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【発明の名称】 分布センサ
【発明者】 【氏名】佐藤 明生

【氏名】片山 晶雅

【氏名】日比野 真吾

【要約】 【課題】圧力,力,荷重等の分布を高密度かつ高感度に測定することができ、しかも、製造が簡単で、製造コストを低く抑えることのできる分布センサを提供する。

【解決手段】シート状の可撓性基板の両面に沿って圧電結晶薄膜が形成され、この圧電結晶薄膜に電極層8が複数個、任意の配置で取り付けられてなる圧電素子1と、この圧電素子1の各電極層8に接する電極部51とそこから延びる端子部52とが互いに接しないよう形成された電極フィルム5とを備え、上記圧電素子1と電極フィルム5とが積層一体化されて全体が一枚のシート状になっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シート状の可撓性基板の片面もしくは両面に沿って圧電結晶薄膜が形成され、この圧電結晶薄膜に電極が複数個、任意の配置で取り付けられてなる圧電素子と、この圧電素子の各電極に接する電極部とそこから延びる端子部とが互いに接しないよう形成された電極フィルムとを備え、上記圧電素子と電極フィルムとが積層一体化されて全体が一枚のシート状になっていることを特徴とする分布センサ。
【請求項2】 上記圧電素子の裏面側に、支持部材が設けられており、上記支持部材によって圧電素子が持ち上げ保持されている請求項1記載の分布センサ。
【請求項3】 上記支持部材が、下地基材と、この下地基材上に設けられ上記圧電素子裏面を部分的に支持する支持スペーサとで構成されている請求項2記載の分布センサ。
【請求項4】 上記支持部材が、上記圧電素子裏面全面に貼着される弾性体で構成されている請求項2記載の分布センサ。
【請求項5】 上記圧電素子の表面側に、一枚のシート状カバーが設けられており、上記カバー下面には、持ち上げ保持された圧電素子の表面を部分的に押圧しうる凸部が所定間隔で突設されている請求項2〜4のいずれか一項に記載の分布センサ。
【請求項6】 上記圧電結晶薄膜が鉛を含有する複合酸化物薄膜である請求項1〜5のいずれか一項に記載の分布センサ。
【請求項7】 上記圧電結晶薄膜が水熱合成によって形成されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の分布センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧力(空気等の流体の圧力,固体の接触圧,音圧等),力,荷重等の分布を測定することのできる分布センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、圧力センサ、力センサの開発が進み、民生用電子機器,家電・住設用電子機器,セキュリティ機器,健康器具,オートメーションファクトリ,自動車,事務機器等、様々な用途に用いることが検討され、一部使用されている。また一方で、圧力分布等の分布測定についても、設計・開発分野等で色々利用され、正確に分布を測定でき、安価で取り付けやすい分布センサの要求が高まっている。このような圧力分布を測定できるセンサとしては、焼結PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いた圧電式センサや、歪みゲージ式センサ、感圧導電ゴム式センサ、発色剤式センサ等があげられる。
【0003】そして、例えば自動車の座席シートの表面に作用する圧力の分布を知りたい場合には、複数の圧電式センサまたは歪みゲージ式センサを座席シートの表面に取り付け、それぞれの圧電式センサまたは歪みゲージ式センサに作用する圧力を測定することにより、圧力の分布を知ることができる。
【0004】しかしながら、上記圧電式センサ(焼結PZT使用)および歪みゲージ式センサは、高価なため経済的でなく、しかも、1素子の面積が大きいため、高密度に分布させることが困難である。このため、上記圧電式センサおよび歪みゲージ式センサを用いて圧力の分布を高密度に測定することは困難であるという問題がある。また、これらのセンサを、所定間隔で1個ずつ取り付けることは煩雑で、適正な間隔に設定しにくいという問題がある。そして、このような取り付け形態では、ある程度広い面全体にわたって与えられる圧力(空気等の流体の圧力,固体の接触圧,音圧等),力,荷重等を正確に測定することができない。
