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【発明の名称】 ワークの遠心乾燥装置
【発明者】 【氏名】蝦名 誠

【氏名】岩井 誠二

【氏名】辻本 健一

【要約】 【課題】ワ−クの乾燥をより短時間に、しかもより完全に行うことができる遠心乾燥装置を提供する。

【解決手段】回転する公転ベース21の回転中心より偏位した位置に、ワークBを着脱自在に装着するワーク保持台25を回転可能に支承し、公転ベース21を回転駆動する公転駆動源(公転用モータ)11と、ワーク保持台25を回転駆動する自転駆動源(自転用モータ)13を設けることにより、公転ベース21と共に毎分300〜800回転で公転するワーク保持台25を、毎分1〜10回転で自転させる。なお、ワークBに熱風を送風する送風装置あるいはワークBに赤外線を照射する赤外線照射装置を設けるとよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フレームと、前記フレームに回転可能に支承される公転ベースと、前記公転ベースを回転させる公転駆動源と、前記公転ベースの回転中心より偏位した位置に回転可能に支承されると共に、ワークが着脱自在に装着されるワーク保持台と、公転中の前記ワーク保持台を自転させる自転駆動源と、前記自転駆動源からの回転力を伝達する自転力伝達機構とを設けたことを特徴とするワークの遠心乾燥装置。
【請求項2】 前記公転ベースの公転回転数が、毎分300乃至800回転の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載されたワークの遠心乾燥装置。
【請求項3】 前記ワーク保持台の自転回転数が、毎分1乃至10回転の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたワークの遠心乾燥装置。
【請求項4】 前記ワーク保持台に装着されたワークに対して、100℃以下の熱風を送風する送風装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたワークの遠心乾燥装置。
【請求項5】 前記ワーク保持台に装着されたワークに、赤外線を照射する赤外線照射装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたワークの遠心乾燥装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばシリコンウエハを収納して運搬する容器のように、湿気を充分に除去しておく必要のあるワークを乾燥させるのに適した遠心乾燥装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、シリコンウエハを収納、運搬する容器は一度使用した後、それを回収し、洗浄ならびに乾燥した後、再び使用している。この再使用に際して、前記乾燥工程において容器が充分に乾燥されていないと、再使用の容器に挿入されたウエハに水分が付着し、その後のウエハ処理に支障を来すことがある。そのため、乾燥工程において水分を確実に除去する必要があり、従来の乾燥工程では、前記容器をオーブン内に収容し、65℃の熱風で3.5時間乾燥した後に1時間冷却している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記したようにオーブンを使用し、65℃の熱風で3. 5時間乾燥した後に1時間冷却する方法では、前記乾燥工程に長時間がかかり、容器の再使用にかかる作業を能率的に行うことができないという課題があった。
【0004】この課題を解決する一つの手段として、マイクロ波を用いることによって、乾燥時間を短縮化させることが考えられる。しかしながら、本願発明者らがマイクロ波による乾燥試験を行ったところ、容器の表面に付着する水滴が小さく、充分にマイクロ波を吸収しないため、水滴内熱量が放散してしまい、温度が上昇せず、乾燥時間を短縮できないことが判明した。
【0005】また、前記課題を解決する他の手段として、遠心乾燥方法を用いることによって、乾燥時間を短縮化することが考えられる。本願発明者らは、遠心乾燥方法を用いた乾燥方法についても、その適用可能性について遠心脱水試験装置を作成して試験した。
【0006】試験に用いた容器は従来から用いられている容器であって、その容器Bには、図2の縦断面図に示すように、円形の底壁B1 の周縁部より上方に周設される周壁B2 が設けられると共に上端部に開口B4 が形成され、また周壁B2 の上端部には、周壁B2 の外側に向けて折返し形状の上部凹部B3 が設けられている。また、この試験に用いられた遠心脱水試験装置には、図3に示すように、箱形のケイシング(図示しない)の内部に、脱水槽Cと、回転数がインバータ制御されるモータ(図示しない)が設けられ、モータにより脱水槽Cを高速回転させるように構成されている。なお、図3に示すように前記脱水槽Cは多孔性の円筒状壁C1 の下端に底壁C2 が設けられ、底壁C2 の外面の中心に設けられた鉛直の軸C3 を中心として回転するように構成されている。
