形成されている側を下方とするように、水平面に対して傾斜して配置されることを特徴としている。
【0016】上記請求項2記載の方法によれば、液晶セルを傾斜させている上に、注入口側の辺を上方、排気口側の辺を下方としている。そのため、液晶材料の注入と液晶セル内の排気とのバランスが良好に保たれた状態で、注入される液晶材料に対して、該液晶材料が液晶セル内に広がる方向に重力が作用する。その結果、液晶セルへの液晶材料の注入時に該液晶材料の偏在の発生を抑制することが可能となり、より一層均一なセルギャップを実現した高品位の液晶パネルを得ることができる。
【0017】しかも、液晶材料に重力を作用させているため、単に液晶材料を注入する場合に比べて、液晶材料の充填時間を短縮することが可能となる。そのため、液晶パネルの生産性を向上させることもできる。
【0018】本発明の請求項3記載の液晶パネルの製造方法は、上記の課題を解決するために、請求項2記載の方法に加えて、傾斜して配置される上記液晶セルと水平面とで形成される傾斜角θの範囲が、排気口が形成されている側を基点とした場合に、0°<θ≦90°であることを特徴としている。
【0019】上記請求項3記載の方法によれば、傾斜角θがこの範囲内であれば、液晶セルへの液晶材料の注入時に該液晶材料の偏在の発生をより一層確実に抑制することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について、図1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。本発明にかかる液晶パネルの製造方法は、液晶セルへ液晶材料を注入する際に、該液晶セルを水平に静置するか、または、該液晶セルに形成されている排気口を下方にするとともに注入口を上方とするように液晶セルを傾斜させて配置する方法である。
【0021】本発明にかかる液晶パネルの製造方法について、以下に具体的に説明する。通常、図2に示すように、液晶パネル10は、一対の透光性基板13・13に液晶層14がシール材15によって封入されてなっている。上記透光性基板13・13同士で形成される液晶層14の厚さ、すなわちセルギャップGは、複数のスペーサ16…によって維持されている。なお、液晶層14となる領域が小さい場合には、スペーサ16…なしでもセルギャップGを保持できる場合がある。
【0022】上記液晶パネル10の製造では、まず、一対の透光性基板13・13同士を互いに対向して配置する。このとき、液晶パネル10がたとえばカラー液晶表示装置に用いられるものである場合は、それぞれの透光性基板13の一方の面上には、スイッチング素子や画素電極、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、配向膜などが形成されている。そして、これら各構成が形成されている側の面を、互いの透光性基板13を対向させる際の対向面とする。
【0023】互いに対向させた上記一対の透光性基板13・13をシール材15により貼り合わせる。この状態では、まだ液晶層14は形成されておらず、後に液晶層14となる平板状の空間が形成されているのみである。以下、透光性基板13・13同士を貼り合わせたのみで液晶層14が形成されていない状態のものを液晶セルとする。
【0024】上記透光性基板13・13の貼り合わせに用いられるシール材15としては特に限定されるものではないが、たとえば熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂などが好適に用いられる。シール材15は、上記透光性基板13・13の何れか一方の表面(他方の透光性基板13への対向面)に、所定のパターンとなるように形成される。
【0025】上記シール材15のパターンは、図3に示すように、一方の透光性基板13の対向面上に、液晶層14となる領域を取り囲み、かつ、液晶材料を注入するための注入口11と排気口12とを少なくとも備えるパターンである。上記パターンにおける注入口11および排気口12の形成位置については特に限定されるものではないが、液晶材料をより均一かつ迅速に注入するためには、平板状の液晶パネル10の一辺に注入口11を設け、この注入口11が設けられた一辺に対向する位置にある他辺に排気口12が設けられていることが好ましい。
【0026】上記注入口11および排気口12が設けられる位置について具体的に言及すると、まず、排気口12を設ける位置は、液晶パネル10に接続される電極端子の妨げとならない位置であることを前提としている。一方、注入口11を設ける位置は、排気口12に対向するような位置であることが特に好ましい。
