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【発明の名称】 移動物体位置のトラッキング装置およびトラッキング方法
【発明者】 【氏名】ネッツア アモライ−モリヤ

【氏名】モーディカイ イツコヴィッチ

【氏名】エユーダ アルベック

【氏名】ボウアッズ スピーヴァク

【要約】 【課題】移動物体の近傍において測定した磁束の測定値を、非線形カルマンフィルタを応用して処理することによって、移動物体の位置を検出し、追跡する、移動物体位置のトラッキング装置およびトラッキング方法を提供する。

【解決手段】移動物体の近傍において測定された磁束の測定値を受けて、上記測定値に非線形カルマンフィルタを適用し、上記移動物体の位置に関する情報を出力する、非線形カルマンフィルタベースのトラッカ80と、上記移動物体の位置に関する上記情報を表示する位置表示器と、を含んでなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】移動物体の近傍において測定した磁束の値に基づいて移動物体の位置を追跡する移動物体位置のトラッキング装置において、上記移動物体の近傍において測定された磁束の測定値を受けて、上記測定値に非線形カルマンフィルタを適用し、上記移動物体の位置に関する情報を出力する、非線形カルマンフィルタベースのトラッカと、上記移動物体の位置に関する上記情報を表示する位置表示器と、を含んでなることを特徴とする移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項2】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、拡張カルマンフィルタベースのトラッカであることを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項3】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、上記移動物体の上記位置から上記移動物体の近傍において測定した上記磁束の値へビオ−サバール変換を適用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項4】上記非線形カルマンフィルタは、要素が位置座標と位置座標の1次微分とを含む状態ベクトルに作用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項5】上記位置座標は、3個の空間座標と2個の方向座標とからなることを特徴とする請求項4に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項6】上記ビオ−サバール変換を適用する過程は、次式に示す状態ベクトル↑ξの測定感度関数↑hの計算からなることを特徴とする請求項3に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数1】

ここに、C0は係数、Rは、上記磁束を誘起する複数の送信機からなる送信機アレーからの上記磁束の上記測定値を検知する検知器と各上記送信機との間の距離、および、【数2】

であり、ここに検知器の位置は{xd,yd,zd,φd,θd}、送信機の位置は{xs,ys,zs,φs,θs}であり、δx、δy、δzは、それぞれ検知器の位置と送信機の位置との間の距離のx、y、z成分を表す。
【請求項7】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、少なくとも上記移動物体が上記磁束を誘起する複数の送信機からなる送信機アレー内の1つの送信機に近接したときに、楕円積分を表すテイラー展開数列の第1項と第2項とを計算することにより、上記楕円積分を近似することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項8】上記移動物体の近傍に磁束を誘起する6個以下の有効な送信機からなる送信機アレーをさらに含んでなることを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項9】移動物体の近傍において測定した磁束の値に基づいて移動物体の位置を追跡する移動物体位置のトラッキング方法において、上記移動物体の近傍において測定された磁束の測定値を受け、上記測定値に非線形カルマンフィルタを適用し、上記移動物体の位置に関する情報を出力し、上記移動物体の位置に関する上記情報の出力表示を供給する、ことを含んでなることを特徴とする移動物体位置のトラッキング方法。
【請求項10】上記非線形カルマンフィルタは、以下のマトリクスと操作を適用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数3】

ここに、kは時間ステップのインデックス、↑ξk(−)は状態ベクトルの予測値、↑ξk(+)は状態ベクトルの修正後の予測値、↑Φは状態遷移マトリクス、【数4】

ここに、↑P(−)は推定誤差共変マトリクスの予測値、↑P(+)は推定誤差共変マトリクスの修正値、↑Qは過程ノイズ共変マトリクス、【数5】

ここに、↑hは測定感度関数、↑ξは状態ベクトル、【数6】

ここに、↑Rkは測定ノイズ共変マトリクス、【数7】

ここに、↑ζは、上記移動物体の近傍において測定された上記磁束の測定値を表し、【数8】

である。
【請求項11】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、上記移動物体の上記位置から、及び上記測定値によって計量される磁束を誘起する磁気送信機のアレーの位置から、上記移動物体の近傍において測定した上記磁束の値へ、少なくとも近似されたビオ−サバール変換を適用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項12】上記少なくとも近似されたビオ−サバール変換は、近似されたビオ−サバール変換からなることを特徴とする請求項11に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項13】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、状態ベクトル↑ξの測定感度関数↑hを、以下のように計算するように作用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数9】

ここに、C0は係数、Rは、上記磁束を誘起する複数の送信機からなる送信機アレーの上記磁束の上記測定値を検知する検知器と各上記送信機との間の距離、および、【数10】

ここに、検知器の位置は(xd,yd,zd,φd,θd)であり、送信機の位置は(xs,ys,zs,φs,θs)であり、δx、δy、δz、は、それぞれ検知器の位置と送信機の位置との間の距離のx、y、z成分を表す。
【請求項14】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、少なくとも上記移動物体が上記測定値によって計量される磁束を誘起する送信機に近接したときに、楕円積分を表すテイラー展開数列の第1項と第2項とを計算することにより、上記楕円積分の近似を計算するように作用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項15】上記楕円積分の近似は、次式からなることを特徴とする請求項14に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数11】

ここに、ρは送信機のコイルの半径、Rは、上記磁束の上記測定値を検知する検知器と上記測定値によって測定される上記磁束を誘起する上記送信機との間の距離である。
【請求項16】上記磁束の測定値は、上記移動物体の近傍における6個以下の磁束の測定値からなることを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項17】上記移動物体の上記位置の方向成分は、時間について連続な2つの角度、θ′とφ′とによって表され、θ′とφ′の従来の極座標θとφとの関係は、次式のとおりであることを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数12】

【請求項18】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、特異性を避けるために、上記移動物体の上記位置の方向成分のダイナミックオフセットを使用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項19】上記ダイナミックオフセットは、下記の変換によって記述されることを特徴とする請求項18に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数13】