【0007】前記した遠心脱水試験装置を用いて、試験、検討を行った結果、回転数が大きくなればなるほど脱水効果が良くなること判明した。また、脱水時間は5分程度が最適であり、それ以上脱水時間を長くしても脱水効果は変わらいことが判明した。
【0008】しかしながら、このような遠心乾燥装置を用いた場合においても、前記容器の上部凹部B3 には水分が残存し、完全な乾燥を行うことができなかった。本願発明者らは、更に遠心乾燥装置について鋭意研究した結果、前記した容器のようなワ−クの乾燥をより短時間、より完全に行うことができる遠心乾燥装置を知見して、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、容器のようなワ−クの乾燥をより短時間に、しかもより完全に行うことができる遠心乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためになされた本発明にかかるワークの遠心乾燥装置は、フレームと、前記フレームに回転可能に支承される公転ベースと、前記公転ベースを回転させる公転駆動源と、前記公転ベースの回転中心より偏位した位置に回転可能に支承されると共に、ワークが着脱自在に装着されるワーク保持台と、公転中の前記ワーク保持台を自転させる自転駆動源と、前記自転駆動源からの回転力を伝達する自転力伝達機構とを設けたことを特徴としている。
【0011】本発明はこのように構成されているため、表面に水分の付着したワークをワーク保持台を装着し、公転駆動源および自転駆動源を始動すると、フレームに支承されている公転ベースが公転し、ワークに付着している小さな水分は公転の遠心力を受けてワーク表面に沿って移動しながら大粒となり、質量の増加により外方に飛散する。また、最初から大粒の水分は質量が大きいので直接に外方に飛散する。更に、ワークの形状(例えば、前記した上部凹部B3 )によっては、水分が遠心力を受ける方向に飛散を阻止する障壁となるが、ワークはワーク保持台の自転により向きを変えるので、障壁が水分の飛散を妨げない方向に移動し、(上部凹部B3 内の)水分は飛散する。
【0012】ここで、前記公転ベースの公転回転数が、毎分300乃至800回転の範囲にあることが望ましい。このように転ベースの公転回転数が、毎分300乃至800回転の範囲にある場合には、遠心力を受けるワークが変形することはない。公転ベースの公転回転数は、望ましくは毎分600回転程度が良い。また、上記範囲の回転数で公転ベースが回転することにより、ワークに付着している水分がワークの表面に沿って滑り易くなり、水分の大きさが大きくなって飛散し易くなる。
【0013】また、前記ワーク保持台の自転回転数が、毎分1乃至10回転であることが望ましい。このように、ワーク保持台が上記範囲の回転数で自転すると、ワークの向きが徐々に変わるので、遠心力の方向に対するワークの表面の角度が変化し、水分が最も滑り易い角度となったときに水分の大きさが成長して飛散し易くなる。また、ワークに水分の飛散を妨げる障壁があっても、障壁が遠心力を妨げない位置に移動するため、支障なく水分を取り除くことができる。
【0014】更に、前記ワーク保持台に装着されたワークに対して、100℃以下の熱風を送風する送風装置が設けられていることが望ましい。前記熱風の温度はワークの変形を考慮して、望ましくは約60乃至70℃であるのが良い。ワーク表面の水分が遠心力を受けて大部分飛散するものの、完全乾燥に至らない場合であっても、ワークに熱風の送風する送風装置を併用することにより、ワークを効率よく完全乾燥することができる。
【0015】また、前記ワーク保持台に装着されたワークに、赤外線を照射する赤外線照射装置が設けられていることが望ましい。このように、熱風を送風する送風装置を併用する代わりに、赤外線を照射する赤外線照射装置を併用することもできる。赤外線照射装置は、熱風の送風する送風装置と同様に、ワークを効率よく完全乾燥することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態の具体例を図面を参照しながら説明する。図1はワークの遠心乾燥装置Aの縦断面図であり、遠心乾燥装置Aの下部ケイシングを構成するフレーム1は、床面に設置される基台2と、前記基台2の上面に設けられた周壁3と、前記周壁3の上端に設けられた、中央に貫通孔を有する上壁4と、前記上壁4の上面に設けられた筒形状の軸受箱5と、前記周壁3の内側に設けられた、中央に貫通孔を有する隔壁7と、前記隔壁7の上面に設けられた、筒形状の公転用軸受箱8と、隔壁7の下方の周壁3の内周面に設けられたモータ台10とから構成されている。また、軸受箱5の内周面の上下2ヵ所にベアリング6が嵌着され、公転用軸受箱8の内周面の上下2ヵ所にベアリング9が嵌着されている。更に、前記モータ台10には公転駆動源である公転用モータ11が固着され、前記周壁3の外周面に固着されたモータ支持台12に、自転駆動源である自転用モータ13が固着されている。
