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【発明の名称】 表面形状認識用センサ
【発明者】 【氏名】森村 浩季

【氏名】重松 智志

【要約】 【課題】指紋のような微小な凹凸を精度よく検出できるようにする。

【解決手段】下部電極104の周囲を囲うように、下部電極104および支持部材103とは離間して、絶縁層102上に参照電極104aを配置する。そして、上部電極105および下部電極104の間の容量Cfと、上部電極105および参照電極104aの間の容量Crとの差を、センサ回路110により検出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上の同一平面上にそれぞれが絶縁分離されて複数配置された複数の下部電極と、前記下部電極上に離間して対向配置された上部電極と、前記基板上に前記下部電極毎に前記下部電極とは離間して配置されて前記上部電極を支持する支持部材と、前記下部電極と前記支持部材との間に前記下部電極毎に前記基板上に前記下部電極および前記支持部材とは離間して前記下部電極毎に配置された参照電極と、前記上部電極と前記下部電極との間の第1の容量と前記上部電極と前記参照電極との間の第2の容量との差を検出するセンサ回路とを備え、前記上部電極は、前記下部電極それぞれの上で前記支持部材を支点に、前記下部電極方向に変形可能に形成されていることを特徴とする表面形状認識用センサ。
【請求項2】 請求項1記載の表面形状認識用センサにおいて、前記下部電極と前記参照電極は、前記上部電極に対向する面の面積が同一に形成されていることを特徴とする表面形状認識用センサ。
【請求項3】 請求項1または2記載の表面形状認識用センサにおいて、前記参照電極は、前記下部電極周囲を囲うように形成されていることを特徴とする表面形状認識用センサ。
【請求項4】 請求項1〜3いずれか1項記載の表面形状認識用センサにおいて、前記下部電極は、マトリクス状に複数配置されていることを特徴とする表面形状認識用センサ。
【請求項5】 請求項1〜4いずれか1項記載の表面形状認識用センサにおいて、前記支持部材は格子状に形成されてそのマスの中央部に前記下部電極が配置されていることを特徴とする表面形状認識用センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、人間の指紋や動物の鼻紋などの微細な凹凸を有する表面形状を認識する表面形状認識用センサに関する。
【0002】
【従来の技術】情報化社会の進展により、現代社会においては機密保持技術への関心が高まっている。例えば、電子現金化などのシステム構築のためには、本人認証技術が重要な鍵となってくる。また、盗難やカードの不正使用の防御策のための認証技術についても、研究開発が活発になっているそれら認証方式としては、指紋や声紋を利用するものなど、種々の方式が提案されている。中でも指紋認証技術については、多くの技術開発がなされている。
【0003】以下、従来より開発されている種々の指紋の認証方式について説明する。まず、従来の指紋認証方式を大別すると、光学的に指紋の凹凸を読みとる方式、指紋の圧力差を読みとる方式、人間の電気特性を利用して指紋の凹凸を検出する方式などに分けられる。はじめに、光学的に読みとる方式では、指紋の反射光学像をCCDなどのイメージセンサに取り込み、あらかじめ用意してある指紋のパターンと照合を行う方式である。
【0004】また、指紋の圧力差を読みとる方式では、圧電薄膜を利用して指の指紋の圧力差を読みとるようにしている。さらに、人間の電気特性を利用する方式では、感圧シートを用いて皮膚の接触によって生じた電気特性の変化を電気信号の分布に置き換えて指紋を検出するようにしている。この方式では、抵抗変化量もしくは容量変化量によって、指紋のパターンを認識するようにしている。
【0005】しかしながら、以上の従来技術には種々の問題点があり、例えば光を用いた方式では、光源や光学系および光学イメージの処理手段が必要になるなど、小型化,汎用化が難しく、用途が限定されるという問題がある。また、感圧シート等を用いて指の凹凸を感知する方式では、感圧シートなど材料が特殊であることや、それらの加工性の難しさから実用化が困難であり、また信頼性に乏しいという問題もある。そこで、このような問題を解決すべく、LSI製造技術を用いた容量型の指紋センサが新たに提案された。これは、LSIチップ上に2次元に配列された小さなセンサ素子の静電容量を検出し、皮膚の凹凸パターンを検出する方式である。
【0006】これは、変形可能な上部電極と半導体基板上に配置された下部電極により構成される容量センサ素子が、LSIチップの上に2次元に配列された構造となっている。そして、触れた指の皮膚の凹凸に対応して上部電極が変形するように構成されている。ここで、上部電極の変形により、上部電極と下部電極との間の容量値が変化するため、この容量差を検出することで指紋の凹凸を感知することができる。
