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【発明の名称】 拡管率の測定方法
【発明者】 【氏名】山田 龍三

【氏名】冷水 孝夫

【氏名】堀尾 浩次

【要約】 【課題】金属管を拡管する際に生ずる拡管率の動的変化を正確に計測することが可能な拡管率の測定方法を提供すること。また、実際に拡管された金属管の品質管理に応用することが可能な拡管率の測定方法を提供すること。

【解決手段】拡管用金属管10の外周に線材24を摺動自在に巻き付け、次いで、拡管に伴う拡管用金属管10の外周長さの変化を、線材24の長さの変化量△Lとして計測し、さらに、計測された線材24の長さの変化量△Lから拡管用金属管10の拡管率を算出する。具体的には、拡管用金属管10の接合部16近傍に基盤22を貼り付け、線材24の固定端24aを基盤22に固定し、線材24を拡管用金属管10の周囲に巻き付けた後、線材24の可動端24bを基盤22と接触子22aにより摺動自在に挟持する。さらに、固定端24aと接触子22aの間に定電流を流し、拡管に伴う電圧降下量の変化を計測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 拡管に伴う金属管の外周長さの変化に追従可能となるように、前記金属管の外周に長尺材を摺動自在に巻き付け、前記金属管を拡管する際に生ずる外周長さの変化を、前記長尺材の長さの変化量として計測し、該変化量から前記金属管の拡管率を算出する拡管率の測定方法。
【請求項2】 前記長尺材として導電材料を用い、前記長尺材と前記金属管に対して固定された2つの接点とを接触させ、該接点間に定電流を流したときに生ずる電圧降下量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測する請求項1に記載の拡管率の測定方法。
【請求項3】 前記長尺材に変位センサを取り付け、該変位センサにより検出される変位量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測する請求項1に記載の拡管率の測定方法。
【請求項4】 前記長尺材の可動端に張力測定器を取り付け、該張力測定器により検出される張力変化量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測する請求項1に記載の拡管率の測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、拡管率の測定方法に関し、特に、油井管、ラインパイプ等、長尺の金属管を拡管する際に生ずる接合部近傍の拡管率の動的変化を計測する方法として好適な拡管率の測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属管の加工方法の一つに拡管がある。拡管は、金属管の内径を拡大させる加工方法であり、マンドレル、プラグ等の工具を金属管の内部に挿入し、工具を用いて内径を拡大させる方法、金属管の内部に液体を圧入し、液圧により内径を拡大させる方法等が知られている。
【0003】特に、金属管の一端から拡管マンドレルを挿入し、挿入された拡管マンドレルの底面に液圧を付与することにより拡管マンドレルを金属管の他端に移動させ、これによって金属管の内径を拡大させる、いわゆるムービング・イクスパンション・マンドレル(Moving Expantion Mandrel)法(以下、これを「マンドレル法」という)は、加工可能な金属管の長さに実質的な制限がないという利点がある。そのため、マンドレル法は、油井管、ラインパイプ等、長尺の金属管の拡管方法としての応用が期待されているものである。
【0004】ところで、油井管、ラインパイプ等は、その全長が数千m〜数十kmに及ぶので、これに拡管を適用するためには、加工能率が高いことが条件となる。金属管を拡管する場合において、加工能率を向上させるためには、拡管速度は、できるだけ速い方が望ましい。また、拡管前後の内径の変化率、すなわち、拡管率が大きい場合において、加工能率を向上させるためには、多段階の拡管を順次行って目的の内径とするよりも、1段階の拡管により、目的の内径を有する金属管が得られる方が好ましい。
