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【発明の名称】 低反射薄膜基板、カラーフィルタ基板および液晶ディスプレイ
【発明者】 【氏名】藤田 達也

【氏名】佐藤 崇

【氏名】迫野 郁夫

【要約】 【課題】環境上問題が無く、充分な遮光性と低反射性、優れた耐薬品性と耐食性を有するブラックマトリクスを備えたカラーフィルタを、膜欠損不良等を生じずに安価に作製する。

【解決手段】透明基板101上に窒化タンタルからなる反射防止膜102と、タンタルまたは窒化タンタルからなる遮光膜103を基板側からこの順に積層してブラックマトリクスをパターン形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明基板上に、窒化タンタルからなる第1層膜と、タンタル又は窒化タンタルからなる第2層膜とが、該透明基板側からこの順に積層されている低反射薄膜基板。
【請求項2】 前記第1層膜は、膜中の窒素濃度が45atom%以上の窒化タンタル膜である請求項1に記載の低反射薄膜基板。
【請求項3】 前記第1層膜の膜厚が15nm〜35nmである請求項2に記載の低反射薄膜基板。
【請求項4】 波長630nmにおいて、前記第1層膜の光の屈折率が2.6〜3.4で消衰係数が0.2〜0.5である請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の低反射薄膜基板。
【請求項5】 前記第2層膜は、膜中の窒素濃度が20atom%〜40atom%の窒化タンタル膜である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の低反射薄膜基板。
【請求項6】 波長400nm〜700nmの可視光域において、前記透明基板による反射を除く、該透明基板側からの光の反射率の最大値が17%以下で反射率の極小値が5%以下であり、透過率が0.5%以下である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の低反射薄膜基板。
【請求項7】 波長400nm〜700nmの可視光域において、前記透明基板による反射を除いて視感度補正した平均反射率が7%以下である請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の低反射薄膜基板。
【請求項8】 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の低反射薄膜基板における前記第1層膜及び前記第2層膜からなるブラックマトリクスが画素間に設けられ、さらに、画素部に着色層及び透明電極膜がパターン形成されているカラーフィルタ基板。
【請求項9】 請求項8に記載のカラーフィルタ基板と、前記透明電極膜に対向する透明電極膜を有する対向基板との間に液晶層が挟持され、両基板の液晶層とは反対側の表面に偏光板が配置されている液晶ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、AV(Audio Visual)機器やOA(Office Automation)機器等に利用される液晶ディスプレイ、それに用いられるカラーフィルタ基板及びそのブラックマトリクスとして好適な低反射薄膜を備えた低反射薄膜基板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、液晶ディスプレイにおいてカラー表示を行うためには、液晶層を挟む一対の基板のうちの一方の基板として、カラーフィルタ基板を用いた構成が広く採用されている。
【0003】図3は従来の液晶ディスプレイ用のカラーフィルタ基板を示す断面図である。
【0004】このカラーフィルタ基板において、透明基板301としては通常ガラス基板が用いられ、その上に各画素に対応して赤着色層303、緑着色層304、青着色層305が設けられている。そして、各着色層(画素)の間には、ディスプレイの視認性を向上させるためにブラックマトリクスと称される遮光層302が設けられている。この着色層303、304、305の上には透明保護膜(図示せず)が設けられ、さらにその上に液晶駆動用の対向電極として透明電極(図示せず)が設けられている。
【0005】上記遮光層としては、通常、遮光性が良好な金属薄膜からなる微細パターンが形成されることが多く、例えば、クロム、ニッケル、モリブデン、アルミニウム等の金属薄膜がスパッタリング成膜技術を用いて形成されていた。