【0027】たとえば、本実施の形態では、液晶パネル10として長方形状のものを用いているが、このとき、注入口11および排気口12は、図3に示すように、長手方向に直交する方向の辺、すなわち、長方形における一対の短い方の辺にそれぞれ形成されている。また、上記注入口11は、短い方の一辺の中央部に1箇所形成されているとともに、排気口12・12は、他辺の両端に2箇所形成されている。なお、この他辺側は、COM側電極端子の設けられている辺であるため、排気口12・12はこのCOM側電極端子の両端に設けられていることになる。
【0028】排気口12・12を上記他辺の両端に形成することで、■液晶パネル10に接続するCOM側電極端子を切断しないようにする、■注入後の封止作業を簡略化する、■電極端子へのTAB圧着を妨げない、■液晶パネル10の角に溜まり易い塵埃を除去して液晶材料のコンタミネーションを回避できる、などの利点が得られる。
【0029】一方、注入口11を一辺側の中央部に設けることで、該注入口11と上記排気口12・12双方との間の距離は等しくなっている。そのため、後述する、液晶材料へ加えられる正圧と液晶セル内の排気速度との関係を良好に保持することができるという利点が得られる。
【0030】なお、シール材15の材質としては、通常、透光性基板13・13同士の貼り合わせと液晶材料の封入に用いられるものであれば特に限定されるものではない。すなわち、透光性基板13・13同士を貼り合わせ、かつ液晶層14を保持できるだけの強度を有し、さらに、液晶材料に対して何らかの物質が溶け出したり液晶分子の配向に影響を及ぼしたりするようなものでなければよい。
【0031】また、シール材15のパターンの形成方法も特に限定されるものではない。たとえば、描画法やスクリーンによる印刷法、あるいはシール材15の材質によっては、フォトマスクによるパターニングなどの従来から用いられている各種方法を用いることができる。
【0032】上記一対の透光性基板13・13を貼り合わせて形成した液晶セルには、各透光性基板13・13の間に、後に液晶層14となる平板状の空間が形成されている。ここで、該空間の厚さ(すなわちセルギャップG)を一定に保持するために、図2に示すように、各透光性基板13・13間にあらかじめ複数のスペーサ16…を設けておく。このスペーサ16…としては、たとえば、樹脂性のビーズ形状のものやファイバー形状のものなどが用いられ、上記空間にほぼ均一となるように、スペーサ散布装置などによって散布される。
【0033】上述した各工程により得られた液晶セルに対して、注入口11から液晶材料を注入すると同時に排気口12・12から液晶セル内を吸引することによって液晶材料を充填し、液晶層14を形成する。このとき、図1に示すように、平板状の液晶セル10aは、従来のように水平面に対して立てた状態で配置するのではなく、水平面に平行となるように配置する。
【0034】なお、図1および後述する図4では、液晶セル10aの配置状態をより明確に示すために、側面から見た場合(図面上側)と、上方側から見た場合(図面下側、斜視図)との両方で図示しているとともに、従来法における液晶セル10aの配置状態も同時に図示している(本発明が図面左側で、従来法が図面右側)。
【0035】従来では、液晶材料の充填に際しては、液晶セル10aを水平面に対して立てた状態、つまり、平板状の液晶セル10aが水平面に対してたとえば垂直となるように配置した上で液晶材料を充填していた(図1右側参照)。しかしながら、この方法では、液晶材料が重力によって下方側に偏在し、そのためにセルギャップGが下方側となる部分で大きくなって、液晶セル10a全体のセルギャップGの均一性を低下させていた。
【0036】これに対して、本発明にかかる液晶パネルの製造方法では、液晶セル10aを水平面に平行とするように配置している(図1左側参照)。そのため、液晶材料を充填するに当たって、液晶材料が重力によって偏在することがなく、セルギャップGを部分的に大きくするなど、セルギャップGの不均一性を招来することがない。その結果、より一層優れた品質の液晶パネル10を製造することができる。
【0037】本発明にかかる液晶パネルの製造方法では、液晶材料の注入時に、液晶セル10aを水平面に平行に配置する以外に、図4に示すように、注入口11を上方側、排気口12を下方側とする状態で液晶セル10aを傾斜させてもよい(図4左側参照)。この傾斜状態で液晶材料を注入しても、セルギャップGが不均一になることが抑制され、より均一な液晶層14を迅速に形成することができる。なお、このときも液晶セル10aには、一辺の中央部に注入口11が1箇所、他辺の両端に排気口12が2箇所設けられている構成が好ましい。
【0038】上記傾斜状態は、排気口12が注入口11よりも下方となるように傾斜していれば特に限定されるものではないが、図5(a)・(b)に示すように、排気口12の形成されている辺を基点として、液晶セル10aの傾斜角θが水平面に対して0°<θ≦90°の範囲内となっていることが特に好ましい。