【0005】また、上記感圧導電ゴム式センサや発色剤式センサでは、マトリックス状に圧力分布が測定できるセンサが開発されている。しかしながら、感圧導電ゴム式センサは、リニア精度に劣り、繰り返し使用により性能が劣化するという問題がある。さらに、発色剤式センサは、使い捨てであるため、1回しか使用できないという問題がある。
【0006】これに対し、本出願人は、圧力,力,荷重等の分布を高密度かつ高感度に測定することができ、また、繰り返し使用でき、しかも一枚のシート状に形成されたセンサとして、つぎのようなセンサを開発した。
【0007】すなわち、図16に示すように、まず、平面視四角形状の可撓性基板83の両面に圧電結晶薄膜84を形成し、この圧電結晶薄膜84の表面に圧電結晶薄膜84よりもひとまわり小さく電極層(電極)85を形成することにより、圧電素子81を製造する。また、絶縁フィルム66の表面に、複数の電極部67および各電極部67から延びる端子部(図示せず)を互いに接しないように所要のパターンに形成することにより、電極フィルム62を製造する。このような電極フィルム62を2枚準備する。ついで、一方の電極フィルム62の電極部67と圧電素子81の電極層85とが接するように、一方の電極フィルム62上に圧電素子81を1素子ずつ並べたのち、他方の電極フィルム62の電極部67と並べた圧電素子81の電極層85とが接するように、他方の電極フィルム62をラミネートする。このようにして製造されたセンサを用いると、上記問題を解決することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記センサは、圧電素子81を1素子ずつ電極フィルム62上に並べて製造しなければならず、その作業が煩雑で多くの時間を要するため、製造コストが高くなることが判明した。
【0009】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、圧力,力,荷重等の分布を高密度かつ高感度に測定することができ、しかも、製造が簡単で、安価に製造することのできる分布センサの提供をその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の分布センサは、シート状の可撓性基板の片面もしくは両面に沿って圧電結晶薄膜が形成され、この圧電結晶薄膜に電極が複数個、任意の配置で取り付けられてなる圧電素子と、この圧電素子の各電極に接する電極部とそこから延びる端子部とが互いに接しないよう形成された電極フィルムとを備え、上記圧電素子と電極フィルムとが積層一体化されて全体が一枚のシート状になっているという構成をとる。
【0011】すなわち、本発明の分布センサは、圧力,力,荷重等の分布を測定しようとする物体の表面に、面として取り付けたり、物体の内部に埋め込んだりして、簡単に、高密度かつ高感度で圧力,力,荷重等の分布測定を行うことができる。しかも、上記分布センサの全体としての圧電素子は、複数の小さい圧電素子を並べたものと同等であるため、分布センサの製造が簡単で、製造コストが低くなる。
【0012】また、本発明において、上記圧電素子の裏面側に、支持部材が設けられており、上記支持部材によって圧電素子が持ち上げ保持されている場合には、感知面が柔軟で対象物品の表面を損傷しないだけでなく、圧力変化に対し優れた感度と応答性を発揮する。そのなかでも特に、上記圧電素子の表面側に、一枚のシート状カバーが設けられ、上記カバー下面に、持ち上げ保持された圧電素子の表面を部分的に押圧しうる凸部が所定間隔で突設されている場合には、上記凸部で集中的に1素子の圧電素子を押圧することができるため、より大きく、しかも偏りなく1素子の圧電素子が変位し、センサ出力がより安定化する。
【0013】また、本発明において、上記圧電結晶薄膜として鉛を含有する複合酸化物薄膜を用いた分布センサ、そして、上記圧電結晶薄膜を水熱合成によって形成した分布センサは、特に優れた性能を備えている。
【0014】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】図1は、本発明の分布センサの一実施の形態を示している。この実施の形態では、分布センサは、平面視四角形状の圧電素子1と、この圧電素子1の表裏面にラミネートされた2枚の電極フィルム5とを備え、これら圧電素子1と電極フィルム5とは、一体積層化されて全体が一枚のシート状になっている。
