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【発明の名称】 音響式ガス温度計測装置及びその方法
【発明者】 【氏名】下平 克己

【要約】 【課題】音響式ガス温度計測装置でガス流路内の温度分布を得るとき、設置する受信器の数を低減する。

【解決手段】発信器7からこの発信器7と対向する受信器9への距離の異なる2以上の音波の伝播経路53, 55, 57を伝播距離設定手段23, 25, 27に設定し、受信波検出手段13, 15, 17で、この設定伝播経路53, 55,57を伝播してきた音波の受信波31を検出して、この受信波を検出した時間に基づいて各受信波の伝播時間39を計測し、この伝播時間39に基づいて計測対象ガスの温度47, 49, 51をガス温度演算手段19で求める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 発信器から該発信器と対向する受信器への距離の異なる2以上の音波の伝播経路を設定し、該設定伝播経路を伝播してきた前記音波の受信波を検出し、該受信波を検出した時間に基づいて各受信波の伝播時間を計測し、該伝播時間に基づいて計測対象ガスの温度を演算により求める温度計測の方法。
【請求項2】 前記設定伝播経路は、少なくとも前記発信器から前記受信器に直接伝播する経路を含めることを特徴とする請求項1に記載の温度計測の方法。
【請求項3】 温度計測対象のガスを囲む側壁に対向させて設けた1対の発信器と受信器と、前記発信器から発信する音波の前記受信器への距離の異なる2以上の伝播経路を設定する伝播経路設定手段と、該設定伝播経路を伝播してきた前記音波の受信波を検出し、該受信波の検出時間に基づいて各受信波の伝播時間を計測する受信波検出手段と、該伝播時間に基づいて計測対象ガスの温度を演算により求めるガス温度演算手段とを備えてなる音響式ガス温度計測装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス体の温度計測装置に係わり、特に、高温ガス中の音の伝播時間により温度を求める音響式ガス温度計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】流路内を流れる高温ガスの温度を連続的に計測する方法として、「ガス中の音の伝播を利用する方法」に注目して、実用化が進められている。この方法によりボイラ火炉などの高温ガス流の温度を精度よく計測する音響式ガス温度計測装置が、特開平9−166503号公報などに提案されている。一般に、音響式ガス温度計測装置は、被計測ガスを挟んで計測音波の発信器と受信器を設置し、これらを直接結ぶ伝播経路での計測音波の伝播時間からガス温度を計算する。
【0003】このような音響式ガス温度計測装置は、(1)非接触(2)輻射熱の影響を受けにくい(3)遅れが存在しない(計測系に熱容量が介在しない)
(4)伝播経路上の平均温度を計測(5)数秒間隔での連続計測が可能などの特徴をもち、発電用大型ボイラなどのガス温度計測への適用に好適である。
【0004】ところで、このような音響式ガス温度計測装置では高温ガスの流路内の温度分布を得ることができる。すなわち、被計測ガスを囲む2以上の側壁に複数組の発信器と受信器を設け、発信器からの計測音波を対応する受信器で受け、計測音波の伝播時間から、組となる発信器と受信器を結ぶ複数の伝播経路上のガス温度を計測して、温度分布を得る。また、このような方法では、複数の発信器と受信器の組が必要になるが、特開平2−80922号公報などでは、1個の発信器からの音波を複数の受信器で受信する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の音響式ガス温度計測装置では、ガス流路内の温度分布を得る場合、1個の発信器に対して複数の受信器を設置する必要がある。一般に、音響式ガス温度計測装置を設置する高温ガス流路の側壁は、耐火材や冷却水路などで構成される。したがって、側壁に発信器や受信器を取り付けるための開口を設けるとき、冷却水路の曲げ加工が必要となる上、熱負荷の偏りなども考慮せねばならず、発信器や受信器の数が多くなれば、設置コストの増大、設置作業が煩雑化するなどの問題がある。このため、受信器の数の低減が求められている。
【0006】本発明の課題は、受信器の数を低減することができる音響式ガス温度計測装置及びその方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の音響式ガス温度計測装置は、以下の手段により上記課題を解決する。
【0008】発信器から該発信器と対向する受信器への距離の異なる2以上の音波の伝播経路を設定し、該設定伝播経路を伝播してきた前記音波の受信波を検出し、該受信波を検出した時間に基づいて各受信波の伝播時間を計測し、該伝播時間に基づいて計測対象ガスの温度を演算により求める。