【0006】近年では、液晶ディスプレイの表示性能を向上させるために、ブラックマトリクスに遮光性のみならず、透明基板側からの反射率の低下が求められている。
【0007】これに対応するために、例えば特開昭61−39024号公報には、以下のような技術が提案されている。
【0008】この技術では、図2に示すように、透明基板201上に酸化クロム等からなる反射防止膜202を形成してその上にクロムからなる遮光層203を積層し、これをブラックマトリクス用の低反射膜として用いている。これにより、薄膜干渉効果を利用して透明基板側からの低反射性と遮光性とを得ることができる。
【0009】ところで、特開平9−292698号公報には、TaN/Ta(窒化タンタル/タンタル)の積層構造を用いて反射率を低下させる技術が開示されているが、これは、アクティブマトリクス基板上に形成された信号配線(TaN/Ta)において、窒化タンタル膜側(上層側)からの光の反射率を低下させることを目的とするものであり、カラーフィルタ基板において透明基板側からの光の反射率を低下させるための本発明とは全く異なるものである。
【0010】さらに、本発明者らが実施例に沿って実験を行ったところ、この公報に記載されている窒化タンタル/タンタルの積層構造の反射率は、後述する実施形態において図5に示すように反射率が高く、条件の最適化を図っても、視感度補正した平均反射率は17%程度しか得られない。よって、この積層構造をそのままブラックマトリクス用の低反射薄膜として用いることはできない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述のクロム/酸化クロムを用いた低反射膜によれば、カラーフィルタ基板における透明基板側からの低反射性と、ブラックマトリクスとしての充分な遮光性とを実現することができる。しかしながら、一般に六価以外の原子価を有するクロムは毒性が少ないものの、六価クロムの人体への毒性が強く、環境に悪影響を及ぼすという問題があるため、特に最近の地球環境に対する世論を艦みて、液晶ディスプレイの製造工程からクロムの使用を自粛する気運にある。
【0012】従って、クロムを用いない低反射薄膜が求められており、これに対応する技術として、特開平9−5783号公報に記載されているようなモリブデン/酸化モリブデン(Mo/MoO)の積層構造を用いたものや特開平9−243801号公報に記載されているようなニッケル−鉄(Ni−Fe)等の合金を用いたものが提案されている。しかし、これらモリブデン、ニッケル、鉄等の材料は耐薬品性や耐食性が良好ではないという問題があった。
【0013】その他に一般的に知られた方法としては、タンタル/酸化タンタル(Ta/Ta25)の積層構造を用いたものが挙げられる。しかし、この構造では、タンタルの耐食性は優れているものの、酸化タンタル(Ta25)が絶縁体であるため、スパッタリング技術を用いて成膜する場合には高価なRF電源が必要となって設備自体が高額となるという問題があった。さらに、通常、Ta25ターゲットは焼結体であるため、成膜中の発塵が多くなって膜欠損等の製品不良を引き起こし易いという問題があった。
【0014】本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、環境上問題のあるクロムを使用することなく、充分な遮光性と低反射率、優れた耐薬品性と耐食性を有し、製品不良を生じずに安価に作製することができるブラックマトリクスに好適な低反射薄膜基板、カラーフィルタ基板及びそれを備えた液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の低反射薄膜基板は、透明基板上に、窒化タンタルからなる第1層膜と、タンタル又は窒化タンタルからなる第2層膜とが、該透明基板側からこの順に積層され、そのことにより上記目的が達成される。
【0016】前記第1層膜は、膜中の窒素濃度が45atom%以上の窒化タンタル膜であるのが好ましい。
【0017】前記第1層膜の膜厚が15nm〜35nmであるのが好ましい。
【0018】波長630nmにおいて、前記第1層膜の光の屈折率が2.6〜3.4で消衰係数が0.2〜0.5であるのが好ましい。
【0019】前記第2層膜は、膜中の窒素濃度が20atom%〜40atom%であるのが好ましい。
