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【発明の名称】 電子写真装置
【発明者】 【氏名】平岡 敬子
【氏名】佐藤 祐弘
【氏名】川原 正隆
【氏名】▲高▼谷 格
【課題】サイドローブによる画像欠陥が生じず、高精細な画像が得られる電子写真装置を提供する。

【解決手段】支持体上に感光層を有する電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段を有する電子写真装置において、該露光手段より出射される光が主スポットの他にサイドローブを持つ電子写真装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に感光層を有する電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段を有する電子写真装置において、該露光手段より出射される光が主スポットの他にサイドローブを持つことを特徴とする電子写真装置。
【請求項2】 露光手段より出射される光のビームプロファイルが、ベッセル関数型のベッセルビームである請求項1記載の電子写真装置。
【請求項3】 電子写真感光体の感光層が単層であり、該感光層が結着樹脂中に光導電性微粒子を分散させたものである請求項1または2に記載の電子写真装置。
【請求項4】 電子写真感光体が、露光手段より出射される光の主スポットの光量に対して感度を有し、サイドローブの光量に対して感度を有しないデジタル感光体である請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子写真装置に関するものである。このような電子写真装置としては、白黒、モノカラーあるいはフルカラーの電子写真複写機、プリンター、その他種々の記録機器などがある。
【0002】
【従来の技術】電子写真装置の高画質化に伴って、近年その露光系にはレーザービームが主流に用いられている。通常、レーザービームは図4に示すように、ビームの進行方向に対して垂直方向の断面における振幅分布がガウス型をしているため、ガウスビームとも呼ばれている。近年、文字画像だけでなく自然画像の出力用途が高まり、ますますの高解像や高画質が求められている。このためには、電子写真装置の露光スポット系を小さくしたり、露光ビームの点灯時間(パルス幅)を変調し露光面積を変化させたりすることで階調表現を行う方式(以下PWM方式)などが知られている。
【0003】従来の技術の光偏向装置を図5を用いて説明する。入力された画像信号10に基づきレーザー発光信号発生器11に従って半導体レーザー等の光源12から出射したガウスビームはコリメーター−集光レンズ系13を介して平行光束に変換され、矢印a方向に回転するレーザー偏向装置の回転多面鏡14に入射され、偏向出射された後、f−θレンズ系15により回転ドラム16上にスポット状に照射される。
【0004】しかし、通常のレンズを用いた光学系においては、ビーム径を極端に小さくすることは困難である。なぜなら、ガウスビームの径をレンズ系により絞っていくと、ビームの焦点深度が浅くなってしまうことと、通常露光光源として用いられる半導体レーザーは焦点深度の中心部分(ビームウエスト)が温度により位置変化することのため、感光体上に露光したガウスビームが焦点ずれを起こし画像がボケる可能性が存在するためである。
【0005】これらの理由により、露光装置のビーム径は一般的に波長670nmで30μm程度が実使用上の限界であると考えられている。
【0006】一方、近年ベッセルビームと呼ばれるビームの適用が提案されている。ベッセルビームとは光の超解像現象を利用したもので、図6(a)に示すようにビームの進行方向に対して垂直方向の光の強度分布が第1種0次ベッセル関数の2乗に比例するものである。
【0007】上記の超解像現象とは光の干渉を利用したビーム形成方法であり、光軸上に光を集光や交差させ光の干渉領域を作り出し、ビームスポットを得る方法である。
【0008】このように形成されるビームスポットは、ビーム径を極めて細くすることができると同時に焦点深度を深くすることができる特徴を持つ。ビーム径を20μmに絞った例では、ガウスビームでは焦点深度が約0.3mmなのに対し、ベッセルビームでは焦点深度が約10mmになることが知られている。このように、ガウスビームでは温度変化などによる焦点位置のずれを考えると20μmのスポット径を実現することは困難であるが、ベッセルビームではこのような細いビームの実現が可能となる。
【0009】しかし、図6(a)に示すようにベッセルビームでは光軸の中心主極大20に対し同心円状に副極大(サイドローブ)21が発生する。サイドローブの強度は、1次のもので主極大の15%程度、2次のものでも5%程度あるため、光走査書き込み系においてはいかにこのサイドローブを取り除くかが大きな課題となっていた。
【0010】例えば、光学フィルターを用いてサイドローブの強度を下げる、ピンホールを設けてサイドローブを切る、複数のベッセルビームを重ね合わせてサイドローブの割合を小さくするなどの手段が用いられていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記ベッセルビーム露光装置において、サイドローブを完全に消す光学フィルターの作成は困難であり、このようなフィルターを作成できたとしても取り付け精度の向上が必要となり露光装置のコストが高くなってしまう。また、ピンホールを設けるとそのエッジにより更に回折像が現れる、という問題点がありどれも本質的な解決法ではなかった。
