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【発明の名称】 トルクセンサ
【発明者】 【氏名】永野 英信

【要約】 【課題】歯部同士を対向させる従来のトルクセンサでは、歯部の加工に手間がかかる。歯部間の位置決めが困難であり、個体毎に検出特性がばらつく。

【解決手段】舵輪にトルクが付与されて入力軸2と出力軸3に相対回転が生ずると、コイルばね9が捩じりを強めたり弱めたりする。その結果、コイルばね9のピッチが変化するので、隣接する巻き線間のエアギャップの量が変化し、検出コイル16,17による磁気回路の磁気抵抗が増減する。これに伴って、検出コイル16,17のインピーダンスが変化する。これを検出コイル16,17の両端の電圧として取り出し、トルクに応じた出力を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】トーションバーを介して相対回転可能に連結された入力軸及び出力軸に負荷されるトルクを検出するトルクセンサにおいて、前記入力軸及び出力軸の相対回転に伴って捩じられるように、各端部が対応する軸に係合する磁性体からなる螺旋状のコイルばねと、このコイルばねの周囲を取り囲み、コイルばねのピッチ変化に伴う磁気抵抗の変化に基づいてトルクを検出する検出コイルとを備えることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】前記コイルばねは、入力軸及び出力軸の相対向する一対の端面同士の間に介在し、前記一対の端面は軸方向に対して傾斜した傾斜面とされ、これら傾斜面間の位相ずれによりコイルばねのばね長を変化させることを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項3】前記コイルばねの巻き線は角形断面をしていることを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトルクセンサに関し、例えば自動車の電動パワーステアリング装置に適用するのに好適なトルクセンサを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の操舵輪を操作する力を補助するパワーステアリング装置として電動式のものが開発されつつある。これは操舵輪に加えられたトルクを検出し、その検出トルクに応じて、操舵機構に設けた電動機を回転させる構造となっている。ところで、このトルク検出手段としては、例えば特開昭59−208431号公報に示されているトルクセンサが知られている。
【0003】このトルクセンサでは、トーションバーを介して連結された入力軸及び出力軸とそれぞれ一体に回転する筒体を設けると共に、これら筒体の対向端面にそれぞれ歯部を設け、互いの歯部間に入力軸の軸方向及び回転方向にそれぞれ所定の隙間を設けて対向させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、複数の筒体に歯部を加工するので、手間がかかり、製造コストが高くなっていた。また、各筒体の歯部同士は軸方向及び回転方向の双方にその位置がオーバーラップしており、歯部間の隙間の設定が検出精度に大きく影響する。また、トルク検出装置の組立時において、トルクが負荷されていないニュートラルな状態で高精度で位置決めして組み付ける必要があるが、この組み付け作業が非常に困難であった。
【0005】さらに、トルクがゼロの状態で前記のような歯部同士の正確な位置決めを行うことは実質的に不可能であり、このため、トルクセンサの個体間で検出特性のばらつきが大きい。本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、手間のかかる加工や困難な組み付け作業をなくすことができ、検出特性のばらつきも少ないトルクセンサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための課題解決手段として、請求項1記載の発明の態様は、トーションバーを介して相対回転可能に連結された入力軸及び出力軸に負荷されるトルクを検出するトルクセンサにおいて、前記入力軸及び出力軸の相対回転に伴って捩じられるように、各端部が対応する軸に係合する磁性体からなる螺旋状のコイルばねと、このコイルばねの周囲を取り囲み、コイルばねのピッチ変化に伴う磁気抵抗の変化に基づいてトルクを検出する検出コイルとを備えることを特徴とするものである。
【0007】本態様では、入力軸と出力軸が相対回転すると、コイルばねがその捩じりを強めたり弱めたりし、コイルばねの巻き線間のピッチが変化する。このピッチ変化に伴う磁気抵抗の変化に基づいて、検出コイルによりトルクを検出する。単純で標準的な機械要素である螺旋状のコイルばねを用いるので、困難な加工や組み付けは不要である。また、厳格な位置決めを行わずとも、コイルばねの巻き線のピッチはあまりばらつかず、このようなコイルばねのピッチ変化に基づいてトルクを検出するので、検出特性のばらつきも少ない。