【0020】波長400nm〜700nmの可視光域において、前記透明基板による反射を除く、該透明基板側からの光の反射率の最大値が17%以下で反射率の極小値が5%以下であり、透過率が0.5%以下とすることができる。
【0021】波長400nm〜700nmの可視光域において、前記透明基板による反射を除いて視感度補正した平均反射率が7%以下であるのが好ましい。
【0022】本発明のカラーフィルタ基板は、本発明の低反射薄膜基板における前記第1層膜及び前記第2層膜からなるブラックマトリクスが画素間に設けられ、さらに、画素部に着色層及び透明電極膜がパターン形成され、そのことにより上記目的が達成される。
【0023】本発明の液晶ディスプレイは、本発明のカラーフィルタ基板と、前記透明電極膜に対向する透明電極膜を有する対向基板との間に液晶層が挟持され、両基板の液晶層とは反対側の表面に偏光板が配置され、そのことにより上記目的が達成される。
【0024】以下、本発明の作用について説明する。
【0025】本発明にあっては、ブラックマトリクス用の低反射薄膜として、タンタル/窒化タンタル(Ta/TaNx)または窒化タンタル/窒化タンタル(TaNx/TaNx)の2層構造を透明基板上に形成する。
【0026】タンタルを窒化して得られる窒素濃度45atom%以上の窒化タンタルは、エリプソメータで測定したところ、波長630nm付近における屈折率が3.0前後(2.6〜3.4)、消衰係数が0.2〜0.5を示す半透明膜であった。
【0027】この窒化タンタル膜を反射防止膜としてガラス等の透明基板上に形成し、その上にタンタル膜を遮光膜として積層することにより、薄膜干渉効果を利用して、充分な遮光性と透明基板側からの低反射性を得ることができる。
【0028】例えば、後述する図5に示すように、波長400nm〜700nmの可視光域において、透明基板側からの光の反射率(ガラス等の透明基板の反射率を除く)の最大値を17%以下、反射率の極小値を5%以下、透過率を0.5%以下とすることができる。
【0029】さらに、この膜中の窒素濃度45atom%以上の窒化タンタル膜の膜厚を15nm〜35nmとすることにより、後述する図6及び図7に示すように、透明基板側からの視感度補正した平均反射率を7%以下に低減することが可能であり、表示品位を充分にすることができる。
【0030】さらに、タンタル/窒化タンタルの2層の積層構造においては、酸化タンタルを用いた場合のようにRF電源を必要とせず、安価なDC電源でのスパッタリング技術で成膜することが可能となる。さらに、焼結体でないタンタルターゲットや窒化タンタルターゲットを用いて成膜可能であるので、発塵を抑制できる。
【0031】窒化タンタル/窒化タンタルの2層の積層構造においては、第2層膜(上層)の窒化タンタル膜の窒素濃度を20atom%〜40atom%とすると、この窒化タンタル層がアルファ相化することはないので、光学濃度を大きくすることができる。よって、上層の窒化タンタル膜を約150nm以下の膜厚としても充分な遮光性が得られ、透過率を0.5%以下とすることができる。
【0032】この場合にも、薄膜干渉効果を利用して透明基板側からの光の反射率(ガラス等の透明基板の反射率を除く)の最大値を17%以下、反射率の極小値を5%以下、透過率を0.5%以下として充分な低反射性と遮光性とを得ることができ、また、透明基板側からの視感度補正した平均反射率を7%以下に低減することができる。さらに、安価なDC電源と焼結体でないタンタルターゲットや窒化タンタルターゲットを用いてスパッタリングにより成膜可能である。
【0033】本発明のカラーフィルタ基板は、上記反射防止膜としての第1層膜及び遮光膜としての第2層膜からなるブラックマトリクスを備えているので、画素間を充分遮光すると共に透明基板側からの反射を防ぐことができ、優れた表示品位の液晶ディスプレイを実現することが可能である。
【0034】さらに、本発明の液晶ディスプレイは、液晶パネルの両側に偏光板を配置してあるので、クロム/酸化クロムからなる従来の低反射薄膜を備えたカラーフィルタ基板と偏光板と組み合わせた場合の反射特性と比べて、実用上ほとんど差がない充分な低反射特性を得ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0036】(実施形態1)図1は本実施形態1の低反射薄膜基板の断面図である。