【0005】一方、拡管に供される金属管は、その用途によって種々の材料が用いられる。例えば、強度のみが要求される用途にあっては、安価な炭素鋼を用いるのが一般的である。また、耐食性が要求される用途にあっては、ステンレス鋼、Ti合金管等、耐食性に優れた材料が用いられる。これらの材料は、一般に変形能が異なっているので、すべての材質に対して同一の拡管速度及び拡管率で拡管すると、拡管時の変形量が材料固有の変形能を超えた時に、亀裂、変形等の欠陥が発生する場合がある。
【0006】さらに、工業的に量産可能な金属管の長さは、数十m〜100m程度である。従って、数千mを超える長さを有する金属管は、通常、長さ数十m程度の比較的短い金属管を接合することにより製造されている。このような金属管の接合方法としては、メカジョイント法、溶接法、拡散接合法等が知られている。
【0007】一般に、接合部の変形能は、母材の変形能より低下しており、しかも、その低下の程度は、接合方法、接合条件等により異なっている。そのため、種々の方法で接合された金属管を母材と同等の条件下で拡管した時には、接合部において亀裂等の欠陥が発生する場合がある。
【0008】従って、マンドレル法を油井管、ラインパイプ等、各種の用途に用いられる金属管の拡管方法として応用するためには、所定の加工能率が得られる拡管速度条件下において、欠陥の発生と拡管率との因果関係を明らかにし、使用される金属管の材質及び金属管の接合方法に応じた最適な拡管率を、開発段階において予め決定しておく必要がある。
【0009】このような拡管率の測定方法としては、拡管中の管径の変化をビデオ画像により求める方法、拡管後にノギス等を用いて管径を直接測定し、管径の変化量から拡管率を求める方法等が知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】マンドレル法を用いて金属管を拡管する場合、拡管マンドレルは金属管の内部を蛇行しながら移動するので、金属管は、この時、左右に大きく振動する。また、接合部における欠陥の発生は、この時に生ずる拡管率の動的変化と密接な関係があることが本願出願人により明らかにされている。
【0011】従って、拡管時の現象を解明するには、拡管後の拡管率のみならず、拡管中に生ずる拡管率の動的変化を測定することが重要となる。しかしながら、ビデオ画像により拡管率の動的変化を測定する方法では、拡管時に金属管が振動するために、精度よく拡管率を測定できないという問題がある。
【0012】また、拡管後にノギス等で管径を直接測定する方法では、拡管後の拡管率は、比較的精度よく測定することはできるが、拡管率の動的変化を測定することは困難である。しかも、金属管の全長が非常に長く、かつ、接合部の数が多い場合には、拡管率の測定に長時間を要し、作業能率が低いという問題がある。
【0013】さらに、拡管率の動的変化と接合部における欠陥の発生との間に密接な関係があることから、長さ数千mを超える金属管を実際に拡管する場合において、拡管率の動的変化を測定することができれば、拡管された金属管の品質管理に応用することができるという利点がある。しかしながら、現場において実施可能な拡管率の動的変化を測定する方法が提案された例は、従来にはない。
【0014】本発明が解決しようとする課題は、金属管を拡管する際に生ずる拡管率の動的変化を正確に計測することが可能な、拡管率の測定方法を提供することにある。
【0015】また、本発明が解決しようとする他の課題は、実際に拡管された金属管の品質管理に応用することが可能な、拡管率の測定方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る拡管率の測定方法は、拡管に伴う金属管の外周長さの変化に追従可能となるように、前記金属管の外周に長尺材を摺動自在に巻き付け、前記金属管を拡管する際に生ずる外周長さの変化を、前記長尺材の長さの変化量として計測し、該変化量から前記金属管の拡管率を算出することを要旨とするものである。
【0017】具体的には、前記長尺材として導電材料を用い、前記長尺材と前記金属管に対して固定された2つの接点とを接触させ、該接点間に定電流を流したときに生ずる電圧降下量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測するのが望ましい。
【0018】また、前記長尺材に変位センサを取り付け、該変位センサにより検出される変位量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測してもよい。あるいは、前記長尺材の可動端に張力測定器を取り付け、該張力測定器により検出される張力変化量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測してもよい。