【0009】発信器から発した音波は、直接受信器に到達する伝播経路、側壁で反射して受信器に到達する様々な伝播経路を経て受信器で受信される。そして、最も距離の短い直接受信器に到達する伝播経路をへた音波が、時間的に最も早く受信器に到達し、以降、側壁での反射回数が少なく、かつ、距離の短い伝播経路を経た音波から順次受信器に到達する。したがって、この方法のように、設定伝播経路の距離の短いものから順次、受信波の検出時間の早いもの、すなわち、伝播時間の短いものに対応させて行くことで、各伝播経路を経た受信波の伝播距離と伝播時間が得られ、その伝播経路上の平均ガス温度を算出することができる。したがって、1対の発信器と受信器によって、温度計測用の音波の複数の伝播経路上のガス温度、つまり、ガス流路内の温度分布を得られるため、受信器の数を低減できる。
【0010】また、設定伝播経路は、少なくとも前記発信器から前記受信器に直接伝播する経路を含めるようにすれば、ガス流路内の中心部の温度と周辺部の温度を得ることができるので好ましい。
【0011】また、温度計測対象のガスを囲む側壁に対向させて設けた1対の発信器と受信器と、発信器から発信する音波の受信器への距離の異なる2以上の伝播経路を設定する伝播経路設定手段と、この設定伝播経路を伝播してきた音波の受信波を検出し、この検出時間に基づいて各受信波の伝播時間を計測する受信波検出手段と、この伝播時間に基づいて計測対象ガスの温度を演算により求めるガス温度演算手段とを音響式ガス温度計測装置に備える。
【0012】このように装置を構成すれば、受信波検出手段で検出した異なる経路で伝播してきた各受信波の伝播時間と伝播経路設定手段に設定された伝播経路の距離とを対応づけて、ガス温度演算手段でその経路の平均ガス温度を算出することができる。すなわち、1対の発信器と受信器によって、温度計測音波の複数の伝播経路上の平均ガス温度、つまり、ガス流路内の温度分布を得られるため、受信器の数を低減できる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明を適用してなる音響式ガス温度計測装置の一実施形態を図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる音響式ガス温度計測装置の一実施形態の構成図である。図2は、受信信号波形を示す図である。本実施形態の音響式ガス温度計測装置は、図1のように、高温の被計測ガス1の断面が長方形の流路3を構成する側壁5に設けられた開口に取り付けられた発信器7、発信器7に対向させて設けられた受信器9、そして、温度計測制御装置11などから構成される。なお、本実施形態では、流路3は、側壁5からなる長方形の断面形状を有し、発信器7と受信器9は、この長方形の一辺の中心部に位置するように設置されている。温度計測制御装置11は、受信波検出手段として受信器9に対して順次接続されているA/D変換器13、デジタルフィルタ15、計測音波検出器17、ガス温度演算手段として計測音波検出器17に接続されるガス温度演算器19、音波の発信と受信などを制御するため、発信器7、A/D変換器13、計測音波検出器17などに接続されているコントローラ21、そして、伝播距離設定手段としてガス温度演算器19に接続される伝播距離設定器23, 25, 27などからなる。
【0014】このように構成される音響式ガス温度計測装置の温度計測時の作動と、本発明の特徴部について以下に説明する。コントローラ21が、所定の音波を発信器7より発信するため、発信音波信号29を送出する。発信音波信号29は、発信器7から計測音波として送出される。計測音波は、発信器7から直接、または、側壁5の内表面に反射して、受信器25に到達する。
【0015】一方、温度計測制御装置11では、A/D変換器13が、コントローラ21からの発信音波信号29を受け、直ちに、もしくは、一定時間後に、受信器7の受信音波信号31を、予め定めるサンプル周期でデジタルデータ列33に変換する。その後、計測音波及び周辺雑音の性質(周波数、変調信号の特性、自己相関性など)を考慮したデジタルフィルタ15を通した受信波波形35が計測音波検出器17に入力される。このとき、受信音波信号31に含まれる雑音成分が計測音波成分よりも十分に小さい場合は、デジタルフィルタ15は省略可能であるが、伝播経路上の減衰が大きく、また周囲の騒音も大きい環境下においては信号対雑音比(SN比)の改善のため、種々のデジタルフィルタが使用される。なお、A/D変換器13の前にアナログフィルタを前置する場合や、デジタルフィルタを使用せず、アナログフィルタのみで処理する場合もある。
【0016】計測音波検出器17では、次のいずれかの手段を用い、入力波形より計測音波の到来時刻が検出される。