【0037】この低反射薄膜基板は、ガラス等からなる透明基板101上に反射防止膜として窒化タンタル膜102、遮光膜としてタンタル膜103が順次積層されている。
【0038】透明基板101としてはコーニング社製の1737ガラス材(n=1.5)を用い、窒化タンタル膜102及びタンタル膜103は純度99.99%のタンタルターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタリング装置により成膜した。以下にその手順を説明する。
【0039】まず、超音波純水洗浄によって透明基板101の表面を予め清浄にしておく。
【0040】そして、スパッタリング装置の真空槽内を3.0×10-4Pa以下まで排気した後、窒素ガス200sccm、アルゴンガス20sccmを導入して圧力を0.8Pa〜1.0Pa程度になるように排気バランスを調整し、基板加熱を100℃とした雰囲気中において、ターゲット表面でのパワー密度2W/cm2〜3W/cm2で70秒〜80秒間のスパッタリングを行うことにより、第1層の窒化タンタル膜102を成膜する。
【0041】この窒化タンタル膜102は、膜中の窒素濃度が60atom%であり、膜厚は約25nmとした。波長630nm付近の複素屈折率の実数部n=2.6〜3.4、消衰係数K=0.2〜0.5を示す半透明膜であった。尚、組成分析にはオージェ電子分光機を用い、屈折率及び消衰係数は分光エリプソメーターを用いて測定を行った。
【0042】次に、アルゴンガスのみを100sccm導入して、圧力が0.4Pa程度の雰囲気中において、パワー密度5.7W/cm2〜6.0W/cm2で40秒間のスパッタリングを行うことにより、第2層のタンタル膜103を成膜する。
【0043】このタンタル膜103は膜中に窒素をほとんど含んでおらず、膜厚は200nmとした。
【0044】このようにタンタル/窒化タンタルの2層が積層された構造では、上層のタンタル膜がアルファ相化して低抵抗な膜になることが知られており、本実施形態でも比抵抗30μΩ・cmのタンタル膜が得られた。
【0045】このアルファ相化されたタンタル膜は光学濃度がやや低いため、波長400nm〜700nmの可視光域で透過率が0.5%以下の充分な遮光性を得るためには、約200nmの膜厚が必要であった。
【0046】このようにして得られた低反射膜基板について、透明基板101側から反射特性を測定した結果を図5(a)に◆で示す。ここでは、図5(b)に示すように、透明基板101上に窒化タンタル膜102及びタンタル膜103を積層し、ガラス基板側101から光100を照射して反射特性した。なお、反射率は、オリンパス光学工業(株)社製の顕微分光OSP−SP200を用いてアルミニウム薄膜をリファレンスとして測定し、ガラス基板の反射率(約4%)を除いたものである。
【0047】さらに、図5(c)に示すように、透明基板(ガラス基板n=1.5)101上にタンタル膜103及び窒化タンタル膜102を積層した、特開平9−292628号公報と同様の構造に対して窒化タンタル膜102側から光100を照射して反射特性を測定した結果についても図5(a)に■で示す。なお、この図5(c)の窒化タンタル膜102における膜中の窒素濃度は、45atom%とした。
【0048】この図5(a)によれば、図5(b)に示した本実施形態の構造では、ガラス基板による反射を除いたガラス基板側からの光の反射率は、波長400nm〜700nmの可視光領域において最大値が17%以下で極小値は5%以下である。これに対して、ガラスからなる透明基板101上にタンタル膜103及び窒化タンタル膜102をこの順に積層した図5(c)の構造では、窒化タンタル膜102側からの光の反射率が高いことがわかる。なお、図5(c)の構造において、透明基板101側から光を照射した場合には、低反射率を得ることができないことは言うまでもない。
【0049】さらに、本実施形態において、上述のようにして測定した波長400nm〜700nmにおける反射率を図8に示した比視感度を用いて補正した透明基板101側からの平均反射率は4.5%であり、図5(c)に示した構造では窒化タンタル膜102側からの平均反射率は17.5%であった。以下、波長400nm〜700nmにおける反射率を図8の比視感度を用いて補正した後の平均反射率を視感度補正した平均反射率と称する。但し、ガラス基板側からの測定に関してはガラス基板表面の反射率4%を除くこととする。