【0019】上記構成を有する本発明に係る拡管率の測定方法によれば、金属管の周囲に長尺材が摺動自在に巻き付けられているので、金属管の拡管が進行するに伴い、長尺材は、大きな伸びを生じることなく金属管の外周長さの変化に追従し、金属管1ターン当たりの長さが変化する。この長さの変化量を、電圧降下量、変位量、張力変化量等の手段を用いて計測すれば、拡管時に金属管が振動した場合であっても、拡管率の動的変化を容易に算出することができる。
【0020】特に、電圧降下量を用いて長尺材の長さの変化量を求める方法によれば、極めて単純な構造を有する装置を用いて電圧降下量の計測ができるので、多数の接合部が地中深くに埋設された状態で拡管が行われる場合であっても、拡管率の動的変化を容易に算出することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の第1の実施の形態に係る拡管率の測定方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に、拡管用金属管及び拡管率測定装置を示す。図1において、拡管用金属管10は、所定の長さを有する複数の単位金属管12、12N+1、…が、複数の接合部16、…を介して接合されたものである。
【0022】ここで、拡管用金属管10の材質は、特に限定されるものではない。すなわち、炭素鋼、ステンレス鋼、Ti合金等、各種の材質からなる拡管用金属管10に対して本発明を適用できる。また、長さの非常に長い拡管用金属管10は、一般に、同一長さ、同一材質を有する単位金属管12、12N+1、…を接合することにより製造されるが、長さ、材質の異なる複数の単位金属管12、12+1、…を接合し、これを拡管用金属管10としてもよい。
【0023】接合部16、…の形成方法、すなわち単位金属管12、12N+1、…の接合方法も、特に限定されるものではない。一般に、単位金属管12、12+1、…の接合方法としては、メカジョイント法、溶接法、拡散接合法、摩擦圧接法等が用いられるが、いずれの接合法で接合された拡管用金属管10であっても本発明を適用することができる。
【0024】また、図1において、拡管率測定装置20は、基盤22と、線材24と、弾性体26とを備えている。基盤22は、拡管用金属管10の周囲に線材24を支持するためのものである。また、基盤22は、角形の薄板からなり、接合部16の直上に貼り付けられている。さらに、基盤22には、接触子22aが設けられている。接触子22aは、線材24の一端近傍を摺動自在に支持すると同時に、電圧降下量を測定する際の一方の接点となるものである。
【0025】ここで、基盤22には、絶縁体、あるいは、少なくともその表面に絶縁層が形成された材料を用いるのが好ましい。具体的には、ベーク材等が好適である。これは、基盤22により支持される線材24と基盤22との間で絶縁を確保し、線材24の長さの変化量を電圧降下量として正確に計測するためである。なお、線材24自身に絶縁処理が施されている場合は、基盤22として導電材料を用いてもよい。
【0026】線材24は、拡管に伴う拡管用金属管10の外周長さの変化量を測定するために用いられるものであり、拡管用金属管10の外周に巻き付けられている。また、線材24の長さは、拡管後の拡管用金属管10の外周長さよりやや長くなっている。これは、拡管後においても、線材24が拡管用金属管10の外周に1周以上巻き付けられた状態とするためである。
【0027】さらに、線材24の一端(固定端)24aは、基盤22に固定されており、線材24の他端(可動端)24b近傍は、固定端24aのほぼ真下に設けられた接触子24aと基盤22により、摺動自在に挟持されている。そのため、線材24は、拡管に伴い、大きな伸びを生じさせることなく、拡管用金属管10の外周長さの変化に追従できるようになっている。
【0028】ここで、線材24は、拡管用金属管10の外周長さが変化した時に、実質的に伸びを生じない材料を用いる必要がある。具体的には、弾性率が15×10kg/mm以上の材料を用いるのが好ましい。弾性率が15×10kg/mm未満では、拡管の際に拡管用金属管10と線材24の間に生ずる摩擦力によって線材24が大きく変形し、拡管用金属管10の外周長さの変化を正確に計測できないので好ましくない。さらに好ましくは、20×10kg/mm以上である。
