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【発明の名称】 磁気センサ素子の製造方法
【発明者】 【氏名】上埜 修司

【氏名】武士田 健一

【氏名】藤本 勝幸

【要約】 【課題】安定した特性を示す磁気センサ素子を容易に製造することができる磁気センサ素子の製造方法を提供する。

【解決手段】次の3工程からなる磁気センサ素子の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の3工程からなる磁気センサ素子の製造方法。
(1)磁性体に導線を巻線してインダクタ素子を形成させる工程、(2)形成させたインダクタ素子の巻線端子を樹脂製容器に設置されている導体金属に接合させた後樹脂製容器に挿入させる工程、又は形成させたインダクタ素子を樹脂製容器に挿入させた後巻線端子を樹脂製容器に設置されている導体金属に接合させる工程、(3)前記(2)の工程後に樹脂製容器を密閉させる工程。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性体とその磁性体上に巻かれた導線とからなるインダクタ素子を利用した磁気センサ素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子・情報分野に限らず、工業用各種機器においても使用されている磁気センサには、小型かつ高感度であることが要求されている。中でも急速に発展しているコンピュータなどの情報分野や計測分野などでは、磁気センサのセンシングヘッド部となる磁気センサ素子の小型化が緊急の課題となっている。
【0003】磁気センサ素子におけるセンシング素子の一つにインダクタ素子を利用したものがある。インダクタ素子は、高透磁率磁性体をコアとし、そのコアの外周に銅線が巻かれたことを基本構成としたものである。通常、このインダクタ素子は、電子回路を構成する受動素子部品の一つとして使用されるが、高透磁率磁性体のインダクタンス成分による信号が外部からの磁界(Hex)の印加により敏感に変化することを利用して磁気センサ素子として用いられている。このようなインダクタ素子を使用した磁気センサ素子は、前述したように構成が至って簡単であり、故障が少ないという長所を備えている。そのため、小型かつ高感度な磁気センサ素子として、高透磁率磁性体を用いるインダクタ素子を利用する方法が再び注目されるようになってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような背景から、本発明者らは先に、小型で高感度な磁気センサ素子として、磁性体に断面積が0.55mm2 以下で、かつ、磁性体の飽和磁歪定数λsが|λs|<1×10-6であるものを用い、その磁性体上に巻線を施したインダクタ素子を基本構成とする磁気センサ素子を提案した(特願平9−314981号)。そして、その磁気センサ素子を用いて様々な分野への応用展開を検討してきた。その結果、前記で提案された磁気センサ素子は、確かに小型で高感度な磁気センサ素子を実現し、種々の分野に応用可能であることが判明した。
【0005】しかし、磁気センサ素子としては、性能の安定した磁気センサ素子が工業的に生産されることが必要であり、工業製品として広く実用化を計るため、提案された磁気センサ素子に適した製造方法の開発が求められていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このような課題を解決するために検討を行った結果,磁気センサ素子の基本構造である磁性体と磁性体上に巻かれた導線部分からなるインダクタ素子をリードフレームなどの導体金属を設置した樹脂製容器に挿入し、その後樹脂を用いて密閉させると、前記課題を達成することができるということを見出し、本発明に到達した。
【0007】すなわち、本発明は、次の3工程からなる磁気センサ素子の製造方法を要旨とするものである。
