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【発明の名称】 I型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置
【発明者】 【氏名】境 禎明

【要約】 【課題】磁歪センサーを備えた応力測定ヘッドを用い、I型断面鋼構造物のウェブ部の負荷応力を短時間に精度良く測定できる装置。

【解決手段】励磁コイルと検出コイルを巻いたコの字型ヨーク111と112が互いにヨーク鞍部の中央で直交配置され、磁歪効果による磁気異方性を利用して被測定物6の負荷応力を求める磁歪センサー11と、センサー11を回転させるモーター12と、センサー11の回転角を計るエンコーダー13とを備えた応力測定ヘッド1と、被測定物6を脱磁する脱磁ヘッド2と、応力測定ヘッド1と脱磁ヘッド2を搭載するヘッド支持台3と、I型断面鋼構造物に固定されヘッド支持台3をそのウェブ61面上で走査する走査機構4、5と、走査機構4、5を制御する制御装置とを有してなる応力測定装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】励磁用コイルを巻いたコの字型のヨークと検出用コイルを巻いたコの字型のヨークが互いにヨーク鞍部の中央部で直交するように配置されており、磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用して被測定物に負荷されている応力を求める磁歪センサーと、前記磁歪センサーを回転させるモーターと、前記磁歪センサーの回転角を計測するエンコーダーとを備えた応力測定ヘッドと、前記被測定物を脱磁する脱磁ヘッドと、前記応力測定ヘッドと前記脱磁ヘッドを搭載するヘッド支持台と、I型断面鋼構造物に固定され前記ヘッド支持台を前記I型断面鋼構造物のウェブ面上で走査する走査機構と、前記走査機構を制御する制御装置と、を有してなるI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用して鋼構造物、特にI型断面を有する鋼構造物のウェブ部に負荷されている応力を非破壊的に測定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】保守診断の観点から構造物の安全性を評価するには、その構造物に作用している応力状態を把握することが有効である。
【0003】応力測定の代表的な測定法として、「ひずみゲージ」と呼ばれる小型センサーを被測定物に貼り付け、被測定物の相対的なひずみを電気抵抗の変化によって検出して応力を求める「ひずみゲージ法」がある。しかし、この方法では、ひずみゲージを既設構造物に貼り付け構造物にかかる絶対的な応力を測定するには、構造物を破壊して応力開放を行う必要があるので、実際の橋梁や鉄骨などに適用できない。
【0004】最近、鉄鋼材料などの強磁性材料に負荷されている応力を測定する方法として、磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用し、鋼構造物や機械部品に負荷されている応力を非破壊で、しかも比較的簡便に測定できる方法が、特開昭62ー121325号公報、実開平1ー135338号公報、特開平7ー110270号公報、特開平9ー257598号公報あるいは文献1〔境等:土木学会第50回年次学術講演会予稿集、P662〜663(1995.9)〕などに紹介されている。
【0005】この方法は次のような原理に基づいている。図7に、磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用する応力測定方法の原理図を示す。
【0006】磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用する応力測定には、互いにヨーク鞍部の中央部で直交する励磁用コイルを巻いたコの字型のヨーク111と検出用コイルを巻いたコの字型のヨーク112、交流電源113、電圧計114で構成される磁歪センサー11で行われる。
【0007】いま、被測定物6のX軸方向に引張応力σXが作用すると、磁性材料である被測定物6のX、Y軸方向の透磁率μX、μYには、磁歪効果により下記の式(2)の関係、すなわち磁気異方性が生じるμX>μY・・・(2)
【0008】このような状態にある被測定物6に磁歪センサー11を接近させ、この磁歪センサー11のヨーク111に巻かれた励磁用コイルに交流電源113から電流を流して被測定物6を励磁すると、ヨーク111の開口端111aから出た磁束の大部分は直接ヨーク111の開口端111bへ向かうが、被測定物6には引張応力σXにより式(2)のような磁気異方性が生じているため、磁束の一部115はヨーク112を経由してヨーク111の開口端111bへ流れる。そのため、ヨーク112に巻かれた検出用コイルには下記の式(3)に示す出力波形の起電力Vが誘起され、電圧計114に表示される。