【0029】また、本実施の形態において、線材24には、導電材料が用いられる。これは、拡管に伴う拡管用金属管10の外周長さの変化を、拡管用金属管10の周囲に巻き付けられた線材24の長さの変化に伴う電圧降下量の変化として検出するためである。従って、線材24の材質としては、単位長さ当たりの抵抗値が大きい材料、すなわち、比抵抗が大きく、断面積の小さな材料を用いるのが好ましい。具体的には、直径1mm程度のカンタル線、ニクロム線等が好適である。
【0030】なお、線材24の長さの変化に伴う電圧降下量の変化を正確に計測するためには、線材24は、周囲から絶縁されている必要がある。具体的には、線材24と拡管用金属管10との間で短絡しないよう、線材24の周囲に絶縁被膜を形成するとよい。また、線材24の周囲に絶縁テープを巻き付けてもよい。あるいは、所定の長さを有するパイプ状の絶縁部材の中に線材24を通し、これを拡管用金属管10の周囲に巻き付けるようにしてもよい。
【0031】弾性体26は、線材24が拡管用金属管10に密着するよう、線材24に付勢力を与えるものである。そのため、弾性体26は、拡管用金属管10の周囲に、かつ、線材24と同一方向に巻き付けられ、その一端は、線材24の可動端24bに取り付けられている。また、拡管用金属管10に巻き付けられた弾性体26の他端は、基盤22に取り付けられている。
【0032】ここで、弾性体26の弾性率は、線材24の弾性率より十分小さいことが必要である。これは、弾性体26の弾性率が過大になると、弾性体26から受ける付勢力によって線材24に大きな伸びが生じ、拡管に伴う拡管用金属管10の外径変化を正確に計測できなくなるためである。具体的には、弾性体26として、バネ、ゴム等を用いるのが好ましい。
【0033】なお、図1に示す例においては、弾性体26の他端は、基盤22に固定されているが、拡管用金属管10の外周面上のいずれかに固定してもよい。また、拡管用金属管10の周囲に他の固定物がある場合には、弾性体26の他端を他の固定物に固定し、これによって線材24に付勢力を与えるようにしてもよい。
【0034】図2に、拡管に伴う拡管用金属管10の外径変化を、線材24の電圧降下量として計測するための回路図を示す。図2において、基盤22に固定された線材24の固定端24aは、電圧計30及び定電流電源40の一方の端子に接続されている。また、線材24の他端24b近傍を摺動自在に支持する接触子22aは、定電流電源40の他方の端子に接続されている。さらに、電圧計30の他方の端子は、線材24の可動端24bと接触子22aの間に接続されている。
【0035】従って、本実施の形態の場合、固定端24a及び接触子22aが、電圧降下量を測定するための一組の接点になっている。これらの接点は、いずれも拡管用金属管10に固定された状態になっているので、この接点間に定電流を流し、その際に生ずる電圧降下量を測定すれば、拡管に伴う線材24の長さの変化量を計測することができる。
【0036】なお、電圧計30の他方の端子は、接触子22aに直接、接続するよりも、図2に示すように、線材24の可動端24bと接触子22aの間に接続する方が好ましい。これは、電圧計30の他方の端子と接触子22aとを直接接続すると、線材24と接触子22aとの間の接触抵抗の影響が電圧降下量に現れ、拡管に伴う線材24の長さの変化量を正確に測定できなくなるためである。
【0037】次に、図1及び図2に示す拡管率測定装置20を用いた拡管率の測定方法について説明する。図3に、拡管工程の一例を示す。まず、図3(a)に示すように、複数の単位金属管12、12N+1、…が接合された拡管用金属管10の接合部16、…近傍に、拡管率測定装置20を取り付けておく。
【0038】この場合、すべての接合部16、…について拡管率を測定したい時には、すべての接合部16、…近傍に拡管率測定装置20を取り付ければよい。また、接合部16、…の内の一部について拡管率を測定したい時には、測定したい部位にのみ拡管率測定装置20を取り付ければよい。
【0039】次いで、拡管用金属管10の一端から、その先端がテーパ状になっている拡管用マンドレル50を挿入し、拡管用マンドレル50の底面に液圧を付与する。これにより、拡管用マンドレル50が拡管用金属管10の内径を拡大させながら、拡管用金属管10の他端に向かって移動する。
【0040】拡管用マンドレル50が拡管用金属管10の内部を移動し、接合部16にさしかかると、図3(b)に示すように、接合部16の外径が拡大する。この時、線材24の固定端24aは、基盤22に固定され、線材24の可動端24b近傍は、接触子22aにより摺動自在に挟持されているので、接合部16の外径が拡大するに伴い、線材24は、外周長さの変化に追従し、線材24の可動端24bが右方向に移動する。
