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【発明の名称】 静電容量式センサ
【発明者】 【氏名】岡田 和廣

【氏名】板野 弘道

【氏名】谷口 伸光

【要約】 【課題】単純な構造で、他軸干渉のない正確な検出値を得る。

【解決手段】下方固定基板110、変位基板125、上方固定基板130を、スペーサとして機能する台座145,155を介挿した状態で積層固定する。基板110,130は絶縁性剛体基板からなり、変位基板125は導電性可撓基板からなる。基板110上面の右側には電極E11、左側には電極E12、中央にはワッシャ状の電極E15が形成され、基板130下面の右側には電極E21、左側には電極E22、中央にはワッシャ状の電極E25が形成される。これら各電極と変位基板125とによって、容量素子C11〜C25が形成される。作用体160に加速度が作用すると、変位基板125が変位し、各容量素子の容量値が変化する。加速度のX軸成分は、(C11+C22)−(C12+C21)で求まり、加速度のZ軸成分は、C25−C15で求まる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 静電容量素子を利用して、XYZ三次元座標系における所定軸方向の力もしくは加速度を検出する静電容量式センサであって、各基板面がXY平面にほぼ平行になるように、かつ、各基板面をZ軸が貫通するように、互いに所定間隔をおいて固定された下方固定基板および上方固定基板と、前記下方固定基板および前記上方固定基板の間に配置され、力もしくは加速度が作用していない環境下では、XY平面にほぼ平行な基準状態を維持し、力もしくは加速度が作用している状態においては、前記基準状態から変位した状態となる変位基板と、前記変位基板の一部に接続され、力もしくは加速度の作用に基づいて、前記変位基板に、作用した力もしくは加速度に応じた変位を生じさせる作用体と、前記下方固定基板上面のX軸正領域に対応した位置に形成されたX軸正領域下方電極と、前記下方固定基板上面のX軸負領域に対応した位置に形成されたX軸負領域下方電極と、前記上方固定基板下面のX軸正領域に対応した位置に形成されたX軸正領域上方電極と、前記上方固定基板下面のX軸負領域に対応した位置に形成されたX軸負領域上方電極と、前記変位基板下面における前記X軸正領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、前記変位基板下面における前記X軸負領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、前記変位基板上面における前記X軸正領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、前記変位基板上面における前記X軸負領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、を備え、前記X軸正領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸正領域下方容量素子が形成され、前記X軸負領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸負領域下方容量素子が形成され、前記X軸正領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸正領域上方容量素子が形成され、前記X軸負領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸負領域上方容量素子が形成されており、前記X軸正領域下方容量素子の静電容量値および前記X軸負領域上方容量素子の静電容量値の和と、前記X軸負領域下方容量素子の静電容量値および前記X軸正領域上方容量素子の静電容量値の和と、の差に基づいて、X軸方向に作用した力もしくは加速度を検出する機能を有する検出手段を更に備えることを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項2】 請求項1に記載の静電容量式センサにおいて、下方固定基板上面のY軸正領域に対応した位置に形成されたY軸正領域下方電極と、下方固定基板上面のY軸負領域に対応した位置に形成されたY軸負領域下方電極と、上方固定基板下面のY軸正領域に対応した位置に形成されたY軸正領域上方電極と、上方固定基板下面のY軸負領域に対応した位置に形成されたY軸負領域上方電極と、変位基板下面における前記Y軸正領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板下面における前記Y軸負領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面における前記Y軸正領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面における前記Y軸負領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、を更に備え、前記Y軸正領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸正領域下方容量素子が形成され、前記Y軸負領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸負領域下方容量素子が形成され、前記Y軸正領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸正領域上方容量素子が形成され、前記Y軸負領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸負領域上方容量素子が形成されており、検出手段が、前記Y軸正領域下方容量素子の静電容量値および前記Y軸負領域上方容量素子の静電容量値の和と、前記Y軸負領域下方容量素子の静電容量値および前記Y軸正領域上方容量素子の静電容量値の和と、の差に基づいて、Y軸方向に作用した力もしくは加速度を検出する機能を更に有することを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項3】 請求項1または2に記載の静電容量式センサにおいて、各下方電極および各上方電極が、XZ平面もしくはYZ平面に関して対称となる形状を有することを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項4】 