| 【発明の名称】 |
追尾装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】亀田 洋志
【氏名】辻道 信吾
【氏名】小菅 義夫
|
| 【要約】 |
【課題】追尾ゲート内の観測値ベクトルを重み付け処理して平滑値を得る従来の追尾装置では、目標がブースタ部分を切り離した場合に目標への追尾を外す場合がある。そこで、ゲート内の観測値ベクトルの間隔が所定値以上の場合に、高度の高い観測値ベクトルのみを追尾処理の対象として追尾失敗を防ぐ。
【解決手段】観測値ベクトルCk,jに基づいて追尾目標の分離判定を行なう分離判定手段5と、分離判定手段5の結果により追尾フィルタのパラメータを制御するパラメータ制御手段6と、平滑値ベクトルBk(+)と平滑誤差共分散行列Pk(+)を出力する平滑手段2と、追尾目標の予測値ベクトルBk(-)と予測誤差共分散行列Pk(-)を出力する予測手段3と、追尾ゲートを出力するゲート算出手段4とを設ける。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 追尾ゲート内に観測される観測値ベクトルに基づいて目標追尾を行う追尾装置であって、前記観測値ベクトルを入力データとして、追尾目標の分離判定を行なう分離判定手段と、前記分離判定手段によって、追尾目標の分離が判定されない場合は、前記追尾ゲート内に観測される複数の観測値ベクトルの全てを有効なデータとして目標の追尾処理を行い、一方、前記分離判定手段によって、追尾目標の分離が判定された場合は、前記追尾ゲート内に観測される複数の観測値ベクトルの一部のみを有効なデータとして目標の追尾処理を行う目標追尾手段と、を備えることを特徴とする追尾装置。 【請求項2】 前記分離判定手段は、前記追尾ゲート内に、両者の間隔が所定値を越える複数の観測値ベクトルが観測された場合に追尾目標の分離を判定することを特徴とする請求項1記載の追尾装置。 【請求項3】 前記目標追尾手段は、過去のデータに基づいて、追尾目標の予測位置を表す予測値ベクトルを求める予測手段を備え、前記分離判定手段は、前記追尾ゲート内に、前記予測ベクトルとの間隔が所定値を越える観測値ベクトルが観測された場合に追尾目標の分離を判定することを特徴とする請求項1記載の追尾装置。 【請求項4】 前記目標追尾手段は、前記分離判定手段によって追尾目標の分離が判定された場合に、前記追尾ゲート内に観測される観測値ベクトルのうち、最も高度の高い位置に観測されているベクトルを有効なデータとして目標の追尾処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の追尾装置。 【請求項5】 前記目標追尾手段は、前記分離判定手段によって追尾目標の分離が判定された場合に、単一の観測値ベクトルを捕らえて追尾処理を行ううえで好適な状態が実現されるように、追尾処理のパラメータを制御するパラメータ制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の追尾装置。 【請求項6】 前記分離判定手段は、追尾目標の分離を判定するための条件が、1を越える所定のサンプリング回数連続して成立した場合に、追尾目標の分離を判定することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の追尾装置。 【請求項7】 前記目標追尾手段は、追尾処理に用いられる運動モデルと状態変数ベクトルとを、追尾目標の飛翔高度に応じて切り替えるフィルタ切り替え手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の追尾装置。 【請求項8】 前記目標追尾手段は、所定の飛翔高度を想定した運動モデルと状態変数ベクトルとを用いて目標の予測位置を表す予測値ベクトルを算出する予測手段と、所定の飛翔高度を想定した運動モデルと状態変数ベクトルとを用いて目標の現在位置を表す平滑値ベクトルを算出する平滑手段とを備え、前記予測手段および前記平滑手段は、複数の飛翔高度に対応して設けられており、前記目標追尾手段は、更に、前記複数の予測手段で算出される複数の予測値ベクトルを統合する予測値統合手段と、前記複数の平滑手段で算出される複数の平滑値ベクトルを統合する平滑値統合手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の追尾装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、レーダセンサを用いて目標を追尾する追尾装置に係り、特に、フェーズドアレーレーダのように電子的にビームを走査するものではなく、機械回転式のレーダセンサを用いる追尾装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、追尾目標の位置情報からなる観測値ベクトルを入力データとして、目標の運動諸元を推定する追尾装置が知られている。図13は、Y. Bar-Shalom and T. E. Fortman, "Tracking and Data Association" Academic Press, New York, 1998に示された追尾装置の構成を示すブロック図である。まず、図13を用いて、従来の追尾装置の構成を説明する。説明のためサンプリング時刻tkにおいて観測系で得られる観測値ベクトルをCk,j(j=1,2,…,mk:mkは観測されたデータ数)、推定の対象となる追尾目標の状態変数ベクトルをBkとおく。 【0003】従来の追尾装置は、観測値ベクトルと、既に追尾している目標(既追尾目標)との相関をとる相関手段10と、追尾目標の平滑値ベクトルと平滑誤差共分散行列を出力する平滑手段20と、追尾目標の予測値ベクトルと予測誤差共分散行列を出力する予測手段30と、次のサンプリング時に観測値ベクトルが得られる可能性の高い領域(以下、「追尾ゲート}と称す)を推定するゲート算出手段40により構成される。 【0004】図13に示す如く、相関手段10は、ゲート算出手段40によって設定された追尾ゲート内についてのレーダの探知データ、すなわち、観測値ベクトルCk,j(j=1,2,・・,mk)を相関処理の対象とする。この観測値ベクトルは、例えば、目標の重心の位置を3次元的に表す座標情報などから構成される。 【0005】相関手段10は、ゲート算出手段40によって設定された追尾ゲート内の観測値ベクトルCk,jが、追尾目標に起因する観測データである可能性を考え、その確率βk,jを算出する。以下、その確率βk,jを「信頼度」と呼ぶ。例えばβk,1は、追尾ゲート内の観測値ベクトルCk,1が追尾目標に起因する観測値ベクトルである信頼度である。相関手段10は、更に、予測手段30の出力である予測値ベクトルBk(-)と観測値ベクトルCk,jとの誤差を表す誤差信号νk,jを演算する。そして、相関手段10は、個々の誤差信信号νk,jに信頼度βk,jに基づく重み付けを施した後、それらを統合して統合誤差信号νkを算出する。上述した「βk,j」、「νk,j」、「νk」が相関手段10から平滑手段20への出力となる。 【0006】平滑手段20には、相関手段10から、上記の如く「βk,j」、「νk,j」、「νk」が入力されると共に、予測手段30から、その出力である予測値ベクトルBk(-)と、予測誤差共分散行列Pk(-)とが入力される。平滑手段20は、それらの入力に基づいて、目標の位置、速度などの運動諸元で構成される平滑値ベクトルBk(+)と平滑誤差共分散行列Pk(+)とを演算する。平滑手段20から出力されるBk(+)およびPk(+)は、遅延要素130によって単位時間遅延された後、予測手段30に供給される。 【0007】サンプリング時刻tkに対応する処理サイクルにおいて、予測手段30には、遅延要素130を介して、平滑手段20から、平滑値ベクトルBk-1(+)と平滑誤差共分散行列Pk-1(+)とが入力される。すなわち、予測手段30には、時刻tkにおいて、前回のサンプリング時刻tk-1に対応する処理サイクルで演算された平滑値ベクトルBk-1(+)および平滑誤差共分散行列Pk-1(+)が入力される。予測手段30は、それらの入力に基づいて、それらの入力に対して1サンプリング先の、すなわち、サンプリング時刻tkに対応する予測値ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)を出力する。 【0008】予測手段30で算出される予測ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)は、相関手段10に供給されると共に、ゲート算出手段40に供給される。ゲート算出手段40は、それらの入力Bk(-)およびPk(-)に基づいて、サンプリング時刻tkの時点で、追尾目標の観測値ベクトルが得られると推定される追尾ゲートを算出する。 【0009】次に、従来の追尾装置の演算処理に用いられる数式について説明する。尚、以下に示す数式において、ベクトルを表す式に付加される添字Tは、そのベクトルが転置ベクトルであることを表す記号である。 【0010】従来の追尾装置の演算処理には、追尾目標の位置および速度からなる状態変数ベクトルBk、および、追尾目標の位置情報のみで構成される観測値ベクトルCkが用いられる。