(1)磁性体に導線を巻線してインダクタ素子を形成させる工程、(2)形成させたインダクタ素子の巻線端子を樹脂製容器に設置されている導体金属に接合させた後樹脂製容器に挿入させる工程、又は形成させたインダクタ素子を樹脂製容器に挿入させた後巻線端子を樹脂製容器に設置されている導体金属に接合させる工程、(3)前記(2)の工程後に樹脂製容器を密閉させる工程。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明においては、まず、第1の工程として、磁性体に導線を巻線してインダクタ素子を形成させることが必要である。ここで、磁性体としては、断面積が0.55mm2 以下のものを用いることが好ましく、小型の磁気センサ素子を可能にするという観点からは、断面積が0.25mm2 以下のものを用いることがより好ましい。なお、磁性体の断面積が0.55mm2 より大きくなると、長さが10mm以下の小型素子を形成させた場合、磁性体コアは反磁界の影響を受けやすくなるので好ましくない。
【0009】また本発明に用いられる磁性体としては、飽和磁歪定数λsが|λs|<1×10-6であるものを用いることが好ましい。ここで、磁性体として飽和磁歪定数λsが|λs|≧1×10-6であるものを用いた場合は、後述の直接巻線や被覆樹脂から応力の影響が無視できなくなり、形成させたインダクタ素子のインダクタンス値がバラツキ、特性の安定した磁気センサ素子が得られなくなるおそれがあるので好ましくない。なお、温度変化が急激に生じるような環境下で用いられる磁気センサ素子を提供する場合には、磁性体として飽和磁歪定数λsが|λs|≦0.5×10-6であるものを用いることが好ましい。
【0010】さらに本発明に用いられる磁性体としては、10ミリエルステッド(mOe)、10kHzの励振磁界における透磁率が1000以上の高透磁率金属材料であれば、磁性体の結晶構造(結晶又は非晶質)、合金組成や形状には特に限定されるものではない。中でも、後述の直接巻線にも耐えうる高い強度を有するCo−Fe−Si−B系の高透磁率非晶質金属材料は、本発明に用いられる磁性体としては特に好ましい。さらにまた、本発明においては、前記磁性体上に導線を巻くことによりインダクタ素子を構成することが必要であるが、直接導線を巻くこと(直接巻線)が望まれる。ここで、磁性体上に巻かれる導線は小型コイルを形成させるものであり、本発明に用いられる導線としては、絶縁被覆層を有した金属線材を用いることが望まれ、また必要に応じて外部に融着層を有する金属線材を用いることができる。なお、絶縁被覆層については通常の絶縁破壊電圧試験等の試験項目によって絶縁破壊を起こさない層厚の範囲であれば、種々の層厚のものを用いることができるが、被覆層の耐熱性としては100℃以上であることが望ましい。また、金属線材の材質については、通常、銅及び銅合金が用いられるが、銅に対して5〜100%の導電性を有する金属材料であれば、種類及び組成を問わず用いることができる。
【0011】また、本発明においては、インダクタ素子を構成する導線の断面積Swと磁性体の断面積Smの比(Sw/Sm)がSw/Sm≦9であれば、巻線に共される導線が、その作業性を損なうことなく容易に直接巻線が可能になり、本発明における製造条件としては特に好ましいものである。なお、この直巻線からなるインダクタ素子の製造においては、通常用いられている巻線機の他に、フライヤー方式の巻線機の利用も可能であり、所望の巻数のコイル形状のインダクタ素子を10〜10000rpmの巻線速度で製造することができる。
【0012】本発明においては、第2の工程として、形成させたインダクタ素子の巻線端子を樹脂製容器に設置されている導体金属に接合させた後樹脂製容器に挿入させるか、又は形成させたインダクタ素子を樹脂製容器に挿入した後巻線端子を樹脂製容器に設置されている導体金属に接合させることが必要である。ここで、本発明における導体金属としては、例えば導電性の良好な銅やアルミニウム及びその合金などの金属材料があげられ、磁気センサ素子を製造する観点から、非磁性の薄板状金属材料(リードフレーム用材料)を用いることが好ましく、後工程での加工性より厚さが0.05〜0.5mmの薄板状金属材料を用いることが最も好ましい。また、この導体金属は、樹脂製容器に設置されていることが必要であり、特に導体金属の一部が樹脂製容器の表面に磁気センサ素子の出力用に平面状に露出するように設置されていることが好ましい。