請求項3に記載の静電容量式センサにおいて、各容量素子がいずれも同一形状、同一サイズの同一電極間隔をもった電極対からなることを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の静電容量式センサにおいて、下方固定基板上面の原点近傍位置に形成された原点近傍下方電極と、上方固定基板下面の原点近傍位置に形成された原点近傍上方電極と、変位基板下面における前記原点近傍下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面における前記原点近傍上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、を更に備え、前記原点近傍下方電極およびこれに対向する変位電極によって原点近傍下方容量素子が形成され、前記原点近傍上方電極およびこれに対向する変位電極によって原点近傍上方容量素子が形成されており、検出手段が、前記原点近傍下方容量素子の静電容量値と前記原点近傍上方容量素子の静電容量値との差に基づいて、Z軸方向に作用した力もしくは加速度を検出する機能を更に有することを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項6】 請求項5に記載の静電容量式センサにおいて、原点近傍下方電極および原点近傍上方電極が、それぞれZ軸に関して回転対称となる形状を有することを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項7】 請求項6に記載の静電容量式センサにおいて、各原点近傍容量素子が同一形状、同一サイズの同一電極間隔をもった電極対からなることを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の静電容量式センサにおいて、変位基板の第1の部分を下方固定基板および上方固定基板に固定し、変位基板の第2の部分に作用体を接続し、少なくとも、前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置する第3の部分を可撓性をもった材料で構成し、前記第3の部分の撓みに基づいて変位が生じるように構成したことを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載の静電容量式センサにおいて、変位基板上に形成される複数の変位電極を、物理的に単一の共通電極によって構成したことを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項10】 請求項9に記載の静電容量式センサにおいて、可撓性をもった導電性基板を変位基板として用い、この変位基板自身を単一の共通電極とすることを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項11】 請求項9または10に記載の静電容量式センサにおいて、互いに静電容量値の和を求める必要がある一対の容量素子については、それぞれ共通電極ではない側の電極同士を電気的に接続し、この接続点と共通電極との間の静電容量値を前記和として用いるようにしたことを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項12】 請求項11に記載の静電容量式センサにおいて、下方固定基板および上方固定基板の接続対象となる電極形成位置に、それぞれスルーホールを形成し、このスルーホールを介した配線層を利用して、接続対象となる一対の電極を電気的に接続したことを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項13】 請求項1〜12のいずれかに記載の静電容量式センサにおいて、下方固定基板の周囲と上方固定基板の周囲とを台座によって固定し、変位基板の周囲を前記台座によって固定し、変位基板の上面中心部に作用体を接続し、上方固定基板の中心部に前記作用体を挿通させるための貫通孔を形成したことを特徴とする静電容量式センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、力もしくは加速度のセンサに関し、特に、静電容量素子を利用して、XYZ三次元座標系における所定軸方向の力もしくは加速度を検出する静電容量式センサに関する。
【0002】
【従来の技術】力センサや加速度センサは、様々な産業機器において物理量の検出装置として利用されており、また、デジタル機器用の入力装置としても広く利用されている。特に、静電容量素子を利用したセンサは、構造が単純で製造コストを低減させることができるため、コンピュータ用の安価なデジタル情報入力機器として普及している。
【0003】力や加速度を検出するための静電容量式センサでは、検出対象となる力や加速度の作用によって電極間隔が変化するような静電容量素子が用意され、この素子の静電容量値の変化に基づいて力や加速度の検出が行われる。最近では、複数の静電容量素子を所定位置に配置することにより、二次元あるいは三次元の力あるいは加速度成分をそれぞれ独立して検出することができるセンサが主流になってきている。たとえば、特開平4−148833号公報、特開平4−249726号公報、特開平4−299227号公報などには、力・加速度・磁気などを検出することができる静電容量式の多次元センサの基本原理が開示されている。また、特開平4−337431号公報、特開平5−026754号公報には、更にその応用技術が開示されており、実開平4−127575号公報、実開平4−127537号公報には、より具体的なセンサ構造例が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これまで提案されている種々の静電容量式センサには、特定の検出軸方向についての力や加速度を検出する場合に、異なる検出軸間において干渉が生じるという問題がある。通常、多次元の静電容量式センサでは、各検出軸ごとにそれぞれ専用の静電容量素子が用意され、独立した検出値が出力される構造となっている。ところが、実際には、本来の検出軸とは異なる別な軸成分の力や加速度の作用により、多少なりとも検出値に影響が生じてしまう。このため、より精度の高い検出値を得るためには、異なる軸成分の干渉による影響を相殺するための補正回路を設けるなどの措置を講じる必要があり、結果的に全体の構造が複雑になり、製造コストが高騰するという問題が生じることになる。