【0007】このような、従来よりある容量型の表面形状認識用センサについて、より詳細に説明すると、図5(a)の断面図に示すように、半導体基板501上に絶縁層502を介し、格子状に導電性材料からなる支持部材503が形成されている。そして、その支持部材503で囲われた各格子の中央部の絶縁層502上には、下部電極504が支持部材503とは離間して形成されている。また、支持部材503上には、上部電極505が形成されている。この上部電極505は、下部電極504とは所定距離だけ離れて形成され、下部電極504と上部電極505とで容量Cfが形成されている。
【0008】そして、この表面形状認識用センサは、突起506aを有した保護膜506が上部電極505上に形成されている。また、下部電極504上の領域に配置されるように、その突起506aは形成されている。そして、上部電極505と下部電極504との間の容量が、センサ回路510により検出される。その容量とセンサ回路510との等価回路は、図5(b)に示すようになる。また、図6に示すように、支持部材503は格子状に形成され、そのマスの中央部それぞれに、下部電極504が形成されてマトリクス状に配置されている。すなわち、この表面形状認識用センサは、下部電極504とその上部にある上部電極505とからなるセンサ素子複数から構成されているものである。
【0009】そして、たとえば、1個の下部電極504に対して1個のセンサ回路510が備えられている。また、複数個の下部電極504に対して、1個のセンサ回路510が備えられている場合もある。なお、センサ回路510は、半導体基板501上の絶縁層502下に集積されて形成されていてもよく、また、半導体基板501の、センサ素子が配置されていない領域に形成されていてもよい。また、そのセンサ回路510は、半導体基板501以外に用意するようにしてもよい。
【0010】以下、それら複数のセンサ素子からなる表面形状認識用センサの動作について説明する。突起506aが対象物に触れることで保護膜506が変形すると、同時に上部電極505も変形する。この結果、下部電極504と上部電極505との距離が変化し、その間の容量Cfも変化する。そして、その容量変化をセンサ回路510が電気信号として検出し、その値がしきい値以上となったらその突起506a部分が変形されたものと検知でき、結果として、対象物の凹凸を検出することができる。
【0011】ここで、指先の指紋は皮膚の凹凸により形成されているので、保護膜506に指を接触させた場合、指紋を形成している突部に突起506aが触れた場合と、凹部に突起506aが触れた場合とで、突起506aの部分の変形量が異なることになる。そして、この変形量の違いは下部電極504と上部電極505との間の距離の違いとなり、結果として、容量の違いとして検出されることになる。したがって、複数配列されたセンサ素子それぞれの異なる容量の分布を、しきい値を境に判別して検出していけば、それは指紋の突部の形状となる。すなわち、この容量型の表面形状認識用センサにより、皮膚の微細な凹凸状態を検知することができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の表面形状認識用センサでは、製造バラツキのために、センサ素子の初期容量値が設計値と異なって製造される場合がある。特に、図5に示した支持部材503の高さが設計値と異なり易く、下部電極504と上部電極505との無変形時の間隔が、設計値より大きく異なってしまうときがある。このように、無変形時の下部電極504と上部電極505との間隔が設計値と異なると、対象物に接触することで上部電極505が変形しても、その容量変化が設定されているしきい値以上とならず、センサ回路510の出力では、上部電極505が変形していないものと検知されてしまう場合がある。これでは、対象物の形状を誤認識してしまう。
【0013】そして、多数のセンサ素子により表面形状を認識するため、センサ素子のばらつきも小さく抑える必要がある。特に指紋のように微小な凹凸を検出しようとする場合、上部電極505の変形量差が小さいため、検出できる容量差も小さい。従って、各センサ素子間のバラツキが大きいと、上部電極505の変形量が同一であっても、あるセンサ素子では容量変化がしきい値を越えず、あるセンサ素子では容量変化がしきい値を越えるという場合が発生してしまう。これでは、指紋パターンの検出精度を低下させてしまい、場合によっては、検出できなくなる。
