トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 レンズ収差測定装置及びそれを用いたレンズ傾き調整装置
【発明者】 【氏名】笠澄 研一

【氏名】佐野 晃正

【氏名】安田 勝彦

【氏名】水野 定夫

【要約】 【課題】対物レンズのコマ収差を補正するようにディスク、対物レンズ間の傾きを調整するため、実時間で光学系のコマ収差を測定できるようにする。

【解決手段】反射型回折素子3上に対物レンズ2からの光を集光し、反射光の強度分布を観察し、反射型回折素子を回折格子と垂直な方向に揺動したときのプッシュプル信号を検出する。反射光を検出する光検出器は、左右の干渉領域をそれぞれ内側外側領域と第1から第4象限に分割して、計16の領域に分割し、内側と外側の領域のプッシュプル信号の位相差からラジアル方向のコマ収差を、第1、3象限と第2、4象限のプッシュプル信号の位相差からタンジェンシャル方向のコマ収差を検出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】被測定レンズを照射するコヒーレントビームを生じるコヒーレント光源と、反射型回折格子と、前記被測定レンズの焦点位置と前記反射型回折格子の反射面が一致するように制御する焦点位置制御装置と、前記反射型回折格子と前記被測定レンズの相対位置を前記反射型回折格子の格子と直角方向に変化させる手段と、前記反射型回折格子からの反射ビームのうち、前記反射型回折格子の格子に直角な方向に分割された右側領域を通過する右ビームの中心領域の全部あるいは一部の光量を検出する第1の光量検出手段と、前記右ビームの周辺領域の全部あるいは一部の光量を検出する第2の光量検出手段と、前記反射型回折格子からの反射ビームのうち、前記反射型回折格子の格子に直角な方向に分割された左側領域を通過する左ビームの中心領域の全部あるいは一部の光量を検出する第3の光量検出手段と、前記左ビームの周辺領域の全部あるいは一部の光量を検出する第4の光量検出手段とを少なくとも具備することを特徴としたレンズ収差測定装置。
【請求項2】前記第1及び第3の光量検出手段からの信号の位相と前記第2及び第4の光量検出手段からの信号の位相を比較した第1の位相差信号を少なくとも検出することを特徴とした請求項1記載のレンズ収差測定装置。
【請求項3】前記右ビームの中心領域と周辺領域に挟まれた中間領域の全部あるいは一部の光量を検出する第5の光量検出手段と、前記左ビームの中心領域と周辺領域に挟まれた中間領域の全部あるいは一部の光量を検出する第6の光量検出手段とを少なくとも具備することを特徴とした請求項1あるいは2記載のレンズ収差測定装置。
【請求項4】前記第5および第6の光量検出手段からの信号の位相と、前記第1および第3の光量検出手段からの信号の位相あるいは前記第2及び第4の光量検出手段からの信号の位相を比較した第2の位相差信号とを少なくとも検出することを特徴とした請求項3記載のレンズ収差測定装置。
【請求項5】前記右ビームの中心領域及び前記左ビームの中心領域の形状が前記反射型回折格子の格子の方向に長軸を持つ略楕円形状であることを特徴とした請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ収差測定装置。
【請求項6】前記右ビームの中心領域及び前記左ビームの中心領域の形状が前記反射型回折格子の格子の方向に長い長方形であることを特徴とした請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ収差測定装置。
【請求項7】前記右ビーム及び前記左ビームのそれぞれが、前記反射型回折格子の格子と直角な方向と平行な方向に第1象限から第4象限の領域に4分割され、前記右ビームの第1象限と第3象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第7の光量検出手段と、前記右ビームの第2象限と第4象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第8の光量検出手段と、前記左ビームの第1象限と第3象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第9の光量検出手段と、前記左ビームの第2象限と第4象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第10の光量検出手段とを少なくとも具備し、前記第7及び第9の光量検出手段からの信号の位相と前記第8及び第10の光量検出手段からの信号の位相を比較した第3の位相差信号を少なくとも検出することを特徴とした請求項1から6のいずれか1項に記載のレンズ収差測定装置。