【0005】そこで本発明は、単純な構造で、他軸干渉のない正確な検出値を得ることができる静電容量式センサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】(1) 本発明の第1の態様は、静電容量素子を利用して、XYZ三次元座標系における所定軸方向の力もしくは加速度を検出する静電容量式センサにおいて、各基板面がXY平面にほぼ平行になるように、かつ、各基板面をZ軸が貫通するように、互いに所定間隔をおいて固定された下方固定基板および上方固定基板と、下方固定基板および上方固定基板の間に配置され、力もしくは加速度が作用していない環境下では、XY平面にほぼ平行な基準状態を維持し、力もしくは加速度が作用している状態においては、基準状態から変位した状態となる変位基板と、変位基板の一部に接続され、力もしくは加速度の作用に基づいて、変位基板に、作用した力もしくは加速度に応じた変位を生じさせる作用体と、下方固定基板上面のX軸正領域に対応した位置に形成されたX軸正領域下方電極と、下方固定基板上面のX軸負領域に対応した位置に形成されたX軸負領域下方電極と、上方固定基板下面のX軸正領域に対応した位置に形成されたX軸正領域上方電極と、上方固定基板下面のX軸負領域に対応した位置に形成されたX軸負領域上方電極と、変位基板下面におけるX軸正領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板下面におけるX軸負領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面におけるX軸正領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面におけるX軸負領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、を設け、X軸正領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸正領域下方容量素子を形成し、X軸負領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸負領域下方容量素子を形成し、X軸正領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸正領域上方容量素子を形成し、X軸負領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってX軸負領域上方容量素子を形成し、X軸正領域下方容量素子の静電容量値およびX軸負領域上方容量素子の静電容量値の和と、X軸負領域下方容量素子の静電容量値およびX軸正領域上方容量素子の静電容量値の和と、の差に基づいて、X軸方向に作用した力もしくは加速度を検出する機能を有する検出手段を設けるようにしたものである。
【0007】(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る静電容量式センサにおいて、下方固定基板上面のY軸正領域に対応した位置に形成されたY軸正領域下方電極と、下方固定基板上面のY軸負領域に対応した位置に形成されたY軸負領域下方電極と、上方固定基板下面のY軸正領域に対応した位置に形成されたY軸正領域上方電極と、上方固定基板下面のY軸負領域に対応した位置に形成されたY軸負領域上方電極と、変位基板下面におけるY軸正領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板下面におけるY軸負領域下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面におけるY軸正領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面におけるY軸負領域上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、を更に設け、Y軸正領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸正領域下方容量素子を形成し、Y軸負領域下方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸負領域下方容量素子を形成し、Y軸正領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸正領域上方容量素子を形成し、Y軸負領域上方電極およびこれに対向する変位電極によってY軸負領域上方容量素子を形成し、Y軸正領域下方容量素子の静電容量値およびY軸負領域上方容量素子の静電容量値の和と、Y軸負領域下方容量素子の静電容量値およびY軸正領域上方容量素子の静電容量値の和と、の差に基づいて、Y軸方向に作用した力もしくは加速度を検出する機能を検出手段にもたせるようにしたものである。
【0008】(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る静電容量式センサにおいて、各下方電極および各上方電極が、XZ平面もしくはYZ平面に関して対称形状になるようにしたものである。
【0009】(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る静電容量式センサにおいて、各容量素子がいずれも同一形状、同一サイズの同一電極間隔をもった電極対からなるようにしたものである。
【0010】(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る静電容量式センサにおいて、下方固定基板上面の原点近傍位置に形成された原点近傍下方電極と、上方固定基板下面の原点近傍位置に形成された原点近傍上方電極と、変位基板下面における原点近傍下方電極に対向する位置に形成された変位電極と、変位基板上面における原点近傍上方電極に対向する位置に形成された変位電極と、を更に設け、原点近傍下方電極およびこれに対向する変位電極によって原点近傍下方容量素子を形成し、原点近傍上方電極およびこれに対向する変位電極によって原点近傍上方容量素子を形成し、原点近傍下方容量素子の静電容量値と原点近傍上方容量素子の静電容量値との差に基づいて、Z軸方向に作用した力もしくは加速度を検出する機能を検出手段にもたせるようにしたものである。
【0011】(6) 本発明の第6の態様は、上述の第5の態様に係る静電容量式センサにおいて、原点近傍下方電極および原点近傍上方電極が、それぞれZ軸に関して回転対称形状となるようにしたものである。
【0012】(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6の態様に係る静電容量式センサにおいて、各原点近傍容量素子が同一形状、同一サイズの同一電極間隔をもった電極対からなるようにしたものである。
【0013】(8) 本発明の第8の態様は、上述の第1〜第7の態様に係る静電容量式センサにおいて、変位基板の第1の部分を下方固定基板および上方固定基板に固定し、変位基板の第2の部分に作用体を接続し、少なくとも、第1の部分と第2の部分との間に位置する第3の部分を可撓性をもった材料で構成し、第3の部分の撓みに基づいて変位が生じるように構成したものである。
【0014】(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1〜第8の態様に係る静電容量式センサにおいて、変位基板上に形成される複数の変位電極を、物理的に単一の共通電極によって構成するようにしたものである。
【0015】(10) 本発明の第10の態様は、上述の第9の態様に係る静電容量式センサにおいて、可撓性をもった導電性基板を変位基板として用い、この変位基板自身を単一の共通電極として用いるようにしたものである。
【0016】(11) 本発明の第11の態様は、上述の第9または第10の態様に係る静電容量式センサにおいて、互いに静電容量値の和を求める必要がある一対の容量素子については、それぞれ共通電極ではない側の電極同士を電気的に接続し、この接続点と共通電極との間の静電容量値を、一対の容量素子の静電容量値の和として用いるようにしたものである。