【0039】具体的には、図5(a)に示すように、液晶セル10aが水平面に対して垂直に立っている状態は、傾斜角θ=90°で最大の傾斜角θを有している傾斜状態であると見なす。傾斜角θは、図5(b)に示すように、液晶材料の注入状態に応じて適宜変化させることができるが、本発明にかかる液晶パネルの製造方法では、図5(c)に示すような、傾斜角θ=0°の状態については、傾斜しているとは見なさない。これは、この傾斜角θ=0°の状態は、上述した水平面に平行に配置する状態(図1左側参照)となるためである。なお、従来の配置状態は、図5(d)および図4の右側に示すように、注入口11および排気口12が側方に位置するようにして水平面に対して立っている状態である。
【0040】ここで、注入口11が排気口12よりも上方となるように液晶セル10aが傾斜していると、液晶材料の注入に重力の作用を利用することができるために、注入時に液晶材料に加えられる正圧(以下、注入圧力とする)と液晶セル10a内の排気速度との関係が保持される。そのため、液晶セル10a内に、より迅速かつ確実に液晶材料を充填することが可能となる。
【0041】上記注入圧力と排気速度との関係が保持される点について具体的に説明する。液晶セル10a内に液晶材料を注入する場合、上述したように、注入口11から液晶材料に正圧を加えて注入すると同時に、排気口12から液晶セル10a内を吸引、排気する。このとき、上記注入圧力と排気速度との関係が良好に保持されれば、注入される液晶材料と排気される液晶セル10a内の空気とが完全に入れ代わることになり、迅速かつ確実に液晶材料を充填することが可能となる。
【0042】ところが、上記関係が良好に保持されないとすると、さまざまな不都合が発生する。たとえば、注入圧力が強過ぎると、排気速度が追いつかなくなり、注入口11付近が液晶材料によって膨れ上がるという現象が発生する。そのため、液晶セル10aにおけるセルギャップGが不均一となる上に、注入圧力によりスペーサ16…の移動が生じるおそれもある。逆に、排気速度が速過ぎると、液晶セル10a内が過度に減圧されるため、内部に気泡が生じるなど、液晶材料が確実に充填されなくなるおそれがある。
【0043】液晶パネル10の製造において、注入圧力および排気速度をともに上げた場合は、一見、充填速度も速くなって均一なセルギャップGが得られるよう思われる。しかしながら、実際には、注入圧力および排気速度を上昇させ過ぎると、これらの関係が良好に保持されなくなり、得られる液晶パネル10に、注入時に生じた液晶材料の流れ跡とみられる表示ムラが生じたり、液晶セル10a内に強い圧力が加えられてスペーサ16…が移動することによるセルギャップGの不均一性が生じるなどの問題が起こる。
【0044】しかも、上記注入圧力と排気速度との関係の最適な範囲は、液晶セル10a内の材質や液晶セル10aのパネルサイズなどといった各種条件に依存する。そのため、単に注入圧力や排気速度を上昇する手法では、液晶セル10aの条件に合わせて迅速かつ確実に液晶材料を充填することができない。
【0045】そこで、本発明にかかる液晶パネルの製造方法では、液晶材料の注入時に液晶セル10aを傾斜させ、注入口11を上方に排気口12を下方にすることによって、液晶材料の注入に重力を利用する。すなわち、重力の作用によって、注入された液晶材料を液晶セル10aの排気口12側へ広げていく。それゆえ、注入圧力と排気速度との関係を最適な範囲内に保持することができるため、より迅速に液晶材料を充填することが可能となる。
【0046】このように、本発明にかかる液晶パネルの製造方法では、上記液晶材料の充填に、該液晶材料に加えられている正圧、排気口12からの排気、および重力の3つの作用を用いていることになる。そのため、液晶材料は、液晶セル10a内に均一かつ迅速に広がっていく。その結果、従来よりも迅速かつ確実に液晶材料を充填することが可能となり、より一層均一なセルギャップGを有する液晶パネル10を得ることができる。
【0047】ここで、図5(a)に示すような傾斜角θ=90°の場合は、図5(d)に示すような従来の液晶セル10aの配置と同様に、水平面に対して立っている状態であると見なすことができる。しかしながら、従来の場合と比較して、本発明では、排気口12の形成されている辺が下側で、注入口11の形成されている辺が上側となっている。
【0048】従来の液晶材料の注入では、注入口11および排気口12が設けられている辺を立てた状態の液晶セル10aの側方としていたため、液晶材料の注入の際に、重力による偏在を招来することになっていた。これに対して、本発明では、注入口11および排気口12が設けられている辺を側方ではなく上下としているので、上述したように、重力は液晶材料を液晶セル10a内に広げるように作用することになる。その結果、液晶材料の偏在を抑制し、より均一なセルギャップGを実現することができる。
