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【発明の名称】 高分解能レ―ダ装置
【発明者】 【氏名】江馬 浩一

【要約】 【課題】従来からの航法支援目的の慣性航法装置を高分解能レーダにおける動揺速度検出センサとして適用する場合、長時間運用時の速度の発散、プラットフォームへの設置条件、アライメント用初期位置設定精度による速度誤差が画像データの解像度を劣化させる問題点があった。

【解決手段】慣性航法装置とGPSを組み合わせることにより、プラットフォームの絶対位置を精度良く検出し、速度の発散防止用の補間処理、アライメント用初期位置設定に使用する。また、慣性航法装置自身のプラットフォームへの設置条件として空中線との相対位置精度を確保することにより、検出速度誤差を抑え、画像データの解像度を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 航空機等移動するプラットフォームに搭載し数十メートル以下の分解能の画像データを適宜収集する高分解能レーダ装置において、電波を空間に放射し反射波を受信するレーダ空中線と、レーダ波の送信もしくは受信を行う送信および受信機と、上記受信信号をディジタル処理して画像データを集収する信号処理器と、上記レーダ空中線の動揺を速度として検出する慣性航法装置と、上記プラットフォームの位置を検出するGPS受信機と、上記GPS受信機からの位置に基づいて上記慣性航法装置の検出速度を補間する補間手段と、上記画像データの断続的な収集時に上記慣性航法装置を選び、それ以外の時に上記補間手段を選択してレーダ空中線の速度誤差を検出する手段とを備えたことを特徴とする高分解能レーダ装置。
【請求項2】 高度情報をプラットフォームの気圧高度情報で取得する気圧高度計を備え、上記補間手段はこの高度情報に基づいて上記慣性航法装置の高さ方向の速度を補間する機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の高分解能レーダ装置。
【請求項3】 上記レーダ空中線と上記慣性航法装置を搭載するマウントを備え、上記レーダ空中線と上記慣性航法装置をマウントの同一面に配置したことを特徴とする請求項1記載の高分解能レーダ装置。
【請求項4】 プラットフォームの移動方向と慣性航法装置の基準軸との間に所定の角度をなすことを特徴とする請求項3記載の高分解能レーダ装置。
【請求項5】 GPS受信機の出力であるプラットフォーム位置を慣性航法装置のアライメント初期値とする手段を有する請求項1記載の高分解能レーダ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】航空機等移動するプラットフォームに搭載し数十メートル以下の分解能の画像データを収集することを目的とする高分解能レーダ装置に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】高分解能レーダは、移動可能なプラットフォームに搭載し、地上もしくは海上の所定範囲をマッピングする目的に使用される。データ収集の方法はプラットフォームの種類とビーム走査方法によって異なるが、航空機のようにデータ収集時刻と収集領域の選択の自由度が高いプラットフォームでは、断続的にデータを収集し目的の地域に到達するまではデータ収集を行われずに通常の航行をする場合もある。図9はこの種の高分解能レーダの構成を示す図で、1は電波を空間に放射し反射波を受信するレーダ空中線、2はレーダ波の送信・受信を行う送信受信機、3は受信信号をディジタル処理する信号処理器、4は上記ディジタル信号の処理結果を記録するデータ記録器、6はレーダ空中線の動揺を速度として検出する慣性航法装置、5は上記各機器を制御し信号の入出力を行う制御器、9はマンマシンインタフェースを司る操作表示器からなるレーダ装置である。高分解能画像を得るためには、信号処理器3によるリアルタイム処理あるいはデータ記録器4への記録後のオフライン処理において、高精度の動揺補償を常に行う必要があり、このためレーダ空中線1の開口中心の速度を精度良く検出し、記録する必要がある。従来は、プラットフォームの速度検出用のセンサとして航法支援を目的とする慣性航法装置6が利用されてきた。
【0003】図10は通常の慣性航法装置のアライメント手順を示す図で、慣性航法装置立ち上げ直後に実施する処理を示している。アライメント手順として、ステップ15はプラットフォームの初期位置の入力、ステップ16は上記初期位置に基づくアライメントであり、所要の速度精度出力を得るために正確な初期位置入力を必要とする。アライメントは慣性航法装置内部において、重力に基づくレベリングと地球の自転速度と位置を利用したヘディングについて実施する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来からの航法支援を目的とする慣性航法装置を高分解能レーダにおける動揺補償用の速度検出センサとして使用する場合、加速度検出結果を積分することにより生じる長時間運用時の速度誤差の増大、プラットフォームと慣性航法装置の基準軸の相対角度、アライメント用初期位置設定精度による速度誤差が画像データの解像度を劣化させる問題点があった。