【0016】上記圧電素子1は、図2に示すように、平面視四角形状のシート状の可撓性基板6と、この可撓性基板6の両面全体に形成された圧電結晶薄膜7と、この圧電結晶薄膜7の表面に縦3列・横3列のマトリックス状に配設された電極層(電極)8とで構成されている。この状態において、上記各電極層8は、互いに接しておらず、また、可撓性基板6の両面の電極層8は、可撓性基板6を挟んで相対向した位置にある。すなわち、上記圧電素子1は、図16に示す圧電素子81が9素子、一体となったものと同等である。なお、図1では、圧電素子1の可撓性基板6と圧電結晶薄膜7との積層構造を省略している。
【0017】また、上記各電極フィルム5は、絶縁フィルム50の表面に、電極部51が上記各電極層8に接するように形成され、さらに、端子部52が各電極部51から延びるように形成されているものである。この状態において、電極部51および各電極部51から延びる端子部52は、互いに接していない。また、電極部51および端子部52は、エッチングやスクリーン印刷等により形成される。なお、図1では、電極部51および端子部52の厚みを省略している。
【0018】そして、上記各電極フィルム5の表面を上記圧電素子1に重ねた状態で電極フィルム5がラミネートされている。すなわち、上記圧電素子1と電極フィルム5とは、電極層8(電極部51)が形成されていない部分で粘着剤または接着剤を介して密着されている。
【0019】また、上記圧電素子1は、どのようにして得られるものであってもよいが、特に、水熱合成法によって可撓性基板6の表面全体に圧電結晶薄膜7を形成して得られるものが好適である。
【0020】上記可撓性基板6としては、可撓性を備え、水熱合成時の加熱加圧条件に耐えうるものが好適であり、金属の、薄板,箔,フィルム等が用いられる。上記金属の例としては、ステンレス,鉄,アルミニウム,チタン,鉛等の金属、またはこれらの金属を含む合金があげられる。ただし、可撓性基板6上に形成される圧電結晶薄膜7をこの可撓性基板6と強固に接合させるには、可撓性基板6の最表面にチタン成分が含有されていることが好ましい。そこで、可撓性基板6として、チタン製のものを用いるか、チタン製以外のものである場合には、その表面に、チタン成分を析出させるか塗布する等の手段を講じることが好ましい。
【0021】なお、上記可撓性基板6の厚みは、2〜200μm、なかでも5〜150μmに設定することが好適である。すなわち、厚みが2μm未満では、水熱合成法で圧電結晶薄膜7を得る場合に、上記可撓性基板6が水熱合成中に変形するおそれがあり、逆に厚みが200μmを超えると、センサ表面の柔軟性が乏しくなり、センサからの大きな出力が得られなくなるおそれがあるからである。また、上記可撓性基板6の縦横の長さは、センサが使用される対象物に応じて、自由に設定することができる。
【0022】また、圧電結晶薄膜7の組成は、圧電特性を備えるものであれば、どのようなものであっても差し支えないが、上記水熱合成によって得るのに適した組成に設定することが好適である。このような組成としては、ペロブスカイト(ABO3)構造の複合酸化物があげられる。そして、上記Aサイトとしては、通常、Pb、Ba、Ca、Sr、LaおよびBiから選択される少なくとも1種の元素があげられ、上記Bサイトとしては、Ti単独か、Zr、Zn、Ni、Mg、Co、W、Nb、Sb、TaおよびFeから選択される少なくとも1種の元素とTiとの複合物があげられる。このような複合酸化物の例としては、Pb(Zr,Ti)O3 、PbTiO3 、BaTiO3 、SrTiO3 、(Pb,La)(Zr,Ti)O3 等があげられる。
【0023】水熱合成は、通常、上記組成を構成しうる金属元素を含む金属塩の水溶液をアルカリ性に調整してなる水溶液と、可撓性基板6とを、オートクレーブに装入し加圧下で加熱することにより行う。これにより、可撓性基板6の表裏面に、圧電結晶薄膜7が形成される(バイモルフ型)。なお、ユニモルフ型を得る場合には、可撓性基板6の片面を耐熱,耐アルカリ性のレジスト材で被覆して水熱合成を行うか、あるいは可撓性基板6の表裏面に形成された圧電結晶薄膜7のうち片面側の圧電結晶薄膜7を削り落とすようにする。
【0024】このようにして得られる圧電結晶薄膜7の厚みは、通常、0.5〜100μm、特に1〜30μmに設定することが好適である。すなわち、厚みが0.5μm未満では充分なセンサ出力が得られにくく、逆に100μmを超えるとせっかく可撓性基板6を用いているにもかかわらず、センサ表面の柔軟性が乏しくなるおそれがあるからである。