【請求項8】前記右ビームの第1象限と第4象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第11の光量検出手段と、前記右ビームの第2象限と第3象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第12の光量検出手段と、前記左ビームの第1象限と第4象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第13の光量検出手段と、前記左ビームの第2象限と第3象限の領域の全部あるいは一部の光量を検出する第14の光量検出手段とを少なくとも具備し、前記第11及び第13の光量検出手段からの信号の位相と前記第12及び第14の光量検出手段からの信号の位相を比較した第4の位相差信号を検出し、前記第4の位相差信号に応じて前記被測定レンズのフォーカス位置ずれ量を制御することを特徴とした請求項7記載のレンズ収差測定装置。
【請求項9】前記反射型回折格子の格子間隔Λと、前記コヒーレント光源の波長λと、前記被測定レンズの開口数NAとが0.8×λ/NA < Λ < 1.2×λ/NAなる関係を満たすことを特徴とした請求項1から8記載のレンズ収差測定装置。
【請求項10】前記反射型回折格子が位相型回折格子からなり、前記反射型回折格子で反射された前記コヒーレントビームの位相変調深さPが0.15π<P<0.35πなる範囲にあることを特徴とした請求項1から9のいずれか1項に記載のレンズ収差測定装置。
【請求項11】前記被測定レンズ面上の光強度分布パターンを前記受光素子表面上に投影するリレーレンズ系を具備することを特徴とした請求項1から10のいずれか1項に記載のレンズ収差測定装置。
【請求項12】請求項1から11のいずれか1項に記載のレンズ収差測定装置と、前記第1およびあるいは第3の位相差信号に応じて前記被測定レンズの傾きを調整する手段とを具備することを特徴としたレンズ傾き調整装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学的波面解析装置に関し、特に特に光ディスクピックアップヘッド用対物レンズの検査装置、あるいはピックアップヘッド組み立て調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年デジタルバーサタイルディスク(以下DVDと略す)が実用化され、高精細動画像の再生が可能となった。またDVDやコンパクトディスク(以下CDと略す)などの光ディスクは映像音響分野のみならずコンピュータの外部記憶装置としても広く用いられ、CDでは640メガバイト、DVDでは4.7ギガバイトの大容量を実現している。このような光ディスクの高密度化は、光ディスク上の凹凸パターンをより小さくし、より多数の凹凸パターンを形成することで実現されており、その再生においては、半導体レーザからの光を収差の小さい対物レンズを用いて微小な集光スポットをディスク上に形成することが技術的な課題となる。
【0003】光ディスク上に収差のない回折限界の微小スポットを形成するには、収差の小さい光学部品、特に対物レンズを使用することが必要であるが、さらに対物レンズと光ディスクの角度ずれによって生じるコマ収差をなくすために両者を最適な角度に保つことが必要となる。そのため通常の光ディスクピックアップでは、対物レンズを装加したアクチュエータのピックアップ基台に対するあおり角度が調整可能な構造になっており、ディスク再生時の再生ジッタが最小になるようにアクチュエータあおり角を調整し、対物レンズとディスクとの角度を調整している。