【0005】この速度誤差が増大してゆく現象は、高分解能レーダの合成開口時間あるいは数十分程度の短時間運用では特に問題とならないが、数時間にわたって運用される場合、速度の絶対誤差が増加し、画像の解像度を劣化させる。この現象は現在存在し得る最高性能の慣性航法装置を用いても、原理的に生じるものであり、外部からの補正が必要である。
【0006】また、慣性航法装置のプラットフォームへの設置においては、通常のプラットフォームの航法支援を目的とする場合、レーダ空中線と離れた位置となることが多く、プラットフォームの剛性が保たれない場合、高分解能レーダで必要とするレーダ空中線開口中心の動揺を検出することが困難となる。また、プラットフォームの移動方向と慣性航法装置の基準軸が合致することにより、特定の軸の速度誤差が相対的に大きくなる現象も存在する。
【0007】さらに、慣性航法装置の初期位置設定精度は姿勢角検出用のジャイロのアライメント誤差およびアライメントに要する時間の増大を招くとともに、運用開始時等の状況においてオペレーション上の負担ともなる。この発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、慣性航法装置を高分解能レーダにおける動揺速度検出用センサとして用いる場合に生じる、長時間運用時の速度の発散、プラットフォームへの設置条件、またはアライメント用初期位置設定精度による速度誤差を少なくすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1の発明による高分解能レーダ装置は、航空機等移動するプラットフォームに搭載し数十メートル以下の分解能の画像データを適宜収集する高分解能レーダ装置において、電波を空間に放射し反射波を受信するレーダ空中線と、レーダ波の送信もしくは受信を行う送信および受信機と、上記受信信号をディジタル処理して画像データを集収する信号処理器と、上記レーダ空中線の動揺を速度として検出する慣性航法装置と、上記プラットフォームの位置を検出するGPS受信機と、上記GPS受信機からの位置に基づいて上記慣性航法装置の検出速度を補間する補間手段と、上記画像データの断続的な収集時に上記慣性航法装置を選び、それ以外の時に上記補間手段を選択してレーダ空中線の速度誤差を検出する手段とを備えたものである。
【0009】第2の発明による高分解能レーダ装置は、第1の発明において、高度情報をプラットフォームの気圧高度で取得する気圧高度計を備え、上記補間手段はこの高度情報に基づいて上記慣性航法装置の高さ方向の速度を補間する機能を備えたものである。
【0010】第3の発明による高分解能レーダ装置は、第1の発明において、上記レーダ空中線と上記慣性航法装置を搭載するマウントを備え、上記レーダ空中線と上記慣性航法装置をマウントの同一面に配置したものである。
【0011】第4の発明による高分解能レーダ装置は、第1の発明において、プラットフォームの移動方向と慣性航法装置の基準軸との間に所定の角度をなすことを特徴とするものである。
【0012】第5の発明による高分解能レーダ装置は、第1の発明において、GPS受信機の出力であるプラットフォーム位置を慣性航法装置のアライメント初期値とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1を示すブロック図であり、図において1〜6,9は図9と同様なものであり、7はGPS信号を受信するGPS(GrobalPositioning System)空中線、8はGPS受信機、10は気圧高度計であり、GPS受信機8および気圧高度計10からはプラットフォームの位置、高度情報を制御器5に提供する。一般にわが国で使用を認められている商用コードのGPSでは100メートル程度、気圧高度計は1万フィート以上の高度では数十メートルの精度を有する。
【0014】図2はこの発明の実施の形態1を示す慣性航法装置とGPS受信機からの信号の組合せを行う制御器5を示すブロック図であり、11は慣性航法装置6からの速度出力をGPS受信機8の位置出力の微分により補間する処理、12は上記補間処理時と純慣性時の切替を行うスイッチ、13は上記スイッチを切り替えるタイミング制御部であり、データを収集中は純慣性、データ収集停止時には補間処理を選択するスイッチ制御を行う。