ここに、θとφは、ダイナミックオフセット後の上記移動物体の上記位置の方向成分からなり、θ′とφ′は、ダイナミックオフセット前の上記移動物体の上記位置の方向成分からなる。
【請求項20】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、測定ノイズ共変マトリクス↑Rと過程ノイズ共変マトリクス↑Qを時間変更させるように作用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項21】上記測定ノイズ共変マトリクス↑Rと上記過程ノイズ共変マトリクス↑Qの上記時間変更は、次式からなることを特徴とする請求項20に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数14】

ここに、下添字kとk−1はk番目とk−1番目の時間ステップのインデックスを、右肩の添字decは減衰を、右肩の添字infは十分な時間経過後の定常状態を、τdecayは減衰の時定数を、Tは時刻を、それぞれ表す。
【請求項22】上記測定値によって計量される磁束を誘起する少なくとも1個の自己校正送信機を更に含んでなることを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項23】上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の位置を校正するように作用することを特徴とする請求項22に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項24】上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の発振強度を校正するように作用することを特徴とする請求項22に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項25】上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の半径を校正するように作用することを特徴とする請求項22に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項26】上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の向きを校正するように作用することを特徴とする請求項22に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項27】上記トラッカは、成分が上記自己校正送信機の特性からなる状態ベクトルを用い、上記特性の少なくとも1つは自己校正されることを特徴とする請求項22に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項28】非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、少なくとも1つは適応過程によって発生される測定ノイズ共変マトリクス↑Rと過程ノイズ共変マトリクス↑Qを使用することを特徴とする請求項1に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【請求項29】上記過程ノイズ共変マトリクス↑Qのための上記適応過程は、次式からなることを特徴とする請求項28に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数15】

ここに、↑Qaccは、状態ベクトルの中に見られる最高次の時間微分に対応する↑Qの成分、下添字kとk−1はk番目とk−1番目の時間ステップのインデックス、↑ξは状態ベクトル、右肩の添字velocityは微分値すなわ速度を示し、Tは時刻、αはゲイン係数である。
【請求項30】上記測定ノイズ共変マトリクス↑Rのための上記適応過程は、次式からなることを特徴とする請求項28または29に記載の移動物体位置のトラッキング装置。
【数16】

ここに、右肩の添字sは測定ノイズ共変マトリクス↑Rを計算する送信機を表し、下添字kとk−1はk番目とk−1番目の時間ステップのインデックス、↑ξは状態ベクトル、↑ξk(−)は状態ベクトルの予測値、↑ζは磁束の測定値、↑hは測定感度関数、βはゲイン係数である。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は移動物体位置のトラッキング装置およびトラッキング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】非線形フィルタの理論とその応用は、次の文献で論じられている。
【0003】エイチ・ジェイ・クシュナ著、「最適非線形フィルタへの接近」、アイ、イー、イー、トランスアクション、エイ、シー、AC−12巻、第5号、1967年10月(H.J.Kushner,“Approximations to Optimal Nonlinear Filters”,IEEE Trans.A.C.,Vol.AC−12,No.5,October 1967)、エイ・ゲルブ、ジェイ・エフ・カスパ・ジュニア、アール・エイ・ナッシュ・ジュニア、シー・イー・プライス、エイ・エイ・サザランド・ジュニア著、「応用最適推定」、マサチューセッツ州ケンブリッジ、エム・アイ・ティ・プレス、1974年(A.Gelb,J.F.Kaspar,Jr.,R.A.Nash,Jr.,C.E.Price, and A.A.Southerland,Jr.,“Applied Optimal Estimation”,M.I.T.Press,Cambridge, Mass.,1974)、ビー・ディー・オー・アンダスン、ジェイ・ビー・ムーア著、「最適フィルタ」、ニュージャージー州、イングルウッドクリフス、プレンティスホール、1979年(B.D.O.Anderson, and J.B.Moore,“Optimal Filtering”,Prentice−Hall,Englewood Cliffs,New Jersey,1979)、エイ・エイチ・ジャツウィンスキ著、「確率過程とフィルタ理論」、ニューヨーク、アカデミックプレス、1971年(A.H.Jazwinski,“Stochastic Processes and Filtering Theory”,Academic Press,New York,1971)、エム・エス・グリュウワル、エイ・ピー・アンドリュウス著、「カルマンフィルタ」、ニュージャージー州、アッパーサドルリバー、プレンティスホール、1993年(M.S.Grewal, and A.P.Andrews,“Kalman Filtering”,Prentice−Hall,UpperSaddle River,New Jersey, 1993)。
【0004】また、ビオ−サバールの法則については、次の文献で論じられている。
【0005】ジェイ・ディー・ジャクソン著、「古典電気力学」、ニューヨーク州、ニューヨーク、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、1975年(J.D.Jackson,“Classical Electrodynamics”,JohnWilley and Sons,New York,New York,1975)。
【0006】拡張カルマンフィルタ(Extended Kalman Filters)のレーダでのトラッキングへの応用は、例えば米国特許第5,075,694号、第4,179,696号、第3,952,304号、第3,932,572号において論じられている。
【0007】その他のトラッキング装置は、例えば米国特許第5,095,467号、第4,855、932号において論じられている。
【0008】カルマンフィルタは、異なるセンサの「データ融合」のための標準ツールである。米国特許第5,416,712号においては、GPSの信号と推測航法とがカルマンフィルタによって結合され、またジャイロバイアスも校正されている。米国特許第5,645,077号においては、自動ドリフト補正が論じられている。
【0009】本明細書において言及する刊行物の全ての開示と、本明細書において引用する刊行物の全ての開示は、ここに参照によって組み入れられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、移動物体の近傍において測定した磁束の測定値を、上述の非線形カルマンフィルタを応用して処理することによって、移動物体の位置を検出し、追跡する、移動物体位置のトラッキング装置およびトラッキング方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明の望ましい実施の形態によれば、移動物体位置のトラッキング装置は、移動物体の近傍において測定した磁束の値に基づいて移動物体の位置を追跡する移動物体位置のトラッキング装置において、上記移動物体の近傍において測定された磁束の測定値を受けて、上記測定値に非線形カルマンフィルタを適用し、上記移動物体の位置に関する情報を出力する、非線形カルマンフィルタベースのトラッカと、上記移動物体の位置に関する上記情報を表示する位置表示器と、を含んでなる。
【0012】また本発明の望ましい実施の形態によれば、非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、拡張カルマンフィルタベースを含む。
【0013】なお、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記非線形カルマンフィルタは、要素が位置座標と位置座標の1次微分とを含む状態ベクトルに作用する。
【0014】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記位置座標は、3個の空間座標と2個の方向座標とからなる。
【0015】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記移動物体位置のトラッキング装置は、上記移動物体の近傍に磁束を誘起する6個以下の有効な送信機からなる送信機アレーをさらに含んでなる。
【0016】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、上記移動物体の上記位置から上記移動物体の近傍において測定した上記磁束の値へビオ−サバール変換を適用する。
【0017】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記ビオ−サバール変換を適用する過程は、次式に示す状態ベクトル↑ξの測定感度関数↑hの計算からなる。
【0018】
【数17】

