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【発明の名称】 流体の温度測定装置
【発明者】 【氏名】保坂 文隆

【要約】 【課題】流体中の温度測定において、カルマン渦対策や摩耗対策を施した、迅速で正確に温度測定ができる温度測定装置の提供。

【解決手段】温度計1の側面に先端部を開口した保護管2を配置した温度測定装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 温度計の側面に、先端部を開口した保護管を配置した流体の温度測定装置。
【請求項2】 保護管の外側を耐摩耗性材料とした請求項1記載の温度測定装置。
【請求項3】 温度計と保護管の間に充填剤を充填した請求項1または2記載の温度測定装置。
【請求項4】 被測定流体が多相流体である請求項1〜3のいずれかに記載の温度測定装置。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の温度測定装置を用いて石油精製工業における接触分解装置のライザー内部の温度を測定する方法。
【請求項6】 石油精製装置により石油製品を製造する方法において、請求項1〜4のいずれかに記載の温度測定装置を石油精製装置内の流体の温度測定に用いることを特徴とする石油製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体の温度測定装置、詳しくは温度計を保護しながら精度よく温度を測定する部分に用いる温度測定装置に関する。さらには、該温度測定装置を用いた温度測定方法および石油製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】石油精製工業における流動接触分解装置のライザー(上昇流反応管)内部では気体として水蒸気、油蒸気、固体として触媒、液体として原料油の三相流体が15m/sec〜30m/secという高速で流れている。従来は、分解反応の制御は、ライザー末端に設置されたディスエンゲージャー(分離塔、旧来の呼び方は反応塔)に設置された温度計によって行われていた。ここでは触媒と反応生成物を分離するため内部流速はlm/sec程度と遅い。しかし、流動接触分解装置の触媒は近年急速に改善され必要反応時間が0.1秒から2秒と短縮されてきた。これは、ライザー部分で反応が完結するため、これを制御する必要性を意味している。ライザー部分の反応を監視し、制御するにはライザー内部に温度測定装置を設置し、直接内部三相流体の温度を測定する必要がある。しかし、上記条件のように高速で流体が流れ、かつ三相流体では下記の二つの問題が有り、そのような温度測定装置は設置できなかった。
【0003】問題点の1つは、通常流体中では温度計の周辺でカルマン渦が出来やすく、これによる温度計の共振、折損が起こることがある。そこでこのカルマン渦発生条件の計算をして温度計の共振を防止する設計を行っている。しかし、このカルマン渦発生条件の計算はせいぜい2相流体までの経験・知見が有るのみで三相流体については正確に温度計の共振を防止する設計を行うことは難しいのが現状である。あるいは、これを防止しようとすると通常の温度計より非常に太い温度計が必要となり、温度計の精度、流体抵抗など他の面での不都合が生じてくる。問題点の2つ目は、高速で流れる触媒は硬度が高く、研磨剤に近いので通常の金属(ステンレス鋼等)では1年以内に磨耗して破損してしまう。本発明者らは実際に温度計表面のステンレス鋼を硬度化処理して磨耗試験を実施したが1年も寿命はなかった例がある。
【0004】上記問題の解決のため、米国石油精製協会(NPRA)等で発表された例でも、サーモウェルの流体接触部分の最小化、上流側への衝突緩衝板設置、温度計先端を金属塊にする等のアイデアが提示されているが、いずれも温度を正確に測定出来ない、又は寿命が極端に短い等の欠点があり、流体中の温度の監視用温度計としての性能は満足するものではなかった。また、流体中の温度測定時のカルマン渦対策として特定の断面形状をもつ保護管をつけたり(特開平10−062260)、保護管にコイルばねを取り付ける方法(特開平07−198499)などが提案されている。しかし、これらの方法では温度計が温度測定対象物から隔離されてしまい迅速に、かつ正確に温度を測定出来ないという欠点があった。さらに、特開平10−221178には保護管と温度計の間隙部に電熱促進物質を充填したり、保護管先端部に温度計の感温部付近を密着させて温度測定の迅速性、正確性の向上をはかっている。しかし、保護管の存在による温度測定の遅れや誤差の発生は完全には解消できていない。特に、カルマン渦対策や耐摩耗性を十分にするためには保護管を大きく、肉厚のものとせざるを得ず上記の欠点は顕著なものとなった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のようなカルマン渦対策や耐摩耗性を必要とし、かつ正確、迅速に流体の温度を測定する温度測定装置、および該温度測定装置を用いた温度測定方法および石油製品の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結果、温度計の側面に先端部を開口した保護管を配置した温度測定装置が上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