【0015】図3はこの発明の実施の形態1を示すGPSによる補間処理時と純慣性時における速度出力の精度の概念図であり、(a)は純慣性時の検出速度の経時変化、(b)はGPSによる補間処理時の速度出力の経時変化を示す。(a)は合成開口処理時間程度の短時間では十分な精度を有するが、長時間の運用においては積分により誤差が積み上がり増大する。(b)はGPSの出力間隔である1秒程度で速度誤差を補正するため長時間の運用では絶対値を抑えることができるが、上記間隔でデータの不連続が発生し、高分解能レーダ信号処理には適さない。従って、データ断続的な収集時に純慣性を選び、非収集時もしくは長期的な収集において、図2に示した構成により補正処理を選択する。これによって、レーダ空中線の動揺速度を精度良く検出することができ、特に長時間運用時の速度誤差を約50%に抑制して得られる画像データの解像度を向上させることが可能となる。
【0016】実施の形態2.図4はこの発明の実施の形態2を示すブロック図であり、図において1〜9は図1と同様、14はレーダ空中線1と慣性航法装置6のプラットフォームとの機構的なインタフェースとなるマウントである。マウント14の役割は、レーダ空中線1と慣性航法装置6が同一の振動、動揺をするだけの構造的強度を有すること、両機器の間の機構的なアライメントを機械加工精度(数μmオーダ)で抑えることにある。
【0017】図5はこの発明の実施の形態2に関わる慣性航法装置6とレーダ空中線1の設置例を示す図であり、(a)は垂直マウントの設置例で航空機のノーズに搭載するレーダ、(b)は水平マウントの設置例で航空機の下部搭載のレーダを想定している。いずれについても、マウント14の片側の面を取付面とすることにより1軸分のアライメントを省略し、かつ面内において残り2軸を動かすことによって所要の取付精度を容易に実現することができる。
【0018】図6はこの発明の実施の形態2に関わる慣性航法装置6のプラットフォームへの設置方法を示す図であり、マウント14上の慣性センサ6の取付方向をプラットフォームの移動方向と略45゜の傾きを付けることにより検出速度成分を2つの軸に分散することにより誤差を抑えることができる。
【0019】図7はこの発明の実施の形態2に関わる慣性航法装置6の検出速度成分を示す図であり、慣性航法装置の姿勢角のずれが速度検出誤差に及ぼす影響を示している。例えば、X軸方向に速度vでプラットフォームが移動中に姿勢角の誤差θが生じていれば、下記の速度誤差成分ΔvがY軸およびZ軸方向に発生する。
Δv=v・sinθvはX軸方向に大きな成分を持つため、ΔvがY軸およびZ軸に偏って大きく発生することになる。プラットフォームの移動方向がほぼ判っている場合、上記姿勢角による誤差成分をX軸およびY軸に例えば45゜の傾きを付けて均等配分することで、各軸の速度誤差を上記の例に比べ70%以下に低減し、画像データの解像度を向上させることができる。なお、この例では角度45゜の傾きを設けるのが望ましいが、傾きとして他の角度であっても各軸の速度誤差が低減できることはいうまでもない。
【0020】実施の形態3.図8はこの発明の実施の形態3を示すフローチャートであり、図においてステップ15〜16は図10と同様、ステップ17はGPSによる初期位置確定、ステップ18はGPSによる初期位置と慣性航法装置への初期位置入力との比較と再アライメント処理である。ステップ17による初期位置確定結果をもって、ステップ18の比較処理によりステップ15の結果とステップ17の結果が1NM程度以内であればステップ16のアライメント結果を使用し、許容範囲から外れる場合はアライメント精度を確保するためにステップ17の結果を用いて再アライメントを実施する。初期位置が既に確定している地点における運用やGPS受信不調時においては、従来同様のステップ15〜16によるアライメントを実施する。
【0021】
【発明の効果】第1の発明によれば、慣性航法装置と補間手段の出力の選択によりレーダ空中線の速度誤差を低減することが可能となる。
【0022】また、第2の発明によれば、プラットフォームの気圧高度情報を用いることにより、レーダ空中線の速度誤差を低減することが可能となる。
【0023】また、第3の発明によれば、レーダ空中線と慣性航法装置をマウントの同一面に固定し、レーダ空中線と慣性航法装置の相対変位を抑制するとともにレーダ空中線の速度誤差を低減することが可能となる。
【0024】また、第4の発明によれば、プラットフォームの移動方向と慣性航法装置の基準軸との間に所定の角度をなすことにより、レーダ空中線の速度誤差を抑制することが可能となる。
【0025】また、第5の発明によれば、GPS受信機の出力であるプラットフォーム位置を慣性航法装置のアライメント初期値とすることによりアライメント時間の短縮とレーダ空中線の速度誤差を低減することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成11年1月27日(1999.1.27)
【代理人】 【識別番号】100102439
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開2000−214253(P2000−214253A)
【公開日】 平成12年8月4日(2000.8.4)
【出願番号】 特願平11−18540