V=M0・(μX−μY)・COS[2・(θ−π/4)]・・・(3)
【0009】ここで、Vは検出用コイルに誘起される交流起電力の整流値、M0は励磁条件、コイルの条件、被測定物6の磁気的特性などにより定まる定数、COS[2・(θ−π/4)]は余弦関数、θはヨーク112の開口端112aと112bを結ぶ直線とX軸のなす角である。
【0010】透磁率の差(μX−μY)は応力の差(σX−σY)に比例するので、式(3)は下記の式(4)のように書換えできる。
V=M・(σX−σY)・COS[2・(θ−π/4)]・・・(4)
【0011】ここで、Mは励磁条件、コイルの条件、被測定物6の磁気的特性などにより定まる定数である。
【0012】実際の測定では、式(4)を下記の式(5)に書換え、測定データからパラメータA、B、Cを回帰して求め、Bから主応力差、Cから主応力方向が決定される。
V=A+B・COS[2・(X−C)]・・・(5)
【0013】特に、橋梁の主桁に用いられるI型断面や箱型断面のウェブやフランジ部では1軸応力場に近い(σX−σYの絶対値が大)ので高い出力が得られ、高精度の測定が可能になる。
【0014】また、特開平9ー257598号公報には、上記磁歪センサーと、磁歪センサーを回転させるモーターと、回転角を計測するエンコーダーとを備えた応力測定ヘッドが開示されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平9ー257598号公報に記載の応力測定ヘッドを用いて、I型断面の橋梁や鉄骨などの長大な鋼構造物にかかる応力を測定するには、測定すべき箇所に応力測定ヘッドを人手により設置して測定する必要があり、膨大な時間がかかるとともに、応力測定ヘッドで鋼構造物を磁化したときに生じる残留磁気の影響で精度良く測定できないといった問題があった。
【0016】本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用して応力測定する磁歪センサーを備えた応力測定ヘッドを用い、I型断面を有する鋼構造物のウェブ部に負荷されている応力を短時間に精度良く測定できる装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題は、励磁用コイルを巻いたコの字型のヨークと検出用コイルを巻いたコの字型のヨークが互いにヨーク鞍部の中央部で直交するように配置されており、磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用して被測定物に負荷されている応力を求める磁歪センサーと、前記磁歪センサーを回転させるモーターと、前記磁歪センサーの回転角を計測するエンコーダーとを備えた応力測定ヘッドと、前記被測定物を脱磁する脱磁ヘッドと、前記応力測定ヘッドと前記脱磁ヘッドを搭載するヘッド支持台と、I型断面鋼構造物に固定され前記ヘッド支持台を前記I型断面鋼構造物のウェブ面上で走査する走査機構と、前記走査機構を制御する制御装置と、を有してなるI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置により解決される。
【0018】磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用して被測定物に負荷されている応力を求める磁歪センサーと磁歪センサーを回転させるモーターとその回転角を計測するエンコーダーとを備えた応力測定ヘッドと、被測定物を脱磁する脱磁ヘッドとを共用することにより、被測定物の測定点を脱磁してから応力測定が可能になるので残留磁気の影響を取り除くことができ、測定精度が向上する。
【0019】また、応力測定ヘッドと脱磁ヘッドをヘッド支持台に搭載し、このヘッド支持台をI型断面鋼構造物のウェブ面上で走査する走査機構を設け、走査機構を制御装置によりコントロールすれば、任意の測定点に脱磁ヘッドと応力測定ヘッドを迅速に設定でき、測定時間を大幅に短縮できる。
【0020】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の1実施の形態であるI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置の平面図を示す。図2に、図1の正面図を示す。図3に、図2のAA矢視図を示す。