【0019】ここに、C0は係数、Rは、上記磁束を誘起する複数の送信機からなる送信機アレーからの上記磁束の上記測定値を検知する検知器と各上記送信機との間の距離、および、【0020】
【数18】

【0021】であり、ここに検知器の位置は(xd,yd,zd,φd,θd)、送信機の位置は(xs,ys,zs,φs,θs)であり、δx、δy、δz、は、それぞれ検知器の位置と送信機の位置との間の距離のx、y、z成分を表す。
【0022】なお、本発明の望ましい実施の形態によれば、非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、少なくとも上記移動物体が上記磁束を誘起する複数の送信機からなる送信機アレー内の1つの送信機に近接したときに、楕円積分を表すテイラー展開数列の第1項と第2項とを計算することにより、上記楕円積分を近似する。
【0023】なお、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記楕円積分の近似は、上記A1、A3に次式の修正を含む。
【0024】
【数19】

【0025】ここに、ρは送信機のコイルの半径、Rは、上記磁束の上記測定値を検知する検知器と上記測定値によって測定される上記磁束を誘起する送信機との間の距離である。
【0026】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記移動物体の上記位置の方向成分は、時間について連続な2つの角度、θ′とφ′とによって表され、θ′とφ′の従来の極座標θとφとの関係は、次式のとおりである。
【0027】
【数20】

【0028】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、特異性を避けるために、上記移動物体の上記位置の方向成分のダイナミックオフセットを使用し、上記ダイナミックオフセットは、下記の変換によって記述される。
【0029】
【数21】

【0030】ここに、θとφは、ダイナミックオフセット後の上記移動物体の上記位置の方向成分からなり、θ′とφ′は、ダイナミックオフセット前の上記移動物体の上記位置の方向成分からなる。
【0031】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記非線形カルマンフィルタは、以下のマトリクスと操作を適用する。
【0032】
【数22】

【0033】ここに、kは時間ステップのインデックス、↑ξk(−)は状態ベクトルの予測値、↑ξk(+)は状態ベクトルの修正後の予測値、↑Φは状態遷移マトリクス、【0034】
【数23】

【0035】ここに、↑P(−)は推定誤差共変マトリクスの予測値、↑P(+)は推定誤差共変マトリクスの修正値、↑Qは過程ノイズ共変マトリクス、【0036】
【数24】

【0037】ここに、↑hは測定感度関数、↑ξは状態ベクトル、【0038】
【数25】

【0039】ここに、↑Rkは測定ノイズ共変マトリクス、【0040】
【数26】

【0041】ここに、↑ζは、上記移動物体の近傍において測定された上記磁束の測定値を表し、【0042】
【数27】

【0043】である。
【0044】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記磁束の測定値は、上記移動物体の近傍における6個以下の磁束の測定値からなる。
【0045】なお、本発明の望ましい実施の形態によれば、非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、測定ノイズ共変マトリクス↑Rと過程ノイズ共変マトリクス↑Qを時間変更させるように作用すること。
【0046】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記測定ノイズ共変マトリクス↑Rと上記過程ノイズ共変マトリクス↑Qの上記時間変更は、次式からなる。
【0047】
【数28】

【0048】ここに、下添字kとk−1はk番目とk−1番目の時間ステップのインデックスを、右肩の添字decは減衰を、右肩の添字infは十分な時間経過後の定常状態を、τdecayは減衰の時定数を、Tは時刻を、それぞれ表す。
【0049】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記測定値によって計量される磁束を誘起する少なくとも1個の送信機は、自己校正される。
【0050】なお、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の位置を校正するように作用する。
【0051】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の発振強度を校正するように作用する。
【0052】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の半径を校正するように作用する。
【0053】なお、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記非線形カルマンフィルタは、各上記自己校正送信機の向きを校正するように作用する。
【0054】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記トラッカは、成分が上記測定値によって計量される磁界を誘起する上記自己校正送信機の特性からなる状態ベクトルを用い、上記特性の少なくとも1つは自己校正される。
【0055】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、非線形カルマンフィルタベースの上記トラッカは、少なくとも1つは適応過程によって発生される測定ノイズ共変マトリクス↑Rと過程ノイズ共変マトリクス↑Qを使用する。
【0056】なお、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記過程ノイズ共変マトリクス↑Qのための上記適応過程は、次式からなる。
【0057】
【数29】