【0008】請求項2記載の発明の態様は、請求項1において、前記コイルばねは、入力軸及び出力軸の相対向する一対の端面同士の間に介在し、前記一対の端面は軸方向に対して傾斜した傾斜面とされ、これら傾斜面間の位相ずれによりコイルばねのばね長を変化させることを特徴とするものである。本態様では、入力軸と出力軸とが相対回転すると、傾斜面からなる両軸の端面が互いの間で、コイルばねのばね長を変化させる。これにより、コイルばねを単にねじるだけの場合と比較して、コイルばねのピッチ変化をより大きくして検出出力をより大きくすることができる。その結果、検出感度や検出精度を向上することができる。
【0009】請求項3記載の発明の態様は、請求項1又は2において、前記コイルばねの巻き線は角形断面をしていることを特徴とするものである。角形断面であれば、丸形断面の場合と比較して、隣接する巻き線間の最小隙間を検出コイルに近い側で得ることができる。したがって、磁気回路の長さを短くして検出出力を向上でき、結果として検出感度を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明のトルクセンサが組み込まれた操舵装置の要部の模式的断面図である。図1を参照して、本操舵装置1は図示しない舵輪に連結される入力軸2と、図示しない舵取り機構に連結される出力軸3と、入力軸2と出力軸3とを相対回転可能に連結するトーションバー4とを備えている。入力軸2及び出力軸3の対向端部には、それぞれの軸2,3と一体回転する第1及び第2の筒体5,6が取り付けられている。両筒体5,6の対向する端面7,8は互いに平行な傾斜面とされており、これら端面7,8同士の間に螺旋状のコイルばね9が介在している。
【0011】このコイルばね9は鉄等の磁性体からなり、コイルばね9の巻き端としての両端部9a,9bは、各筒体5,6の端面7,8から突出する環状のスプリングガイド10,11の外周に嵌められている。12はコイルばね9の各端部9a,9bを対応するスプリングガイド10,11に固定するピン又はリベットからなる固定部材である。コイルばね9の巻き線の断面は図2(a)及び(b)に示すように矩形をしている。
【0012】両筒体5,6とこれらの間に介在するコイルばね9の周囲は、車両の所定部に固定される筒状のハウジング13によって取り囲まれている。第1の筒体5は、針状ころ軸受14を介してハウジング13に回動自在に支持されており、第2の筒体6は玉軸受15を介してハウジング13に回動自在に支持されている。また、ハウジング13の内周にはコイルばね9の周囲を取り囲む第1及び第2の検出コイル16,17が軸方向に相隣接して配置されている。各検出コイル16,17は、ハウジング13の内周の第1の環状凹部18に保持された断面コの字形形状の磁性体製の筒体19,20の周溝内に巻回状態で収容保持されている。21は両筒体19,20間に介在して検出コイル16,17間の距離を規制するスペーサである。
【0013】22は第1の環状凹部18よりも大径の第2の環状凹部23の一端の周溝に嵌め入れられた止め輪であり、この止め輪22と筒体20の端面との間には、両筒体19,20及びスペーサ21を一体的に軸方向に付勢する付勢手段としての皿ばね24が介在している。皿ばね24により付勢された筒体19が第1の環状凹部18の一端の位置決め段部25に当接し、これにより、両検出コイル16,17が軸方向に位置決めされ保持されている。
【0014】第1及び第2の筒体5,6、コイルばね9、並びに第1及び第2の検出コイル16,17によってトルクセンサTが構成されている。次いで、本トルクセンサの動作について説明する。図示しない発振器の発振動作によって各検出コイル16,17に発生した磁束は、図2(a)及び(b)に示すように、螺旋状のコイルばね9の隣接する巻き線9c,9dを介する磁気回路C1,C2を構成するが、磁気回路C1,C2の磁気抵抗は、コイルばね9の隣接する巻き線9c,9d間のエアギャップの量d1,d2により左右される。一方、このエアギャップの量は、操舵が行われて入力軸2と出力軸3との間に相対回転を生じたときにコイルばね9が捩じりを強めたり弱めたりすることにより変化する。
【0015】例えばコイルばね9が右巻きである場合に、舵輪が右に切られると、コイルばね9は捩じりを強めるため、コイルばね9の巻き線のピッチが狭くなり、その結果、操舵装置が中立位置にあるときと比較してエアギャップ量d1は図2(a)のように狭くなる。このため、各検出コイル16,17による磁気回路の磁気抵抗が減少し、各検出コイル16,17のインピーダンスが増大する。