【0004】一方、DVDとCDの両ディスクを再生可能な光ピックアップの1方式として、ひとつのアクチュエータ上にDVD用レンズとCD用レンズの2つのレンズを搭載したピックアップが提案されている。この2レンズ方式のピックアップでは、DVD用CD用の2つのレンズに対してその角度をディスクに対して最適に保つ必要があるが、上記のようにアクチュエータの角度を調整する方法では2つのレンズを同時に最適な角度に設定することができない。
【0005】2レンズ方式ピックアップのレンズ角度調整方法としては、(1)第1のレンズをアクチュエータに固定後アクチュエータ全体をあおり調整し、さらに第2のレンズをアクチュエータに対して角度調整してから固定する。
(2)第1のレンズをアクチュエータに固定後アクチュエータ全体をあおり調整し、アクチュエータのあおり方向に応じてあらかじめコマ収差を測定しておいた第2のレンズを固定する。などの方法が考えられる。(1)の方法では、従来のディスクと同様に、ディスク再生に最適な角度に両レンズを調整することが可能であるが、2つ目のレンズを調整する際にはアクチュエータを固定してその上でレンズの角度調整をするため、従来のようにアクチュエータを駆動してディスク再生しながら調整することができない。このため、再生信号が最適になるように調整する代わりに集光スポットの収差が最小になるように調整する必要がある。また、(2)の方法では、あらかじめレンズのコマ収差を測定する必要がある。このように、(1)、(2)の方法ともレンズ単体あるいは光学系全体の収差を測定することが必要になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の収差測定方法では干渉縞を測定するため複雑な光学系と高精度の位置調整が必要になるなどの欠点があった。また他の収差測定方法として、集光スポットを観測する方法がある。これは、レンズで集光されたスポットを顕微鏡で観察する方法で、集光スポットの1次サイドローブの分布からコマ収差を、デフォーカスしたときのスポットのひずみから非点収差を、1次サイドローブの大きさから球面収差を見積もることができる。しかし、この方法では非常に微小な集光スポットを顕微鏡で観察するため、顕微鏡の視野内にスポットをとらえ、かつ顕微鏡の焦点をスポット上に正確にあわせるために時間がかかり、迅速な測定ができないという欠点があった。
【0007】また、公開広報特開昭59−116522号公報(理化学研究所 谷田貝他)にはグレーティングを利用した収差の測定方法が開示されているが、干渉縞の空間分布を取り込み画像処理を施す必要から、この方法も測定に時間がかかる欠点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため、本発明の収差測定装置では、被測定レンズを照射するコヒーレントビームを生じるコヒーレント光源と、反射型回折格子と、前記被測定レンズの焦点位置と前記反射型回折格子の反射面が一致するように制御する焦点位置制御装置と、前記反射型回折格子と前記被測定レンズの相対位置を前記反射型回折格子の格子と直角方向に変化させる手段と、前記反射型回折格子からの反射ビームのうち、前記反射型回折格子の格子に直角な方向に分割された右側領域を通過する右ビームの中心領域の全部あるいは一部の光量を検出する第1の光量検出手段と、前記右ビームの周辺領域の全部あるいは一部の光量を検出する第2の光量検出手段と、前記反射型回折格子からの反射ビームのうち、前記反射型回折格子の格子に直角な方向に分割された左側領域を通過する左ビームの中心領域の全部あるいは一部の光量を検出する第3の光量検出手段と、前記左ビームの周辺領域の全部あるいは一部の光量を検出する第4光量検出手段とを用いる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明のレンズ収差測定装置について、図を参照しながら説明を加える。