BkおよびCkは、それぞれ次式の如く表される。 Bk=[xk,yk,zk,vxk,vyk,vzk]T (1) Ck=[xk0,yk0,zk0]T (2) 【0011】式(1)において、xk、yk、zkは、サンプリング時刻tkにおける追尾目標の位置座標を表す真値である。また、vxk,vyk,vzkは、同時刻における目標の速度真値である。式(2)において、xk0、yk0、zk0は、レーダによる目標の観測位置の座標である。 【0012】従来の追尾装置の演算処理には、以下に示す運動モデルが用いられる。 Bk=Φk-1 Bk-1+ωk-1 (3) 式(3)に示すΦk-1およびωk-1は、状態推移行列および駆動雑音ベクトルである。状態推移行列は、運動モデルの設定に際して予め仮定される行列である。駆動雑音ベクトルωkは、次式(4)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Qk”の正規分布に属している。 E[ωk]=0, E[ωk ωkT]=Qk (4) 【0013】従来の追尾装置の演算処理には、以下に示す観測モデルが用いられる。 Ck=Hk Bk+vk (5) 式(5)に示すHkおよびvkは、それぞれ、観測行列および観測雑音ベクトルである。観測行列は、予め仮定される行列である。観測雑音ベクトルは、次式(6)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Rk”の正規分布に属している。尚、誤差共分散Rkは、観測状態に応じて適宜適当に設定される値である。 E[vk]=0, E[vk vkT]=Rk (6) 【0014】従来の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いる予測処理が行われる。 Bk(-)=Φk-1 Bk-1(+) (7) Pk(-)=Φk-1 Pk-1(+) Φk-1T+Qk-1 (8) 式(7)に示すBk(-)、および、式(8)に示すPk(-)は、それぞれ、サンプリング時刻tkの時点のデータに基づいて演算される予測値ベクトル、および、予測誤差共分散行列である。また、式(7)で用いられるBk-1(+)、および式(8)で用いられるPk-1(+)は、サンプリング時刻tk-1の時点のデータに基づいて、それぞれ後述の如く演算される平滑値ベクトル、および平滑誤差共分散行列である。 【0015】従来の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いるゲート算出処理が実行される。より具体的には、次式(9)の関係を満たす観測値ベクトルCk,j(j=1,2,・・,mk)を有効なデータとする処理が実行される。 (Ck,j−Ck(-)) Sk(-)-1 (Ck,j−Ck(-))T≦d (9) 尚、式(9)で用いられる“d”は、自由度3のχ2分布表より求められる値である。また、式(9)中、Ck(-)およびSk(-)は、次式により求められる観測ベクトルCkの予測値、および、その予測値Ck(-)に対応する誤差共分散行列である。 Ck(-)=Hk Bk(-) (10) Sk(-)=HkT Pk(-)Hk+Rk (11) 【0016】従来の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて仮説の信頼度βk,jが算出される。 【0017】 【数1】
【0018】尚、式(12)〜式(14)において、g(a;b,c)は、平均b、誤差共分散行列cの3変量正規分布のaにおける確率密度関数である。また、PDは、レーダの探知確率を、PGは、追尾目標が追尾ゲート内に存在する確率を、更に、PEは、不要信号の発生頻度を、それぞれ表している。 【0019】また、従来の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて、誤差信号νk,jおよび統合誤差信号νkが演算される。 【0020】 【数2】
【0021】更に、従来の追尾装置においては、平滑値ベクトルBk(+)および平滑誤差共分散行列Pk(+)を求めるために、以下に示す演算式を用いた平滑処理が実行される。 【0022】 【数3】
【0023】次に、図14に示すフローチャートを参照して、従来の追尾装置の動作を説明する。図14に示す処理は、サンプリング時刻毎に繰り返し実行される。それらの処理においては、先ずST10の処理が実行される。 【0024】ST10では、予測手段30において、予測値ベクトルBk(-)と予測誤差共分散行列Pk(-)とを演算する予測処理が行われる。本ステップST10において、予測手段30は、遅延要素130を介して供給される平滑手段20の出力、すなわち、平滑値ベクトルBk-1(+)、およびその誤差共分散行列Pk-1(+)を、式(7)および式(8)に代入することで、予測値ベクトルBk(-)と予測誤差共分散行列Pk(-)とを算出する。 【0025】ST20では、ゲート算出手段40において、追尾ゲート、すなわち、追尾目標の観測値ベクトルが得られると予測される領域が求められる。本ステップST20において、ゲート算出手段40は、予測手段30で得られた予測値ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)を用いて、式(9)〜式(11)に従って追尾ゲートを算出する。 【0026】ST30では、ゲート算出手段40によって算出された追尾ゲート内に存在する全ての観測値ベクトルCk,j(j=1,2,..,mk)が、有効なデータとして相関手段10に入力される。サンプリング時刻tkに対応する処理サイクルでは、これらの観測値ベクトルCk,jが相関処理の対象となる。 【0027】ST40では、相関手段10において、今回の処理サイクルにおいて検出された観測値ベクトルと、既追尾目標との相関を調査する相関処理が実行される。相関処理では、先ず、追尾ゲート内の観測値ベクトルのそれぞれが、既追尾目標に起因する観測値ベクトルである可能性が考慮される。より具体的には、式(12)〜式(14)に従って、個々の観測値ベクトルについて、そのベクトルが既追尾目標に起因するベクトルである確率βk,j、すなわち、そのベクトルの信頼度βk,jが算出される。相関処理では、次に、式(15)に従って、観測値ベクトルCk,jと予測値ベクトルBk(-)との誤差を表す信号νk,jが演算される。相関処理では、更に、式(16)に従って、観測ベクトル毎に演算された誤差信号νk,jの全てが、信頼度βk,jに基づく重み付けが施された後に統合される。相関処理の結果得られた統合誤差信号νkは、信頼度βk,jおよび誤差信号νk,jと共に平滑手段20に供給される。 【0028】ST50では、平滑手段20において、平滑値ベクトルBk(+)と平滑誤差共分散行列Pk(+)とを求めるための平滑処理が実行される。平滑値ベクトルBk(+)は、追尾目標の位置、速度などの運動諸元で構成されるベクトルである。本ステップST50の処理では、相関手段10から供給される信頼度βk,j、誤差信号νk,j、および統合誤差信号νkに基づいて、式(17)〜式(20)に従って平滑値ベクトルBk(+)および平滑誤差共分散行列Pk(+)が演算される。 【0029】上述した一連の処理が終了すると、目標追尾処理の終了が要求されているか否かが判別される。目標追尾処理の終了が要求されている場合は、図14に示す一連の処理が終了される。一方、目標追尾処理の終了が要求されていない場合は、単位時間の経過を待って、所定のサンプリング間隔で、上記ST10以降の処理が繰り返し実行される。従来の追尾装置は、上記の如く構成されているため、追尾目標に起因しない不要な信号が存在し、その結果、レーダからの観測情報が複数存在する場合でも追尾目標の運動諸元を推定することができる。 【0030】 【発明が解決しようとする課題】しかし、弾道軌道を描いて移動する追尾目標については、図15に示すように、追尾の途中で目標からブースタ部分が切り離される場合がある。この場合、ブースタ部分と弾頭部分との距離は時間の経過につれて徐々に大きくなる。上述の如く、従来の追尾装置は、観測値ベクトルを重み付け平均して平滑値を得る方法を用いている。図15に示す追尾航跡は、弾頭部分に対応する観測ベクトルと、ブースタ部分に対応する観測ベクトルとに重み付け処理を施して生成した航跡である。このように、従来の追尾装置によれば、弾頭の航跡およびブースタの航跡のいずれにも追従しない追尾航跡が生成されることがある。 【0031】本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、追尾目標が分離した場合において、それらの観測データ間の距離が所定値以上になった場合に、選択された部分のみを追尾処理するように観測データを選択することのできる追尾装置を提供することを目的とする。 【0032】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、追尾ゲート内に観測される観測値ベクトルに基づいて目標追尾を行う追尾装置であって、前記観測値ベクトルを入力データとして、追尾目標の分離判定を行なう分離判定手段と、前記分離判定手段によって、追尾目標の分離が判定されない場合は、前記追尾ゲート内に観測される複数の観測値ベクトルの全てを有効なデータとして目標の追尾処理を行い、一方、前記分離判定手段によって、追尾目標の分離が判定された場合は、前記追尾ゲート内に観測される複数の観測値ベクトルの一部のみを有効なデータとして目標の追尾処理を行う目標追尾手段と、を備えることを特徴とするものである。 