【0017】(12) 本発明の第12の態様は、上述の第11の態様に係る静電容量式センサにおいて、下方固定基板および上方固定基板の接続対象となる電極形成位置に、それぞれスルーホールを形成し、このスルーホールを介した配線層を利用して、接続対象となる一対の電極を電気的に接続するようにしたものである。
【0018】(13) 本発明の第13の態様は、上述の第1〜第12の態様に係る静電容量式センサにおいて、下方固定基板の周囲と上方固定基板の周囲とを台座によって固定し、この台座によって変位基板の周囲を固定し、変位基板の上面中心部に作用体を接続し、上方固定基板の中心部にこの作用体を挿通させるための貫通孔を形成するようにしたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0020】§1.従来提案されている静電容量式センはじめに、従来から提案されている一般的な多次元静電容量式センサの基本構造および動作について簡単に説明する。図1は、従来から利用されている量産タイプの三次元静電容量式加速度センサの側断面図である。ベース基板10と変位基板20とは、互いに所定間隔をおいて対向するように配置されている。両基板10,20は、スペーサの機能を果たす台座30によって相互に接続されている。この例の場合、ベース基板10および変位基板20は、いずれも正方形状の絶縁性材料からなる基板であるが、ベース基板10は十分な厚みを有するため全体的に剛性を有しているのに対し、変位基板20は比較的薄く、ある程度の可撓性を有する。また、変位基板20の上面中央部には、円柱状の重錘体40が接続されている。
【0021】図2は、ベース基板10の上面図である。図示のとおり、ベース基板10の上面には、5枚の下方電極E1〜E5が形成されている。ここでは、説明の便宜上、ベース基板10の上面中央位置に原点Oをおき、図示の方向に各座標軸をもったXYZ三次元座標系を定義することにする。ベース基板10および変位基板20は、いずれも基板面がXY平面に平行になるように配置されていることになる。また、下方電極E1,E2は、それぞれX軸の正領域および負領域に配置されており、下方電極E3,E4は、それぞれY軸の正領域および負領域に配置されており、下方電極E5は、原点近傍位置に配置されている。
【0022】一方、変位基板20の下面には、5枚の上方電極E6〜E10が形成されている。この上方電極E6〜E10の平面図は示されていないが、これらの平面形状パターンは、図2に示す下方電極の平面形状パターンと同一である。別言すれば、上方電極E6〜E10は、それぞれ下方電極E1〜E5と同一形状をなし、それぞれ上下に向かい合う位置に配置されている。ここでは、下方電極E1〜E5と、これらに対向する上方電極E6〜E10とによって形成される容量素子を、それぞれ容量素子C1〜C5と呼ぶことにする。図2において、各下方電極E1〜E5の符号に括弧書きで示したC1〜C5なる符号は、これら容量素子を示すためのものである。
【0023】このような構造をもった加速度センサの動作は、前掲の各公報に詳述されているので、ここではその原理だけを簡単に述べておく。いま、重錘体40に対してX軸正方向(図1における右方向)の加速度が作用したとすると、重錘体40をX軸正方向に変位させる力が働き、変位基板20に撓みが生じる。その結果、電極E1,E6の間隔は小さくなり、電極E2,E7の間隔は大きくなる。このような電極間隔の変化により、容量素子C1の静電容量値は増加し、容量素子C2の静電容量値は減少する。したがって、容量素子C1の静電容量値と容量素子C2の静電容量値との差を求めることにより、X軸方向に作用した加速度の方向および大きさを検出することができる(加速度の方向は、得られた差の符号により決定でき、加速度の大きさは、得られた差の絶対値により決定できる)。同様にして、容量素子C3の静電容量値と容量素子C4の静電容量値との差を求めることにより、Y軸方向に作用した加速度の方向および大きさを検出することができ、容量素子C5の静電容量値を求めることにより、Z軸方向に作用した加速度の方向および大きさを検出することができる。
【0024】このような検出原理では、X軸方向の検出値とY軸方向の検出値との間には、原則として干渉は生じない。すなわち、X軸方向の加速度成分がY軸方向の検出値に影響を与えることはなく、逆に、Y軸方向の加速度成分がX軸方向の検出値に影響を与えることはない。ところが、Z軸方向の加速度成分は、X軸方向の検出値およびY軸方向の検出値に多少なりとも影響を与えることになる。図3は、このような他軸干渉の影響を調べるための実験結果を示すグラフである。すなわち、上述した加速度センサを用いて、X軸方向の加速度αxを種々の環境で測定した結果を示している。具体的には、横軸は、実際に作用した加速度αxの値を示し、縦軸はそのときに得られた出力電圧(容量素子C1の静電容量値と容量素子C2の静電容量値との差に相当する電圧)の値を示している。
【0025】ここで、実線で示すグラフは、X軸方向の加速度αxのみが作用している環境下での測定結果であり、加速度αx(−1G<αx<+1Gの範囲)に対して出力電圧が線形対応し、正確な検出が行われていることが示されている。一方、破線で示すグラフは、+1Gの大きさをもったZ軸方向加速度αzが常に作用している環境下(図1において、重錘体40に対して常に上方向の加速度が作用している状態)において、X軸方向の加速度αxを測定した結果であり、加速度αxに対する出力電圧の線形性が失われ、誤差を含んだ検出が行われていることがわかる。また、一点鎖線で示すグラフは、−1Gの大きさをもったZ軸方向加速度αzが常に作用している環境下(図1において、重錘体40に対して常に下方向の加速度が作用している状態)において、X軸方向の加速度αxを測定した結果であり、やはり加速度αxに対する出力電圧の線形性が失われ、誤差を含んだ検出が行われていることがわかる。
【0026】図4は、このような測定誤差を補正する機能を備えた検出回路の一例を示す回路図である。図の左側のC1〜C5は、上述した加速度センサにおける各容量素子であり、C/V変換回路51〜55は、各容量素子の静電容量値C1〜C5を電圧値V1〜V5に変換するための回路である。減算回路61によって、電圧値V1,V2の差が演算され、更に補正回路71による補正が施された後、X軸方向の加速度αxの検出値として電圧Vxが出力される。同様に、減算回路62によって、電圧値V3,V4の差が演算され、更に補正回路72による補正が施された後、Y軸方向の加速度αyの検出値として電圧Vyが出力される。また、電圧値V5は、バッファ回路63を介して、Z軸方向の加速度αzの検出電圧Vzとしてそのまま出力される。
【0027】ここで、補正回路71および補正回路72は、電圧値V5に基づいて、電圧値(V1−V2)および電圧値(V3−V4)に対する補正を行う機能を有しており、Z軸方向の加速度αzが作用している環境下においても、X軸方向の加速度αxおよびY軸方向の加速度αyについての正しい検出値が得られるような補正が行われる。