【0007】(1) 温度計の側面に、先端部を開口した保護管を配置した流体の温度測定装置。
(2) 保護管の外側を耐摩耗性材料とした(1)記載の温度測定装置。
(3) 温度計と保護管の間に充填剤を充填した(1)または(2)記載の温度測定装置。
【0008】(4) 被測定流体が多相流体である(1)〜(3)のいずれかに記載の温度測定装置。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の温度測定装置を用いて石油精製工業における接触分解装置のライザー内部の温度を測定する方法。
(6) 石油精製装置により石油製品を製造する方法において、(1)〜(4)のいずれかに記載の温度測定装置を石油精製装置内の流体の温度測定に用いることを特徴とする石油製品の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】まず、本発明の温度測定装置について説明する。本発明の保護管は先端部を開口した管状のものであればよい。この保護管の内側に温度計を挿入した構造になっている(図1参照)。温度計は、通常、熱電対温度計、抵抗温度計が用いられるが、水銀温度計、アルコール温度計などその先端部に測温部がある接触型の温度計なら何でもよい。代表的な例として図1に従って説明すれば、温度計1は測定対象流体等の外側から、その先端部が測定対象流体に対し開口している保護管2の内部に挿入された構造になっている。温度計1は先端部に測温部があり、その先端部がほぼ保護管2の開口部3と同じ位置となっていることが好ましい。保護管から飛び出しているとその部分が摩耗を受けやすく、へこみすぎていると正確な温度測定ができなかったり、固体や液体がそのへこんだ部分に触媒が巻き込まれ、この部分に摩耗が発生することがある。また、保護管2と温度計1との間隙は温度計1の挿入、取り外しができる範囲で狭いほうが良い。広すぎると異物(触媒やタール分など)が詰まったり、温度計が振動したり、温度測定が不正確になったりする。
【0010】本発明の被測定流体は通常の流体(単相流、多相流)のほかに正確には流体とは呼べないかもしれないが沸騰床や流動床あるいは粉体や粒子が振動しているものであってもよい。通常は、多相流体、特に固体を含んだ多相流体が本発明の効果を発揮する被測定流体として適している。その中でも、気体または液体と固体の二相流体または気体、液体、固体の三相流体の場合に最も有効である。また、カルマン渦への対策等が十分取れることから高速の流体の測定に適している。気体、液体、固体の三相流体の例としては石油精製工業における接触分解装置に用いられる場合が挙げられる。接触分解装置の反応部分であるライザーの温度測定は前記したように従来は難しかったが、本発明の温度測定装置により好適に実施できる。
【0011】本発明の温度測定装置の保護管はその外側を耐摩耗性材料とすることが好ましい。本発明の被測定流体が多相流体、その中でも、気体または液体と固体の二相流体または気体、液体、固体の三相流体の場合には固体粒子による摩耗の影響が大きく、保護管を通常の材料で作製すると寿命が短くなる。このような場合は、保護管の外側を耐摩耗性の材料とすることが好適である。耐摩耗性の材料としては、アルミナ、シリカ、シリカアルミナや耐火材、キャスタブルなどが挙げられる。特に、耐熱性も要求される雰囲気下では耐火材、キャスタブルなどが好適である。保護管の外側を耐摩耗性の材料とすることが好適であるが保護管の構造的強度を考えると内側は金属材料(ステンレス鋼など)とし、その外側にキャスタブルなどをライニングしたものが好ましい。この場合、内側の金属材料の外表面に凹凸を付けたり、突起物を設置するなどして外側のキャスタブルなどのライニングの施工を容易にし、剥離し難いものとすることができる(図2参照)。温度計等を摩耗させ易い流体の測定の場合は温度計先端の直接流体の接触している部分(通常は温度計のシース管の先端部分)の肉厚を増加して多少の減肉に耐えうるようにすることが好ましい。