【0010】まず図1に示した本発明の収差測定装置の光学系の概略構成図を用いて基本的な動作原理を説明する。コヒーレント光源1から出射された光はハーフミラー18と被測定レンズ2をを通過して反射型回折素子3上に集光される。反射型回折素子3で反射された光はハーフミラー18で反射され、リレーレンズ11、12を経て光検出器4に達する。反射光の一部はハーフミラー17によってサーボ信号検出手段16に導かれ、反射型回折素子3上での焦点位置制御信号を発生する。反射型回折素子3はこの焦点位置制御信号で駆動されるアクチュエータ15によって、常に被測定レンズの焦点位置上に位置制御されるとともに、回折格子に垂直な方向に揺動される。
【0011】反射型回折素子3でのコヒーレントビームの反射の様子を図2に示す。反射型回折格子3で反射された光は、同時に回折格子で回折され±1次回折光22、23と0次回折光21を生じる。このとき±2次以上の回折光も生じるが、被測定レンズ2の開口外に進むため、図2では省略している。図2(b)は上記の回折光のうち、被測定レンズ2にとらえられる光の平面分布を表しており、レンズ開口9内の左右のラグビーボール形状の部分は0次回折光と±1次の回折光とが重なり合って干渉を起こす干渉領域24、24aとなる。被測定レンズ2に収差のないときには、それぞれの回折光は一様な位相分布をもち、干渉領域24、24a中には一様な強度分布をもった反射光が観察される。
【0012】反射型回折素子3を図中矢印で示したように回折格子に垂直な方向に移動したときの回折光の各位相変化を図3(b)に表す。回折格子の移動に対して0次光の位相は変化しないのに対し、−1次、+1次の回折光には図中矢印で示したようにそれぞれ逆方向の位相シフトが与えられ、左右の干渉領域24、24aの光強度は明暗を繰り返す。この反射光を図4(a)のような左右2分割された光検出器で検出すると、左右の光強度差からいわゆるプッシュプル信号29が得られる。図4(b)は図4(a)の光検出器で検出される信号の時間変化を示した図である。差動信号検出手段28で左右の光検出器からの信号の差動信号をとることでプッシュプル信号29が得られる。
【0013】被測定レンズ2に収差がある場合には0次、±1次それぞれの回折光にも収差が発生し、それらの干渉する干渉領域内で位相分布が生じる。このため、収差がない場合には干渉領域内では一様な明暗変化が生じていたのに対し、収差がある場合には、明暗変化の時間的位相にも空間分布が生じる。この位相を検出して被測定レンズの収差を測定するのが本発明の収差測定装置の特徴である。
【0014】図5(a)は回折格子と垂直な方向にコマ収差がある時の対物レンズ開口内の0次回折光の位相分布を表し、図5(b)は図5(a)のB−B’面の断面図である。図5(b)中実線は0次光の、破線は±1次回折光の位相分布である。図のように、0次回折光はS字状の位相分布を示し、±1次回折光は、0次光の位相分布をそれぞれ左右に平行移動した形状の位相分布をなす。回折格子が格子と垂直な方向に移動したときには、0次回折光の位相は変化しないのに対し、図中の矢印で表したように、±1次回折光にはそれぞれ逆向きの方向に位相シフトを生じる。このとき0次光と±1次回折光の干渉領域での強度分布の変化を考えると、左右の領干渉域ともに干渉領域の周辺部に対して、中心部の強度分布変化の位相が遅れることが分かる。
【0015】この位相差を検出するには図6(a)の構成の光検出器を用いる。回折格子を格子と垂直な方向に移動させ、内側領域と外側領域で別個にプッシュプル信号を検出する。これらの信号の時間変化の様子は図6(b)のごとく位相差を生じ、この位相差の大きさからコマ収差の大きさを知ることができる。
【0016】同様に図7(a)には、回折格子と平行な方向にコマ収差があるときの対物レンズ開口内の0次光の位相分布を表し、図7(b)、(c)はそれぞれ図7(a)のC−C’面、D−D’面の断面図を表す。図7(b)では、左右の干渉領域ともに強度分布変化はそれぞれの干渉領域内の右側で位相が進み、左側で位相が遅れているのが分かる。また図7(c)では図7(b)と逆に、左右の干渉領域ともに強度分布変化はそれぞれの干渉領域内の右側で位相が遅れ、左側で位相が遅れている。この強度分布変化の位相を平面的に表したのが図8(a)である。左右の干渉領域中でそれぞれ第1、第3領域の位相が遅れ(図中TEd+、TEd−で表す)第2、第4象限の領域で位相が進み(図中TEa+、TEa−で表す)、これに応じた分割パターンを持つ光検出器を用いてこの位相差を検出できる。すなわち、第1第3象限から検出したプッシュプル信号と、第2、第4象限から検出したプッシュプル信号を検出すると、図8(b)に示した信号が得られ、両信号の位相差からコマ収差の大きさを知ることができる。