【0013】例えば、ここで図1をもとに説明すると、図1は本発明における導体金属を設置させた樹脂製容器の一例を示す概略斜視図であり、図1では、蓋のない箱状の樹脂製容器1に予め設置された導体金属(以下単にリードフレームという)2を示している。ここで、リードフレーム2の端部3は平面状に露出している。またリードフレーム2の他の部分は、樹脂製容器1内部に存在し前工程で作製されたインダクタ素子の巻線端子と接合が可能になっている。本発明においてインダクタ素子の巻線端子(以下コイル端子という)をリードフレームに接合させるとは、例えばインダクタ素子の二つのコイル端子をリードフレームに電気的に接合させることも意味している。例えば、ここで図2をもとに説明すると、図2は本発明におけるインダクタ素子のコイル端子とリードフレームとが接合された状態を示す概略斜視図であり、図2では、インダクタ素子4のコイル端子5がリードフレーム2に、ハンダ付け6により接合されている。このようにコイル端子5からなるインダクタ素子4のコイル端子5をリードフレーム2に接合させる際には、ハンダ付けやスポット溶接などの信頼性の高い電気的接合方法を用いることが好ましい。例えば、本発明における接合方法として、ハンダ接合を採用する場合は、フラックス入りのPb合金やSn合金の線状ハンダを用い、ハンダ付け温度220〜370℃で接合を行うことができる。また、スポット溶接を採用する場合は、電極にタングステンやモリブデンを用いて電流100〜9000A、通電時間0.01〜15秒の条件で良好な接合を行うことができる。
【0014】本発明においてはインダクタ素子の本体を樹脂製容器に挿入させることが必要である。そしてこのインダクタ素子を挿入させる工程は、前記の巻線端子と導体金属を接合させる工程の前か後に行うことが必要である。本発明における樹脂製容器としては、例えば蓋のない箱(直方体)や升のような外観からなり、容器の内部にインダクタ素子を格納することができるようになっているものであれば如何なるものでもよい。また、インダクタ素子を常に決まった位置に挿入できるように、樹脂製容器1の中には図2に示すごとく、インダクタ素子4の磁性体コア部7の位置決め部8がついている。本発明では、インダクタ素子4の磁性体コアの両端が位置決め部8に配置されるように、インダクタ素子4を樹脂製容器1に挿入させることが好ましい。また、樹脂製容器の材料としては、電気絶縁性に優れる種々の高分子材料のものを用いることができ、種々の熱硬化性及び熱可塑性を示す樹脂を利用することができる。中でも本発明においては射出成形が可能な熱可塑性樹脂としてASTM基準(18.6kg/cm2 )による熱変形温度が120℃以上である樹脂が好ましく、熱変形温度が150℃以上である樹脂がさらに望ましい。また、ガラスや酸化物などの無機物繊維や無機物粒子を含む樹脂も用いることができる。本発明に用いられる樹脂としては,例えばポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂等があげられる。
【0015】さらに本発明においては、第3の工程として、インダクタ素子を挿入させた後に前記樹脂製容器を密閉させることが必要であり、密閉させる方法としては、インダクタ素子を外気と遮断するように樹脂により密閉できれば種々の方法を用いてもよい。中でも樹脂製の蓋を利用して密閉させる方法や樹脂を容器の空隙部に充填させて密封させる方法などは好ましい方法である。例えば、樹脂製の蓋を利用する場合は、樹脂製の蓋の内側に接着剤を塗布し、樹脂製容器に蓋をすれば容易に密閉させることができる。また、樹脂製容器に蓋を機械的に行った後に超音波を用いて蓋と容器を一体化する方法も量産性に優れた方法である。ここで樹脂製の蓋について例えば図3をもとに説明すると、図3は本発明に用いられる樹脂製の蓋の一例を示す概略斜視図であり、樹脂製の蓋9に位置決め機構を補佐するような部位、例えば位置決め用突起10を形成させることが好ましい。なお、密閉に用いる樹脂としては、前記の熱可塑性あるいは熱硬化性の種々の樹脂を用いることができる。
【0016】本発明においてはインダクタ素子を挿入させた後に樹脂製容器を樹脂により密閉させる際に、予めインダクタ素子の保護のため、インダクタ素子を応力緩衝用の樹脂で被覆した後に、樹脂により密閉させることが望ましい。この応力緩衝用の樹脂としては、室温でゴム弾性を示す樹脂であれば、種々のものを用いることができるが、中でも、硬化時に収縮をほとんど示さず、金属類をほとんど腐食しないシリコーンゴム系樹脂が好ましい。また、応力緩衝用樹脂層の厚さとしては、0.01mm以上であることが応力緩衝効果を得る上では好ましく、0.03mm以上であることがより好ましい。