【0014】この発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、指紋のような微小な凹凸を精度よく検出できるようにすることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】この発明の表面形状認識用センサは、基板上の同一平面上にそれぞれが絶縁分離されて配置された複数の下部電極と、その下部電極上に離間して対向配置された上部電極と、基板上に下部電極毎に下部電極とは離間して配置されて上部電極を支持する支持部材と、下部電極と支持部材との間に下部電極毎に基板上に下部電極および支持部材とは離間して下部電極毎に配置された参照電極と、上部電極と下部電極との間の第1の容量と上部電極と参照電極との間の第2の容量との差を検出するセンサ回路とを備え、上部電極は、下部電極それぞれの上で支持部材を支点に、下部電極方向に変形可能に形成されている状態とした。すなわち、上部電極が変形したとき、第1の容量は第2の容量に比較して大きく変化する。また、下部電極と参照電極は、上部電極に対向する面の面積が同一に形成されているようにした。この結果、上部電極の変形による第1の容量の変化および第2の容量の変化の初期値が同一になる。また、参照電極は、下部電極周囲を囲うように形成されているようにした。この結果、下部電極と参照電極の面積を同一にしやすい。また、下部電極は、マトリクス状に複数配置されているようにしたので、平面的に形状認識がされる。また、支持部材は格子状に形成されてそのマスの中央部に下部電極が配置されているようにしたので、上部電極の支持が安定する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図を参照して説明する。図1は、この発明の実施の形態における表面形状認識用センサの一部構成を示す断面図、および等価回路である。この実施の形態における表面形状認識用センサは、図1に示すように、半導体基板101上に絶縁層102を介し、格子状に導電性材料からなる支持部材103が形成されている。そして、その支持部材103で囲われた各格子(マス)の中央部の絶縁層102上には、下部電極104が支持部材103とは離間して形成されている。また、支持部材103上には、上部電極105が形成されている。
【0017】この上部電極105は、下部電極104とは所定距離だけ離れて形成され、下部電極104と上部電極105とで容量Cfが形成されている。 そして、この表面形状認識用センサは、突起106aを有した保護膜106が上部電極105上に形成されている。また、下部電極104上の領域に配置されるように、その突起106aは形成されている。そして、この実施の形態では、下部電極104の周囲を囲うように、下部電極104および支持部材103とは離間して、絶縁層102上に参照電極104aを配置するようにした。
【0018】また、この実施の形態では、上部電極105および下部電極104の間の容量Cfと、上部電極105および参照電極104aの間の容量Crとの差を、センサ回路110により検出するようにした。その容量とセンサ回路110との等価回路は、図1(b)に示すようになる。また、図2に示すように、支持部材103は格子状に形成され、そのマスの中央部それぞれに、下部電極104および参照電極104aが形成されてマトリクス状に配置されている。すなわち、この表面形状認識用センサは、下部電極104および参照電極104aと、その上部にある上部電極105とからなるセンサ素子複数から構成されているものである。
【0019】そして、たとえば、1個の下部電極104および参照電極104aに対して1個のセンサ回路110が備えられている。また、複数個の下部電極104および参照電極104aに対して、1個のセンサ回路110が備えられている場合もある。なお、センサ回路110は、半導体基板101上の絶縁層102下に集積されて形成されていてもよく、また、半導体基板101の、センサ素子が配置されていない領域に形成されていてもよい。また、そのセンサ回路を半導体基板101以外に用意するようにしてもよい。なお、図1には示していないが、各電極とセンサ回路との接続などのための配線構造が、半導体基板101上に配置されている。
【0020】以下、この実施の形態における複数のセンサ素子からなる表面形状認識用センサの動作について説明する。図3に示すように、突起106aが対象物に触れることで保護膜106が変形すると、同時に上部電極105も変形する。この結果、下部電極104と上部電極105との距離が変化し、その間の容量Cfが変化する。同時に、参照電極104aと上部電極105との距離が変化し、その間の容量Crも変化する。このとき、図3から明らかなように、支持部材103近傍では、上部電極105の変化量は小さい。すなわち、下部電極104と上部電極105との距離の変化に比較して、参照電極104aと上部電極105との距離の変化は小さい。