【0017】以上の説明のように、左右の干渉領域を内側と外側に分割して回折格子と垂直な方向のコマ収差を検出し、左右の干渉領域を第1から第4象限の4つの領域に分割して回折格子と平行な方向のコマ収差を検出することができるが、これらの両方向のコマ収差を同時に検出するためには、図9に示すような光検出器を用いればよい。すなわち、被測定レンズ開口9内を図のように第1から第16の領域に分割して、第n領域からの信号をSnと表して、RT1=(S1+S2+S5+S6)−(S3+S4+S7+S8)
RT2=(S9+S10+S13+S14)−(S11+S12+S15+S16)
TT1=(S1+S9+S6+S14)−(S3+S11+S8+S16)
TT2=(S4+S12+S7+S15)−(S5+S13+S2+S10)
なる式で表される信号を生成する。RT1信号とRT2信号の位相差から回折格子に垂直な方向のコマ収差成分の大きさを、TT1信号とTT2信号の位相差から回折格子に平行な方向のコマ収差成分の大きさを同時に知ることができる。
【0018】実際のレンズではコマ収差は任意の方向に生じているが、上記の方法で求めた垂直、平行な方向のコマ収差成分の比からコマ収差の方向を知る。
【0019】以上で本発明のレンズ収差測定装置の動作原理を説明した。次に、より高精度に収差を検出するための光学系の各構成要素の特性について説明する。
【0020】これまでの原理説明では、図2(b)に示した回折光パターンを光検出器4上での光強度分布として扱っていた。しかし厳密には図2(b)のパターンは被測定レンズ2表面上での分布を表しており、被測定レンズ2から光検出器4までレンズを用いずに空気中を伝搬させるとフレネル回折によってその分布形状に乱れが生じる。図1中のリレーレンズ11、12はこの回折による乱れを防ぐ効果を持つ。すなわち、リレーレンズ11、12の焦点距離をfとすると、被測定レンズ2からリレーレンズ12までの距離とリレーレンズ11から光検出器4までの距離はともにfに等しく、両リレーレンズ間の距離は2fに等しくなるように配置したとき、被測定レンズ2の表面上の反射光分布は光検出器4上に1対1に結像され、フレネル回折による像のぼけを生じることなく回折光の強度分布を検出することができる。
【0021】また、より精度良く各領域での信号位相を測定するには干渉領域を大きく取るのがよい。逆に、干渉領域24、24aを大きく取りすぎて+1次回折光23と−1次回折光22が重なり合うと両者の干渉によって強度分布に乱れが生じる。このため最適な干渉領域の形状は、±1次回折光24、24aが被測定レンズ2の開口径Dに対して半分の長さD/2だけシフトし、±1次回折光同士が接するような構成にするのがよい。
【0022】被測定レンズ2面上で±1次回折光24、24aがシフトする距離dは、コヒーレント光源1の光源波長λと、反射型回折素子3の格子間隔Λと被測定レンズの焦点距離fLとを用いて、d=fL×λ/Λで表されるので、最適な格子間隔ΛはΛ=2×fL×λ/D=λ/NAとなる。ここでNA=D/(2×fL)は被測定レンズ2の開口数である。
【0023】実質的にはΛを0.8×λ/NA ≦ Λ ≦ 1.2×λ/NA程度の範囲に設定することで精度の良い測定が行える。DVD用の対物レンズの収差測定を行うには、λ=0.65ミクロン、NA=0.6を代入して、最適な格子間隔Λは1.1ミクロン程度となる。
【0024】次に回折格子の格子深さについても最適な値が存在するので説明する。