【0028】このように、補正回路を設けて補正処理を行うようにすれば、最終的には他軸干渉を受けない正確な測定値を得ることは可能である。しかしながら、図3のグラフに示すような非線形特性をもった測定値に対して、線形出力を得るための補正を行うためには、かなり複雑な補正回路が必要になるため、センサ全体の構成が複雑になり、コストは高騰せざるを得ない。
【0029】§2.本発明に係る静電容量式センサ続いて、本発明に係る静電容量式センサの基本構造およびその動作について説明する。本発明に係るセンサの基本構成要素は、下方固定基板、上方固定基板、変位基板なる3枚の基板である。ここでは、まず、これら各基板の構成を順に説明する。
【0030】図5は下方固定基板110の上面図であり、図6はその側断面図である。ここでは、説明の便宜上、この下方固定基板110の上面中央位置に原点Oをおき、図示の方向に各座標軸をもったXYZ三次元座標系を定義することにする。下方固定基板110は、正方形状の絶縁性基板であり、その基板面がXY平面に平行となっており、その中心位置にZ軸が貫通していることになる。なお、下方固定基板110は全体として十分な剛性を有している。図5に示すとおり、下方固定基板110の上面には、5枚の電極E11〜E15が形成されている。これらの電極は、下方固定基板110上に形成されているため、ここでは下方電極と呼ぶことにする。
【0031】一方、図7は変位基板120の下面図、図8はその上面図、図9はその側断面図である。この変位基板120は、後述するように、下方固定基板110の上方に配置される。したがって、その基板面はやはりXY平面に平行となり、X軸,Y軸との位置関係は図示のとおりになる。変位基板120は下方固定基板110と同様に、正方形状の絶縁性基板であるが、その厚みは小さく全体的に可撓性を有する。そのため、力や加速度の作用によって撓みが生じることになる。変位基板120の下面には、図7に示すとおり、5枚の電極F11〜F15が形成されており、上面にも、図8に示すとおり、5枚の電極F21〜F25が形成されている。これらの電極は、変位基板120自身の撓みとともに変位することになるため、ここでは変位電極と呼ぶことにする。
【0032】図10は上方固定基板130の下面図であり、図11はその側断面図である。この上方固定基板130も、後述するように、下方固定基板110の上方に配置される。したがって、その基板面はやはりXY平面に平行となり、X軸,Y軸との位置関係は図示のとおりになる。上方固定基板130は、全体として十分な剛性を有している。図10に示すとおり、上方固定基板130の下面には、5枚の電極E21〜E25が形成されている。これらの電極は、上方固定基板130上に形成されているため、ここでは上方電極と呼ぶことにする。なお、上方固定基板130の中央部(ワッシャー状の上方電極E25の内側部分)には、貫通孔Hが形成されている。
【0033】図12は、上述した3枚の基板110,120,130を、台座140,150を介して上下に積層状態にして固定した状態を示す側断面図であり、本発明に係る静電容量式センサの本体部分を示している。台座140は、下方固定基板110の上面周囲を囲むような壁面構造体であり、下方固定基板110と変位基板120とを、所定間隔をおいて互いに接続するスペーサとしての機能を有している。同様に、台座150は、上方固定基板130の下面周囲を囲むような壁面構造体であり、上方固定基板130と変位基板120とを、所定間隔をおいて互いに接続するスペーサとしての機能を有している。また、変位基板120の上面中心部には、円柱状の作用体160が接続されている。この作用体160は、上方固定基板130に形成された貫通孔Hを挿通した状態となっており、加速度を検出するための錘として十分な質量を有する。なお、加速度センサの場合、この作用体160は重錘体として機能するが、本発明は後述するように加速度センサに限定されるものではないので、ここでは作用体と呼ぶことにする。
【0034】この実施形態では、各基板110,120,130および各台座140,150は、いずれも絶縁性の材料から構成されている。具体的には、たとえば、ガラスエポキシ基板やセラミック基板などによって各基板や台座を構成することができる。ただ、変位基板120は可撓性を有する必要があるため、ガラスエポキシ基板などを用いる場合には、必要な可撓性が得られる程度の厚みにしておく必要がある。可撓性が高ければ高いほど、感度の高いセンサが得られる。一方、基板110,130および台座140,150は、十分な剛性を確保しておく必要があり、これらの各部は、測定中に変位が生じない固定部として機能する。各部の実寸は、用いた材質や、センサとして必要な感度などを考慮して適宜定めるようにすればよい。なお、図示されている各部の寸法比は、図示の便宜を考慮した寸法比となっており、実際の実施形態に係るセンサについての寸法比を示すものではない。
【0035】作用体160に加速度が作用すると、この加速度に基づく力が変位基板120の中心部へ伝達され、変位基板120が変位を生じることになる。この変位基板120の変位を、各電極から構成される容量素子の静電容量値の変化として検出することにより、加速度検出を行う点は、§1で述べた従来のセンサと同様である。図12に示されているように、作用体160の外周面と貫通孔Hの内周面との間には、所定幅の空隙が確保されているが、これは作用体160がある程度の自由度をもって変位することができるようにするためである。なお、ここではこのセンサを加速度センサとして説明するが、このセンサは力センサとしての機能を果たすことができる。たとえば、作用体160に指で直接力を加えた場合、加速度が作用したのと同様に、変位基板120に変位が生じることになるので、加速度検出と全く同じ原理で、作用した外力の検出を行うことができる。また、作用体160を磁性材料で構成しておけば、磁気力の作用により変位基板120に変位を生じさせることができるので、このセンサは磁気センサとして機能することになる。このように、本発明に係るセンサは、結果的に作用体160に力を作用させることができる物理量(加速度や磁気力)を検出するためのセンサとして広く利用可能である。
【0036】続いて、各部に形成された電極構成に着目しながら、このセンサの動作を説明する。図5に示されているように、下方固定基板110の上面には、5枚の下方電極E11〜E15が形成されている。ここで、下方電極E11,E12は、それぞれX軸の正領域および負領域に対応した位置に配置されており、下方電極E13,E14は、それぞれY軸の正領域および負領域に対応した位置に配置されており、下方電極E15は、原点近傍領域に配置されている。一方、この下方固定基板110の上面に対向するように配置された変位基板120の下面には、図7に示すように5枚の変位電極F11〜F15が配置されているが、これらの変位電極F11〜F15は、それぞれ下方電極E11〜E15と同一形状、同一サイズの電極であり、それぞれ下方電極E11〜E15に対向する位置に配置されている。別言すれば、下方電極E11〜E15の平面形状パターンは、変位電極F11〜F15の平面形状パターンと同一になる。このように対向して配置された5組の電極対によって、それぞれ容量素子C11〜C15が形成されている。図5および図7において、各電極E11〜E15、F11〜F15の符号に括弧書きで示したC11〜C15なる符号は、これら容量素子を示すためのものである。