【0033】請求項2記載の発明は、請求項1記載の追尾装置であって、前記分離判定手段は、前記追尾ゲート内に、両者の間隔が所定値を越える複数の観測値ベクトルが観測された場合に追尾目標の分離を判定することを特徴とするものである。 【0034】請求項3記載の発明は、請求項1記載の追尾装置であって、前記目標追尾手段は、過去のデータに基づいて、追尾目標の予測位置を表す予測値ベクトルを求める予測手段を備え、前記分離判定手段は、前記追尾ゲート内に、前記予測ベクトルとの間隔が所定値を越える観測値ベクトルが観測された場合に追尾目標の分離を判定することを特徴とするものである。 【0035】請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項記載の追尾装置であって、前記目標追尾手段は、前記分離判定手段によって追尾目標の分離が判定された場合に、前記追尾ゲート内に観測される観測値ベクトルのうち、最も高度の高い位置に観測されているベクトルを有効なデータとして目標の追尾処理を行うことを特徴とするものである。 【0036】請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項記載の追尾装置であって、前記目標追尾手段は、前記分離判定手段によって追尾目標の分離が判定された場合に、単一の観測値ベクトルを捕らえて追尾処理を行ううえで好適な状態が実現されるように、追尾処理のパラメータを制御するパラメータ制御手段を備えることを特徴とするものである。 【0037】請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項記載の追尾装置であって、前記分離判定手段は、追尾目標の分離を判定するための条件が、1を越える所定のサンプリング回数連続して成立した場合に、追尾目標の分離を判定することを特徴とするものである。 【0038】請求項7記載の発明は、請求項1乃至6の何れか1項記載の追尾装置であって、前記目標追尾手段は、追尾処理に用いられる運動モデルと状態変数ベクトルとを、追尾目標の飛翔高度に応じて切り替えるフィルタ切り替え手段を備えることを特徴とするものである。 【0039】請求項8記載の発明は、請求項1乃至6の何れか1項記載の追尾装置であって、前記目標追尾手段は、所定の飛翔高度を想定した運動モデルと状態変数ベクトルとを用いて目標の予測位置を表す予測値ベクトルを算出する予測手段と、所定の飛翔高度を想定した運動モデルと状態変数ベクトルとを用いて目標の現在位置を表す平滑値ベクトルを算出する平滑手段とを備え、前記予測手段および前記平滑手段は、複数の飛翔高度に対応して設けられており、前記目標追尾手段は、更に、前記複数の予測手段で算出される複数の予測値ベクトルを統合する予測値統合手段と、前記複数の平滑手段で算出される複数の平滑値ベクトルを統合する平滑値統合手段と、を備えることを特徴とするものである。 【0040】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。以後、説明のため、サンプリング時間tkにおける観測値ベクトルをCk、追尾目標の状態変数ベクトルをBkとする。Ckは極座標で得られた観測値ベクトルを北基準直交座標系のベクトルに変換したものである。また、状態変数ベクトルBkは、追尾目標の位置等の情報(例えば、位置および速度)を北基準直交座標系で表現した多次元(例えば6次元)のベクトルである。 【0041】実施の形態1.図1は、本発明の実施の形態1の追尾装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の追尾装置は、図1に示す如く、追尾目標の平滑値ベクトルBk(+)および平滑誤差共分散行列Pk(+)を出力する平滑手段2と、追尾目標の予測値ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)を出力する予測手段3と、追尾目標に起因する観測値ベクトルが得られる可能性の高い追尾ゲートを算出するゲート算出手段4とを備えている。 【0042】本実施形態の追尾装置は、図1 に示すように、ゲート算出手段4によって設定され追尾ゲート内の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)を平滑処理の対象とする。本実施形態において、追尾装置は、分離判定手段5と、パラメータ制御手段6とを備えている点において、従来の追尾装置(図13参照)と異なる構成を有している。 【0043】分離判定手段5は、ゲート算出手段4の内部に存在する複数の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)の間隔を算出し、それらの間隔が所定値以上になった場合には、追尾目標が複数の部分、例えば、弾頭部分とブースタ部分とに切り離されたものと判断する(図14参照)。分離判定手段5は、このような判断が行われた場合に限り、分離判定の制御信号を、パラメータ制御手段6および相関手段7に送信する。 【0044】パラメータ制御手段6は分離判定手段5から上記の制御信号が出力されたか否かに基づいて、相関手段7の演算に用いられるパラメータを切り替える。パラメータ制御手段6は、具体的には、上記の制御信号が出力されていない場合はパラメータを保持し、一方、その制御信号が出力されている場合は、そのパラメータを、通常のカルマンフィルタ用のパラメータに切り替える。 【0045】相関手段7は、分離判定手段5から上記の制御信号が出力されていない場合は、ゲート算出手段4によって設定された追尾ゲート内の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)のそれぞれについて、そのベクトルが追尾目標に起因する観測データである確率βk,j、すなわち、そのベクトルの信頼度βk,jを算出する。そして、それらの信頼度βk,jに基づいて、追尾ゲート内の観測値ベクトルのすべてに対して、誤差信号νk,j、および統合誤差信号νkが算出される。 【0046】相関手段7は、また、分離判定手段5から分離判定の制御信号が出力されている場合は、Ck,jのうち最も高度の高い観測値ベクトルを追尾目標に起因する観測値ベクトルとして認識する。この場合、その観測値ベクトルに対する信頼度βk,jは、パラメータ制御手段6により調整されたパラメータを使用して算出される。最も高度の高い観測値ベクトルに対する信頼度βk,jが演算されると、その値を用いて、最も高度の高い観測値ベクトルに対する誤差信号νk,jおよび統合誤差信号νkが算出される。 【0047】平滑手段2には、相関手段7の出力であるβk,j、νk,j、νkと共に、予測手段3の出力である予測値ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)が入力される。平滑手段2は、それらの入力に基づいて、追尾目標の位置や速度などの運動諸元で構成される平滑値ベクトルBk(+)と、そのベクトルに対応する平滑誤差共分散行列Pk(+)とを演算する。平滑手段2から出力されるBk(+)およびPk(+)は、遅延要素13によって単位時間だけ遅延された後、予測手段3に供給される。 【0048】予測手段3では、平滑手段2から出力された後、遅延要素13で単位時間だけ遅延された後に供給される平滑値ベクトルBk-1(+)および平滑誤差共分散行列Pk-1(+)に基づいて、予測値ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)が演算される。より具体的には、予測手段3では、サンプリング時刻tk-1の処理サイクル時に算出された平滑値ベクトルBk-1(+)および平滑誤差共分散行列Pk-1(+)に基づいて、1サンプリング先、すなわち、サンプリング時刻tkの処理サイクルで用いられる予測値ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)が演算される。 【0049】このようにして算出されたBk(-)およびPk(-)は、ゲート算出手段4に供給される。ゲート算出手段4は、予測手段3から供給される平滑値ベクトルBk(-)、および平滑誤差共分散行列Pk(-)に基づいて、追尾目標の観測値ベクトルが得られる可能性が大きいと推定される追尾ゲートを算出する。 【0050】次に、本実施形態において、追尾装置の演算処理に用いられる数式について説明する。尚、以下に示す数式において、ベクトルを表す式に付加される添字Tは、そのベクトルが転置ベクトルであることを表す記号である。 【0051】本実施形態の追尾装置の演算処理には、追尾目標の位置および速度からなる状態変数ベクトルBk、および、追尾目標の位置情報のみで構成される観測値ベクトルCkが用いられる。BkおよびCkは、それぞれ次式の如く表される。 