【0025】なお、上記水熱合成は、特開平4−342489号公報に開示されているように、結晶核生成と結晶成長の2段階に分けて行うようにしてもよいし、あるいは、特開平9−217178号公報,特開平9−278436号公報に開示されているように、1段階のみで合成を行ってもよい。また、特開平9−278436号公報に開示されているように、上記オートクレーブを、鉛直方向に振動させながら行うようにしてもよい。この場合、例えば図3に示すように、加熱手段(図示せず)と攪拌手段11を備えた耐熱容器(オイルバス等)12内に、オートクレーブ10を、支受手段13,14によって上下可動に支受し、鉛直方向に1Hz以上、特に3〜50Hzの振動をかけながら水熱合成を行うようにすることが好適である。
【0026】さらに、上記水熱合成によって得られた可撓性基板6−圧電結晶薄膜7積層体の表面を封孔処理してもよい(特願平8−277826号公報)。上記封孔処理は、(a)樹脂、セラミック等の絶縁材料を用いて圧電結晶薄膜7の多孔質部分およびピンホールを絶縁物で埋める方法、(b)上記積層体を高温酸化性雰囲気下に置き、圧電結晶薄膜7による被覆がされていないかあるいは被覆が不充分なピンホール部分に、絶縁性酸化物皮膜を形成する方法、のいずれかの方法により行うことができる。この封孔処理により、得られる圧電素子1の性能を向上させることができる。
【0027】上記封孔処理に使用する絶縁材料またはその前駆材料は、有機系、無機系のいずれでもよい。有機系材料としては、例えば塩化ビニル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,ポリカーボネート,ポリアミド,ポリイミド,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,尿素樹脂,アクリル樹脂,ポリアセタール,ポリサルフォン,液晶ポリマー,PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等があげられる。また、無機系材料としては、例えばアルミナ,ジルコニア,シリカ,チタニア等の材料をベースにしたセラミックコーティング材料、金属アルコキシドやポリシラザン等のセラミック前駆体等があげられる。
【0028】このようにして、可撓性基板6の両面全体に圧電結晶薄膜7を形成したのち、図1および図2に示すように、その両面に、上記電極層8を形成することにより、圧電素子1を得ることができる。
【0029】上記電極層8の形成は、Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu等の導電材料を、上記圧電結晶薄膜7の表面に堆積させるか、これを被覆することによって行われる。その方法は、特に限定するものではなく、例えば導電ペーストの塗布、無電解メッキ法、スパッタリング法、化学蒸着法等を用いることができる。そして、上記電極層8の厚みは、通常、1μm以下、特に0.1μm以下に設定することが好適である。
【0030】このようにして得られた圧電素子1の両面に、圧電素子1の電極層8と上記電極フィルム5の電極部51とが接するようにして、電極フィルム5がラミネートされ、分布センサを得ることができる。
【0031】このようにして得られた分布センサは、圧力,力,荷重等の分布を測定することを目的として、対象となる物体の表面に取り付けられる。あるいは、物体の内部に埋め込まれる。そして、圧電素子1が感知する圧力等を検知することにより、圧力等の分布を測定することができる。したがって、上記分布センサは、スポーツシューズや自動車の座席シートの設計関連、工作機械、製造システム、物流システム等に使用される。
【0032】また、上記分布センサは、従来の焼結PZTを用いた圧電式センサおよび歪みゲージ式センサと比較すると、増幅器が不要となるため、製造工程が短く、低コストが可能となり、さらに、厚みが薄くなるため、高密度化(1素子の小型化)に対応しやすく、高密度かつ高感度な測定が可能となる。また、従来の感圧導電ゴム式センサと比較すると、ゴムの変形を利用したセンサではないため、リニア精度に優れ、繰り返し使用により性能が変化しない。また、従来の発色剤式センサと異なり、繰り返し使用することができる。