【0012】本発明の目的は、サイドローブによる画像欠陥が生じず、高精細な画像が得られる電子写真装置を提供することにある。
【0013】また、本発明の目的は、ベッセルビーム露光装置を備えた電子写真装置により、光学フィルターなしで焦点深度が深くかつスポット径が小さいベッセルビームのサイドローブを切ることができる電子写真装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、支持体上に感光層を有する電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段を有する電子写真装置において、該露光手段より出射される光が主スポットの他にサイドローブを持つことを特徴とする電子写真装置である。
【0015】また、本発明は、露光手段より出射される光のビームプロファイルが、ベッセル関数型のベッセルビームである上記電子写真装置である。
【0016】また、本発明は、電子写真感光体の感光層が単層であり、該感光層が結着樹脂中に光導電性微粒子を分散させたものである上記電子写真装置である。
【0017】また、本発明は、電子写真感光体が露光手段より出射される光の主スポットの光量に対して感度を有し、サイドローブの光量に対して感度を有しないデジタル感光体である上記電子写真装置である。電子写真感光体が、主スポット(中心主極大)に対してのみ感度を有するため、言い換えれば高γ値を持つため、精細な画像書き込みが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明に用いるベッセルビームについて説明する。
【0019】Durnin;J.Opt.soc.Am.A,Vol.4,No.4,P651(1987)にあるように、理論的には第1種0次ベッセル関数の2乗に比例する強度分布I0 (r)を持つベッセルビームを形成することが可能であり、その強度分布は次のように表される。
【0020】I0 (r)=A・J02(αr)
ここで、A;定数、α;定数、r;光軸からの距離である。
【0021】この関数で表されるベッセルビームの進行方向に対して垂直方向での強度分布を図6(a)に示す。このようにベッセルビームは明るい中心主極大スポットのまわりに同心円上に明暗の縞が現れ、この同心円上の縞は理論的には無限遠まで存在するものである。実際の装置により形成されるベッセルビームの強度分布I1 (r)はI02にガウス関数を掛け合わせたものであることが知られている。つまり、I1 (r)=A・J02(αr)・exp[−2(r/W0 2
である。これを図6(b)に示す。
【0022】また、ベッセルビームのビーム径の大きさDは次のように表される。
【0023】D=0.82λ/NAここで、λ;光の波長、NA;光学系の開口数である。
【0024】次に、ベッセルビームを発生させるための露光装置について説明する。
【0025】図7(a)はリング状スリット開口31とレンズ32によりベッセルビームを発生させるものである。コリメートされたレーザー光30がスリット開口31を経てレンズ32により網点部分に集光される。そして、レンズ32の焦点位置33において第1種0次ベッセル関数の2乗に比例したスポットを有するベッセルビームを発生する。
【0026】図7(b)はアキシコンプリズム35を用いてベッセルビームを発生させるものである。コリメートされたレーザー光34が網点部分に集光され、焦平面36上にベッセルビームを形成する。
【0027】図示していないが、その他にも位相フィルターを用いる方法や、レーザー共振器内にスリット−レンズ系を組み込み発振させる方法、などベッセルビームを発生する手段はいくつか知られている。
【0028】次に、本発明に用いる電子写真感光体の構成を、支持体上に単層の感光層を有する電子写真感光体を例にして説明する。
【0029】感光層は結着樹脂中に光導電性微粒子を分散したものであり、光導電性微粒子として好ましいものは、キャリアが正孔である場合にはp型半導体に電子捕獲性化合物をドープしたものが用いられ、キャリアが電子である場合にはn型半導体に正孔捕獲性化合物をドープしたものが用いられる。特に好ましいp型半導体としてはフタロシアニン化合物があり、具体的には銅フタロシアニン、オキシチタニウムフタロシアニン及びハイドロキシガリウムフタロシアニン等があり、ドープする電子捕獲性化合物として前述のフタロシアニンのニトロ化合物やハロゲン化物等が用いられる。また、特に好ましいn型半導体としてジスアゾ化合物、トリスアゾ化合物、酸化亜鉛及びCdS等があり、ドープする正孔捕獲性化合物としてトリフェニルアミン系化合物等が用いられる。
【0030】また、必要に応じて感光層に潤滑剤、酸化防止剤やレベリング剤等の公知の添加物を含有することもできる。
【0031】本発明おいて結着樹脂として使用可能なものとしてはスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン及びトリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】本発明において感光層の厚さは5〜100μmであることが好ましく、特には7〜35μmであることが好ましい。
【0033】支持体としては導電性を有するものであればよく、アルミニウム及びステンレスなどの金属、あるいは導電層を設けた金属、プラスチック及び紙などが挙げられ、形状としては円筒状またはフィルム状等が挙げられる。
【0034】本発明において下引き層は1層のみで構成されているものでも、複数の層で構成されていてもよい。下引き層の膜厚は複数ある場合でも20μm以下であることが好ましく、特には0.1〜5.0μmであることが好ましい。