Bk=[xk,yk,zk,vxk,vyk,vzk]T (21) Ck=[xk0,yk0,zk0]T (22) 【0052】式(21)において、xk、yk、zkは、サンプリング時刻tkにおける追尾目標の位置座標を表す真値である。また、vxk,vyk,vzkは、同時刻における目標の速度真値である。式(22)において、xk0、yk0、zk0は、レーダによる目標の観測位置の座標である。 【0053】本実施形態の追尾装置の演算処理には、以下に示す運動モデルが用いられる。 Bk=Φk-1 Bk-1+ωk-1 (23) 式(23)に示すΦk-1およびωk-1は、状態推移行列および駆動雑音ベクトルである。状態推移行列は、運動モデルの設定に際して予め仮定される行列である。駆動雑音ベクトルωkは、次式(24)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Qk”の正規分布に属している。 E[ωk]=0, E[ωk ωkT]=Qk (24) 【0054】本実施形態の追尾装置の演算処理には、以下に示す観測モデルが用いられる。 Ck=Hk Bk+vk (25) 式(25)に示すHkおよびvkは、それぞれ、観測行列および観測雑音ベクトルである。観測行列は、予め仮定される行列である。観測雑音ベクトルは、次式(26)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Rk”の正規分布に属している。尚、誤差共分散Rkは、観測状態に応じて適宜適当に設定される値である。 E[vk]=0, E[vk vkT]=Rk (26) 【0055】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いる予測処理が行われる。 Bk(-)=Φk-1 Bk-1(+) (27) Pk(-)=Φk-1 Pk-1(+) Φk-1T+Qk-1 (28) 式(27)に示すBk(-)、および、式(28)に示すPk(-)は、それぞれ、サンプリング時刻tkの時点のデータに基づいて演算される予測値ベクトル、および、予測誤差共分散行列である。また、式(27)で用いられるBk-1(+)、および式(28)で用いられるPk-1(+)は、サンプリング時刻tk-1の時点のデータに基づいて、それぞれ後述の如く演算される平滑値ベクトル、および平滑誤差共分散行列である。 【0056】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いるゲート算出処理が実行される。より具体的には、次式(29)の関係を満たす観測値ベクトルCk,j(j=1,2,・・,mk)を有効なデータとする処理が実行される。 (Ck,j−Ck(-)) Sk(-)-1 (Ck,j−Ck(-))T≦d (29) 尚、式(29)で用いられる“d”は、自由度3のχ2分布表より求められる値である。また、式(29)中、Ck(-)およびSk(-)は、次式により求められる観測ベクトルCkの予測値、および、その予測値Ck(-)に対応する誤差共分散行列である。 Ck(-)=Hk Bk(-) (30) Sk(-)=HkT Pk(-)Hk+Rk (31) 【0057】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いた分離判定処理が実行される。より具体的には、2つの観測値ベクトルCk,iおよびCk,j(i≠j)の組み合わせの全てについて、それらの間隔Δk(式(32))が、分離条件(式(33))を満たすか否かが判別される。本実施形態においては、Ck,iとCk,jとが上記の分離条件を満たす場合に、それらの観測値ベクトルが、分離した目標に起因していると判断される。 【0058】 【数4】
【0059】また、本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて仮説の信頼度βk,jが算出される。 【0060】 【数5】
【0061】尚、式(34)〜式(36)において、g(a;b,c)は、平均b、誤差共分散行列cの3変量正規分布のaにおける確率密度関数である。また、PDは、レーダの探知確率を、PGは、追尾目標が追尾ゲート内に存在する確率を、更に、PEは、不要信号の発生頻度を、それぞれ表している。 【0062】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて、誤差信号νk,jおよび統合誤差信号νkが演算される。 【0063】 【数6】
【0064】更に、本実施形態の追尾装置においては、平滑値ベクトルBk(+)および平滑誤差共分散行列Pk(+)を求めるために、以下に示す演算式を用いた平滑処理が実行される。 【0065】 【数7】
【0066】次に、図2に示すフローチャートを参照して、本実施形態の追尾装置の動作を説明する。図2に示す処理は、サンプリング時刻毎に繰り返し実行される。それらの処理においては、先ずST1の処理が実行される。 【0067】ST1では、予測手段3において、予測値ベクトルBk(-)と予測誤差共分散行列Pk(-)とを演算する予測処理が行われる。本ステップST1において、予測手段30は、遅延要素13を介して供給される平滑手段2の出力、すなわち、平滑値ベクトルBk-1(+)、およびその誤差共分散行列Pk-1(+)を、式(27)および式(28)に代入することで、予測値ベクトルBk(-)と予測誤差共分散行列Pk(-)とを算出する。 【0068】ST2では、ゲート算出手段4において、追尾ゲート、すなわち、追尾目標の観測値ベクトルが得られると予測される領域が求められる。本ステップST2において、ゲート算出手段4は、予測手段3で得られた予測値ベクトルBk(-)および予測誤差共分散行列Pk(-)を用いて、式(29)〜式(31)に従って追尾ゲートを算出する。 【0069】ST3では、ゲート算出手段4によって算出された追尾ゲート内に存在する全ての観測値ベクトルCk,j(j=1,2,..,mk)が、有効なデータとして分離判定手段5に入力される。サンプリング時刻tkに対応する処理サイクルでは、これらの観測値ベクトルCk,jが相関処理の対象となる。 【0070】ST4では、分離判定手段5において、分離判定が行われる。本ステップST4では、具体的には、追尾ゲート内に存在する2つの観測値ベクトルCk,iおよびCk,j(i≠j)の組み合わせの全てについて、それらの間隔Δkが式(32)に従って算出されると共に、その間隔Δkが所定値e以上であるかが判別される。その結果、Δk≧eを満たす組合せが1組以上存在する場合は、追尾目標が、複数の部分(例えば弾頭部分とブースタ部分)に切り離された(図15参照)と判断さる。この場合、本ステップST4の処理の過程で、パラメータ制御手段6と相関手段7に対して、分離判定の制御信号が供給される。一方、Δk≧eを満たす組合せが1組も存在しない場合は、パラメータ制御手段6および相関手段7に対して上記の制御信号が供給されることなくST5の処理が開始される。 【0071】ST5では、パラメータ制御手段6において、パラメータ処理が実行される。本ステップST5では、具体的には、上述した制御判定の有無に応じて相関手段7で用いられるパラメータを切り替える処理が実行される。上記のパラメータは、分離判定の制御信号が出力されている場合は、通常のカルマンフィルタ用のパラメータに切り替えられる。この場合、式(34)〜式(36)で使用されるmkが“1”に、PDが“1”に、また、PEが“0”に、それぞれ設定される。一方、上述した分離判定の制御信号が出力されていない場合は、上記のパラメータが、変更されることなく保持される。 【0072】ST6では、相関手段7において、今回の処理サイクルにおいて検出された観測値ベクトルと、既追尾目標との相関を調査する相関処理が実行される。相関処理では、分離判定の制御信号が出力されているか否かに応じて異なる処理が実行される。 【0073】すなわち、分離判定の制御信号が出力されていない場合は、相関処理において、先ず、追尾ゲート内の観測値ベクトルのそれぞれについて、そのベクトルが既追尾目標に起因するベクトルである確率βk,jが演算される。より具体的には、個々の観測値ベクトルの信頼度βk,jが式(34)〜式(36)に従って算出される。また、この場合は、式(37)に従って、観測値ベクトルCk,jと予測値ベクトルBk(-)との誤差を表す誤差信号νk,jを求める処理、および、式(38)に従って、信頼度βk,jに基づく重み付けを施した後に全ての誤差信号νk,jを統合する処理が順次実行される。このようにして算出された信頼度βk,j、誤差信号νk,j、および統合誤差信号νkは平滑手段2に供給される。 【0074】分離判定の制御信号が出力されている場合は、相関処理において、追尾ゲート内で観測されている全ての観測値ベクトルCk,j(j=1,2,・・、mk)のうち、最も高度が高い観測値ベクトルが追尾目標に起因するベクトルとして認識される。この場合、そのベクトルの信頼度βk,jは、パラメータ制御手段6によって調整されたパラメータを用いて算出される。この結果、分離判定の制御信号が出力されている場合は、最も高度の高い観測値ベクトルに対応する信頼度βk,j、誤差信号νk,j、および統合誤差信号νkが平滑手段2に供給される。 