【0033】さらに、上記分布センサは、圧電素子81(図16参照)を1素子ずつ電極フィルム62(図16参照)上に並べて製造するものではなく、1枚の圧電素子1を2枚の電極フィルム5で挟むようにラミネートして製造するものであるため、製造が簡単で、製造コストが低くなる。
【0034】なお、圧電素子1は、電極層8を上記縦3列・横3列のマトリックス状に配設したものに限らず、複数個の電極層8をどのように配設してもよい。また、分布センサ(圧電素子1および電極フィルム5)は、どのような曲面であってもよい。例えば、分布センサを、ロボットハンド表面の曲面に沿う形状にしてもよい。
【0035】また、上記の例では、圧電素子1を、バイモルフ型薄膜ピエゾによって構成しているが、これに限らず、ユニモルフ型であっても差し支えない。
【0036】そして、上記圧電素子1の形成方法は、水熱合成法に限らず、どのような方法によっても差し支えないが、1μm以上の均一な圧電結晶膜を形成するには、上記の例のように、特開平9−217178号公報および特開平9−278436号公報に開示されているような水熱合成法を用いることが最適である。そして、なかでも、水熱合成時に、オートクレーブ10への鉛直方向の振動を、3〜50Hzの範囲内でかけ、金属塩(硝酸鉛、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化チタン)およびアルカリ(水酸化カリウム)の混合水溶液中の各々の濃度を下記のように設定することにより圧電素子1を得ることが、優れたセンサ性能を得る上で、好適である。
【0037】
〔水熱合成時の金属塩、アルカリの好適濃度〕
硝酸鉛 0.1 〜1.0mol/リットル オキシ塩化ジルコニウム 0.05〜2.0mol/リットル 四塩化チタン 0 〜0.5mol/リットル 水酸化カリウム 2.5 〜8.0mol/リットル【0038】図4は、本発明の分布センサの他の実施の形態を示している。この実施の形態では、分布センサは、圧電素子1が支持部材によって持ち上げ保持されている。すなわち、この分布センサは、上記一実施の形態の分布センサにおける1素子の圧電素子に相当する部分2が、電極フィルム(図示せず)を介して、それぞれその裏面の四隅に設けられた支持スペーサ3によって、下地基材4上に、所定厚みだけ持ち上げ保持された構成になっている。それ以外の部分は、上記一実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。なお、図4では、1素子の圧電素子に相当する部分2の積層構造および端子等を省略している。
【0039】上記支持スペーサ3および下地基材4は、樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、ゴム、金属、無機材料等、ある程度強度を有するものであればどのような材質であっても差し支えない。そして、その成形方法も、単に下地基材4と支持スペーサ3とを接着させる方法だけでなく、材質に応じて適宜の方法を採用することができる。
【0040】例えば、樹脂やTPE、ゴムを用いる場合、プレス成形やトランスファー成形、インジェクション成形等によって、上記支持スペーサ3と下地基材4を一体的に成形することができる。
【0041】また、下地基材4上の、支持スペーサ3を形成する予定部分に、レジストを塗工して硬化させることにより、支持スペーサ3を形成することができる。あるいは、下地基材4と銅箔を積層した積層体を準備し、銅箔の不用部分を溶剤等によってエッチング除去することにより、銅箔残部を支持スペーサ3とすることができる。
【0042】上記支持スペーサ3および下地基材4からなる支持部材と、上記圧電素子1との一体化は、通常、上記支持スペーサ3の上面と上記電極フィルム5の下面を、接着剤を介して接合することによって行われる。
【0043】なお、上記支持スペーサ3の厚み(下地基材4から圧電素子1を持ち上げ保持する高さ)Tは、0.1〜20mmに設定することが好ましい。すなわち、支持スペーサ3の厚みTが0.1mmより小さいと、圧電素子1を持ち上げ保持する効果が小さく、測定範囲が小さくなり、逆に、支持スペーサ3の厚みTが20mmより大きいと、形状が薄型にならず、実用的でないからである。