【0037】また、図10に示されているように、上方固定基板130の下面には、5枚の下方電極E21〜E25が形成されている。ここで、上方電極E21,E22は、それぞれX軸の正領域および負領域に対応した位置(正確に表現すれば、X軸をZ軸方向に投影することにより基板上に得られるX軸投影像の正領域および負領域の位置。以下、同様)に配置されており、上方電極E23,E24は、それぞれY軸の正領域および負領域に対応した位置に配置されており、上方電極E25は、原点近傍領域に配置されている。一方、この上方固定基板130の下面に対向するように配置された変位基板120の上面には、図8に示すように5枚の変位電極F21〜F25が配置されているが、これらの変位電極F21〜F25は、それぞれ上方電極E21〜E25と同一形状、同一サイズの電極であり、それぞれ上方電極E21〜E25に対向する位置に配置されている。別言すれば、上方電極E21〜E25の平面形状パターンは、変位電極F21〜F25の平面形状パターンと同一になり、また、変位電極F11〜F15の平面形状パターンや下方電極E11〜E15の平面形状パターンとも同一になる。このように対向して配置された5組の電極対によって、それぞれ容量素子C21〜C25が形成されている。図10および図8において、各電極E21〜E25、F21〜F25の符号に括弧書きで示したC21〜C25なる符号は、これら容量素子を示すためのものである。
【0038】結局、下方固定基板110と変位基板120との間には、5組の容量素子C11〜C15が形成され、上方固定基板130と変位基板120との間には、5組の容量素子C21〜C25が形成されることになる。ここで、X軸上に配置された4つの容量素子C11,C12,C21,C22がX軸方向の加速度αxの検出に利用でき、Y軸上に配置された4つの容量素子C13,C14,C23,C24がY軸方向の加速度αyの検出に利用でき、原点近傍に配置された2つの容量素子C15,C25がZ軸方向の加速度αzの検出に利用できることは、§1に示す従来の静電容量式センサの動作を考慮すれば理解できるであろう。
【0039】図12に示すセンサに、検出対象となる加速度が作用していない環境下では、図示のとおり、変位基板120はXY平面に平行な基準状態を維持しており、対向する一対の電極間距離は、いずれの電極対についても一定となる。ところが、ここで、作用体160に対してX軸正方向の加速度が加わったとすると、変位基板120が撓みながら変位し、容量素子C11および容量素子C22の電極間距離は減少するため、これらの静電容量値は増加し、容量素子C12および容量素子C21の電極間距離は増加するため、これらの静電容量値は減少する。結局、容量素子C11の容量値と容量素子C22の容量値との和と、容量素子C12の容量値と容量素子C21の容量値との和と、の差を求めれば、この差の値がX軸方向の加速度αxに対応したものになる(差の符号が加速度の向きを示し、差の絶対値が加速度の大きさを示す)。
【0040】同様に、Y軸方向の加速度αyは、容量素子C13の容量値と容量素子C24の容量値との和と、容量素子C14の容量値と容量素子C23の容量値との和と、の差によって求めることができる。また、Z軸方向の加速度αzは、容量素子C25の容量値と容量素子C15の容量値との差によって求めることができる。
【0041】このような原理に基づいて、XYZ三次元座標系における各軸方向成分の加速度αx,αy,αzを求めるには、図13の回路図に示すような検出回路を用意しておけばよい。図の左側のC11〜C15,C21〜C25は、図12に示す加速度センサにおける各容量素子であり、E11〜E15,F11〜F15,E21〜E25,F21〜F25は、各容量素子を構成する電極である。この実施例では、F11〜F15,F21〜F25はすべて接地されている。別言すれば、変位基板120側に形成された変位電極側がすべて接地されていることになる。このように、変位電極側を接地するような形態にすると、複数の変位電極を物理的に単一の共通電極によって構成することができるようになるので、変位基板120側の構造を単純化することができる。すなわち、図7および図8に示されている変位基板120側の個々の変位電極は、それぞれ電気的に独立した別個の電極になっているが、これらを単一の共通電極(たとえば、大きな円盤状の電極)に置き換えることが可能になる。
【0042】図13の回路図において、容量素子C11,C22、容量素子C12,C21、容量素子C13,C24、容量素子C14,C23がそれぞれ並列接続されているが、これは2つの容量素子について容量値の和を求めるためである。こうして求められた容量値の和は、C/V変換回路211〜214によって電圧値V1〜V4に変換される。更に、減算回路221によって、電圧値V1,V2の差が演算され、この差がX軸方向の加速度αxの検出値を示す電圧Vxとして出力され、減算回路222によって、電圧値V3,V4の差が演算され、この差がY軸方向の加速度αyの検出値を示す電圧Vyとして出力される。一方、容量素子C25の容量値は、C/V変換回路215によって電圧値V5に変換され、容量素子C15の容量値は、C/V変換回路216によって電圧値V6に変換される。そして、減算回路223によって、電圧値V5,V6の差が演算され、この差がZ軸方向の加速度αzの検出値を示す電圧Vzとして出力される。
【0043】こうして得られた各軸に関する加速度検出値は、他軸干渉のない正確な検出値となる。まず、X軸成分とY軸成分との間の干渉が生じない点は、§1で述べた従来の静電容量式センサと同様である。これは、X軸成分の検出に供される電極(X軸上に配置された電極E11,E12,F11,F12,E21,E22,F21,F22)は、XZ平面に関して対称形状をなし、Y軸成分の検出に供される電極(Y軸上に配置された電極E13,E14,F13,F14,E23,E24,F23,F24)は、YZ平面に関して対称形状をなすためである。たとえば、図5における下方電極E11,E12および図7における変位電極F11,F12は、いずれもXZ平面に関して対称形状をなしている。このため、Y軸方向の加速度が作用して変位基板120に変位が生じたとしても、容量素子C11,C12の電極間隔は、減少する部分と増加する部分とが半々となり、容量素子全体としての静電容量値には変化は生じない。結局、Y軸方向の加速度が作用しても、X軸上に配置された容量素子の静電容量値には変化は生じないことになり、図13に示す検出電圧Vxは、Y軸加速度成分の影響を受けない。同様の理由により、X軸方向の加速度が作用しても、Y軸上に配置された容量素子の静電容量値には変化は生じないことになり、図13に示す検出電圧Vyは、X軸加速度成分の影響を受けない。