【0012】保護管と温度計との間隙は狭いほうが良いが、あまり狭いと温度計の挿入、取り外しが難しくなったり、時には保護管や温度計の温度変化による熱変形により保護管と温度計が固着してしまうことがある。そこで、この間隙はあまり狭くしないで温度計と保護管の間に充填剤を充填することで、この間隙への異物の進入や温度計の振動を防ぐことができる(図3参照)。充填剤としては、通常、ガラス繊維、アスベスト、セラミックペーパー、布、紙、繊維、フィルム、など充填したときに多少弾力のあるものが用いられる。しかし、測定雰囲気の温度等によってはその雰囲気に適合するものを用いる必要がある。適当な充填材を選べば保護管への温度計の挿入、取り出しが容易になる。
【0013】石油精製工業においては、高温、高圧の流体を取り扱うことが多く、さらに、気液混合流体、気固混合流体、気液固混合流体も多い。このため、石油精製装置により石油製品を製造する方法において、本発明の温度測定装置を用いて気液混合流体、気固混合流体、気液固混合流体等の被測定流体の温度を測定し、石油精製装置の運転条件を制御しながら効率よく石油製品を製造することができる。特に、前述したように接触分解装置、その中でも特に残油接触分解装置のライザー部の温度測定は本発明の温度測定装置が非常に好適に用いられ、分解率、熱バランスなどの制御が容易になる。この場合、接触分解装置のライザー部の温度測定装置の保護管は比較的太く、長さは120mm程度であり、カルマン渦に対する耐性が特によい条件と考えられる。
【0014】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。
〔実施例1〕実際に、本発明の温度測定装置を流動接触分解装置(FCC)のライザー部へ適用し、正しい温度指示値を示し正確な反応制御をしながら4年以上の寿命を保って石油製品を製造しきた実績を保有しているのでこれについて説明する。
【0015】FCCにおいては、近年の触媒活性の向上によりライザーは移送管から反応管へと機能が変化してきた。ライザー中では気液固の三相流体が高速で流れているため、カルマン渦による共振を防止しかつ触媒の磨耗により1年以上の寿命を持ち、流体温度を直接接触的に、且つ精度良く測定できる温度計はなかった。そこで、本発明の温度測定装置を適用した。温度計保護管は、ライザー内部へ突き出され、突き出し長さが内壁面から120mmとした。この長さは、通常25mm以上、とくに100mm以上とすることが望ましい。ライザー壁面における触媒の逆流による温度降下等の影響を受けない長さとするためである。触媒による磨耗防止用の保護管の外形は流体の条件等からカルマン渦発生条件に対する計算を行い共振範囲に入らないよう設計する(正確にはできないので安全率をみた形状とすることが好ましい。)。温度計は先端の開口部を除き流体に晒されていないので流体のカルマン渦からの応力はほとんど受けない構造になっている。保護管の内側の材質はステンレス鋼で550℃以上の耐熱性を持つ。保護管の外側はアンカーで補強された耐磨耗性キャスタブルライニングとする。
【0016】温度計はステンレス鋼のシース管に封入された熱電対を用いた。温度計にセラミックペーパーを巻き保護管に差し込むことによりセラミックペーパーを温度計と保護管の間の充填材とした。温度計のライザー内部への突き出し長さは保護管の突き出し長さとほぼ同じ(内壁面から120mm)とする。測温部である温度計先端部の軸に直角の面のみが保護管の先端の開口部において流体に露出している状態が好ましい。温度計先端部は磨耗による肉厚低下に対応するためシース管の使用材料を3mm程度の腐食代の余裕を見た厚みとした。この温度測定装置をライザー内部に設置したFCCを4年間運転したところこの温度測定装置は十分な寿命を持っていた。FCCの運転においては、ライザー部の反応温度の測定が正確、迅速にでき、分解率等の目的因子を正確に制御し、効率的な運転を達成することが出来た。
【0017】
【発明の効果】本発明の温度測定装置は、流体、特にFCC装置のライザー内部のような高速の多相流体の温度を正確、迅速に測定でき、温度計寿命も長い優れた温度測定装置であることを示している。
【0018】
【出願人】 【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
【出願日】 平成11年5月18日(1999.5.18)
【代理人】 【識別番号】100081765
【弁理士】
【氏名又は名称】東平 正道
【公開番号】 特開2000−329619(P2000−329619A)
【公開日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願番号】 特願平11−136927