【0017】ここで図4をもとに説明すると、図4は本発明によって製造された磁気センサ素子の一例を示す概略斜視図であり、図3に示した樹脂製の蓋9を用いてインダクタ素子を挿入させた後に樹脂製容器を密閉させた状態を示している。ここで、樹脂製の蓋9は図3に示した位置決め用突起10を備えたものであり、図1に示した樹脂製容器の位置決め部(V字溝)8に機械的にはまるようになっている。また、図4では見えないが、蓋を閉める前にインダクタ素子を保護するためにシリコーンゴム系樹脂を容器に注入し固化させている。さらに、樹脂製の蓋9は、樹脂製容器1と接着剤により固定されている。
【0018】以上説明してきたように、本発明における磁気センサ素子の製造工程には、通常利用される種々の巻線技術、接合技術、樹脂被覆・成形技術、加工技術を用いることができる。
【0019】
【実施例】次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1磁性体として、(Co0.94Fe0.0672.5Si12.515(原子%)からなる組成を有する急冷凝固材から冷間線引き工程を経た直径100μm径の非晶質磁性細線をもとに、475℃の温度下で3秒間の熱処理を施して作製した長さ10mmの細線を使用した。なお、非晶質磁性細線の透磁率は20cmの長さのものについて10ミリエルステッド(mOe)、10kHzの励振磁界において測定したところ、15000を示し、また磁歪は飽和磁歪定数λsが−0.1×10-6であることを確認した。
【0020】まず表層が変成ポリエステル樹脂からなる外径100μm(導通銅部のみの外径は80μm)の被覆導線を用いて田中機械製巻線機により、500rpmの巻線速度で前記磁性体上に長さ6mmの間隔の巻数350ターンのコイルを形成させてインダクタ素子を得た。次に、導体金属として真鍮を母体とし、下地にハンダメッキを施した厚さ0.15mm、幅1.5mmのリードフレームとエポキシ樹脂を用いて図1に示すリードフレーム2、3を備えた高さ6mm、幅4mm、長さ12mm、肉厚2mmの樹脂製容器1を作製した。
【0021】そして、図2に示すように前記のインダクタ素子4の巻線端部5をリードフレーム端部にハンダ付け6を行って接合させた。ここで、ハンダは日本アルミット社製のKR−19を用い、ハンダ付け温度は350℃であった。さらに、インダクタ素子4の磁性体コアの両端7を樹脂製容器1の位置決め部8にくるように、インダクタ素子4を樹脂製容器1内に挿入させた。次いで、樹脂製容器1に挿入させたインダクタ素子4に、応力緩衝用の樹脂として信越化学製のシリコーン樹脂を注入し一昼夜室温で乾燥させた。
【0022】次に、シリコーン樹脂乾燥後に、接着剤としてアロンアルファ(東亜合成社製)を用いて図3に示す位置決め用突起10を備えた厚さ1mm、幅4mm、長さ12mmのエポキシ樹脂製の蓋9により樹脂製容器1を密閉させた。その結果、図4で示すとおり、表面実装技術に対応可能な磁気センサ素子を作製することができた。なお、作製した磁気センサ素子をヘルムホルツコイル内に置き、磁性体の長手方向に種々の大きさの外部磁界Hexをかけ、磁気センサ素子のインダクタンス値を測定したところ、図5に示す結果を得た。ここで、図5中の測定周波数は10kHzで、励磁電流は1mAの正弦波であり、測定温度は室温(23℃)であった。図5より、本発明の製造方法によって、良好な磁界センシング機能有する磁気センサ素子が製造できることが判明した。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、磁気センシング特性を左右する磁性体コアの端部位置を所定の位置に精度良く合わせることができるため、安定した特性を示す磁気センサ素子を容易に製造することが可能になる。また、本発明によって製造された磁気センサ素子にはセンサ出力のための導通部分も表面に備えているため、各種表面実装技術にも応用可能な磁気センサ素子が提供できる。したがって、本発明によれば、応用性又は汎用性の高い磁気センサ素子の工業的に生産可能な製造方法が提供される。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【出願日】 平成11年1月25日(1999.1.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−214240(P2000−214240A)
【公開日】 平成12年8月4日(2000.8.4)
【出願番号】 特願平11−15457