【0050】これらの結果から、タンタル膜103及び窒化タンタル膜102を組み合わせるだけではなく、ガラスからなる透明基板101上に窒化タンタル膜102及びタンタル膜103をこの順に積層することによって、低反射特性の実現が可能になることがわかる。ここで、本実施形態の図5(a)に示した構造において、図5(c)に示した構造に比べて反射率を低くできる理由は、窒化タンタル膜102側にガラスからなる透明基板101があるからである。
【0051】図6に、視感度補正したガラス基板側からの平均反射率について、第1層の窒化タンタル膜の膜厚に対する依存性を調べた結果を示す。ここで、第1層窒化タンタル膜中の窒素濃度は60atom%とした。
【0052】この結果から、本実施形態では第1層の窒化タンタル膜102の膜厚を、視感度補正した平均反射率が最小となる25nm付近としているが、実用上は平均反射率が7%以上であれば充分な表示品位が得られると考えられるので、15nm〜35nmとするのが好ましい。
【0053】図7に、視感度補正したガラス基板側からの平均反射率について、第1層の窒化タンタル膜の膜中窒素濃度に対する依存性を調べた結果を示す。ここで、第1層窒化タンタル膜の膜厚は、各々の条件で最適化したものであり、40atom%で30nm、50atom%及び60atom%で25nmとした。
【0054】この結果から、本実施形態では第1層の窒化タンタル膜102の膜中の窒素濃度を、視感度補正した平均反射率が最小となる60atom%付近としているが、実用上は平均反射率が7%以上であれば充分な表示品位が得られると考えられるので、約45atom%以上であれば充分である。
【0055】このように、本実施形態1においては、環境上で問題のある金属クロムを使用することなく、充分な遮光性と低反射性を有するブラックマトリクス用の低反射膜を備えた低反射薄膜基板を作製することができる。また、タンタル/窒化タンタルはモリブデン、鉄、ニッケル等に比べて優れた耐食性と耐薬品性を有するので、信頼性を向上させることができる。さらに、酸化タンタルを用いた場合のようにDC電源を必要としないので、設備コストを抑制することができ、焼結体である酸化タンタルターゲットを用いなくても成膜できるので膜欠損等の不良も生じない。
【0056】上記実施形態1では、第1層の反射防止膜としての窒化タンタル膜102を、タンタルターゲットを用いてアルゴン及び窒素ガスの混合雰囲気中で反応性スパッタリングを行うことにより成膜したが、窒化タンタルターゲットを用いてアルゴンガスのみの雰囲気中でスパッタリングを行うこともできる。以下にその手順について説明する。
【0057】(実施形態2)実施形態1のタンタルターゲットに替えて、窒素濃度50atom%以上の窒化タンタルターゲットを使用し、スパッタリング装置の真空槽内を3.0×10-4Pa以下まで排気した後、アルゴンガス100sccmを導入して圧力を0.4Pa程度になるように排気バランスを調整し、基板加熱を100℃とした雰囲気中において、ターゲット表面でのパワー密度1W/cm2〜2W/cm2で70秒〜80秒間のスパッタリングを行うことにより、第1層の窒化タンタル膜102を成膜する。
【0058】次に、アルゴンガスを100sccm導入して、圧力が0.4Pa程度の雰囲気中において、パワー密度5.7W/cm2〜6.0W/cm2で40秒間のスパッタリングを行うことにより、第2層のタンタル膜103を成膜する。
【0059】この実施形態2においても、実施形態1と同様に、環境上で問題のある金属クロムを使用することなく、充分な遮光性と低反射性を有し、耐食性と耐薬品性にも優れたブラックマトリクス用の低反射膜を備えた低反射薄膜基板を作製することができる。
【0060】さらに、この実施形態2においても、酸化タンタルを成膜する場合のようにDC電源を必要としないので、設備コストを抑制することができる。
【0061】上記実施形態1及び実施形態2では、第2層の遮光膜としてタンタル膜103を形成したが、上述したように、第1層の窒化タンタル膜102の影響でアルファ相化してしまうため、充分な遮光性を得るために約200nm程度の膜厚が必要であった。
【0062】そこで、以下の実施形態3では、第2層の遮光膜として膜中窒素濃度が20atom%〜40atom%の窒化タンタル膜を用いた例について説明する。