【0044】このようにして得られた分布センサは、圧電素子1が、支持スペーサ3によって0.1〜20mmの厚み分だけ持ち上げ保持されているため、感知面が柔軟で対象物品の表面を損傷しないだけでなく、圧力変化に対し優れた感度と応答性を発揮する。また、圧電素子1と支持スペーサ3と下地基材4とは一体で製造することができるため、高密度化(1素子の小型化)に対応しやすく、高密度かつ高感度な測定が可能となる。さらに、上記一実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0045】また、圧電素子1を持ち上げ保持する支持部材の形態も、上記の例に限らず、種々の形態に設定することができる。例えば、支持スペーサ3によって、1素子の圧電素子に相当する部分2の裏面を、四隅で支持するのではなく、図5に示すように、下地基材4上に、左右2本の帯状の支持スペーサ3aを設け、1素子の圧電素子に相当する部分2(図4参照)の左右両端部を支持するようにしてもよい。
【0046】また、図6に示すように、下地基材4上の周縁部全体に、環状に支持スペーサ3cを設け、1素子の圧電素子に相当する部分2(図4参照)の周縁部全体を支持するようにしてもよい。
【0047】そして、様々な形状の対象物品、センサ設置空間に合わせて、1素子の圧電素子に相当する部分2を適宜の形状にすることができ、その形状に合わせて、支持部材の形状も適宜変更することができる。例えば、図7に示すように、三角形状をした1素子の圧電素子に相当する部分2′(図7では積層構造および端子等を省略している)に対しては、その三つの角部を支持スペーサ3dで支持するとともに、下地基材4の形状も、それに合わせて三角形状にすることができる。もちろん、図8に示すように、その周縁部全体を、環状スペーサ3eで支持することもできる。
【0048】また、図9に示すように、円形状をした1素子の圧電素子に相当する部分2″(図9では積層構造および端子等を省略している)に対しては、円環状スペーサ3fで支持することもできる。
【0049】さらに、上記一連の支持スペーサ3等を用いるのに代えて、図10に示すように、1素子の圧電素子に相当する部分2(図10では積層構造および端子等を省略している)を、ゴム,TPE,ゲル,発泡体等の弾性材で構成された弾性体30で全面的に支持するようにしてもよい。その場合、下地基材4はあってもなくてもよい。そして、上記弾性体30は、1素子の圧電素子に相当する部分2の変形にできるだけ追従するものであることが好ましく、そのためには、貯蔵弾性率(動的粘弾性測定法により測定)が1.0×105 〜1.0×1010dyn/cm2 の高分子シートを用いることが好適である。ただし、その厚みは、上記一連の支持スペーサ3等と同様、0.1〜20mmに設定する必要があり、より好ましくは0.5〜20mmである。
【0050】また、本発明において、センサの出力をより安定化させるために、例えば図11に示すような、下面中央に凸部31が形成された凸カバー32を、図12に示すように、1素子の圧電素子に相当する部分2の上に、電極フィルム(図示せず)を介して、重ねて一体化することができる。このようにすると、支持スペーサ3等によって中央部が空隙となるよう支持された構造のセンサ(図4等参照)、あるいは全体が柔軟な弾性体30で支持された構造のセンサ(図10参照)に対し、上方から荷重がかかった場合に、上記凸部31で集中的に1素子の圧電素子に相当する部分2を押圧することができるため、より大きく、しかも偏りなく1素子の圧電素子に相当する部分2が変位する。
【0051】上記凸カバー32において、凸部31は、1素子の圧電素子に相当する部分2と上記電極フィルム(図示せず)を介して接触もしくは接着すれば足りるのであり、その形状は、球状、半球状、直方体状等、どのような形状であっても差し支えはない。また、寸法も、1素子の圧電素子に相当する部分2を押圧する際、これをスムーズに押すことができれば、どのような寸法であっても差し支えはない。そして、上記凸カバー32は、下地基材4と支持スペーサ3からなる支持部材を製造する方法と同様にして製造することができる。