【0058】ここに、↑Qaccは、状態ベクトルの中に見られる最高次の時間微分に対応する↑Qの成分、下添字kとk−1はk番目とk−1番目の時間ステップのインデックス、↑ξは状態ベクトル、右肩の添字velocityは微分値すなわち速度を示し、Tは時刻、αはゲイン係数である。
【0059】更に、本発明の望ましい実施の形態によれば、上記測定ノイズ共変マトリクス↑Rのための上記適応過程は、次式からなる。
【0060】
【数30】

【0061】ここに、右肩の添字sは測定ノイズ共変マトリクス↑Rを計算する送信機を表し、下添字kとk−1はk番目とk−1番目の時間ステップのインデックス、↑ξは状態ベクトル、↑ξk(−)は状態ベクトルの予測値、↑ζは磁束の測定値、↑hは測定感度関数、βはゲイン係数である。
【0062】また、本発明の望ましい実施の形態によれば、移動物体位置のトラッキング方法は、移動物体の近傍において測定した磁束の値に基づいて移動物体の位置を追跡する移動物体位置のトラッキング方法において、上記移動物体の近傍において測定された磁束の測定値を受け、上記測定値に非線形カルマンフィルタを適用し、上記移動物体の位置に関する情報を出力し、上記移動物体の位置に関する上記情報の出力表示を供給する。
【0063】
【発明の実施の形態】用語の定義:位置(ポーズ、Pose):3次元空間における場所を記述する3座標と、方向を記述する2座標とを含む、円対称物体の5次元座標である。
【0064】方向(Orientation):3次元空間における固定の方向に相対的な方向を記述する、物体の2次元の角度方向位置である。
【0065】送信機:磁束を生じる磁界を発する装置である。
【0066】検知器:検知面積を横切る磁束を電圧に変換する装置である。
【0067】図1〜3は、ビオ−サバールの法則を基礎とする(以下ビオ−サバールベースと記す。)拡張カルマンフィルタ型のトラッキングフィルタ(trackingfilter)の望ましい運用方法の流れ図である。
【0068】図4は、図1〜3に示す方法によって運用する、ビオ−サバールベースの、拡張カルマンフィルタ型のトラッキングフィルタを含むトラッキング装置の1例の簡単化したブロック図である。
【0069】図4に示す装置は、望ましくは、以下の機能単位から成る。
【0070】1.多数の電気コイルと電気コイルを駆動する電子回路である駆動器とを含む送信機40。
【0071】2.コイルと、例えば前置増幅、入力制御、フィルタ等の前処理を提供する前置電子回路とを含む検知器50。
【0072】3.同期装置60。
【0073】4.輪郭検出器70。
【0074】5.トラッキング非線形フィルタ(トラッカー)80。
【0075】6.位置に関する情報を表示する位置表示器。(図示しない。)各送信機40は、交流駆動の従来のソレノイドで構成することができ、移動物体の位置を測定する空間内の適当な場所に固定して配設する。
【0076】検知器50は、例えば一軸磁界検出器と信号調整A/D変換器からなり、例えば一軸アンテナコイルまたはホール効果検出器、半導体部品、磁気抵抗検出器、磁気ダイオード、磁気トランジスタ等から構成され、移動物体の適当な箇所に取り付ける。
【0077】同期装置60は、例えばシステム同期ユニットの一種である。
【0078】輪郭検出器70は、例えば、並列に作動するN個の輪郭検出モジュールからなり、各輪郭検出モジュールは2つのサブモジュール、フェーズロックループサブモジュールとシステム同期ユニットとからなる、N(Nは任意の整数)個のRF送信機から受信したN個の磁気信号の輪郭の振幅(大きさ及び符号)C1,…,CNを定める輪郭検出器の一種である。
【0079】トラッキング非線形フィルタ80は、輪郭検出器から供給された符号付きの振幅値に基づいて作動し、6個の未知数を含むN個の解析方程式を解いて、検知器50の位置を出力する、位置決定ユニットの一種である。
【0080】ビオ−サバールベースの拡張カルマンフィルタ型のトラッキング非線形フィルタ80の望ましい使用方法を図1〜3を参照して詳細に説明する。例として、磁界を誘起する送信機アレーの場合について説明する。重畳された磁束が磁束検知器(検知器50)によって検出され、輪郭検出器70によって個々の磁束に分解されるものとして記述する。他の型式の磁束誘起、磁束測定装置等を用いてもよい。
【0081】ダイナミック系の状態空間モデル従来のカルマンフィルタは、系のノイズの測定に基づく線形系の状態の最適予測と、系の運動方程式のモデルと、以前の状態の予測とを発生する、シーケンシャルトラッカー(sequential tracker)である。関心の対象である系が非線形の場合には、カルマンフィルタの一つの変形である拡張カルマンフィルタが一般的に用いられる。
【0082】従来のカルマンフィルタは、複数のマトリクスを用いて、状態ベクトルの最適推定値を計算する。これらのマトリクスは、例えば次のように系の運動方程式から導かれる。(本明細書において、ベクトル、マトリクスは、数式及び図面においては太文字で表示し、文章内では文字の左に付けた↑で表示する。また、マトリクスの右肩の添字t、Tは、転置マトリクスを示す。)系の動力学的状態を次式で近似する。
【0083】
【数31】

【0084】数31式において、tは時間、↑ξ(t)は状態ベクトル、↑Fは微分方程式の係数マトリクス、↑w(t)は系ノイズ、↑ζ(t)は測定値、↑h[↑ξ(t)]は測定感度関数、↑v(t)は測定ノイズである。↑h[↑ξ(t)]は、次元が測定値の数であるベクトル関数である。測定値↑ζは、輪郭検出器70の出力であり、トラッキング非線形フィルタ80の入力である前記のC1,…,CNと同じである。測定ノイズと系ノイズの両者は、不変白色ガウス分布過程(invariant white Gaussian distributedprocesses)であると仮定され、互いに独立である。
【0085】数31式の離散時間形は、【0086】
【数32】