【0021】従って、突起106aが対象物に触れたときの突起部106a下部の上部電極105の部分(上部電極中央部)の下部電極104方向への移動量に対し、容量Cfと容量Crは、それぞれ図4に示すように変化する。そして、参照電極104aの表面積を下部電極104の表面積と同一にしておけば、図4に示すように、容量Cfと容量Crの初期値を等しくすることができる。ここで、図4に示した容量Cfの変化と容量Crの変化との間の関係は、支持部材103の高さ(厚さ)に関わらない。従って、センサ回路110により、それらの差を検出するようにすれば、支持部材103の高さが変化しても、その検出結果は一定となる。言い換えると、容量Crを基準として容量Cfの大小を検出するようにすれば、その絶対値の変化は、センサ回路110の検出結果に影響を与えない。
【0022】以上のことにより、その容量変化の差をセンサ回路110が電気信号として検出し、その値がしきい値以上となったらその突起106a部分が変形されたものと検知でき、結果として、対象物の凹凸を検出することができる。ここで、指先の指紋は皮膚の凹凸により形成されているので、保護膜106に指を接触させた場合、指紋を形成している突部に突起106aが触れた場合と、凹部に突起106aが触れた場合とで、突起106aの部分の変形量が異なることになる。そして、この変形量の違いは、上述した容量変化の差の違いとして検出されることになる。
【0023】したがって、複数配列されたセンサ素子それぞれの異なる検出結果の分布を、たとえば、しきい値を境に判別して検出していけば、それは指紋の突部の形状を示すものとなる。すなわち、この実施の形態の容量型の表面形状認識用センサにより、皮膚の微細な凹凸状態を検知することができる。そして、この実施の形態の表面形状認識用センサによれば、支持部材の高さに製造バラツキがあっても、センサ回路110の検出結果にはそれが影響しないので、対象物の形状を誤認識してしまうことがない。また、複数のセンサ素子それぞれの検出結果に、バラツキがほとんどない状態とできるので、たとえば指紋検出の場合、指紋パターンの検出精度を向上させることができる。
【0024】ところで、上記実施の形態では、1つのセンサ素子において、参照電極を下部電極の周囲を囲うようなリング状の一体構造としたが、これに限るものではない。1つのセンサ素子において、下部電極の周囲に複数分割された状態の参照電極を配置するようにしても、上述の実施の形態と同様である。また、1つのセンサ素子において、支持部材と下部電極の間の一箇所に、たとえば矩形状の参照電極を1つ配置するようにしても、上述の実施の形態と同様である。この場合、下部電極毎に参照電極を複数備え、上部電極と複数の参照電極との間の複数容量と上部電極と下部電極の容量とを比較するようにしてもよい。また、上記実施の形態では、上部電極上に突起を備えた保護膜を配置するようにしたが、これに限るものではない。上部電極上に平坦な保護膜を配置するようにしてもよい。また、上部電極に、耐腐食性を有する金属材料を用いるようにすれば、上部電極上に保護膜を配置しなくてもよい。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、この発明では、基板上の同一平面上にそれぞれが絶縁分離されて配置された複数の下部電極と、その下部電極上に離間して対向配置された上部電極と、基板上に下部電極毎に下部電極とは離間して配置されて上部電極を支持する支持部材と、下部電極と支持部材との間に下部電極毎に基板上に下部電極および支持部材とは離間して配置された参照電極と、上部電極と下部電極との間の第1の容量と上部電極と参照電極との間の第2の容量との差を検出するセンサ回路とを備え、上部電極は、下部電極それぞれの上で支持部材を支点に、下部電極方向に変形可能に形成されている状態とした。
【0026】すなわち、上部電極が変形したとき、第1の容量は第2の容量に比較して大きく変化する。この結果、この発明によれば、センサ回路によりそれらの差を検出しているので、支持部材の高さが変化してもその検出結果は一定となり、複数の下部電極によるそれぞれの検出結果が、再現性よくほとんどバラツキのない状態で得られるようになる。この結果、この発明によれば、指紋のような微小な凹凸を、より精度よく検出できるようになる。また、上記のことに加え、下部電極と参照電極は上部電極に対向する面の面積が同一に形成されているようにした。この結果、上部電極の変形による下部電極と上部電極との間の容量変化および参照電極と上部電極との間の容量変化の初期値が同一になり、第1の容量と第2の容量との差を、より容易に検出できるようになる。
【出願人】 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【出願日】 平成10年7月2日(1998.7.2)
【代理人】 【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
【公開番号】 特開2000−18908(P2000−18908A)
【公開日】 平成12年1月21日(2000.1.21)
【出願番号】 特願平10−187227