【0035】下引き層はガゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン及びN−アルコキシメチル化ナイロン等)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、フェノール樹脂及び酸化アルミニウム等によって形成することができる。
【0036】また、本発明に用いる感光体には、感光体の耐久性の向上のために感光層の上に表面保護層を設けることも可能である。
【0037】電子写真感光体の作成は、前記材料からなる感光層の塗工液を、浸漬法、ブレード塗工法及びスプレー塗工法等により導電性支持体上に塗工し、乾燥させることによって感光層を形成すればよい。
【0038】
【実施例】以下、実施例に従って本発明の電子写真装置について説明する。
【0039】(実施例1)本発明に用いた単層感光体の形成に用いる塗工液の具体的調合例を示す。
【0040】30φ、260mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、下引き層としてアルコール可溶性共重合ナイロン(アミランCM−80、東レ(株)製)5部(重量部、以下同様)をメタノール95部に溶解した溶液を浸漬法で塗布し、80℃で10分間乾燥して、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。
【0041】次に、X型無金属フタロシアニン顔料1部に対してポリエステル−メラミン混合熱硬化樹脂(P645/ユーバン20S、三井化学(株)製)固形分4部とシクロヘキサノン20部を加えた溶液をペイントシェーカーにより分散したものを、上記のアルミニウムシリンダーに浸漬法で塗布し、150℃で60分間熱硬化して、膜厚が15μmの感光層を形成し、感光体を得た。
【0042】この感光体の露光量−ドラム表面電位曲線を測定したところ図2(a)に示すように、低露光量領域ではドラム表面電位が余り落ちないインダクション領域が存在し、露光量が2.4μJ/cm2 以上になるとドラム表面電位が急激に低下するインダクション感光体であった。
【0043】次に、電子写真装置について図1に従って説明する。
【0044】コロナ帯電器3により感光体1の外周面がほぼ+500Vに帯電され、この感光体に対してベッセルビーム露光装置2により画像信号に対応したレーザービームが照射され感光体ドラム1上に潜像が形成される。その潜像は現像装置4によりトナー画像として現像される。一方、不図示の給紙部から記録材としての転写材が給送されて転写手段5によりトナー像が転写される。トナー画像の転写を受けた転写材は感光体1の面から分離されて熱定着方式等の定着装置6へ導入されてトナー画像の定着を受け、画像形成物(プリントやコピー)として装置外へ排出される。感光体上に存在する転写残りトナーはクリーニング装置7によりかき取られ感光体のクリーニングがなされ、前露光手段8により感光体の電気的クリーニングがなされる。
【0045】露光装置2は波長780nmの半導体レーザーをアキシコンプリズムによりスポット系25μmになるように調整した。画素密度は600dpiとした。
【0046】このような露光装置を用いてデジタル感光体に書き込みを行った場合、ベッセルビーム露光装置より出射されるビームの強度分布は図2(b)に示すような形状をしている。一方、電子写真感光体の露光量−表面電位曲線は図2(a)に示す形状をしているため、ベッセルビームのサイドローブの光量に対して感光体は感度を持たず、ベッセルビームの主極大に対してのみ感光体が感度を持つことより、感光体上に形成される潜像形状は図2(c)に示すようになる。
【0047】このような電子写真装置により画像出力を行った。その結果、ハーフトーン画像においてもベッセルビームのサイドローブに起因するようなカブリは見られず非常に高精細な画像が得られた。
【0048】更に、1000枚の画像を連続出力したが、ベッセルビームのサイドローブに起因する画像欠陥は見られなかった。
【0049】(比較例1)実施例1と同じ電子写真装置に図3(a)に示すような光感度を持つアモルファスシリコン感光体を装着し、同様に画像の評価を行った。この感光体を用いて図3(b)の強度分布を持つベッセルビーム(実施例の図2(b)と同じ強度分布を持つ)で書き込みを行うと、感光体上での潜像形状は図3(c)のようになる。次に画像出力を行ったところ、低濃度画像ではベッセルビームのサイドローブの光量は極めて小さくなるためこれによるカブリなどの画像欠陥は見られなかったが、ハーフトーン画像においては隣接する画素のサイドローブ同士の光量が積算されてしまうため、得られた画像は非常にカブリの多いものとなってしまった。
【0050】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、カブリなどの画像欠陥が生じず、高精細な画像が得られる電子写真装置が可能となった。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成11年6月8日(1999.6.8)
【代理人】 【識別番号】100065385
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 穣平
【公開番号】 特開2000−347117(P2000−347117A)
【公開日】 平成12年12月15日(2000.12.15)
【出願番号】 特願平11−161113