【0052】この場合も、圧電素子1と支持スペーサ3と下地基材4と凸カバー32とは一体で製造することができるため、高密度化(1素子の小型化)に対応しやすく、高密度かつ高感度な測定が可能となる。さらに、上記一実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0053】なお、上記図4〜図10に示す支持部材は、一枚のシート状のように一体に形成されることが好ましい。すなわち、一枚の広い下地基材4上に、1素子の圧電素子に相当する部分2それぞれに当接する配置で支持スペーサ3または弾性体30が形成されていることが好ましい。また、上記凸カバー32も、一枚のシート状に形成されることが好ましい。すなわち、一枚の広い凸カバー32の下面に、1素子の圧電素子に相当する部分2それぞれの中央部に当接する配置で凸部31が形成されていることが好ましい。その一例を図13に示す。
【0054】つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0055】
【実施例1】実施例1の分布センサは、図14に示す圧電素子61と電極フィルム62とを備えており、つぎのようにして製造された。すなわち、まず、硝酸鉛120mmol、オキシ塩化ジルコニウム58.3mmolおよび水酸化カリウム1642mmolを水に溶解した溶液360ミリリットルを、テフロン内張りオートクレーブ容器内に入れた。また、厚み50μmのチタン箔(可撓性基板)63を、一辺の長さ30mmの正方形状に切断し、洗浄,乾燥したのち、上記オートクレーブ内に装入して密閉した。そして、オイル(シリコーンオイル)バス中で、加圧下で約150℃で約48時間、鉛直方向に30Hzの振動を加えて水熱合成処理を行うことにより、チタン箔63の両面に、それぞれ厚み5μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の結晶層(圧電結晶薄膜)64を形成し、薄膜ピエゾセラミックスを得た。そして、スパッタ蒸着により、上記PZT層の表面に、厚み100Å,一辺の長さ6mmの正方形状の白金電極層65を縦3列・横3列のマトリックス状に配設することにより、圧電素子61を得た。この状態において、上記電極層65は互いに接していない。
【0056】一方、絶縁フィルム66の表面に、上記各電極層65に接するように一辺の長さ6mmの正方形状の電極部67を形成し、さらに、各電極部67から延びるように端子部(図示せず)を形成することにより、電極フィルム62を得る。この状態において、電極部67および各電極部67から延びる端子部は、互いに接していない。このような電極フィルム62を2枚製造する。なお、上記電極部67および端子部は銅箔からなり、その厚みは18μmであり、電極フィルム62の材質はポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)で、その厚みは25μmである。
【0057】そして、一方の電極フィルム62の表面のうち電極部67以外の部分に接着剤を塗布し、この上に上記圧電素子61を載せる。さらに、他方の電極フィルム62の表面のうち電極部67以外の部分に接着剤を塗布し、これを上記圧電素子61の上に載せる。このとき、圧電素子61の電極層65と電極フィルム62の電極部67とが接するようにする。そののち、上下方向から圧力をかけ、圧電素子61と電極フィルム62とを密着させることにより、圧電積層体60を得た。なお、電極フィルム62の表面に形成される接着剤層はアクリル系ポリマーで形成されており、その厚みは5μmである。
【0058】一方、支持部材(下地基材および支持スペーサ)をつぎのようにして製造した。すなわち、材料としてポリカーボネート樹脂(PC)を用い、インジェクション成形により、支持部材を一体成形した。この支持部材は、1素子の圧電素子に相当する部分の裏面を、四隅で支持するように成形されている。
【0059】さらに、凸カバーを上記支持部材と同様にして一体成形した。この凸カバーは、1素子の圧電素子に相当する部分の表面の中央部に凸部が位置するように成形されている。そして、上記圧電積層体60と支持部材と凸カバーとを接合することにより、実施例1の分布センサを得た。
【0060】
【実施例2】実施例2の分布センサは、図15に示す圧電素子71と上記電極フィルム62と樹脂フィルム68とを備えており、つぎのようにして製造された。すなわち、実施例1と同様にして薄膜ピエゾセラミックスを得、その片面のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の結晶層(圧電結晶薄膜)64を削り落とし、他方の片面のPZT層の表面に、実施例1と同様の白金電極層65を配設することにより、圧電素子71を得た。そして、この圧電素子71を、白金電極層65側を上記電極フィルム62で、チタン箔63側を樹脂フィルム68で密着させることにより、圧電積層体70を得、さらに、この圧電積層体70と上記支持部材と上記凸カバーとを接合することにより、実施例2の分布センサを得た。