【0041】また、線材24の可動端24b先端に取り付けられた弾性体26の弾性率は、線材24の弾性率より十分小さくなっているので、線材24に大きな伸びを生じさせることなく、線材24と拡管用金属管10との密着状態を保つことができる。そのため、拡管用金属管10の外周長さの増分を、拡管用金属管10に巻き付けられた線材24の長さの変化量△Lとして正確に計測することができる。
【0042】さらに、拡管用マンドレル50が接合部16を完全に通過したときには、図3(c)に示すように、拡管用金属管10の外周長さの増分を、拡管用金属管10に巻き付けられた線材24の長さの変化量△Lとして正確に計測することができる。
【0043】ここで、定電流電源により線材24に供給される電流をI、拡管の過程において計測される電圧降下量を△V、及び線材24の抵抗変化量を△Rとおくと、これらの間には、次の数1に示す関係が成り立つ。
【0044】
【数1】△V=I△R【0045】また、線材24の比抵抗及び断面積を、それぞれρ及びSとおくと、線材24の長さの変化量△Lに伴う抵抗変化量△Rは、次の数2の式で表せる。
【0046】
【数2】△R=ρ△L/S【0047】さらに、拡管率が相対的に小さい場合には、肉厚の減少を無視することができるので、拡管率は、拡管用金属管10の外周の増加率で近似することができる。従って、拡管前の拡管用金属管10の外周の長さをLとおくと、拡管率αは、次の数3の式で表せる。
【0048】
【数3】α=(△L/L)×100(%)
【0049】数1の式、数2の式、及び数3の式より、拡管率αと電圧降下量△Vとの間には、次の数4の式が成り立つ。
【0050】
【数4】α=(S△V/IρL)×100(%)
【0051】従って、拡管に伴う線材24の長さの変化量を、電圧降下量△Vとして逐次計測すれば、数4の式から、拡管率αの動的変化を容易に算出することができる。しかも、線材24は、弾性体26により付勢された状態で拡管用金属管10に巻き付けられているので、拡管用マンドレル50が接合部16を通過する際に、拡管用金属管10が左右に大きく振動した場合であっても、拡管率αを正確に測定することができる。
【0052】また、拡管率測定装置20による拡管率αの動的変化の測定と平行して、拡管用マンドレル50を駆動する油圧装置の油圧変動や、接合部16において発生する弾性波(AE)を同時に計測すれば、拡管率αの動的変化と欠陥の発生との間の因果関係を明らかにすることができる。そのため、単位金属管の材質変更や、接合方法、接合条件の変更、さらには、拡管速度、あるいは拡管率等、拡管条件の変更に伴って発生する種々の現象を解明するために有益な情報を短時間で得ることができ、開発期間を短縮することができる。
【0053】さらに、図1に示す拡管率測定装置20は、構造が極めて簡単になっている。そのため、接合部16が地中深くに埋設される油井管に対してもこれを適用でき、実際に油井管を拡管する際に生ずる拡管率の動的変化を正確に計測することができる。しかも、欠陥の発生と拡管率の動的変化との関係が明らかになっている場合には、これを、油井管の品質管理に応用することもできる。
【0054】次に、本発明の第2の実施の形態に係る拡管率の測定方法について説明する。本実施の形態に係る拡管率の測定方法は、図示はしないが、拡管用金属管10の外周長さの変化に追従可能となるように、拡管用金属管10の周囲に線材24を摺動自在に巻き付け、拡管に伴う線材24の長さの変化量を、変位センサを用いて測定するものである。
【0055】具体的には、図1に示す拡管率測定装置20において、弾性体26により付勢された線材24の可動端24b近傍を、接触子22aを用いて摺動自在に挟持する代わりに、線材24のいずれかに変位センサを取り付け、変位センサを用いて、拡管に伴う線材24の長さの変化量を直接測定すればよい。変位センサとしては、具体的には、差動トランス式変位センサ等が好適な一例として挙げられる。
【0056】なお、本実施の形態の場合、変位センサを用いて線材24の長さの変化量を測定するので、線材24は、必ずしも導電材料である必要はない。また、変位センサの取付位置は、特に限定されるものではない。例えば、図1と同様に、拡管用金属管10に貼り付けられた基盤22に線材24の固定端24aを固定し、固定端24aのほぼ真下に変位センサを取り付けるようにしてもよい。この場合、変位センサの指示値は、線材24の長さの変化量に対応し、線材24の長さの変化量は、拡管用金属管10の外周長さの変化量に対応する。