【0075】ST7では、平滑手段2において、平滑値ベクトルBk(+)と平滑誤差共分散行列Pk(+)とを求めるための平滑処理が実行される。本ステップST7の処理では、相関手段7から供給される信頼度βk,j、誤差信号νk,j、および統合誤差信号νkに基づいて、式(39)〜式(42)に従って平滑値ベクトルBk(+)および平滑誤差共分散行列Pk(+)が演算される。 【0076】上述した一連の処理が終了すると、目標追尾処理の終了が要求されているか否かが判別される。目標追尾処理の終了が要求されている場合は、図2に示す一連の処理が終了される。一方、目標追尾処理の終了が要求されていない場合は、単位時間の経過を待って、所定のサンプリング間隔で、上記ST1以降の処理が繰り返し実行される。 【0077】上述の如く、本実施形態の追尾装置によれば、同じ追尾ゲート内に存在する複数のベクトルの間隔が所定値に満たない場合は、それら複数のベクトルに基づいて高精度な目標追尾を実行し、複数のベクトルの間隔が所定値を越える場合は、追尾目標が分離したものと判断することができる。従って、本実施形態の追尾装置によれば、通常の目標を高精度に追尾することができると共に、追尾の途中で分離する目標も、高精度に追尾することができる。 【0078】尚、上記の実施形態においては、平滑手段2、予測手段3、ゲート算出手段4、パラメータ制御手段6、相関手段7、および遅延要素13が前記請求項1記載の目標追尾手段に相当している。 【0079】実施の形態2.次に、図3および図4を参照して、本発明の実施の形態2の追尾装置について説明する。図3は、本発明の実施の形態2の追尾装置の構成を示すブロック図である。図3において、8は分離判定手段である。実施の形態1の分離判定手段5は、観測値ベクトルの間隔が1サンプリングでも所定値以上になると目標の分離を判定するが、本実施形態の分離判定手段8は、複数サンプル連続して分離条件を満たさなければ目標の分離が判定がされない。本実施形態の追尾装置は、目標の分離を判定した場合は、実施の形態1の装置と同様の処理を行なう。 【0080】次に、図4に示すフローチャートに沿って本実施形態の追尾装置の動作を説明する。図4に示すST8では、分離判定手段8において分離判定の処理が行われる。分離判定の処理では、追尾ゲート内に存在する複数の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)の間隔Δkが、式(32)に従って算出される。そして、間隔Δkが所定値e以上になる組み合わせが1組以上存在し、かつ、その組み合わせが、所定サンプリング連続してその条件(式(33)の条件)を満たす場合には、追尾目標が複数の部分、例えば、弾頭部分とブースタ部分(図15参照)とに切り離されたものと判断される。この場合、分離判定手段8からパラメータ制御手段6および相関手段7に、分離判定の制御信号が送信される。一方、上記の条件が満足されない場合は、分離判定の制御信号は出力されない。 【0081】上述の如く、本実施形態の追尾装置は、追尾目標が分離したか否かを複数回のサンプリングデータに基づいて判断することができる。従って、本実施形態の追尾装置によれば、追尾目標の分離を1回のサンプリングデータのみに基づいて判断する実施の形態1の装置に比して、正確な分離判定を行うことができる。 【0082】実施の形態3.次に、図5および図6を参照して、本発明の実施の形態3の追尾装置について説明する。図5は、本発明の実施の形態3の追尾装置の構成を示すブロック図である。図5において、9は分離判定手段である。実施の形態1の分離判定手段5は、観測値ベクトル同士の間隔Δkに基づいて分離判定を行なったが、本発明の分離判定手段9は、観測値ベクトルと、予測手段3の出力である予測値ベクトルとの残差を計算し、その残差が所定値以上となる観測値ベクトルが存在する場合に目標の分離を判定する。本実施形態の追尾装置は、目標の分離を判定した場合は、実施の形態1の装置と同様の処理を行なう。 【0083】次に、図6に示すフローチャートに沿って、本実施形態の追尾装置の動作を説明する。図6に示すST9では、分離判定手段9において分離判定の処理が実行される。本実施形態において、分離判定の処理では、追尾ゲート内に存在する複数の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)と予測値ベクトルBk(-)との間隔が算出される。より具体的には、先ず、式(30)に従って、予測値ベクトルBk(-)に基づいて観測値ベクトルの予測値Ck(-)が算出され、次に、式(29)に従って、観測値ベクトルCk,jと、その予測値Ck(-)との間隔が算出される。そして、その間隔が所定値以上になる組合せが1組以上存在する場合には、追尾目標が複数の部分、例えば、弾頭部分とブースタ部分(図15参照)とに切り離されたものと判断され、分離判定手段8からパラメータ制御手段6および相関手段7に、分離判定の制御信号が送信される。一方、上記の条件が満足されない場合は、分離判定の制御信号は出力されない。 【0084】上述の如く、本実施形態の追尾装置は、観測値ベクトルCkと予測値ベクトルBk(-)との差に基づいて分離判定の処理を行うことができる。観測値ベクトルCkと予測値ベクトルBk(-)とは、追尾目標が分離することなく移動している場合は近似した値となる。一方、追尾の途中で目標が分離し、複数の航跡が発生すると、観測値ベクトルCkと予測値ベクトルBk(-)との間に距離が発生する。従って、上述した分離判定の手法によれば、追尾目標の分離を正確に判定することができる。 【0085】実施の形態4.次に、図7および図8を参照して、本発明の実施の形態4の追尾装置について説明する。図7は、本発明の実施の形態4の追尾装置の構成を示すブロック図である。図7において、10は分離判定手段である。実施の形態3の分離判定手段10は、観測値ベクトルと予測値ベクトルの間隔が1サンプリングでも所定値以上になると分離判定とみなすが、本実施形態の分離判定手段10は、複数サンプル連続して分離条件が満たさなければ目標の分離が判定されない。本実施形態の追尾装置は、目標の分離を判定した場合は、実施の形態1の装置と同様の処理を行なう。 【0086】次に、図8に示すフローチャートに沿って本実施形態の追尾装置の動作を説明する。図8に示すST10では、分離判定手段10において分離判定の処理が行われる。分離判定の処理では、追尾ゲート内に存在する複数の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)について、式(29)に従って、予測値ベクトルBk(-)との間隔(正確には観測値ベクトルの予測値Ck(-)との間隔)が算出される。そして、その間隔が所定値以上になる組み合わせが1組以上存在し、かつ、その組み合わせが、所定サンプリング連続してその条件を満たす場合には、追尾目標が複数の部分、例えば、弾頭部分とブースタ部分(図15参照)とに切り離されたものと判断される。この場合、分離判定手段10からパラメータ制御手段6および相関手段7に、分離判定の制御信号が送信される。一方、上記の条件が満足されない場合は、分離判定の制御信号は出力されない。 【0087】上述の如く、本実施形態の追尾装置は、追尾目標が分離したか否かを複数回のサンプリングデータに基づいて判断することができる。従って、本実施形態の追尾装置によれば、追尾目標の分離を1回のサンプリングデータのみに基づいて判断する実施の形態3の装置に比して、正確な分離判定を行うことができる。 【0088】実施の形態5.次に、図9および図10を参照して、本発明の実施の形態5の追尾装置について説明する。図9は、本発明の実施の形態5の追尾装置の構成を示すブロック図である。図9において、16はフィルタ切り替え手段である。実施の形態1〜4の追尾装置では、相関手段7、平滑手段2、予測手段3が、それぞれ1つだけ用いられているが、本実施形態の装置は、追尾目標の高度別に、異なる状態変数ベクトルと運動モデルとに基づいて動作する相関手段71、72、73、平滑手段21、22、23、予測手段31、32、33を備えている。すなわち、推力の働く高度を考慮したもの、万有引力のみが作用する高度を考慮したもの、および空気力の働く高度を考慮したものの3種類を備えている。 【0089】本実施形態の追尾装置において、フィルタ切り替え手段16には、高度別に用意された予測手段31〜33のそれぞれから、予測値ベクトルおよび予測誤差共分散行列が供給される。フィルタ切り替え手段16は、それらの出力に基づいて追尾目標の高度を推定し、予測手段31〜33から供給される3つの出力の中から、その推定高度に応じた出力を選択する。フィルタ切り替え手段16は、このようにして選択した出力をゲート算出手段4に出力する。 【0090】分離判定手段5は、上述した他の実施形態の場合と同様に動作する。すなわち、分離判定手段5は追尾ゲート内に存在する複数の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)の間隔を算出し、これらの間隔が所定値以上になった場合には、追尾目標が複数の部分、例えば弾頭部分とブースタ部分(図15参照)とに切り離されたものと判断してパラメータ制御手段6および相関手段71〜73に、分離判定の制御信号を送信する。