【0061】
【比較例1】比較例1の分布センサは、図16に示す圧電素子81と上記電極フィルム62とを備えており、つぎのようにして製造された。すなわち、実施例1において、チタン箔(可撓性基板)83を厚み50μm,一辺の長さ10mmの正方形状とし、1素子が一辺の長さ10mmの正方形状である圧電素子81を9素子得る。そして、これら圧電素子81を上記電極フィルム62の各電極部67上に1素子ずつ並べたのち、他方の電極フィルム62で密着させることにより、圧電積層体80を得、さらに、この圧電積層体80と上記支持部材と上記凸カバーとを接合することにより、比較例1の分布センサを得た。
【0062】これらの実施例1,2および比較例1の分布センサに対し、図17に示すように、1素子の圧電素子81またはそれに相当する部分(図17では積層構造および端子等を省略している)91それぞれの中央部に向かって、5cm上方から直径10.0mmの剛球90を落下させることにより衝撃荷重を加え、A/D変換器により出力電圧を測定した(測定値は10回の平均値)。そして、各圧電素子81またはそれに相当する部分91からのピーク出力電圧の平均値を算出した。
【0063】その結果、上記平均値が10mV以上かつすべての1素子の圧電素子で規則性のある波形(図18参照)を示すセンサを○と判定した。また、作業性については、対象物体への取り付け時間が短時間である場合を○、長時間である場合を×と判定した。また、利便性については、端子の数から判断して、端子の数が少なくなる場合を○、従来と同じ数である場合を△と判定した。また、製造コストについては、製造時間から判断して、製造時間が短くて済む場合を○、少し時間がかかる場合を△、大幅に時間がかかる場合を×と判定した。さらに、総合判定として、センサ特性が○で、なおかつ、その他の特性のうち2つ以上が○のものを○、それ以外のものを×と判定した。その結果を下記の表1に併せて示す。
【0064】
【表1】

【0065】上記表1より、センサ性能は、実施例1と比較例1の分布センサ品とではほとんど変わらないことががわかる。また、実施例2は、若干出力が小さいが、センサ性能としてはほとんど問題ないレベルである。
【0066】また、上記実施例2の分布センサでは、端子を少なくすることができるため、より高集積化することができる。
【0067】
【発明の効果】以上のように、本発明の分布センサによれば、圧力,力,荷重等の分布を測定しようとする物体の表面に、面として取り付けたり、物体の内部に埋め込んだりして、簡単に、高密度かつ高感度で圧力,力,荷重等の分布測定を行うことができる。しかも、上記分布センサの全体としての圧電素子は、複数の小さい圧電素子を並べたものと同等であるため、分布センサの製造が簡単で、製造コストが低くなる。
【0068】また、本発明において、上記圧電素子の裏面側に、支持部材が設けられており、上記支持部材によって圧電素子が持ち上げ保持されている場合には、感知面が柔軟で対象物品の表面を損傷しないだけでなく、圧力変化に対し優れた感度と応答性を発揮する。そのなかでも特に、上記圧電素子の表面側に、一枚のシート状カバーが設けられ、上記カバー下面に、持ち上げ保持された圧電素子の表面を部分的に押圧しうる凸部が所定間隔で突設されている場合には、上記凸部で集中的に1素子の圧電素子を押圧することができるため、より大きく、しかも偏りなく1素子の圧電素子が変位し、センサ出力がより安定化する。
【0069】また、本発明において、上記圧電結晶薄膜として鉛を含有する複合酸化物薄膜を用いた分布センサ、そして、上記圧電結晶薄膜を水熱合成によって形成した分布センサは、特に優れた性能を備えている。
【出願人】 【識別番号】000219602
【氏名又は名称】東海ゴム工業株式会社
【出願日】 平成11年5月27日(1999.5.27)
【代理人】 【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
【公開番号】 特開2000−337979(P2000−337979A)
【公開日】 平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願番号】 特願平11−148837