【0044】続いて、Z軸方向の加速度成分が、検出電圧VxやVyに及ぼす影響について考えてみる。前述したように、§1で述べた従来の静電容量式センサの場合、図3の破線あるいは一点鎖線のグラフに示されているように、Z軸方向の加速度成分αzの存在により、X軸方向の加速度αxの出力電圧に影響が及んでいた。これに対して、本発明に係る静電容量式センサでは、Z軸方向の加速度成分αzの有無によらず、X軸方向の加速度αxの出力電圧は、図3の実線のグラフに示されているように、常に線形性が維持された。その理由は、変位基板120の下方に形成された容量素子の容量値と、変位基板120の上方に形成された容量素子の容量値との和による検出が行われているためである。
【0045】たとえば、図12において、X軸方向の加速度成分の検出は、容量素子C11,C22の容量値の和と、容量素子C12,C21の容量値の和と、の差に基づいて行われている。これは、X軸方向の加速度成分に基づいて生じる変位に関し、容量素子C11,C22の容量値の増減は互いに同一、容量素子C12,C21の容量値の増減も互いに同一、となるのに、容量素子C11,C22の容量値の増減と容量素子C12,C21の容量値の増減は逆になるためである。ところが、Z軸方向の加速度成分に基づいて生じる変位に関しては、容量素子C11,C22の容量値の増減は互いに逆、容量素子C12,C21の容量値の増減も互いに逆となるので、和をとることにより、増減変化は相殺されてしまうことになる。このため、検出電圧Vxには、X軸方向の加速度成分に関する情報は含まれるが、Z軸方向の加速度成分に関する情報は含まれないことになる。同様の理由により、検出電圧Vyには、Y軸方向の加速度成分に関する情報は含まれるが、Z軸方向の加速度成分に関する情報は含まれない。
【0046】なお、Z軸方向の加速度成分の増減変化を正確に相殺するためには、相殺対象となる容量素子の物理的構成、すなわち、電極の形状、サイズ、電極間隔を全く同一にしておくのが好ましい。たとえば、上述の例の場合、容量素子C11,C22を、物理的構成が全く同一の容量素子により構成し、容量素子C12,C21を、物理的構成が全く同一の容量素子により構成しておけば、上述した相殺が正確に行われることになる。もちろん、両者の物理的構成が異なっていても、電極の形状、サイズ、電極間隔などを所定の条件に設定すれば、増減変化の正確な相殺を行うことが可能であるが、実用上は、物理的構成を同一にするのが最も簡単である。また、実用上は、X軸方向の感度とY軸方向の感度とが同じ方が扱いが便利である。したがって、電極E11〜E14,電極F11〜F14,電極E21〜E24,電極F21〜F24(X軸およびY軸方向の検出に関与するすべての電極)を、すべて同じ形、同じサイズのものとし、原点Oに関してシンメトリックな配置となるようにし、かつ、加速度が作用していない基準状態における各容量素子の電極間隔がすべて同一となるような設定にするのが好ましい。
【0047】最後に、X軸またはY軸方向の加速度成分が、検出電圧Vzに及ぼす影響について考えてみる。上述した実施例に係るセンサでは、Z軸方向の加速度成分の検出に用いられる電極E15,F15,E25,F25は、いずれもワッシャー状の円盤電極であり、それぞれZ軸に関して回転対称となる形状となっている。このため、X軸またはY軸方向の加速度成分によって変位基板120に何らかの変位が生じたとしても、電極間隔の増減変化は全体としてみれば相殺されてしまう。したがって、この変位は、回転対称形をした一対の電極からなる容量素子の容量値には何ら影響を及ぼさない。よって、検出電圧Vzには、X軸あるいはY軸方向の加速度成分に関する情報は含まれない。なお、Z軸方向の加速度成分について線形出力を得る上では、容量素子C15の物理的構成と容量素子C25の物理的構成とを同一にするのが好ましく、具体的には、電極E15,F15,E25,F25(Z軸方向の検出に関与するすべての電極)を、すべて同一形状、同一サイズのものとし、かつ、加速度が作用していない基準状態における容量素子C15,C25の電極間隔が同一となるような設定にするのが好ましい。
【0048】最後に、上述した静電容量式センサのメリットを掲げておく。
(1) X軸もしくはY軸方向に関する加速度検出値が、Z軸方向の加速度による影響を受けず、他軸干渉のない正確な検出値が得られる。
(2) §1で述べた従来のセンサに比べ、下方容量素子と上方容量素子との双方を用いた検出が可能になるため、検出感度が2倍になる。
(3) Z軸方向の加速度検出についても、差動検出が行われるようになるため、直線性と温度特性が改善される。
(4) 下方固定基板110と上方固定基板130とが、変位基板120の変位を所定範囲内に制限するストッパー基板としての役目を果たすことになり、作用体160に大きな加速度や力が加わったとしても、変位基板120の変位は所定範囲内に制限されることになり、変位基板120を機械的な破損から保護することができる。
(5) 変位基板120が、下方固定基板110,上方固定基板130,台座140,150からなる部屋内に収容された状態となり、この部屋内の空気によるダンピング作用によって、共振特性が抑制され、振動に起因する問題が生じにくくなる。
【0049】§3.より実用的な実施形態上述した§2では、図12に示す基本形態について、本発明に係る静電容量式センサの基本構造およびその動作について説明した。ここでは、本発明に係る静電容量式センサのより実用的な実施形態をいくつか述べておく。
【0050】図14に側断面図を示す実施形態は、図12に示す実施形態をより簡素化したものである。図12に示すセンサでは、絶縁性材料からなる変位基板120の上下両面に、それぞれ変位電極を形成することにより容量素子を構成するようにしていた。しかしながら、信号処理を行う上では、図13の回路図にも示されているように、変位基板120側に形成されるすべての変位電極は、共通電位(図の例では接地電位)に維持することができるので、これらの変位電極は、物理的に単一の共通電極によって構成することが可能である。図14に示すセンサにおける変位基板125は、可撓性をもった導電性基板(たとえば、ステンレス基板や、不純物が高濃度でドープされたシリコン基板など)から構成されており、この変位基板自身が単一の共通電極として利用されている。別言すれば、図14に示す変位基板125は、図12に示すセンサにおける変位基板120として機能するとともに、変位電極F11〜F15,F21〜F25としても機能することになる。
【0051】図14において、台座145は下方固定基板110と変位基板125とを所定間隔をおいて固定するスペーサであり、台座155は上方固定基板130と変位基板125とを所定間隔をおいて固定するスペーサである。変位基板125は、上述のように、可撓性をもった導電性基板であるが、その周囲部分は、台座145,155を介して下方固定基板110および上方固定基板130に固定されていることになる。また、変位基板125の中心部分には、作用体160が接続されている。結局、変位基板120の周囲部分と中心部分との間に位置する中間部分が可撓性をもった領域として機能し、この領域の撓みによって変位が生じることになる。この変位基板125自身が変位電極として機能するため、各容量素子の容量値に§2で述べたような変化が生じる。