【0049】液晶セル10aへの液晶材料の充填に際しては、液晶セル10aを水平面に平行となるように配置した場合であっても、傾斜させて配置した場合であっても、液晶材料に正圧を加えて注入することが好ましい。これによって、正圧を加える分だけ液晶材料の注入速度が速くなり、液晶材料をより短時間で充填することができる。
【0050】なお、液晶材料の充填に用いる装置としては、従来から用いられている注入装置を好適に用いることができる。上述した方法で液晶材料の注入が完了すれば、注入口11および排気口12を封止材でふさぎ、液晶セル10a内に完全に液晶層14を封入する。これによって、液晶パネル10が完成する。
【0051】以上のように、本発明にかかる液晶パネルの製造方法では、液晶セルへの液晶材料の注入に際して液晶材料が偏在しないように、該液晶セルを重力が作用しないように配置する方法、または、逆に、重力を液晶セル内の排気方向に作用させて、迅速に液晶材料を充填する方法である。
【0052】それゆえ、液晶セルへの液晶材料の注入時に該液晶材料の偏在の発生を抑制し、より一層均一なセルギャップを実現した高品位の液晶パネルを得ることができる。しかも、液晶材料に重力を作用させる場合には、液晶材料の充填時間を短縮することができるので、液晶パネルの生産性を向上させることもできる。
【0053】また、液晶セルを傾斜させた状態では、注入口の形成されている辺を上方、排気口の形成されている辺を下方とするため、注入されている液晶材料に加えられる圧力と、液晶セル内を排気する際の排気速度とのバランスが良好となる。その結果、液晶材料が激しく流入することがなく、スペーサを押し流してセルギャップの不均一性を招来するような事態を回避することができる。
【0054】なお、図示しないが、一枚の大型の透光性基板と複数枚の小型の透光性基板とを対向させるような液晶パネルであっても、本発明にかかる液晶パネルの製造方法を適用することができる。すなわち、一対の透光性基板の間に液晶層を封入している構成であれば、本発明にかかる液晶パネルの製造方法を適用することができる。
【0055】次に、本発明にかかる液晶パネルの製造方法を、以下の実施例に基づきさらに具体的に説明する。〔実施例〕本実施例では、液晶パネル10として、セルギャップGを6μmに設定した13.8型のサイズのものを用いた。
【0056】上記液晶パネル10に液晶層14が形成されていない状態である液晶セル10aは、長方形状の板状である。また、注入口11および排気口12は、液晶セル10aにおける長手方向とは直交する方向の辺(すなわち短い方の辺)にそれぞれ形成されている。さらに、注入口11は、上記短い方の辺の一方の中央部に1箇所設けられているとともに、排気口12は、他辺の両端に2箇所設けられている(図2および図3参照)。
【0057】液晶材料の注入には、従来から用いられている装置をそのまま用いた。また、液晶材料の注入に際しての各条件も従来と同一とした。具体的には、液晶材料に加えられる正圧(注入圧力)を0.1〜2.0kgf/cm2 とし、排気条件を0.0Torrとした。なお、注入圧力は時間毎に上記範囲で変化するが、排気条件は時間に関係なく一定となっている。
【0058】液晶材料の注入時における液晶セル10aは、■水平面に対して平行に配置している状態(図5(c)参照)、■注入口11が上方、排気口12が下方となるとともに、水平面に対して0°から90°まで10°毎に傾斜して配置している状態、すなわち傾斜角θ=10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、および90°となる配置(図5(a)・(b)参照)、および、■水平面に対して立てた状態で注入口11および排気口12が側部となるように配置している状態、すなわち、従来法の配置(図5(d)参照)の3パターンに配置した。
【0059】上記の各配置の液晶セル10aに対して液晶材料を充填した後、図6に示すように、長方形状の液晶セル10aの中央部となる位置で、長手方向に直交するライン方向に沿って、セルギャップGを計20ポイント測定し、比較した。その結果を図7および表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】図7および表1に示すように、従来法である■の配置では、重力による液晶材料の偏在が発生しているためセルギャップGにばらつきが激しくなっているが、■・■では、セルギャップGのばらつきは小さく、より均一なセルギャップGを有する液晶パネル10が得られていることが分かる。なお、■の配置では、10°毎に液晶セル10aの傾斜を変化させて測定を行っているが、すべてほぼ同様の値が得られたため、図7では、傾斜角θ=90°の結果を記載している。
【0062】また、表1に示すように、セルギャップGの平均値AVE には大差がないものの、セルギャップGのばらつき度を示す標準偏差σの値は、■や■に比べて、■の配置の方が明らかに大きい。そのため、従来法である■の配置では、セルギャップGの均一性は劣っていることが分かる。