a)入力波形があらかじめ定めた閾値を超えるピークの出現時刻を計測音波到来時刻とする。
b)入力波形のうち、あらかじめ定めた閾値を超える振幅を有するピークの出現時刻を音波到来時刻とする。なお、いずれの場合も計算処理量の低減のため、検出範囲をあらかじめ定めた時刻範囲(音波が到達する可能性がある最も早い時刻と最も遅い時刻の間)に限定する場合がある。検出した計測音波到来時刻から、コントローラからの計測音波発信時刻37を差し引いて、発信器7から受信器9への計測音波の伝播時間39(τ)を算出する。
【0017】ここで、音波がガス中を伝播する速度、すなわち音速c(m/s)は、ガスの温度T(K)により変化し、次式で表される。
【0018】
【数1】

【0019】ここで、αはガスの組成で決まる定数である。音の伝播時間をτ(s)、伝播距離をL(m)とすると、(1)式を変形して、【0020】
【数2】

【0021】が得られる。ガス温度演算器19は、(2)式に、計測音波検出器17からの伝播時間39と伝播距離設定器23, 25, 27からの伝播経路長41, 43, 45を代入することでガス温度47, 49, 51を算出する。
【0022】ところで、本発明者は、音響式ガス温度計測法を様々な設備に適用する中で、多くの場合、従来の技術で温度を算出するために用いている発信器から受信器に直接伝播した計測音波の受信波、すなわち、最も早く現われる主ピークの後に、幾つもの従ピークが現われることに気づいた。また、発信器から受信器に直接伝播する伝播経路53、すなわち、最短の伝播経路53に平行する壁が存在する場合に、特に、従ピークが大きくなることがわかった。このため、本発明者は、図1のような長方形の断面形状を有する流路3において、従ピークは、最短の伝播経路53に平行な側壁5の内表面により反射された計測音波に対応するものであること、また、最短の伝播経路53に平行な側壁5の一方の内表面の中央部で1回反射して受信器に到達する伝播経路55と最短経路53に平行な側壁5の他方の内表面の中央部で1回反射して受信器に到達する伝播経路57とは、距離が等しいため、同位相で受信器に到達することを推定した。この推定を検証するため、複数のガス温度における伝播経路55, 57を伝播する計測音波の伝播時間を(2)式から算出し、この値と、音響式ガス温度計測装置での受信信号の波形の従ピークの出現時間とを比較したところ、両者がよく一致し推定が正しいことがわかった。このことから、温度計測を行ないたいn個(n>0)の伝播経路を設定し、この設定した伝播経路の距離の短いものから順にL1, L2, L3, …, Lnとすると、これに対して、ピークの出現の早いもの、すなわち、伝播時間の短いものから順にτ123, …,τnを対応付けることができ、これらの対応する距離Lnと伝播時間τnを(2)式に代入することで、その伝播経路上の平均ガス温度を求めることができる。
【0023】本実施形態では、ガス流路中心部を通る伝播経路上の平均ガス温度を流路全体のガス温度として扱いうるか否かを判定するために、ガス流路中心部を通る伝播経路上の平均ガス温度に対する周辺部の温度差の有無(程度)を調べるために温度計測を行なう場合を示している。したがって、伝播経路として、ガス流路中心部を通る伝播経路、すなわち、発信器7から受信器9に直接伝播する伝播経路53、ガス流路の周辺部を通る伝播経路、すなわち、伝播経路53に平行な側壁5の内表面の中央部で1回反射して受信器に到達する等距離の2つの伝播経路55, 57を設定している。本実施形態では、伝播経路55, 57の距離は、発信器7から側壁5の内表面の反射点までの距離とこの反射点から受信器9までの距離が等しいため、幾何学的に算出できる。このようにして求められた、伝播経路53, 55, 57の距離41, 43を各々伝播経路設定器23, 25に設定している。
【0024】本実施形態では、伝播経路55と伝播経路57が等距離であるため、伝播経路55と伝播経路57を経て受信器9に到達した計測音波は、同位相で受信される。このため、受信波の振幅は大きくなり、良好な信号対雑音被(SN比)が得られる。図2に示されるように、最短の伝播経路53を経た計測音波による主ピーク61と、伝播経路55と伝播経路57を経た計測音波による従ピーク63は、同等の大きさを有している。本実施形態では、設定した伝播経路を経た計測音波を示す2つのピークが十分なSN比となる大きなピークである。このため、適当なピーク検出閾値65を設定し、計測音波検出器17は、この閾値65を超えるピークを計測音波の到来時刻として出現時刻順にn個採用し、各々のピークの伝播時間を求める。したがって、図2では、計測音波検出器17は、最初のピーク61の検出時刻、すなわち、直接の伝播経路53を経た計測音波の到来時刻t1から計測音波発信時刻t0を差し引いて伝播時間τ1を求め、ガス温度演算器19に送る。