【0087】である。ここに、↑ξkは時間ステップkにおける状態ベクトル、↑Φは時間ステップkにおける状態遷移マトリクス、↑wkは時間ステップkにおける系ノイズ、↑h[↑ξk]は時間ステップkにおける測定感度関数、↑ζkは時間ステップkにおける測定ベクトル、↑vkは時間ステップkにおける測定ノイズである。系ノイズ↑wkと測定ノイズ↑vkは独立不変白色ガウス分布過程である。
【0088】所望の位置を計算するのに十分な情報を含むなら、一般に状態ベクトルは任意に選んでよい。可能な一つの選択は、【0089】
【数33】

【0090】である。ここに、(x,y,z,φ,θ)は、図5に示すような検知器の位置の5座標であり、変数の上の点(ドット)は変数の時間微分を示す。高次微分の影響は、系ノイズに暗に含ませる。
【0091】カルマンフィルタは、ガウスノイズである系ノイズ↑wk、測定ノイズ↑vkに関する統計学の知識に基づき、【0092】
【数34】

【0093】である。ここに、δk,iはクロネッカのデルタ関数(Kronecker delta function)である。
【0094】連続な時間から離散時間への移行は、次の関係を使用して行う。
【0095】
【数35】

【0096】数35式の最後の2つの表現は、唯一の近似である。前者は(tk−tk-1)の非線形項を無視し、後者はセンサがtk-1とtkの間にわたってノイズを積分する場合には正確である。
【0097】磁気トラッキングのための拡張カルマンフィルタの使用測定感度関数↑h[↑ξ(t)]が誘起電圧を磁界に関連づけることは、ビオ−サバールの法則として知られており、閉鎖形(closed form)で表現することは困難である。従って、近似が望ましく、最も簡単な近似は、【0098】
【数36】

【0099】である。ここに、↑rs、↑rdは送信機と検知器の位置ベクトルであり、↑ns、↑ndは↑rs、↑rdのそれぞれに対応する平面単位ベクトル(平面ベクトルは、その面に垂直な方向のベクトルである。)である。これらの表記は、図6に図示されている。測定感度関数↑h(↑ξ)は、その要素の各々が単体の送信機との相互作用であるベクトル関数である。ベクトル関数の各要素について、値↑rs、↑ns、比例係数C0はそれらの対応する値を取る。
【0100】トラッカー(トラッキング非線形フィルタ80)の機能は、カルマンフィルタへの幾つかの任意の拡張を用いて定義することができる。拡張カルマンフィルタを用いる本発明の望ましい実施の形態は、図1〜3に示されており、以下に説明する。
【0101】この手順は、一種の逐次手順であって、それぞれ前の推定値に基づいて次々に推定値を提供する。初期計算200は、一般に5個の初期値のアレイ、↑Q0,↑R0,↑P0,↑Φ,↑ξ0、を供給する。各ブロックの役割は以下のとおりである。
【0102】予測状態ベクトル205は、時間ステップk−lにおける状態ベクトルの推定値を与えられ、時間ステップkにおける状態ベクトルの推定値、【0103】
【数37】

【0104】を発生するように作られている。(−)と(+)の表記は、それぞれ測定前の推定(予測)と測定後の推定(訂正)を示す。数33式に置いて提案された状態ベクトルについて、マトリクス↑Φは、【0105】
【数38】

【0106】の形をとる。
【0107】推定誤差共変マトリクス210は、推定誤差共変マトリクス(estimate error covariance−matrix)、【0108】
【数39】

【0109】を発生するように作られている。
【0110】この例におけるマトリクス↑Qは、【0111】
【数40】

【0112】の形をとる。
【0113】線形近似の測定感度関数215は、測定感度関数を構築するように作られている。数33式に置いて提案された状態ベクトルについて、9個の送信機からなる系の例においては、この近似は、【0114】
【数41】

【0115】になる。ここに、↑hlx,kは、時間ステップkにおいて推定された座標においてとられたxに関する送信機lとの検知器の磁気相互作用の微分を示す。同様に、他の項は、他の座標に関する他の相互作用の微分を示す。速度の磁気相互作用への寄与は無視され、従って速度に関する微分値はゼロになるので、数41式の右辺のマトリクスの右半分の項はゼロである。もし必要なら、磁気相互作用への速度の寄与を取り込むことは、簡単である。
【0116】カルマンゲインマトリクス220の計算には、次の近似、【0117】
【数42】

【0118】を使用することができる。
【0119】例えば、9個の送信機からなる系においては、↑Rは、【0120】
【数43】

【0121】の形をとる。ここに、↑Rsは送信機sの測定誤差の共変(covariance)を表し、異なる送信機の測定誤差は相関しないと仮定する。
【0122】カルマンゲインマトリクス220は、順次、予測状態ベクトル修正225と、推定誤差共変マトリクス修正230に用いられる。予測状態ベクトル修正225は、ゲインと、測定値と状態ベクトルに基づく予測値との差(イノベーション(innovations))との乗算、【0123】
【数44】

【0124】である。
【0125】推定誤差共変マトリクス修正230は、カルマンゲインマトリクス220と測定感度関数215の微分を含む【0126】
【数45】

【0127】である。
【0128】このように、状態ベクトルと、誤差共変マトリクス↑P0と、↑Qと↑Rと↑hを用いたモデルへの初期計算200の近似を行うことによって、↑ζkの測定値に基づく一連の最適推定がもたらされる。
【0129】初期計算200の初期アレーの正確な値は重要ではない。マトリクス↑Qと↑Rの値は系の以前の知識から推定できる。すなわち、↑Rの値は測定ノイズから、↑Qの値は系における予期する加速度から計算できる。↑P0は任意の代表的な値をとる。例えば、毎秒5mの速度が予期されれば、速度に関する↑P0の要素は、毎秒25mの速度をとるであろう。同様に、↑ξ0も典型的な状態の値をとり、例えば、トラッキング範囲が1立方mの範囲に限定され、速度が毎秒1mの範囲に限定されなら、↑ξ0は1のベクトルになる。
【0130】数36式のビオ−サバールの法則の近似は計算には便利ではないかもしれない。計算を容易にするために、検知器50の位置(xd,yd,zd,φd,θd)と送信機40の位置(xs,ys,zs,φs,θs)を用いてビオ−サバールの法則を近似する。その変換と距離は次のように計算される。
【0131】
【数46】