【0052】このように、変位基板125を可撓性をもった導電性基板で構成し、この基板の1か所を接地すれば、図13の回路図に示す接地側配線がすべて完了することになる。また、図13の回路図では、容量素子C11,C22、容量素子C12,C21、容量素子C13,C24、容量素子C14,C23の各容量素子対は、互いに静電容量値の和を求める必要がある容量素子対となっている。このような容量素子対については、それぞれ共通電極(変位基板125側の接地された電極)ではない側の電極同士を電気的に接続し、この接続点をC/V変換回路211〜214の入力端子に接続する必要がある。このような電極同士の接続を行うには、下方固定基板110および上方固定基板130上の接続対象となる電極形成位置に、それぞれスルーホールを形成し、このスルーホールを介した配線層を利用して、接続対象となる一対の電極を電気的に接続すると、構造が単純化されるので好ましい。
【0053】図15は、接続対象となる電極E11と電極E22とについての配線例を示す側断面図である。ここに示すセンサの構造は、図14に示すセンサの構造とほぼ同じであるが、下方固定基板110の代わりにやや左方に伸びた下方固定基板115が用いられており、上方固定基板130の代わりにやや左方に伸びた上方固定基板135が用いられている。各基板および台座は、固定用ボルト171およびナット172でしっかりと固定されている。上方固定基板135における電極E22の形成位置には、スルーホールが形成されており、ここにスルーホール導通路T1が設けられている。このスルーホール導通路T1は、配線層W1へと連なっている。同様に、下方固定基板115における電極E11の形成位置には、スルーホールが形成されており、ここにスルーホール導通路T2が設けられている。このスルーホール導通路T2は、配線層W2へと連なっている。配線層W1と配線層W2とは、結線用リードピン175によって導通している。また、配線層W2は、スルーホール導通路T3を介して配線層W3へと接続されている。結局、配線層W3をC/V変換回路211の入力端子に接続すれば、図13に示す回路図における電極E11,E22についての配線が完了することになる。
【0054】図16は、図15に示す配線の変形例を示す側断面図である。上方固定基板135における電極E22の形成位置には、スルーホールが形成されており、ここにスルーホール導通路T1が設けられている。このスルーホール導通路T1は、配線層W4へと連なっており、この配線層W4は、更に、スルーホール導通路T4を介して、配線層W5へと連なっている。一方、下方固定基板115における電極E11の形成位置には、スルーホールが形成されており、ここにスルーホール導通路T2が設けられている。このスルーホール導通路T2は、配線層W6へと連なっており、この配線層W6は、更に、スルーホール導通路T5を介して、配線層W7へと連なっている。ここで、配線層W7の上面には、半田バンプ180が形成されており、その上部は配線層W5に接触している。結局、配線層W7をC/V変換回路211の入力端子に接続すれば、図13に示す回路図における電極E11,E22についての配線が完了することになる。
【0055】なお、この図16に示す実施例では、変位基板125の下面に突起部161が形成されている。これは作用体160の底面を変位基板125の上面に溶接(電気溶接、レーザ溶接、熱溶接(作用体160が樹脂の場合))した場合に生じた突起である。溶接によっては、このように、変位基板125の下面側に突起部161が形成されてしまう場合があるが、このような場合、下方固定基板115の上面側に溝Gを形成するようにし、変位基板125が変位した場合でも、突起部161が下方固定基板115の上面に接触しないような配慮を行うのが好ましい。
【0056】図17は、図15に示す配線の別な変形例を示す側断面図である。上方固定基板135における電極E22の形成位置には、スルーホールが形成されており、ここにスルーホール導通路T1が設けられている。このスルーホール導通路T1は、配線層W8へと連なっている。一方、下方固定基板115における電極E11の形成位置には、スルーホールが形成されており、ここにスルーホール導通路T2が設けられている。このスルーホール導通路T2は、配線層W9へと連なっており、この配線層W9は、更に、スルーホール導通路T6を介して、配線層W10へと連なっている。また、各基板および台座は、固定用ボルト173およびナット174でしっかりと固定されているが、この固定用ボルト173およびナット174により、配線層W8およびW9が導通するようになっている。結局、配線層W10をC/V変換回路211の入力端子に接続すれば、図13に示す回路図における電極E11,E22についての配線が完了することになる。
【0057】なお、図15〜図17では、電極E11,E22についての相互配線例のみを示したが、実際には、電極E12,E21、電極E13,E24、電極E14,E23についても同様の手法により相互配線がなされ、各接続点が、それぞれC/V変換回路212、213、234の入力端子に接続されることになる。また、図15〜図17では、各基板および台座をボルトとナットで固定した例を示したが、リベットを用いて固定してもよい。この場合、図17に示す例では、リベットにより配線層W8およびW9を導通させるようにすればよい。
【0058】以上、本発明を図示するいくつかの実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、この他にも種々の形態で実施可能である。特に、上述した実施形態における電極の形状は、これらのものに限定されるものではなく、本発明の原理に基づく検出が可能な範囲内で任意の形状にすることができる。また、上述の実施形態では、本発明に係るセンサを加速度センサとして用いた例を示したが、既に述べたように、本発明は力センサや磁気センサなどにも適用可能である。
【0059】
【発明の効果】以上のとおり本発明によれば、単純な構造で、他軸干渉のない正確な検出値を得ることができる静電容量式センサを提供することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】390013343
【氏名又は名称】株式会社ワコー
【出願日】 平成11年3月1日(1999.3.1)
【代理人】 【識別番号】100091476
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 浩
【公開番号】 特開2000−249609(P2000−249609A)
【公開日】 平成12年9月14日(2000.9.14)
【出願番号】 特願平11−52957