【0057】また、変位センサは、固定端24aの真下以外の位置に取り付けてもよい。この場合、変位センサの指示値は、線材24の長さの変化量に対応するが、線材24の長さの変化量は、拡管用金属管10の外周長さの変化量に対応していない。しかしながら、変位センサの取付位置がわかれば、変位センサの指示値を外周長さの変化量に容易に換算することができる。
【0058】このような変位センサを用いた拡管率測定装置を拡管用金属管10に取り付け、拡管用マンドレル50を用いて拡管すると、拡管に伴う線材24の長さの変化量△Lを、変位センサにより計測することができる。そして、得られた線材24の長さの変化量△Lを数3の式に代入すれば、拡管率αの動的変化を、正確、かつ容易に算出することができる。
【0059】次に、本発明の第3の実施の形態に係る拡管率の測定方法について説明する。本実施の形態に係る拡管率の測定方法は、図示はしないが、拡管用金属管10の外周長さの変化に追従可能となるように、拡管用金属管10の周囲に線材24を摺動自在に巻き付け、拡管に伴う線材24の長さの変化量を、張力測定器を用いて測定するものである。
【0060】具体的には、図1に示す拡管率測定装置20において、拡管用金属管10の周囲に巻き付けられた線材24の可動端24bに弾性体26を取り付ける代わりに、線材24の可動端24bに張力測定器を取り付け、拡管に伴って発生する線材24の張力変化量を測定すればよい。張力測定器としては、具体的には、ロードセル、弾性バネを用いたバネばかり等が好適な一例として挙げられる。
【0061】なお、張力測定器の他端は、拡管用金属管10の外周面上のいずれかに固定してもよく、あるいは、拡管用金属管10の周囲に他の固定物がある場合には、張力測定器の他端を他の固定物に固定してもよい。また、固定端24aを基盤22上に固定する代わりに、固定端24aを延長し、固定端24aを周囲の固定物に固定するようにしてもよい。
【0062】ここで、張力測定器に備えられる弾性体のバネ定数をkとおくと、拡管に伴う長さの変化量△Lと、張力の変化量△Fとの関係は、次の数5の式により表すことができる。
【0063】
【数5】△F=k△L【0064】数5の式を数3の式に代入すれば、次の数6の式が得られる。
【0065】
【数6】α=(△F/kL)×100(%)
【0066】従って、拡管に伴う線材24の長さの変化量を、張力変化量△Fとして逐次計測すれば、数6の式から、拡管率αの動的変化を容易に算出することができる。また、拡管用金属管10の周囲に巻き付けられた線材24は、張力測定器により付勢された状態になっているので、拡管に伴い拡管用金属管10が振動した場合であっても、拡管率を正確に算出することができる。
【0067】
【実施例】図1に示す拡管率測定装置20を用いて、拡管率の動的変化を測定した。供試材には、液相拡散接合法により接合した鋼管を用いた。また、拡管率測定装置20を構成する線材24には、直径1mmのカンタル線を用いた。
【0068】初めに、外径、すなわち、外周長さの異なる種々の鋼管に拡管率測定装置20を取り付け、外周長さと出力電圧の関係を調べた。図4に、その結果を示す。図4より、鋼管の外周長さに比例して、出力電圧が増加していることがわかる。これは、鋼管の外周長さが長くなるに伴い、鋼管を1周させるに要する線材24の長さが長くなり、これに比例して線材24の抵抗値が増加するためである。
【0069】次に、このような外周長さ−出力電圧特性を有する拡管率測定装置20を鋼管の接合部近傍に取り付け、拡管マンドレルを用いて実際に拡管を行った。図5に、拡管率の経時変化を示す。図5より、拡管を開始してから約5秒後に、拡管マンドレルが接合部に達し、拡管を開始してから約15秒後に、外径の拡大が終了していることがわかる。また、この間、鋼管は左右に大きく振動したが、拡管率の測定には支障がなく、測定された拡管率は、時間の経過と共にほぼ直線的に増加していることがわかる。
【0070】以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0071】例えば、線材を拡管用金属管の周囲に巻き付ける代わりに、拡管用金属管の外周を取り巻くように複数個の非接触変位計を配置し、非接触変位計と拡管用金属管表面との距離を測定することにより、拡管率の動的変化を測定してもよい。
