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【発明の名称】 動的回折素子
【発明者】 【氏名】長田 英喜

【氏名】大利 祐一郎

【氏名】佐藤 彰

【氏名】高原 浩滋

【氏名】高間 正彰

【氏名】越智 圭三

【要約】 【課題】回折条件を大きく変化させることが可能な動的回折素子を提供する。

【解決手段】対向して配置された2枚の平板の間に磁性紛体を移動自在にに配し、電磁石によって磁束線が平板と略直交する磁界を生成する。磁性紛体は、断面が同心円となる磁束線に応じて複数の同心円の帯状に分布して、磁性紛体の間に複数の帯状の開口が形成される。開口を通過する電磁波は開口を出たときに他の開口を出た電磁波と干渉して回折する。磁束線の密度を変えることにより開口の間隔を変化させて電磁波の回折条件を変化させる。回折は開口の接線に対して垂直な方向に生じ、電磁波を収束または発散させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 対向して配置された2枚の平板と、前記2枚の平板の間に移動自在に配された磁性粉体と、磁束線が前記2枚の平板と略垂直に交差する磁界を生成する磁界生成手段とを備え、前記磁束線に応じて複数列の帯状に分布する前記磁性粉体によって電磁波を通過させる複数列の帯状の開口を形成して、前記2枚の平板を透過する電磁波を回折させるとともに、前記2枚の平板の間における前記磁束線の密度を変化させて前記複数列の帯状の開口の間隔を変化させることにより、電磁波の回折条件を変化させることを特徴とする動的回折素子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光、電波等の電磁波を回折させる回折素子に関し、より詳しくは、回折条件が可変の動的回折素子に関する。
【0002】
【従来の技術】光、電波等の電磁波を反射または透過させるとともに、反射または透過に際して電磁波を干渉させて、回折を起こさせる回折素子が知られている。回折素子は、電磁波の進行方向を変化させる手段として、あるいは、特定の方向に特定の波長を取り出す手段として利用されている。また、回折素子は、部位ごとに回折条件が異なるように設定することで、レンズや曲面ミラーと同様に、電磁波を収束させたり発散させたりする手段としても利用することができる。
【0003】近年では、回折条件が可変の動的回折素子が提案されている。例えば、光学の分野では、透明な基板の表面に回折格子を形成し、印加電圧に応じて屈折率が変化する媒質を格子面に密着させた動的回折格子が開発されている。この動的回折格子は透過する光を回折させるもので、回折条件は基板と媒質の屈折率の差によって変化する。媒質の屈折率が基板の屈折率と同じになるように印加電圧を設定すると、この動的回折格子は光に対して単なる平板として作用し、印加電圧を変化させて媒質の屈折率を基板の屈折率と違えると、屈折率の差に応じた量だけ光を回折させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、動的回折素子を用いると、電磁波の進行方向の変化角度、特定方向に取り出す波長、あるいは収束位置を、外部からの制御によって容易に変えることが可能になる。ところが、従来の動的回折素子は、回折条件を変化させ得る範囲が狭く、電磁波の進行方向等を大きく変化させることはできなかった。これは、従来の動的回折素子では、例えば上記の媒質の屈折率のように、構成要素の物性の変化によって回折条件を変化させているからであり、回折条件を規定する物性にはあまり大きく変化させ得るものがないことによる。
【0005】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、回折条件を大きく変化させることが可能な動的回折素子を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、対向して配置された2枚の平板と、2枚の平板の間に移動自在に配された磁性粉体と、磁束線が2枚の平板と略垂直に交差する磁界を生成する磁界生成手段とで動的回折素子を構成し、磁束線に応じて複数列の帯状に分布する磁性粉体によって電磁波を通過させる複数列の帯状の開口を形成して、2枚の平板を透過する電磁波を回折させるとともに、2枚の平板の間における磁束線の密度を変化させて複数列の帯状の開口の間隔を変化させることにより、電磁波の回折条件を変化させるようにする。
【0007】2枚の平板の間に移動自在に配された磁性粉体は、磁界のない状態では無秩序に分布するが、磁界内では磁束線に応じて分布する。磁界生成手段が生成する磁界の磁束線は2枚の平板に対して略垂直であり、平板に沿う方向の磁束線の断面は接線方向が平行な複数列の帯状となる。磁性粉体の分布も複数列の帯状となり、それらの間に複数列の帯状の開口が形成されて、これらの開口は電磁波を通過させる経路となる。
【0008】開口を通過する電磁波は開口を出た時に、周囲の開口を出た電磁波と干渉し合って回折を起こす。回折は帯状の開口の接線に対して垂直な方向に生じる。回折次数と回折角は電磁波の波長と開口の間隔によって定まり、開口の間隔は磁束線の密度によって定まる。したがって、2枚の平板の間における磁束線の密度を変化させることで、回折条件を変化させることができる。磁束線の密度は大きく変えることができるから、回折条件を大きく変化させ得る動的回折素子となる。また、磁束線の密度の設定次第で、光の領域の波長を回折させることも、電波の領域の波長を回折させることも可能である。
【0009】磁束線の密度は、磁界生成手段が生成する磁界の強度を変えることによって変化させてもよいし、磁界と2枚の平板の相対位置を変えることによって変化させてもよい。