【0021】本発明であるI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置は大きく分けて、磁歪センサー11と磁歪センサー回転用モーター12とエンコーダー13を備えた応力測定ヘッド1と脱磁ヘッド2が搭載されたヘッド支持台3と、このヘッド支持台3をウェブ長手方向へ走査するウェブ長手方向走査機構5と、このウェブ長手方向走査機構5をウェブ深さ方向へ走査するウェブ深さ方向走査機構4と、走査機構4、5を制御する制御装置(図示されてない)とから構成されており、ヘッド支持台3を両走査機構4、5によりウェブ部の任意の点に設定して、ヘッド支持台3上に搭載された応力測定ヘッド1と脱磁ヘッド2により応力測定を迅速かつ高精度に行う装置である。
【0022】応力測定ヘッド1と脱磁ヘッド2はヘッド押し付け用リンク14により被測定物であるウェブ面に押し付けられ、また、測定面上を円滑に走査できるように両ヘッドの先端には走査用ガイドボール15、21が設けられている。
【0023】ヘッド支持台3には、ウェブ長手方向走査機構5の駆動用ボールネジシャフト53とスライダー50が結合されており、駆動用ボールネジシャフト53を駆動用モーター52で回転させスライダー50をリニアウエイ51に沿って移動させることにより、ヘッド支持台3はウェブ長手方向に走査される。
【0024】ウェブ長手方向走査機構5には、ウェブ深さ方向走査機構4のスライダー41が結合されており、ウェブ深さ方向走査機構4の駆動用モーター42を回転させ駆動用ラック46と駆動用ピニオンギア47を介してスライダー41をリニアウエイ45に沿って移動させることにより、ウェブ長手方向走査機構5はウェブ深さ方向に走査される。なお、ウェブ深さ方向走査機構4は、被測定物取り付け用アジャスター43と固定ネジ44によりウェブ面上に固定される。被測定物取り付け用アジャスター43を伸長させてI型鋼構造物の上下フランジ間に納まるよう長さを調整し、すなわち「突っ張り棒方式」で固定用ネジ44により固定される。
【0025】図4に、図1のI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置を被測定物にセットしたときの状態を示す。
【0026】このように、ウェブ深さ方向走査機構4を、被測定物取り付け用アジャスター43を伸長させてI型鋼構造物の上下フランジ62の間に納まるよう長さを調整し、固定用ネジ44により固定することにより、本発明であるI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置はウェブ61面上にセットされる。
【0027】図5に、図1のI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置を用いて応力分布を測定するフローチャートを示す。
【0028】まず、図4に示すように本装置をアジャスターによりウェブ面にセット(S1)後、測定位置情報を入力(S2)する。
【0029】次に、脱磁ヘッドを計測点に移動し(S3)、計測点を脱磁(S4)する。そして、脱磁箇所に応力計測ヘッドを移動し(S5)、磁歪センサーを回転しながら出力を収集し(S6)、V=A+B・COS[2・(X−C)]に回帰してパラメータBとCを求め、主応力差と主応力方向を決定する。
【0030】このような測定を設定した測定点の数だけ行い、測定位置を次の位置へ移動し(S9)同様なことを行えば、ウェブ部全体としての応力分布が得られ(S10)、設計上想定される応力分布と比較することによりウェブ部の安全性を評価できる(S11)。
【0031】図6に、図1のI型断面鋼構造物のウェブ部応力測定装置を用いて応力分布を測定した結果の1例を示す。
【0032】図6の矢印の方向は主応力方向、長さは主応力差を表しているが、ウェブ長手方向に平行に、深さ方向の上半分では圧縮力、下半分では引張力の1軸応力が負荷されていることがわかる。
【0033】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されているので、磁歪効果によって生じる磁気異方性を利用して応力測定する磁歪センサーを備えた応力測定ヘッドを用い、I型断面を有する鋼構造物のウェブ部に負荷されている応力を短時間に精度良く測定できる装置を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成10年8月12日(1998.8.12)
【代理人】 【識別番号】100097272
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 茂
【公開番号】 特開2000−55749(P2000−55749A)
【公開日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願番号】 特願平10−227885