【0072】また、上記実施の形態においては、拡管用金属管10の外周長さの変化を計測するために、拡管用金属管10の周囲に線材24を巻き付けているが、線材24に代えてストリップ等、線材以外の長尺材を巻き付け、これによって拡管用金属管10の外周長さの変化量を計測してもよい。
【0073】また、上記第1の実施の形態において、拡管用金属管10の周囲に、線材24をほぼ一周巻き付けているが、2周、あるいは3周以上巻き付け、拡管に伴う線材24の長さの変化量を測定し、測定された変化量を拡管用金属管の外周長さの変化量に換算してもよい。
【0074】また、拡管用金属管10の周囲に所定の間隔を置いて2つの基盤22を貼り付け、2つの基盤22を用いて、拡管用金属管10の外周長さより短い線材24を摺動自在に支持してもよい。
【0075】この場合、拡管に伴う線材24の長さの変化量は、拡管用金属管の外周長さの変化量を示していないが、基盤22の取付位置がわかれば、これを外周長さの変化量に換算するのは容易である。また、このような拡管率測定装置を、拡管用金属管10の周囲に2個以上取り付け、これらの拡管率測定装置から測定される複数のデータから、外周長さの変化量を求めてもよい。
【0076】また、図1に示す拡管率測定装置20においては、線材24の可動端24bに弾性体26を取り付け、弾性体26により付勢して線材24を拡管用金属管10に密着させているが、線材24自体の剛性が大きい場合には、予め所定の曲率半径で円弧状に湾曲さた線材24を拡管用金属管10に巻き付けるだけでもよい。この場合、線材24自身の剛性によって、線材24と拡管用金属管10とが密着するので、弾性体26は不要となる。
【0077】さらに、図1に示す拡管率測定装置20において、線材24の一端を基盤22に固定し、他端を接触子22aにより摺動自在に挟持しているが、線材24の両端を、それぞれ、接触子を用いて摺動自在に挟持してもよく、これにより上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
【発明の効果】本発明に係る拡管率の測定方法は、金属管の外周長さの変化に追従可能となるように、金属管の外周に長尺材を摺動自在に巻き付け、拡管に伴う前記長尺材の長さの変化量を計測し、該変化量から前記金属管の拡管率を算出しているので、拡管時に金属管が振動した場合であっても、拡管率の動的変化を容易に算出することができるという効果がある。
【0079】また、前記長尺材として導電材料を用い、前記長尺材と前記金属管に対して固定された2つの接点とを接触させ、該接点間に定電流を流したときに生ずる電圧降下量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測するようにすれば、測定装置の構造が極めて単純になるので、多数の接合部が地中深くに埋設された状態で拡管が行われる場合であっても、拡管率の動的変化を容易に算出することができるという効果がある。また、このようにして得られた拡管率の動的変化を、油井管等の品質管理に応用することができるという効果がある。
【0080】また、前記長尺材に変位センサを取り付け、該変位センサにより検出される変位量を用いて、拡管に伴う前記長尺材の長さの変化量を計測する方法や、あるいは、前記長尺材の可動端に張力測定器を取り付け、該張力測定器により検出される張力変化量を用いて、前記長尺材の長さの変化量を計測する方法も同様であり、拡管時に金属管が振動した場合であっても、拡管率の動的変化を容易に算出することができるという効果がある。
【0081】以上のように、本発明に係る拡管率の測定方法によれば、拡管率の動的変化を迅速、かつ正確に計測できるので、拡管方法を各種用途に応用する際に必要となる開発期間を短縮することができ、これによって、油井管、ラインパイプ等、長尺の金属管のコストダウンと信頼性の向上に寄与するものであり、産業上その効果の極めて大きい発明である。
【出願人】 【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
【出願日】 平成11年3月3日(1999.3.3)
【代理人】 【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登 (外1名)
【公開番号】 特開2000−249536(P2000−249536A)
【公開日】 平成12年9月14日(2000.9.14)
【出願番号】 特願平11−55296