【0010】2枚の平板の間における磁束線の断面を円形にして複数列の帯状の開口を同心円にすると、回折した電磁波を収束または発散させることができる。一方、磁束線の断面を平行な直線に近づけて複数列の帯状の開口を略平行直線にすると、電磁波を任意の方向に回折させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態の動的回折素子1の構成および動作の原理を図1に示す。この動的回折素子1は、向かい合う面が平行になるように対向して配置された2枚の平板11、12、平板11、12の間に自由に動き得るように配された磁性紛体14、磁界を生成する電磁石15、および電磁石15に電力を供給するとともに生成する磁界の強度を変化させる制御部16より成る。動的回折素子1は、電磁石15によって磁界を生成している状態で平板11、12の一方の側から他方の側に電磁波を透過させて、電磁波を回折させるものである。対象とする電磁波は光から電波まで様々である。
【0012】2枚の平板11、12は電磁波に対して透明な材料、例えば、ガラスや樹脂で作製されている。平板11、12の周縁部には、両者の間隔を規定するとともに、内部を封止して磁性紛体14の脱落を防止する封止部材13が設けられている。平板11、12は、電磁石15のN極とS極を結ぶ直線が中心を通り、かつ、その直線に対して垂直になるように、両極の中央に配置されている。したがって、電磁石15が生成する磁界の磁束線Lは、平板11、12に対して垂直になる。
【0013】磁性紛体14は磁性を有するとともに電磁波に対して不透明な材料で作製されている。磁性紛体14としては、例えば、鉄の微小な粉末を使用することができる。磁性紛体14の量は、自由に動き得るようにするために、平板11、12の間の容積の2/3程度以下に設定されている。
【0014】磁性紛体14は、電磁石15が磁界を生成している状態では、N極とS極を結ぶ多数の磁束線Lに従って規則的に分布する。平板11、12に沿う方向の磁束線Lの断面は同心円になるから、磁性紛体14の分布も多数の同心円の帯状となる。同心円に分布した磁性紛体14の間には、同じく同心円の多数の帯状の開口Aが形成され、これらの開口Aは電磁波を通過させる経路となる。すなわち、2板の平板11、12の間には、電磁波が通過し得る帯状の部位と通過し得ない帯状の部位が交互に形成される。電磁石15によって生成される磁界の磁束線Lが図1の状態のときの磁性紛体14と開口Aを図2に示す。
【0015】平板11、12の間に入射する電磁波には異なる開口Aを通過するものが生じ、異なる開口Aを通過した電磁波は開口Aを出た時に互いに干渉し合う。干渉した電磁波は位相が一致する方向のみに進行することになり、回折が生じる。
【0016】電磁石15が生成する磁界の強度が変化すると、磁束線Lの間隔も変化する。制御部16が電磁石15の磁界の強度を変化させて、磁束線Lをより密にした状態での磁性紛体14および開口Aを図3に示す。磁束線Lが密になると、帯状の磁性紛体14の幅が狭くなるとともに、それらの間隔も狭くなって、開口Aの間隔が狭くなる。
【0017】電磁波の回折次数や回折角は、その波長と開口Aの間隔によって定まるため、開口Aの間隔を変えることによって変化する。このように、動的回折素子1では、磁性紛体14によって形成される開口Aの間隔を変化させることによって、電磁波の回折条件を変化させる。磁束線Lの間隔は大きく変えることができるから、動的回折素子1の回折条件の変化幅は大きい。透過する電磁波を何次の回折波として取り出すか、あるいはその回折波の回折角を何度にするかは、電磁波の波長を考慮して磁束線Lの密度を設定することで、自由に定めることができる。
【0018】なお、ここでは、電磁石15が生成する磁界の強度を変化させることにより平板11、12の間の磁束線Lの密度を変化させるようにしているが、磁束線Lの密度が磁極に近いほど高くなることを利用して、平板11、12と磁界の相対位置を変化させることによって、平板11、12の間の磁束線Lの密度を変化させるようにしてもよい。例えば、平板11、12を、図1の矢印X方向に移動させて、電磁石15のN極またはS極に近づける。あるいは逆に、電磁石15のN極とS極の双方または一方を矢印X方向に移動させる。このようにすると、電磁石15に代えて強度不変の永久磁石を使用することもできる。
【0019】電磁波の回折の方向は、帯状の開口Aの接線に対して垂直な方向、すなわち同心円の半径方向となる。したがって、動的回折素子1は、回折により電磁波を収束または発散させることが可能であり、レンズと同様に機能する。しかも、回折角は可変であるから、パワー可変のレンズとなる。
【0020】電磁石15を2つ以上並べて配置して磁束線の断面が略平行直線になる部位を磁界中に生成し、その部位に平板11、12を配置すれば、帯状の開口Aを略平行直線とすることもできる。そのような構成では、収束や発散を伴うことなく、電磁波を回折させることができる。すなわち、電磁波を任意の方向に回折、進行させることが可能である。
【0021】また、電磁石15を1つ使用する場合でも、平板11、12を図1の矢印Y方向に移動させて磁束線Lの周辺部に配置すれば、帯状の開口Aは平行な直線に近づく。このときの磁性紛体14と開口Aを図4に示す。開口Aが直線に近づくことにより、収束や発散がほとんど生じなくなって、電磁波を任意の方向に進行させることができる。
【0022】
【発明の効果】本発明の動的回折素子によるときは、開口を出る際の干渉によって電磁波を回折させるとともに、開口の間隔を規定する磁性粉体の位置を変化させることで回折を変化させるため、構成要素の物性を変化させる従来の素子に比べて、電磁波の回折条件を大きく変えることができる。しかも、開口の間隔の設定次第で、光のように波長の短いものから電波のように波長の長いものまで、幅広い電磁波の回折に利用することが可能である。また、構成がきわめて簡素であり、製造が容易である。
【出願人】 【識別番号】000006079
【氏名又は名称】ミノルタ株式会社
【出願日】 平成11年1月26日(1999.1.26)
【代理人】 【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
【公開番号】 特開2000−214399(P2000−214399A)
【公開日】 平成12年8月4日(2000.8.4)
【出願番号】 特願平11−16528