【0132】これらの値は、3つの仮の値、【0133】
【数47】

【0134】を計算するのに用いられる。
【0135】磁気相互作用は、次のように計算される。
【0136】
【数48】

【0137】ここに、C0は、望ましくは実験で定められる係数である。検知器50の位置と送信機40の位置とを知り、係数C0が分かれば、磁気相互作用は計算可能である。
【0138】改良ビオ−サバール近似状態ベクトル、数33式、が既知であれば、数46〜48式は使用するのに便利であるが、依然貧弱な近似である。物理的効果をより多く考慮して、磁気相互作用モデルを改良すると、よりよいトラッキングの実行が可能になる。例えば、送信機のコイルの半径が、送信機と検知器の間の距離に比して小さいと仮定する。本発明のこの望ましい実施の形態においては、強い磁界の誘起が容易であるので、大きい送信機を使用することが望ましい。従って、検知器が送信機に接近したときには、A1とA3に次のような修正を施す。
【0139】
【数49】

【0140】ここに、ρは送信機のコイルの半径であり、Rは数46式によって定義されている。数48、49式は、共にビオ−サバールの法則の近似である。数48式は、送信機と検知器が共に無限小の半径を有する場合には厳密解に近づく。送信機の半径が増加すると、ビオ−サバールの法則の厳密解は、楕円積分の形で表される。数49式は、テーラ展開数列のρ/Rにおける第1項と第2項のみがとられたときの厳密解の近似である。
【0141】トラッキングを改良するための冗長測定の使用正確なトラッキングを得るのに必要な測定の数は現実的に重要な問題である。ハードウエアの製造コストと計算ロードを減少するためには、最小限の送信機数を有するトラッキング装置を作ることが望ましい。全過程において最もロードの大きい計算は、カルマンゲインマトリクス220の計算ステップの数42式における逆マトリクス(inverse matrix)の計算であり、逆マトリクスのオーダは送信機の数に等しいので、送信機の数を減らすと計算ロードは減少する。
【0142】このトラッキング装置は、5個の未知変数座標があるけれども、5個の測定値は要しない。トラッキング装置は、現在の測定値のみならず過去の測定値も最適に使用する。測定値の数が少ないほどトラッキングは劣るようになる。しかし、最小の誤差推定のみが作り出されるので、完全な解が得られなくても適度のトラッキングを得ることはできる。
【0143】可能な限り正確なトラッキングを提供するためには、測定数を増加することが望ましい。実際には、例えば送信機の位置が機械的衝撃の結果変化したり、電子的不完全さや温度変化によって送信機の発振強度が変化する結果、1またはそれ以上の送信機のパラメタの劣化がある場合がある。多数測定の装置では、カルマンフィルタは、誤差が最小な出力を供給するように作用し、不良送信機は幾らかの誤差をもたらす。送信機の数が多いほど、誤差最小化における各送信機のウエイトは小さくなり、推定がより正確になる。従って、送信機の数を増加するとトラッキングの性能が改良される。装置へ任意の数の送信機を組み込むことができるということは、本発明の望ましい実施の形態の明らかな利点である。一般に、送信機の数を増加した場合、望ましくは検知器のデジタル信号処理装置(DSP)90で実行される、ソフトウエアの変更のみで済む。
【0144】トラッキング問題に最適化された状態ベクトルの選択数33式の状態ベクトルは、それぞれの意味が図5に示されている2つの方向座標φとθを含んでいる。これらの座標は、角度θがz軸と方向ベクトルとの間の角度を表し、角度φがx軸と方向ベクトルのx−y面上への投影との間の角度である、極座標表示である。θはゼロとπラジアンの範囲にあり、φはゼロと2πラジアンの範囲にある。
【0145】この従来技術において普遍的な表現には問題がある。図7は、漸次z軸の方向に接近する方向ベクトルを示し、そのθ座標は、φ座標は一定の間に、一定の速度(負の)で減少する。方向ベクトルがθ=0の点を通過すると、座標は再び増加しはじめる。このように、速度は瞬間的に符号を変え、速度の不連続をもたらす。更に、φ座標に関しては、方向ベクトルがθ=0の点を通過すると、そのx−y面上への投影は、反対の4分円へ運動し、瞬間的な符号変化をもたらす。従って、速度のみならず座標も不連続である。これらの座標の従来のダイナミクス(dynamics)を図8に示す。
【0146】本発明の望ましい実施の形態においては、異なった方向座標系を用いる。この系(θ′,φ′)は、次式、数50式に示す写像(mapping)235によって通常の極座標系(θ,φ)へ最も良く書き替えられる。
【0147】
【数50】

【0148】この座標系を用いると、図7において示した運動に伴う不連続の除去が確かめられる。方向ベクトルはθ′=0の点へ負の速度を持って接近し、そのθ′座標は負になり、ゼロの速度を持つφ′座標はそのままの値を保つ。しかしながら、従来の表現へ変換されたときは、θ=−θ′、φ=φ′+πである。
【0149】このダイナミクスを図9に示す。本発明のこの望ましい実施の形態においては、位置ベクトルの両コンポーネントは正、負の任意の値をとり得、両座標とそれらの速度は常に連続である。
【0150】従来の表現も、上に示し説明した本発明の望ましい実施の形態の表現も、θ=0のときのφ座標の曖昧さを除去することはない。この特異性は、もし検知器がθ=0において止まれば、トラッキングの不連続として自身を表示し、物理的重要性を有しないφの値を発生させ、運動を再開する。
【0151】この座標系のダイナミックオフセット240は、送信機の向きが上記の特異性に近づいたときには、極座標表示の軸を回転することによって、この問題を解決する。この変換は、例えばx軸とz軸が取り替えられるような、z軸が異なる方向を指すような座表系の回転に相当する。この特定の例における新しい系への変換は、【0152】
【数51】