【0025】本発明の収差測定装置に用いる反射型回折素子は、振幅変調型回折素子や位相変調型回折素子を用いることができるが、反射率が高いことから位相変調型回折素子を用いるのが好ましい。また、位相変調型回折素子の中でも、透明基板表面に凹凸の溝を形成して反射膜を堆積した形のグレーティングが作製しやすい。このタイプの回折格子では格子深さに応じてプッシュプル信号振幅が変化し、格子深さがλ/8の時に最大となる。これは格子深さがλ/8の時に±1次回折光と0次回折光の強度比がほぼ等しくなり干渉による強度変化が大きくなることと、±1次回折光の位相差がちょうど180度となり左右の干渉領域の明暗変化がちょうど逆位相で生じることが理由である。プッシュプル信号が大きいほど収差測定を精度良く行うことができるので、格子深さの最適値はλ/8=0.125λとなる。実質的には格子深さを0.075×λから0.175×λ程度の範囲に設定することで精度の良い測定が行える。以上の説明では、格子深さは実際の距離でなくコヒーレントビームの光学距離で表している。たとえば回折格子としてポリカーボネイト基板上に形成した凹凸型回折格子を用い、基板側から光を入射する場合には、基板の屈折率1.58を用いて、実際の物理的溝深さは上記の光学距離を1.56で除した値が最適となる。
【0026】次に、被測定レンズ2と反射型回折素子3とのフォーカスずれを抑制する方法を説明する。本発明の収差測定装置では、反射光の強度分布を観測する系とは別にサーボ信号検出手段を設けて、被測定レンズ2からの光を反射型回折素子3上に集光するように反射型回折素子3のフォーカス方向位置を制御している。しかし実際の系では光学部品の設置位置ずれなどで生じるわずかなフォーカスずれによって反射光に波面の乱れを生じ、収差測定に誤差を生じる可能性がある。このフォーカスずれも、コマ収差と同様にプッシュプル信号に生じる位相変化から検知することができる。フォーカスずれがある場合には、干渉領域24、24aのそれぞれをさらに左右に分割したとき、右側の領域のみから得られるプッシュプル信号と、左の領域のみから得られるプッシュプル信号に位相差が生じ、この位相差を0にするようにフォーカス制御信号にオフセットを加えることで、フォーカスずれをなくすことができる。
【0027】図9の光検出器分割パターンで説明すると、DF1=(S1+S9+S13+S5)−(S3+S11+S15+S7)
DF2=(S2+S10+S14+S6)−(S4+S12+S16+S8)
なるDF1信号とDF2信号の位相差からフォーカスずれを検出できる。記号Snはn番目の領域からの出力信号を表す。
【0028】以上で本発明の収差測定装置の動作原理と、精度良く測定するための装置構成について説明した。次に測定のダイナミックレンジを広くする構成について述べる。
【0029】図6(b)や図8(b)に示したように、本発明の収差測定装置では、信号の位相差から収差量を検出しているため、以上に説明した構成の光検出器を用いた場合には測定のダイナミックレンジは位相差が−180度から+180度の間に限られる。たとえば、大きなコマ収差により位相差が200度になった時には位相差−160度との区別が付かない。回折格子の格子の方向と平行なコマ収差に関してこの問題を克服するには、図10に示すように干渉領域の中心領域と周辺領域の間に中間部分を設けた光検出器の分割パターンを用いればよい。大きなコマ収差が存在するときには中心領域と周辺領域の出力信号間に大きな位相差が生じるが、中間領域からの出力信号位相は両者の中間の値をとるので、中間領域と中心領域、或いは中間領域と周辺領域との間の位相差を観測すれば、より大きなコマ収差が存在するときにも位相差は180度を超えず、大きなダイナミックレンジを実現できる。たとえば、中心領域と周辺領域の位相差が200度の場合には中心領域と中間領域の位相差が100度程度となり、中心領域と周辺領域の位相差が−160度の場合には中心領域と中間領域の位相差が−80度程度となるので、200度の位相差と−160度の位相差を区別できることになる。
【0030】以上に説明した本発明の収差測定装置は、レンズ傾き調整装置に利用することでその特長がより活かされる。本発明のレンズ傾き調整装置は2レンズ方式光ピックアップに限る物ではないが、図11に本発明のレンズ傾き調整装置を一つのアクチュエータ上に2つのレンズを搭載する形の2レンズ方式光ピックアップの調整装置に適用した一例を示す。