【0063】一方、図8に示すように、■および■の配置における液晶材料の充填速度を比較したところ、従来法である■の配置における液晶材料の充填時間(図中破線で示す)と、■の配置における液晶材料の充填時間(図中菱形で10°毎の角度で示す)とを比較したところ、傾斜角θが10°〜30°程度と小さい場合は■と■との時間差は小さいが、■の配置では、傾斜角θが大きくなるに伴って充填時間が短縮している。そのため、液晶セル10aが■の配置をとることによって、■の配置(従来の配置)よりも一層迅速かつ均一な液晶材料の充填が可能になっていることが分かる。
【0064】なお、上述した本実施例の結果は、13.8型のサイズの液晶パネルを用いた場合であって、この13.8型よりも大きいサイズの液晶パネルであれば、液晶材料の充填に要する時間はより短縮される。そのため、特に、大型の液晶パネルの生産に本発明にかかる液晶パネルの製造方法を用いれば、高品質の液晶パネルを確実に製造することができる上に、その生産性もより一層向上させることができる。
【0065】以上のように、本発明にかかる液晶パネルの製造方法は、高品質の液晶パネルを確実かつ迅速に製造することができる。そのため、該液晶パネルを用いて画像表示を行った場合、その表示品位をより一層向上させることができる。また、本発明にかかる液晶パネルの製造方法は、一対の透光性基板の間に液晶層を封入する構成を有する液晶パネルであれば、あらゆるサイズや構成のものに適応することができる。
【0066】具体的には、表示方式がセグメント表示方式であってもドットマトリクス表示方式であっても適用することができる。また、ドットマトリクス表示方式においての駆動方式としても、単純マトリクス駆動、スイッチング素子としてMIM(Metal Insulator Metal )を用いたアクティブマトリクス駆動、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス駆動など、あらゆる駆動方式でも適応することができる。
【0067】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の液晶パネルの製造方法は、以上のように、一対の透光性基板を貼り合わせてなる板状の液晶セルに対して、該液晶セル内を真空吸引しながら液晶材料を注入する液晶パネルの製造方法において、上記液晶材料の注入時に、液晶セルが水平面に対して平行となるように配置される方法である。
【0068】それゆえ、上記方法では、液晶セルへの液晶材料の注入に際して、液晶材料が偏在しないように、該液晶セルを重力が作用しないように配置している。そのため、液晶セルへの液晶材料の注入時に該液晶材料の偏在の発生を抑制し、より一層均一なセルギャップを実現した高品位の液晶パネルを得ることができるという効果を奏する。
【0069】本発明の請求項2記載の液晶パネルの製造方法は、以上のように、一対の透光性基板を貼り合わせてなる板状の液晶セルに対して、該液晶セル内を真空吸引しながら液晶材料を注入する液晶パネルの製造方法において、上記液晶材料の注入時に、上記液晶セルが、液晶材料を注入する注入口が形成されている側を上方とし、かつ、液晶セル内を真空吸引する排気口が形成されている側を下方とするように、水平面に対して傾斜して配置される方法である。
【0070】それゆえ、上記方法では、液晶セルが、注入口側の辺を上方、排気口側の辺を下方となるように傾斜しているため、液晶材料の注入と液晶セル内の排気とのバランスが良好に保たれつつ、液晶材料に重力が効果的に作用する。そのため、液晶セルへの液晶材料の注入時に該液晶材料の偏在の発生を抑制し、より一層均一なセルギャップを実現した高品位の液晶パネルを得ることができるという効果を奏する。しかも、液晶材料に重力を作用させているため、単に液晶材料を注入する場合に比べて、液晶材料の充填時間を短縮することができるので、液晶パネルの生産性を向上させることもできるという効果も奏する。
【0071】本発明の請求項3記載の液晶パネルの製造方法は、以上のように、請求項2記載の方法に加えて、傾斜して配置される上記液晶セルと水平面とで形成される傾斜角θの範囲が、排気口が形成されている側を基点とした場合に、0°<θ≦90°である方法である。
【0072】それゆえ、上記方法では、液晶セルへの液晶材料の注入時に該液晶材料の偏在の発生をより一層確実に抑制することができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【出願日】 平成10年7月9日(1998.7.9)
【代理人】 【識別番号】100080034
【弁理士】
【氏名又は名称】原 謙三
【公開番号】 特開2000−29046(P2000−29046A)
【公開日】 平成12年1月28日(2000.1.28)
【出願番号】 特願平10−194516