【0016】一方、舵輪が左に切られるとコイルばね9は捩じりを弱めるため、コイルばね9の巻き線のピッチが広くなり、その結果、操舵装置が中立位置にあるときと比較してエアギャップ量d2は図2(b)のように広くなる。このため、各検出コイル16,17の磁気回路の磁気抵抗が増大し、各検出コイル16,17のインピーダンスが減少する。これらのインピーダンス変化を各検出コイル16,17の両端の電圧として取り出し、図示しない増幅器にて増幅して、トルクに応じた出力を得る。
【0017】本実施の形態では、入力軸2と出力軸3の端部に固定した筒体5,6間にコイルばね9を取り付け、これを検出コイル16,17が装着されたハウジング13内に挿入することで、トルクセンサTを簡単に組み立てることができる。歯部同士を対向させる従来の場合では、トルクがゼロの状態で、歯部同士を軸方向及び回転方向の双方に位置決めしなければならなかったが、単純な機械要素であるコイルばね9のピッチ変化に基づいてトルクを検出する本実施の形態では、軸方向の位置決めはラフで良く、この点からも組立が簡単である。また、厳格な位置決めを行わずとも、コイルばね9の巻き線のピッチはあまりばらつかず、このようなコイルばね9のピッチ変化に基づいてトルクを検出するので、検出特性のばらつきも少ない。
【0018】特に、各検出コイル16,17はコイルばね9の全周にわたってのエアギャップ変化を検出することになるので、組み付け時のコイルばね9のセット長のばらつきは検出特性にほとんど影響を与えない。また、入力軸2と出力軸3の相対回転に伴って、第1及び第2の筒体5,6の傾斜面からなる端面7,8が互いの位相をずらし、これにより、コイルばね9の全長が周方向の一部で部分的に変化する。一方、検出コイル16,17はコイルばね9の全周にわたってのエアギャップ変化の影響を受けるので、前記のピッチの部分的な変化を検出することができる。すなわち、入、出力軸2,3間に相対回転を生じたときに、単にコイルばね9の捩じりが増減されるだけでなく、コイルばね9の全長が部分的に変化する。これにより、入、出力軸2,3の相対回転の量に対して相対的に大きなピッチ変化を得ることができ、その結果、検出コイル16,17の検出出力を高めることができる。ひいては検出感度を向上させることができる。
【0019】さらに、コイルばね9の巻き線の断面を矩形としたので、断面が丸形である場合と比較して、隣接する巻き線間の最小隙間の量(最小のエアギャップ量)を各検出コイル16,17に近い側で得ることができる。したがって、磁気回路の長さを短くして検出コイル16,17の検出出力を向上でき、結果として検出感度を向上させることができる。
【0020】また、第1及び第2の検出コイル16,17の出力性向を互いに逆向き(一方の出力が増加するとき他方の出力が減少すること)にしておけば、両検出コイル16,17の差動出力を取ってこれを1/2とすることにより、各検出コイル16,17の出力にそれぞれ同等量含まれている温度影響成分を相殺して、温度補償を行うことができる。
【0021】なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、筒体5,6の端面7,8を、入力軸2や出力軸3の中心軸線と直交する面とすることもできる。また、コイルばね9の巻き線の断面形状は丸形であっても良い。さらに、筒体5,6を対応する入力軸2及び出力軸3と一体に形成しても良い。また、本実施の形態では温度補償を目的として検出コイルを一対設けたが、単一の検出コイルを用いるようにしても良く、その他、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【0022】
【発明の効果】請求項1記載の発明では、単純で標準的な機械要素である螺旋状のコイルばねを用いるので、困難な加工や組み付けは不要であり、製造コストを安くすることができる。また、厳格な位置決めを行わずとも、コイルばねの巻き線のピッチはあまりばらつかず、このようなコイルばねのピッチ変化に基づいてトルクを検出するので、検出特性のばらつきも少ない。
【0023】請求項2記載の発明では、入力軸と出力軸の相対回転に伴って、コイルばねの全長をも変化させることができるので、コイルばねを単にねじるだけの場合と比較して、コイルばねのピッチ変化をより大きくでき、その結果、検出出力をより大きくして、検出感度を向上させることができる。請求項3記載の発明では、隣接する巻き線間の最小隙間を検出コイルに近い側で得ることができるので、磁気回路の長さを短くして検出出力を向上できる結果、検出感度を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成11年2月24日(1999.2.24)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2000−241265(P2000−241265A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−46859