【0063】(実施形態3)この実施形態3において、第2層の遮光膜である窒化タンタル膜103の成膜は、実施形態1の第1層の反射防止膜である窒化タンタル膜102と同様に、タンタルターゲットを用いてアルゴンガス及び窒素ガス混合雰囲気中での反応性スパッタリングにより行ってもよく、または実施形態2の窒化タンタル膜102と同様に、窒化タンタルターゲットを用いてアルゴンガスのみの雰囲気中でスパッタリングを行ってもよい。
【0064】実施形態1と同様にして反応性スパッタリングを行う場合には、実施形態1または実施形態2と同様にして透明基板101上に第1層の窒化タンタル膜102を成膜した後、窒素ガス40sccm、アルゴンガス100sccmを導入して圧力を0.4Pa程度になるように排気バランスを調整し、基板加熱を100℃とした雰囲気中において、ターゲット表面でのパワー密度5W/cm2〜7W/cm2で20秒〜30秒間のスパッタリングを行うことにより、第2層の窒化タンタル膜103を150nm成膜する。
【0065】実施形態2と同様にしてスパッタリングを行う場合には、実施形態1または実施形態2と同様にして透明基板101上に第1層の窒化タンタル膜102を成膜した後、窒素濃度20atom%〜40atom%の窒化タンタルターゲットを用いてアルゴンガス100sccmを導入して圧力を0.4Pa程度になるように排気バランスを調整し、基板加熱を100℃とした雰囲気中において、ターゲット表面でのパワー密度5W/cm2〜7W/cm2で40秒〜50秒間のスパッタリングを行うことにより、第2層の窒化タンタル膜103を150nm成膜する。
【0066】このようにして得られる窒化タンタル膜103は、アルファ相化しておらず、アルファ相化したタンタルよりも光学濃度が大きく、約150nm程度の膜厚でも透過率0.5%と充分な遮光性を実現することができた。この窒化タンタル膜103はアルファ相化していないが、比抵抗値は180μmΩ・cmと低く、絶縁膜である酸化タンタルを用いた場合のようにDC電源を用いなくても成膜することができた。
【0067】さらに、この低反射膜基板においても、実施形態1及び実施形態2と同様に、遮光膜としての窒化タンタル膜103の透明基板101側に、反射防止膜としての窒化タンタル膜102が設けられているので、充分な低反射特性を実現することができた。
【0068】このように、本実施形態3においても、実施形態1及び実施形態2と同様に、環境上で問題のある金属クロムを使用することなく、充分な遮光性と低反射性を有するブラックマトリクス用の低反射膜を備えた低反射薄膜基板を作製することができる。また、窒化タンタル/窒化タンタルはモリブデン、鉄、ニッケル等に比べて優れた耐食性と耐薬品性を有するので、信頼性を向上させることができる。さらに、酸化タンタルを用いた場合のようにDC電源を必要としないので、設備コストを抑制することができ、焼結体ターゲットを用いなくても成膜できるので膜欠損等の不良も生じない。
【0069】さらに、本実施形態3による場合には、第2層の遮光膜として窒化タンタル膜を用いることにより、実施形態1及び実施形態2に比べて第2層の膜厚を薄くしても充分な遮光性を得ることができるので、材料コストの低減や膜応力による基板反りの緩和等を図ることができる。
【0070】次に、上記実施形態1〜実施形態3のブラックマトリクス用低反射薄膜基板を用いて作製される液晶ディスプレイ用カラーフィルタの実施形態について説明する。
【0071】(実施形態4)図9は本実施形態の液晶ディスプレイの断面図であり、図4はそのカラーフィルタの断面図である。
【0072】この液晶ディスプレイは、ガラス等からなる透明基板901上に画素電極902及びスイッチング素子としてのTFT(図示せず)を有するアクティブマトリクス基板903と、カラーフィルタ基板908とが液晶層904を間に挟んで対向配置され、この液晶パネルの表示側及び光源側に偏光板909、909が配置されている。
【0073】このカラーフィルタ基板は、図4に示すように、ガラス等からなる透明基板907上に各画素に対応して赤着色層405、緑着色層406、青着色層407の各着色層905が設けられている。そして、各着色層(画素)905の間には、ブラックマトリクス906として窒化タンタルからなる第1層膜(反射防止膜)402と、タンタルまたは窒化タンタルからなる第2層膜(遮光膜)403とが形成されている。着色層405、406、407の上には必要に応じて透明保護膜(図示せず)が設けられ、さらにその上に液晶駆動用の対向電極として透明電極(図示せず)が設けられている。