一方、上記の条件が満足されない場合は、分離判定の制御信号は出力されない。 【0091】次に、本実施形態において、追尾装置の演算処理に用いられる数式について説明する。本実施形態の追尾装置の演算処理には、追尾目標の位置および速度からなる状態変数ベクトルBk、および、追尾目標の位置情報のみで構成される観測値ベクトルCkが用いられる。尚、以下の説明において、状態変数ベクトルBkは、追尾目標の高度に応じて以下に示す如く表す。 推力が働く高度における追尾目標の状態変数ベクトル:Bk,1万有引力のみが働く高度における追尾目標の状態変数ベクトル:Bk,2空気力が働く高度における追尾目標の状態変数ベクトル:Bk,3【0092】本実施形態の追尾装置の演算処理には、以下に示す運動モデルが用いられる。 Bk,1=Φk-1,1 Bk-1,1+ωk-1,1 (43) Bk,2=Φk-1,2 Bk-1,2+ωk-1,2 (44) Bk,3=Φk-1,3 Bk-1,3+ωk-1,3 (45) 式(43)〜式(45)に示すΦk-1,u(u=1,2,3)およびωk-1,u(u=1,2,3)は、それぞれ、各高度を対象とする状態推移行列および駆動雑音ベクトルである。状態推移行列は、運動モデルの設定に際して予め仮定される行列である。駆動雑音ベクトルωkは、次式(46)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Qk,u”の正規分布に属している。 E[ωk,u]=0, E[ωk,u ωk,uT]=Qk,u (46) 【0093】本実施形態の追尾装置の演算処理には、以下に示す観測モデルが用いられる。 Ck=Hk,u Bk,u+vk (47) 式(47)に示すHk,u(u=1,2,3)およびvkは、それぞれ、観測行列および観測雑音ベクトルである。観測行列は、予め仮定される行列である。観測雑音ベクトルは、次式(48)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Rk”の正規分布に属している。 E[vk]=0, E[vk vkT]=Rk (48) 【0094】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いる予測処理が行われる。 Bk,u (-)=Φk-1,u Bk-1,u (+) (49) Pk,u (-)=Φk-1,u Pk-1,u (+) Φk-1,uT+Qk-1,u (50) 式(49)に示すBk,u (-)、および、式(50)に示すPk,u (-)は、それぞれ、u番目の運動モデルおよび状態変数ベクトルに基づく予測値ベクトル、および、予測誤差共分散行列である。本実施形態においては、追尾目標の推定高度に応じて、Bk,u (-) およびPk,u (-)からそれぞれ1つずつ値が選択され、その値に基づいて追尾処理が実行される。 【0095】尚、式(49)で用いられるBk-1,u (+)、および式(50)で用いられるPk-1,u (+)は、それぞれ、u番目の予測値ベクトルBk,u (-)、およびu番目の予測誤差共分散行列Pk,u (-)に基づいて後述の如く演算される平滑値ベクトル、および平滑誤差共分散行列である。 【0096】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いるゲート算出処理が実行される。より具体的には、次式(51)の関係を満たす観測値ベクトルCk,j(j=1,2,・・,mk)を有効なデータとする処理が実行される。 (Ck,j−Ck(-)) Sk(-)-1 (Ck,j−Ck(-))T≦d (51) 尚、式(51)で用いられる“d”は、自由度3のχ2分布表より求められる値である。また、式(51)中、Ck(-)およびSk(-)は、次式により求められる観測ベクトルCkの予測値、および、その予測値Ck(-)に対応する誤差共分散行列である。 Ck(-)=Hk,u Bk,u (-) (52) Sk(-)=Hk,uT Pk,u (-)Hk,u+Rk (53) 【0097】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いた分離判定処理が実行される。より具体的には、2つの観測値ベクトルCk,iおよびCk,j(i≠j)の組み合わせの全てについて、それらの間隔Δk(式(54))が、分離条件(式(55))を満たすか否かが判別される。本実施形態においては、Ck,iとCk,jとが上記の分離条件を満たす場合に、それらの観測値ベクトルが、分離した目標に起因していると判断される。 【0098】 【数8】
【0099】また、本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて仮説の信頼度βk,jが算出される。 【0100】 【数9】
【0101】尚、式(56)〜式(58)において、g(a;b,c)は、平均b、誤差共分散行列cの3変量正規分布のaにおける確率密度関数である。また、PDは、レーダの探知確率を、PGは、追尾目標が追尾ゲート内に存在する確率を、更に、PEは、不要信号の発生頻度を、それぞれ表している。 【0102】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて、誤差信号νk,jおよび統合誤差信号νkが演算される。 【0103】 【数10】
【0104】更に、本実施形態の追尾装置においては、平滑値ベクトルBk,u (+)および平滑誤差共分散行列Pk,u (+)を求めるために、以下に示す演算式を用いた平滑処理が実行される。 【0105】 【数11】
【0106】次に、図10に示すフローチャートを参照して、本実施形態の追尾装置の動作を説明する。図10において、ST11では、高度別フィルタ毎の予測処理が実行される。フィルタ毎の予測処理では、具体的には、先ず、高度別に用意された3種類の予測手段31〜33に、平滑手段21〜23の出力Bk,u(+)、Pk,u(+)がそれぞれ入力される。予測手段31〜33は、それらの入力データに基づいて、式(49)および式(50)に従って、追尾目標の予測値ベクトルBk,u(-)と予測誤差共分散行列Pk,u(-)とをそれぞれ演算する。 【0107】ST12では、フィルタ切り替え手段16において、各予測手段31〜33の出力に基づいて、追尾目標の推定高度が算出される。更に、本ステップST12では、予測手段31〜33の出力の中から、推定された高度に対応する予測値ベクトルBk,u(-)および予測誤差共分散行列Pk,u(-)が選択される。 【0108】ST2およびST3では、上述した他の実施形態の場合と同様の処理が実行される。すなわち、ST2の処理により追尾ゲートが算出され、ST3の処理により、追尾ゲート内の観測値ベクトルが分離判定手段5に入力される。 【0109】ST4では、分離判定手段5において、追尾ゲート内の複数の観測値ベクトルCk,j(j=1,2,…,mk)のそれぞれについて、他の観測値ベクトルとの間隔Δkが式(54)に従って算出される。分離判定手段5は、算出された間隔Δkの中に所定値え以上となるものが1つ以上ある場合には、すなわち、式(55)の条件を満たすものが1つ以上ある場合は、追尾目標が複数の部分に分離したと判断して、パラメータ制御手段6および相関手段7に対して、分離判定の制御信号を送信する。 【0110】ST5では、パラメータ制御手段6において、上述した制御判定の有無に応じて相関手段7で用いられるパラメータを切り替える処理が実行される。上記のパラメータは、分離判定の制御信号が出力されている場合は、通常のカルマンフィルタ用のパラメータに切り替えられる。この場合、式(56)〜式(58)で使用されるmkが“1”に、PDが“1”に、また、PEが“0”に、それぞれ設定される。一方、上述した分離判定の制御信号が出力されていない場合は、上記のパラメータが、変更されることなく保持される。 【0111】ST13では、相関手段71〜73において、高度別フィルタ毎の相関処理が実行される。具体的には、相関手段71〜73のそれぞれにおいて、今回の処理サイクルにおいて検出された観測値ベクトルと、既追尾目標との相関を調査する相関処理が実行される。それらの相関処理は、フィルタ切り替え手段16によって選択された予測値ベクトルBk,u(-)および予測誤差共分散行列Pk,u(-)を用いて実行される。相関処理の過程では、分離判定の制御信号が出力されているか否かに応じて、それぞれ以下の処理が実行される。 【0112】すなわち、分離判定の制御信号が出力されていない場合は、相関処理において、先ず、追尾ゲート内の観測値ベクトルのそれぞれについて、そのベクトルが既追尾目標に起因するベクトルである確率βk,jが式(56)〜式(58)に従って算出される。次いで、式(59)に従って観測値ベクトルCk,jと予測値ベクトルBk,u(-)との誤差を表す誤差信号νk,jが算出され、更に、式(60)に従って統合誤差信号νkが算出される。相関手段71〜73は、それぞれ、上記の如く算出した信頼度βk,j、誤差信号νk,j、および統合誤差信号νkを平滑手段21〜23に出力する。 【0113】分離判定の制御信号が出力されている場合は、相関処理において、追尾ゲート内で観測されている全ての観測値ベクトルCk,j(j=1,2,・・、mk)のうち、最も高度が高い観測値ベクトルが追尾目標に起因するベクトルとして認識される。