ガス温度演算器19では、最も早く伝播した計測音波の伝播時間τ1に対して、伝播距離設定器23, 25から送られてきた距離41, 43の中から図1における直接の伝播経路53の距離41(L1)を選択し、(2)式より伝播経路53の平均ガス温度を算出する。続けて、ピーク61の次に現われるピーク63の検出時刻、すなわち、反射による伝播経路55, 57を経た計測音波の到来時刻t2から計測音波発信時刻t0を減じて伝播時間τ2を求め、ガス温度演算器19に送る。ガス温度演算器19では、2番目に伝播した計測音波の伝播時間τ2に対して、伝播距離設定器23, 25から送られてきた距離41, 43の中から図1における反射による伝播経路55, 57の距離43(L2)を選択し、(2)式より伝播経路55, 57の平均ガス温度を算出する。この場合、伝播経路55と伝播経路57は、等距離であるため、伝播経路55, 57を合わせた平均ガス温度、すなわち、流路3の周辺部の平均ガス温度が算出される。
【0025】このように、設定した複数の伝播経路の距離の短いものから順に計測音波の検出時間の早いもの、すなわち、伝播時間の短いものを対応させて行くことで、各伝播経路上の平均ガス温度を得ることができる。すなわち、1対の発信器と受信器によってガス流路内の温度分布を得られるため、受信器の数を低減できる。さらに、従来の1つの発信器に対して複数の受信器を設置する必要がある音響式ガス温度計測装置では、側壁5に他の機器類が取り付けられているような場合は、そこに受信器が設置できないため、他の機器類が取り付けられている場所と発信器を結ぶ伝播径路上のガス温度を得ることができない。しかし、本発明の音響式ガス温度計測装置及びその方法を適用すれば、側壁5に他の機器類が取り付けられているような場合でも、温度分布を得ることができる。
【0026】また、本実施形態では、受信器7と受信器9を流路3の断面において、側壁5からなる長方形の一辺の中心部に位置するように設置したが、図3のように、受信器7と受信器9を流路3の断面において、側壁5からなる長方形の一辺の中心部よりも最短の伝播経路53に平行な側壁5の何れか一方に寄せて設置してもよい。この場合、図1の温度計測制御装置11の計測音波検出器17は、受信信号波形59の最初のピークの伝播時間τ1に対して、伝播距離設定器23, 25,27から送られてきた距離41, 43, 45の中から図3における最も短い伝播経路53の距離41(L1)を選択し、(2)式より伝播経路53の平均ガス温度を算出する。続けて、次に現われるピークの伝播時間τ2に対して、伝播距離設定器23, 25, 27から送られてきた距離41, 43, 45の中から図3における2番目に短い伝播経路67の距離43(L2)を選択し、(2)式より伝播経路67の平均ガス温度を算出する。さらに続けて、3番目に現われるピークの伝播時間τ3に対して、伝播距離設定器23, 25, 27から送られてきた距離41, 43, 45の中から図3における3番目に短い伝播経路69の距離43(L3)を選択し、(2)式より伝播経路69の平均ガス温度を算出する。このような発信器と受信器の設置形態では、2つの従ピークの十分なSN比が得られるように、計測音波の強度を適宜調整する必要がある。
【0027】また、本実施形態では伝播経路の距離を幾何学的に算出して設定したが、幾何学的に算出することが困難な場合には、常温(既知の温度)で計測音波の伝播時間を求め、(2)式から設定伝播経路の距離を算出することができる。
【0028】また、本実施形態では、設定した3つの伝播経路に対して伝播距離設定器を3器備えているが、伝播距離設定器の数は、必要な伝播経路の数に応じて増減できる。さらに、本実施形態では、伝播距離設定器を3器の別個の機器として示したが、必要な数の伝播経路が設定できる1つの機器にすることもできる。
【0029】また、本実施形態では、断面形状が長方形の流路へ適用した場合を示したが、その他の断面形状を有する流路のガス温度計測にも適用することができる。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、音響式ガス温度計測装置でガス流路内の温度分布を得るとき、受信器の数を低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000005441
【氏名又は名称】バブコック日立株式会社
【出願日】 平成11年1月7日(1999.1.7)
【代理人】 【識別番号】100066979
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜沼 辰之
【公開番号】 特開2000−205971(P2000−205971A)
【公開日】 平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願番号】 特願平11−1583