【0153】である。
【0154】この変換は、送信機のθが例えば10°以下になる毎に適用する。勿論、θの大きさをモニタし、数51式の変換を適用することは、数50式の変換を適用するときには避けられる計算上の負担をもたらすので、実行時に数学的曖昧さが現れたときのみ適用する。
【0155】時間変更フィルタを使用する位置取得数37〜45式で示したフィルタは、状態ベクトルの良好な初期推定が可能であると仮定し、以後のトラッキングを予測−修正の逐次繰返しによって進めている。初期推定が得られなければ、フィルタは発散するかもしれない。非線形の系への適用においては、初期推定が位相空間における誤差関数の局部的最低値にくるかもしれないので、発散問題はより深刻になる。従って検知器の位置決め問題は、2つに分離した問題、捕捉とトラッキングになる。
【0156】検知器50の正確な位置は完全には決して知られない。従って、たとえ劣ったものであっても任意の初期推定値が過程を開始するのに役に立つと考えられるかも知れない。しかしながら、フィルタが発散しないようにするためには、方程式の一貫性を維持することが望ましい。
【0157】フィルタは、2つの織り混ぜられた動作、状態ベクトルのトラッキングと、リカッチ(Ricatti)の差分方程式を解くこと、すなわち、↑Pについての差分方程式を数値的に解くこととを実行する。リカッチの方程式は、数39式と数45式とを用いて更新(update)され、その解はその依存性を介して、状態ベクトルの推定値に対して弱いフィードバックのみを有する。従って、結果の精度に殆ど関わりなく、自身のペースで進行する。一方、状態ベクトルの推定は、↑Pマトリクスが正確であると仮定して、↑Pマトリクスを利用する。初期推定が極めて劣っていても、リカッチの方程式は収束し、誤差は未だ極めて大きいままで小さい↑Pが現れる。フィルタは、誤差は小さく、仮定は極めて安定であるとみなして、大きなゲインがもたらされる。大きなゲインと大きなイノベーション(innovation)とが組み合わされるとフィルタの発散が生じる可能性がある。
【0158】劣った初期推定値を以ってフィルタがスタートするのを許容するために、大きな↑Rまたは大きな↑Qを人為的に維持することによって、リカッチの方程式の収束を望ましくは遅くさせる。↑Rが大きいと、ゲインの式における逆マトリクス計算における↑Rの箇所のために積分時間が長くなる。↑Qが大きいと、予測値に↑Qは常に加算されるので、定常解は大きくなる。
【0159】フィルタが進行し、より多くの測定値を得、よりよい推定値を発生すると、大きな共変マトリクスが障害になる。正確な予測が可能になれば、より簡潔な予測ができ、従って測定値が十分に利用できる小さい↑Rが望ましい。望ましくは、フィルタに、収束が卓越する取得モードから、収束が保証され、精度がより重要な、トラッキングモードへ切り換えられる機構を設ける。この切り換えは、フィルタパラメタの急激な変化も良くないので、望ましくはスムーズにする。
【0160】このような考慮から、時間変更パラメタ(time−varying parameters)245の解が導かれる。状態ベクトルが良くは分かっていない開始時点において、大きい↑Rと大きい↑Qとが、大きい初期↑Pと共に供給される。しかし、↑Rと↑Qは、系の真のノイズをより良く反映するコンポーネントのみを残す、指数関数的に減衰するコンポーネントからなる。例えば、↑Rと↑Qの時間依存性は次式の形をとる。
【0161】
【数52】

【0162】ここに、下添字kとk−1はk番目とk−1番目の時間ステップのインデックスを、右肩の添字decは減衰を、右肩の添字infは十分な時間経過後の定常状態を、τdecayは減衰の時定数を、Tは時刻を、それぞれ表す。
【0163】勿論、↑Pはリカッチの方程式の解の結果として、漸次減衰する。↑Rと↑Qは、状態ベクトルについての情報が最初に入手できないときに、取得モードからトラッキングモードへの良好でスムーズな遷移ができるように、数百ミリ秒の時定数で減衰させる。
【0164】自己校正の使用数37〜45式に基づくトラッキングの精度は、全送信機の位置の正確な認識に依存する。各送信機の5座標位置は、その発振強度と半径と共に知られていることが望ましい。送信機の位置はダイポール磁界を計算するのに使用され、発振強度は比例係数C0に寄与し、半径は数49式におけるダイポール項への修正を計算するために使用される。これらの各パラメタは、良好な校正を行って直接測定される。実際には、例えば、プラスティックの保護ケースに収納された電気コイルの物理的な寸法を測定することは困難であり、正確な校正は面倒で、時には限定される。さらに、ほとんど全てのパラメタは、温度変化による変動を受ける。したがって、装置に大まかな校正を施して、パラメタを自動的に精密調整することが望ましい。
【0165】比例係数C0の校正においては、C0の直接測定が可能である。所望の精度が高いほど実験に時間がかかる。代替的に、各送信機の状態要素Ciを加え、これらのパラメタを最適化する新しいカルマンフィルタを構築する。新しい状態ベクトルは望ましくは次式の形をとる。
【0166】
【数53】