この場合、そのベクトルの信頼度βk,jは、パラメータ制御手段6によって調整されたパラメータを用いて算出される。この結果、分離判定の制御信号が出力されている場合は、最も高度の高い観測値ベクトルに対応する信頼度βk,j、誤差信号νk,j、および統合誤差信号νkが平滑手段21〜23に供給される。 【0114】ST14では、平滑手段21〜23のそれぞれにおいて、高度別フィルタ毎の平滑処理が実行される。具体的には、平滑手段21〜23のそれぞれにおいて、式(61)〜式(64)に従って平滑値ベクトルBk,u(+)および平滑誤差共分散行列Pk,u(+)が演算される。それらの演算は、フィルタ切り替え手段16によって選択された予測値ベクトルBk,u(-)および予測誤差共分散行列Pk,u(-)を用いて実行される。上記の処理が実行されることにより、平滑手段21〜23のそれぞれにおいて、異なる高度を前提とした平滑値ベクトルBk,u(+)と平滑誤差共分散行列Pk,u(+)とが算出される。 【0115】上述した一連の処理が終了すると、目標追尾処理の終了が要求されているか否かが判別される。目標追尾処理の終了が要求されている場合は、図10に示す一連の処理が終了される。一方、目標追尾処理の終了が要求されていない場合は、単位時間の経過を待って、所定のサンプリング間隔で、上記ST11以降の処理が繰り返し実行される。 【0116】上述の如く、本実施形態の追尾装置によれば、追尾目標の高度に応じて、適切な状態変数ベクトルおよび運動モデルを用いた追尾処理を行うことができる。追尾目標は、高度に応じて異なる航跡を辿って移動する。本実施形態の追尾装置によれば、このような航跡の相違に関わらず、追尾目標がいかなる高度で移動する場合でも、高精度な追尾を行うことができる。 【0117】実施の形態6.次に、図11および図12を参照して、本発明の実施の形態6の追尾装置について説明する。図11は、本発明の実施の形態6の追尾装置の構成を示すブロック図である。実施の形態1〜4の追尾装置では、相関手段7、平滑手段2、予測手段3が、それぞれ1つだけ用いられているが、本実施形態の装置は、追尾目標の高度別に、異なる状態変数ベクトルと運動モデルとに基づいて動作する相関手段71、72、73、平滑手段21、22、23、予測手段31、32、33を備えている。すなわち、推力の働く高度を考慮したもの、万有引力のみが作用する高度を考慮したもの、および空気力の働く高度を考慮したものの3種類を備えている。本実施形態において、高度別の平滑手段21,22,23および予測手段31,32,33は、実施の形態5の場合と同様に並列に動作する。 【0118】図11において、27は平滑値統合手段である。平滑値統合手段27には、平滑手段24、25、26から並列に出力される高度別の平滑値ベクトルおよび平滑誤差共分散行列と共に、相関手段3から出力される運動モデルの成立確率が入力される。平滑値統合手段27は、それらの入力に基づいて、高度別の平滑値ベクトルを一つの平滑値ベクトルに統合し、かつ、高度別の平滑誤差共分散行列を1つの平滑誤差共分散行列に統合する。 【0119】図11において、37は予測値統合手段である。予測値統合手段37には、予測手段34、35、36から並列に出力される高度別の予測値ベクトルおよび予測誤差共分散行列と共に、相関手段3から出力される運動モデルの成立確率が入力される。予測値統合手段37は、それらの入力に基づいて、高度別の予測値ベクトルを一つの予測値ベクトルに統合し、かつ、高度別の予測誤差共分散行列を一つの予測誤差共分散行列に統合する。予測値統合手段37は、上記の如く統合したベクトルおよび行列を、ゲート算出手段4へ出力する。 【0120】次に、本実施形態において、追尾装置の演算処理に用いられる数式について説明する。本実施形態の追尾装置の演算処理には、追尾目標の位置および速度からなる状態変数ベクトルBk、および、追尾目標の位置情報のみで構成される観測値ベクトルCkが用いられる。以下の説明において、状態変数ベクトルBkは、その内容に応じて以下に示す如く区別して表す。 推力が働く高度における追尾目標の状態変数ベクトル:Bk,1万有引力のみが働く高度における追尾目標の状態変数ベクトル:Bk,2空気力が働く高度における追尾目標の状態変数ベクトル:Bk,3統合された状態変数ベクトル:Bk,4【0121】本実施形態の追尾装置の演算処理には、以下に示す運動モデルが用いられる。 Bk,u=Φk-1,u Bk-1,u+ωk-1,u (u=1,2,3) (65) 式(65)に示すΦk-1,u(u=1,2,3)およびωk-1,u(u=1,2,3)は、それぞれ、各高度を対象とする追尾フィルタの状態推移行列および駆動雑音ベクトルである。状態推移行列は、運動モデルの設定に際して予め仮定される行列である。駆動雑音ベクトルωk,uは、次式(66)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Qk,u”の正規分布に属している。 E[ωk,u]=0, E[ωk,u ωk,uT]=Qk,u (66) 【0122】本実施形態の追尾装置の演算処理には、以下に示す観測モデルが用いられる。 Ck=Hk,u Bk,u+vk (67) 式(67)に示すHk,u(u=1,2,3)およびvkは、それぞれ、追尾フィルタuの観測行列、および観測雑音ベクトルである。観測行列は、予め仮定される行列である。観測雑音ベクトルは、次式(68)に示す如く、平均“0”、誤差共分散“Rk”の正規分布に属している。 E[vk]=0, E[vk vkT]=Rk (68) 【0123】本実施形態の追尾装置は、上記の如く、運動モデル毎に定義される状態変数ベクトルBk,uと、それらを統合することで得られる状態変数ベクトルBkとを用いて処理を行う。個々の状態変数ベクトルBk,uとBkとの間には、次式に示す関係が成立する。 Bk=Fu Bk,u (69) 尚、式(69)に用いられるFuは、追尾フィルタuの状態変数ベクトルBk,uの次数と、統合された状態変数ベクトルBkの次数とを整合させるための次数整合行列である。 【0124】本実施形態の追尾装置においては、運動モデル毎に、以下に示す演算式を用いる予測処理が行われる。 Bk,u (-)=Φk-1,u Bk-1,u (+) (70) Pk,u (-)=Φk-1,u Pk-1,u (+) Φk-1,uT+Qk-1,u (71) 式(70)に示すBk,u (-)、および、式(71)に示すPk,u (-)は、それぞれ、u番目の運動モデルおよび状態変数ベクトルに基づく予測値ベクトル、および、予測誤差共分散行列である。また、式(70)で用いられるBk-1,u (+)、および式(71)で用いられるPk-1,u (+)は、それぞれ、u番目の予測値ベクトルBk,u (-)、およびu番目の予測誤差共分散行列Pk,u (-)に基づいて後述の如く演算される平滑値ベクトル、および平滑誤差共分散行列である。 【0125】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いる予測値ベクトル、および、予測誤差共分散行列の統合処理が行われる。 【0126】 【数12】
【0127】尚、式(72)および式(73)中に用いられるPuwは、追尾目標の運動状態が、運動モデルw(w=1、2または3)に適合する運動状態から、運動モデルu(u=1、2または3)に適合する運動状態に推移する確率である。また、式(72)で用いられるβk-1,wは、後述する式(86)で演算される運動モデルwに対する信頼度である。 【0128】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いるゲート算出処理が実行される。より具体的には、次式(74)の関係を満たす観測値ベクトルCkを有効なデータとする処理が実行される。 (Ck,j−Ck(-))T Sk(-)-1 (Ck,j−Ck(-))T≦d (74) 尚、式(74)で用いられる“d”は、自由度3のχ2分布表より求められる値である。また、式(74)中、Ck(-)およびSk(-)は、次式により求められる観測ベクトルCkの予測値、および、その予測値Ck(-)に対応する誤差共分散行列である。 Ck(-)=Hk Bk(-) (75) Sk(-)=HkT Pk(-) Hk+Rk (76) 【0129】本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いた分離判定処理が実行される。より具体的には、2つの観測値ベクトルCk,iおよびCk,j(i≠j)の組み合わせの全てについて、それらの間隔Δk(式(77))が、分離条件(式(78))を満たすか否かが判別される。本実施形態においては、Ck,iとCk,jとが上記の分離条件を満たす場合に、それらの観測値ベクトルが、分離した目標に起因していると判断される。 【0130】 【数13】
【0131】また、本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて仮説の信頼度が算出される。尚、以下に示す式(79)〜式(95)において、符号の重複を避けるため、観測値ベクトルの番号(最大値mk)を記号iおよびjは、観測値ベクトルの番号(最大値mk)を表し、記号uおよびwは運動モデルの番号(最大値N)を表す。 【0132】 【数14】