【0074】このカラーフィルタの製造においては、まず、ガラス等からなる透明基板907上に、実施形態1〜実施形態3と同様にして窒化タンタルからなる反射防止膜402と、タンタルまたは窒化タンタルからなる遮光膜403とを形成してブラックマトリクス用の低反射膜備えた低反射薄膜基板を作製する。
【0075】次に、この反射防止膜402及び遮光膜403にフォトリソグラフィ工程及びドライエッチング工程を行ってブラックマトリクス906をパターン形成する。
【0076】次に、赤着色層405、緑着色層406、青着色層407を積層して各画素に対応してパターン形成する。
【0077】その上に必要に応じて透明保護膜(図示せず)を形成し、さらにその上にスパッタリングによりITOを成膜して液晶駆動用の対向電極(図示せず)を形成する。
【0078】これにより、充分な遮光性及び低反射性を有する2層構造の膜からなるブラックマトリクスを備えたカラーフィルタ基板が得られる。
【0079】このカラーフィルタ基板とアクティブマトリクス基板とを貼り合わせ、両基板の間隙に液晶を注入して液晶層904とし、両基板の外側に偏光板909、909を配置して本実施形態の液晶ディスプレイが完成する。
【0080】このように、通常の液晶ディスプレイにおいては、カラーフィルタ基板側にも偏光板を設ける構成が一般的であるため、実際の表示上で問題となる反射率は、この偏光板と組み合わせた場合の反射率である。
【0081】そこで、本実施形態のカラーフィルタ基板について、偏光板と組み合わせた場合の反射特性を図10(a)に△で示す。ここでは、図10(b)に示すように、ガラス基板907上にタンタル膜403/窒化タンタル膜402からなるブラックマトリクス906を形成したカラーフィルタ基板に対して、一般に使用されている表面反射光を散乱させるアンチグレア処理を施したタイプの偏光板を配置して、偏光板909側から光100を照射した。この図の反射率は、ガラス基板の反射率及び偏光板の反射率を含んでいる。
【0082】さらに、図10(c)に示すように、ガラス基板907上にクロム膜502/酸化クロム膜503からなるブラックマトリクス1000を備えた従来のカラーフィルタ基板を、偏光板909と組み合わせた場合の反射特性についても、図10(a)に◆で示す。
【0083】なお、視感度補正したガラス基板側からの平均反射率は、本実施形態では0.4%であり、図10(b)に示した構造では1.2%であった。
【0084】これらの結果から、本実施形態のカラーフィルタ基板とクロム/酸化クロムからなる従来の低反射薄膜を備えたカラーフィルタ基板とは、偏光板と組み合わせた場合の反射特性を比べると、実用上ほとんど差がなく、問題無く充分な低反射特性が得られていることがわかる。
【0085】なお、本発明において、窒化タンタルからなる第1層と、タンタルまたは窒化タンタルからなる第2層とが形成される透明基板としては、プラスチックフィルム基板等を用いてもよいが、ブラックマトリクスの反射率を低くするためには屈折率n=1.3〜2.0のガラス基板等を用いるのが好ましい。
【0086】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明による場合には、ブラックマトリクス用の低反射薄膜として環境上で問題のある金属クロムを使用することなく、充分な遮光性と低反射性が得られる。よって、このブラックマトリクスを備えた液晶ディスプレイ用カラーフィルタによれば、視認性を向上させると共に表示品位を向上させることができる。また、モリブデン、鉄、ニッケル等を用いた従来技術に比べて優れた耐食性と耐薬品性が得られるので、信頼性の高い液晶ディスプレイを実現することができる。さらに、酸化タンタルを用いた従来技術に比べて設備コストの抑制及び膜欠損等の製品不良の低減が可能であるので、液晶ディスプレイの製造コストの低廉化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【出願日】 平成10年7月13日(1998.7.13)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
【公開番号】 特開2000−29006(P2000−29006A)
【公開日】 平成12年1月28日(2000.1.28)
【出願番号】 特願平10−197851