【0167】状態ベクトルが増加されたときには、マトリクス↑P0、↑Q、↑Φも次式のように増加されるのが望ましい。
【0168】
【数54】

【0169】ここに、↑Qcoorは上記のように定義されたマトリクス↑Qであり、↑Qscは自己校正過程ノイズ共変マトリクス(self−caribration process−noise covariance−matrix)である。このマトリクスは、比例係数C0の最大許容変化率から計算されるか、一定の校正が要求されるときにはゼロにセットされる。状態遷移マトリクス↑Φは、次式の形をとる。
【0170】
【数55】

【0171】ここに、↑Φcoorは上記のように定義されたマトリクス↑Φであり、↑Φscは係数遷移マトリクス(coefficient transition matrix)である。後者は、状態に比例係数C0の時間微分が含まれていなければ、一般に単位マトリクスに等しい。
【0172】マトリクス↑K、↑Hも増加されるのが望ましい。このためには、↑hの新しい状態要素(new state members)に関する微分が一般に要求される。この微分は、数46〜48式から解析的または数値計算的に計算され、それによってこの微分はより便利または計算が早くなる。↑P0のサブマトリクスは、校正の不確かさのサイズに依存する。比例係数C0の自己校正の例については、マトリクス↑Hは次式の形をとる。
【0173】
【数56】

【0174】同様に、他のパラメタの校正のために状態要素を加えてもよい。例えば、ソースの方向φを考慮すると、【0175】
【数57】

【0176】となり、あるいは任意の校正パラメタの組合せがある。各組合せについて、マトリクス↑P0、↑Q、↑Φをそれに応じて構築するのが望ましい。
【0177】自己校正が使用されるときには、送信機の校正データも、図3の状態ベクトル255を用いて更新することが望ましい。望ましくは、この更新は各逐次繰返しごとに行う。しかし、更新が大幅でないと予期されるなら、更新頻度を遅くする。
【0178】適応(adaptive)カルマンフィルタの使用フィルタパラメタの決定論的な時間減衰(deterministic time−decay)は、適応的アプローチ(adaptive approach)へ一般化される。例えば、トラッキングの結果からマトリクス↑Q、↑Rを推定し、適応過程により適応的なマトリクス↑Q、↑Rを導く。この例においては、マトリクス↑Qは、運動方程式によってモデル化されない各運動要素(kinetic component)を記述し、白色ノイズとしてモデル化する。
【0179】例えば、数33式の状態ベクトルが用いられる場合には、2次時間微分即ち加速度は、マトリクス↑Qの中に過程ノイズとして含まれるであろう。通常、このマトリクスには、最悪のケースのシナリオに基づく値が割り当てられる。予期される最大の加速度に基づいてマトリクス↑Qを推定する。この選択は、↑Qが大きいと大きな定常状態の↑Pとノイズに敏感なフィルタがもたらされるので、常に最適とは限らない。他方、↑Qが小さいと、急速な位置変化が見落とされる可能性がある。
【0180】数33式の状態ベクトルにおいては、図3の適応推定255は、次式の形をとる。
【0181】
【数58】

【0182】ここに、↑Qaccは、状態ベクトルの中に見られる最高次の時間微分すなわち速度の微分に対応する↑Qの成分を表す。2乗の項は、検知器の加速度の推定値である。定数αはゲイン係数であり、ゲインが高くなるほど加速度の推定値が平均化される周期が短くなる。↑Q0accは、定数で、時間に独立な項である。
【0183】同様に、マトリクス↑Rも望ましくは適応推定250のようなアプローチの恩恵を受けることができる。↑Rが大き過ぎる場合には、装置は検知器のコースの変化にゆっくりにしか反応しない。↑Rが小さ過ぎる場合には、フィルタが発散する可能性がある。このマトリクスは、系の物理モデルに含まれない効果を白色ノイズとしてモデル化するので、その適応(adaptation)は、イノベーション(innovation){↑ζk−↑h[↑ξk(−)]}に依存し、【0184】
【数59】

【0185】である。ここに、表記は数58式と類似であり、右肩の添字sは、測定ノイズ共変を計算する送信機を表す。↑R0accは、定数で、時間に独立な項である。
【0186】本明細書において、マトリクスの右肩の添字t、Tは、転置マトリクスを示す。 上記説明した本発明の望ましい実施の形態は、拡張カルマンフィルタ、すなわち最適非線形フィルタへの1次近似のみを考慮した。改良フィルタ(例えば従来技術で挙げたクシュナの1967年の著作参照。)、拡張カルマンフィルタの2次近似とガウスフィルタを含むもの(共に、従来技術で挙げたジャツウィンスキの1971年の著作参照。)、ガウス合計フィルタ(従来技術で挙げたアンダスンとムーアの1979年の著作参照。)及びその他の既知の近似の変形版は、本願発明の代替の実施の形態へ容易に適用可能であり、その誘導は簡単である。
【0187】本願発明のソフトウエアの部分は、要すれば、ROM(呼出し専用メモリ)に書き込んで実行できることは容易に理解されるであろう。本願発明のソフトウエアの部分は、一般的に、要すれば、従来の技術を用いてハードウエアに組み込んで実行してもよい。
【0188】簡単にするために、別々の実施の形態として説明した本発明の種々の特徴を一つの実施の形態に組み合わせて実行してもよい。逆に、簡単にするために、一つの実施の形態として記述された種々の特徴を、別々に、或いは部分的に組み合わせて実行してもよい。
【0189】当業者は、本発明は上記に特に示し記載したものに限定されるものではないことを理解できるであろう。本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0190】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る移動物体位置のトラッキング装置およびトラッキング方法によれば、移動物体の近傍において測定した磁束の測定値を上述の非線形カルマンフィルタを応用して処理することによって、移動物体の位置を検出し、追跡することが容易になるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】599149784
【氏名又は名称】ネットモール リミテッド
【出願日】 平成11年12月28日(1999.12.28)
【代理人】 【識別番号】100075753
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 良彦 (外2名)
【公開番号】 特開2000−213906(P2000−213906A)
【公開日】 平成12年8月4日(2000.8.4)
【出願番号】 特願平11−373155