【0133】尚、式(79)〜式(81)において、g(a;b,c)は、平均b、誤差共分散行列cの3変量正規分布のaにおける確率密度関数である。また、PDは、レーダの探知確率を、PGは、追尾目標が追尾ゲート内に存在する確率を、更に、PEは、不要信号の発生頻度を、それぞれ表している。 【0134】更に、式(80)に用いられるCk,u(-)およびSk,uは、運動モデルuに対する観測値ベクトル値の予測値および予測誤差共分散行列であり、それぞれ次式の如く表される。 【0135】 【数15】
【0136】本実施形態の追尾装置においては、式(79)に従って演算される確率に基づいて、更に、以下に示す確率が演算される。 【0137】 【数16】
【0138】また、本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて、運動モデル毎にデータの更新処理が行われる。尚、下式(89)で用いられる確率βk,0は、式(87)に従って(i=0)演算される値である。 【0139】 【数17】
【0140】更に、本実施形態の追尾装置においては、以下に示す演算式を用いて、平滑値ベクトルの統合値、および、平滑誤差共分散行列の統合行列が求められる。 【0141】 【数18】
【0142】次に、図12に示すフローチャートを参照して、本実施形態の追尾装置の動作を説明する。図12において、ST15では、高度別フィルタ毎の予測処理が実行される。フィルタ毎の予測処理では、具体的には、先ず、高度別に用意された3種類の予測手段34〜36に、平滑手段24〜26の出力Bk,u(+)、Pk,u(+)がそれぞれ入力される。予測手段34〜36は、それらの入力データに基づいて、式(70)および式(71)に従って、追尾目標の予測値ベクトルBk,u(-)と予測誤差共分散行列Pk,u(-)とをそれぞれ演算する。 【0143】ST16では、予測値統合手段37において、予測状態の統合処理が行われる。予測状態の統合処理において、予測値統合手段37には、高度別の予測手段34〜36から並列に出力される予測値ベクトルBk,u(-)および予測誤差共分散行列Pk,u(-)が供給されると共に、相関手段3が式(79)〜式(87)に従って算出する運動モデルの成立確率が供給される。予測値統合手段37は、それらの入力に基づいて、式(72)および式(73)の演算を行うことにより、運動モデル毎の予測予測値ベクトルBk,u(-)を一つの予測値ベクトルに統合し、また、運動モデル毎の予測誤差共分散行列Pk,u(-)を一つの予測誤差共分散行列に統合する。予測値統合手段37は、上記の如く統合したベクトルおよび行列をゲート算出手段4へ出力する。 【0144】ST2〜ST6では、上述した他の実施形態の場合と同様の処理が実行される。すなわち、ST4の処理により分離判定の制御信号が出力されなかった場合は、ST6の相関処理において、各運動モデル毎に、全ての観測値ベクトルを有効なデータとして式(79)〜式(87)の演算が行われ、その結果が平滑手段24〜26に供給される。一方、ST4の処理により分離判定の制御信号が出力された場合は、追尾ゲート内で最も高度が高い観測値ベクトルのみを有効なデータとする処理が行われ、その結果が平滑手段24〜26に供給される。 【0145】ST17では、高度別に用意された平滑手段24、25、26のそれぞれにおいて平滑処理が実行される。上記の平滑処理では、式(88)〜式(93)に従って、平滑値ベクトルBk,u(+)、および、平滑誤差共分散行列Pk,u(+)が運動モデル毎に算出される。 【0146】ST18では、平滑値統合手段27において、平滑状態を統合する処理が実行される。本ステップST18において、平滑値統合手段27には、高度別に設けられた平滑手段24〜26が並列に出力する平滑値ベクトルBk,u(+)および平滑誤差共分散行列Pk,u(+)と共に、相関手段3が出力する運動モデルの成立確率βk,uが供給される。平滑値統合手段27は、それらの入力データに基づいて、式(94)および式(95)に従って、運動モデル毎の平滑値ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、一つの平滑値ベクトルおよび一つの平滑誤差共分散行列に統合する。 【0147】上述した一連の処理が終了すると、目標追尾処理の終了が要求されているか否かが判別される。目標追尾処理の終了が要求されている場合は、図12に示す一連の処理が終了される。一方、目標追尾処理の終了が要求されていない場合は、単位時間の経過を待って、所定のサンプリング間隔で、上記ST15以降の処理が繰り返し実行される。 【0148】上述の如く、本実施形態の追尾装置によれば、追尾目標の高度に応じて設定された異なる運動モデルおよび状態変数ベクトルに対する処理結果を統合して、目標追尾処理の基礎データとすることができる。このため、本実施形態の追尾装置によれば、追尾目標の高度が推移する場合においても、高精度な目標追尾を行うことができる。 【0149】 【発明の効果】この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。請求項1記載の発明によれば、追尾ゲート内に複数の観測ベクトルが観測された場合に、それらの観測ベクトルが単一の追尾目標に起因するのか、あるいは、分離した追尾目標に起因するのかを判定することができる。そして、単一の追尾目標に起因すると判定される場合は、複数の観測ベクトルを利用して高精度な目標追尾を行い、一方、追尾目標が分離していると判別される場合は、追尾目標の非主要部分の航跡に影響されることなく、その主要部分の追尾を精度良く継続することができる。 【0150】請求項2記載の発明によれば、追尾目標が複数の部分に分離して、その結果、同一の追尾ゲート内の十分に離れた位置に複数の観測ベクトルが観測された場合に、確実に追尾目標の分離を判定することができる。従って、本発明によれば、精度良く追尾目標の分離を判定することができる。 【0151】請求項3記載の発明によれば、追尾目標が複数の部分に分離して、追尾目標の予測位置と、分離後の各部分の現実の位置とに大きな差が生じた場合に、確実に追尾目標の分離を判定することができる。従って、本発明によれば、精度良く追尾目標の分離を判定することができる。 【0152】請求項4記載の発明によれば、追尾目標の分離が判定された場合に、その後、最も高度の高い位置に観測される観測ベクトルを選択して追尾処理を継続することができる。追尾目標が複数の部分に分離すると、一般に、非主要部分は、その後落下動作を行い、主要部分は飛翔動作を継続する。従って、本発明によれば、追尾目標の分離後に、その主要部分の追尾を継続することができる。 【0153】請求項5記載の発明によれば、追尾目標の分離が判定された後に、単一の観測ベクトルを捕らえて追尾処理を行ううえで好適な状態を形成することができる。従って、本発明によれば、分離後の不要部分の航跡に影響されることなく、主要部分の追尾を精度良く継続することができる。 【0154】請求項6記載の発明によれば、追尾目標が分離したと推認できる状態が、複数のサンプリング回数にわたって連続的に継続した場合にのみ分離判定を許容することができる。このため、本発明によれば、1回のサンプリングデータのみに基づいて分離判定が行われる場合に比して、高い判定精度を得ることができる。 【0155】請求項7記載の発明によれば、追尾目標の飛翔高度に応じて、最も適切な運動モデルおよび状態変数ベクトルを用いて目標の追尾を行うことができる。追尾目標に作用する力の種類および大きさは、飛翔高度に応じて変化する。従って、追尾目標は、その高度に応じて異なる航跡を辿る。本発明によれば、このような航跡の相違に関わらず、全ての飛翔高度において、目標を精度良く追尾することができる。 【0156】請求項8記載の発明によれば、飛翔高度に応じて設定された複数の運動モデルおよび複数の状態変数ベクトルに基づいて、複数の予測値ベクトルおよび複数の平滑値ベクトルを得ることができる。そして、それらの複数の予測値ベクトルおよび複数の平滑値ベクトルを統合して目標追尾の処理に用いることができる。このような処理によれば、追尾目標の航跡が高度に応じて変動しても、継続的に高精度な目標追尾を行うことができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006013 【氏名又は名称】三菱電機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年2月26日(1999.2.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100082175 【弁理士】 【氏名又は名称】高田 守 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2000−249758(P2000−249758A) |
| 【公開日】 |
平成12年9月14日(2000.9.14) |
| 【出願番号】 |
特願平11−50867 |
|