【0031】2レンズ方式のピックアップでは、2種のレンズを切り替えることにより2種以上の光ディスクの再生を可能とする物であるが、両方のレンズがそれぞれ光ディスクに対して最適な角度に保たれる必要がある。このとき、それぞれのレンズはレンズ固有のコマ収差があるため、それをうち消すように角度を決める必要があり、例えばレンズのコバ面を平行にするなどの方法では最適な角度に調整することができない。また、従来のレンズ傾き調整方法では、実際の光ディスクを再生して、再生ジッタが最小になるようにレンズの角度を調整する方法が一般的であった。しかしその方法では、光ディスクを回転しながら対物レンズを駆動して光ディスクの情報トラック上に正確に位置あわせを行う必要があり、2レンズアクチュエータにレンズを固定する場合のようにレンズを駆動することができない場合には、従来の方法を用いることは困難である。それに対して図11に示した本発明のレンズ傾き調整装置では、光ディスクの代わりに小さな反射型回折素子を用いているので、対物レンズは固定したレンズホルダ上に置き、反射型回折素子をアクチュエータで駆動してフォーカスサーボを行える。
【0032】次に実際の調整手順を説明する。対物レンズホルダは、対物レンズ24とはコバ面と接して対物レンズホルダと対物レンズの傾きが平行になるように保持される。また対物レンズ25とはレンズ下面の曲面部と接して、固定前にはあおり角度方向に自由度のあるままレンズを保持する形状となっている。対物レンズ15aはあらかじめレンズホルダ8aに接着固定し、対物レンズ15aは固定せずにレンズホルダ8a上に搭載しておく。メカニカルシャッタ22を開状態、メカニカルシャッタ21を閉状態にし、対物レンズ15で発生するコマ収差をモニタしながらレンズホルダ8a全体をあおり調整して、コマ収差が最小になるように角度調整を行う。次にメカニカルシャッタ22を閉状態、メカニカルシャッタ23を開状態にして対物レンズ15aで発生するコマ収差をモニタしながら対物レンズ15aをあおり調整してコマ収差が最小になるように角度調整を行う。図10では、簡単のためレンズ傾き調整手段20として1本のアームのみを表示しているが、実際には3本のアームでコバ面の3点を押さえ、それぞれのアームでの押下量を独立に調整することで対物レンズ15aの傾きを調整する。
【0033】本発明のレンズ傾き調整装置の特長は、前述のようにレンズをアクチュエータで駆動することなくレンズ単体の傾きを調整できることの他に、検出信号が最適角度で0になり、符号の異なる角度ずれに対して符号の異なる検出信号が得られる点がある。従来のように再生ジッタから最適角度を検出する方法では、最適な角度からのずれに対して再生ジッタは対称な変化を示し、符号の異なる角度ずれに対して同様にジッタが増大する。このため、まず一定の範囲でレンズ角度を変化させ、それぞれの角度で測定したジッタをメモリーに格納し、その変化の様子から最適角度を求める必要がある。このため調整に時間がかかる欠点があった。また最適角度付近ではレンズ角度に対する再生ジッタの変化が小さく、調整精度が確保できない。これに対して本方式では検出位相差信号の符号によってレンズ角度を調整する方向が認識でき、検出信号が0になる角度まで調整をすれば最適角度に設定できるため調整時間が大幅に短縮できるとともに、最適角度付近での信号検出感度が大きく正確に角度調整を行うことが可能である。この特長を活かして1レンズ方式光ピックアップの調整装置としても本発明のレンズ傾き調整装置が有効である。
【0034】
【発明の効果】本発明のレンズ収差測定装置を用いることで、干渉光学系や画像処理装置などを用いない簡便な装置で、短時間でレンズのコマ収差を測定することができる。また、本発明のレンズ傾き調整装置によって、高速かつ高精度にレンズの角度調整を行うことが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成11年1月26日(1999.1.26)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
【公開番号】 特開2000−214048(P2000−214048A)
【公開日】 平成12年8月4日(2000.8.4)
【出願番号】 特願平11−16773