【0017】また、公転用軸受箱8のベアリング9に支承され、中空軸14の内側を貫通する回転軸19の下端は、カプリング20を介して公転用モータ11の出力軸11aに直結され、回転軸19の上端は、円板状の公転ベース21の下面中央部に固定されている。従って、前記公転用モータ11が回転すると、公転ベース21が回転軸19を中心として回転する。
【0018】前記公転ベース21には、回転中心から偏位した位置に自転用軸受箱22が設けられ、自転用軸受箱22の内周面の上下2ヵ所にベアリング23が嵌着されている。また、前記ベアリング23に支承される自転軸24の上端面にはワーク保持台25が固着され、自転軸24の下端部に受動プーリ26が固着されている。このワーク保持台25の上面には、開口B4 を横に向けた容器(ワーク)Bが嵌まる底の浅いワーク載置用凹部25aとワークBを着脱自在にクランプするクランプ機構(図示しない)が設けられている。
【0019】また、前記軸受箱5のベアリング6に支承された中空軸14の下端部に第1プーリ15が固着され、前記中空軸14の上端部に第2プーリ16が固着されている。前記自転用モータ13の出力軸13aに駆動プーリ17が固着され、駆動プーリ17と中空軸14の第1プーリ15にベルト18が巻回されている。また、自転軸24の下端部の受動プーリ26と中空軸14の上端の第2プーリ16にベルト27が巻回されている。以上により、自転用モータ13の回転を、駆動プーリ17からベルト18を介して第1プリーリ15に伝達し、更に、第1プリーリ15と同軸の第2プリーリ16からベルト27を介して受動プーリ26に伝達してワーク保持台25を回転する自転力伝達機構が構成される。
【0020】更に、前記フレーム1には、ワークの遠心乾燥装置Aの上半部分を被覆するカバーケース28が取り付けられている。前記カバーケース28は薄板より箱形状に加工、形成されると共に、側壁28aの内面には公転ベース21の周縁部をカバーするリング状の水切り板29が設けられ、カバーケース28の上壁28bのほぼ中央に、送風装置(図示しない)から送られる熱風を送り込むための開口30が設けられている。前記開口30に熱風を送り込む代わりに、赤外線照射装置(図示しない)からの赤外線を照射してもよい。
【0021】また、下壁28cには、側壁28aに近い位置に、ワークBから飛散する水滴を排出する排水孔31が設けられている。また、カバーケース28の側壁28aには、ワークBをワーク保持台25に装着および取り外し作業を行うための作業用窓(図示しない)と、作業用窓を開閉する扉(図示しない)が設けられている。
【0022】なお、公転ベース21の公転回転数は、効率よく遠心脱水するために毎分300〜800回転の範囲に設定される。前記公転回転数は、遠心力を受けるワークBが変形しないように保護するために毎分600回転程度にすることが望ましい。また、ワーク保持台25の自転回転数は、ワークBは徐々に向きを変えればよいので、毎分1〜10回転程度とするのが好ましい。
【0023】以上のように構成されたワークの遠心乾燥装置AによりワークBの乾燥作業を説明する。開口B4 を横向きにしたワークBをワーク保持台25に装着してクランプし、公転用モータ11および自転用モータ13を始動する。公転用モータ11の回転により公転ベース21が公転すると共に、自転用モータ13の回転は上記した自転力伝達機構によりワーク保持台25に伝達される。その結果、ワーク保持台25上のワークBは、公転の遠心力を受けて表面に付着した水滴を飛散させながら、ゆっくりと自転して向きを変更する。
【0024】ワークBの開口B4 が公転の遠心力の方向に向いているときには、上部凹部B3 内の水滴が飛散しないが、ワーク保持台25の自転により開口B4 が遠心力の方向の反対側に傾いたときに、上部凹部B3 内の水滴は遠心力を受ける方向に飛散する。また、ワークBの表面が、遠心力を受けた水滴を滑り難くする角度のときがあっても、ワーク保持台25の自転により、水滴を滑り易くする角度になるときがあるので、ワークBの表面に付着した水滴は、小さな径の一部の水滴を残して遠心力を受けて飛散する。
【0025】飛散した水滴はカバーケース28の側壁28aに衝突し、排水孔31に集められて下方に排出される。そして、更に、開口30より100℃以下でかつ室温より高温である熱風(65℃)を送り込むことにより、飛散しなかった小径の水滴が蒸発するので、ワークBが効率よく完全乾燥される。
【0026】上記実施形態では、公転ベース21の回転中心より偏位した位置に1個のワーク保持台25を設けた場合を示したが、複数個のワーク保持台25を設けてもよい。また、公転ベース21を水平面内で回転した場合について説明したが、水平面に対して傾斜角を有する面内で回転してもよく、あるいは垂直面内で回転するように構成しても良い。
【0027】
【発明の効果】本発明は以上述べたように構成されているので、下記に示すような効果を奏する。
(1)請求項1に記載された本発明のワークの遠心乾燥装置は、保持台に着脱自在に装着されたワークが公転ベースと共に回転するので、ワークの表面に付着した水滴がワークの表面に沿って移動しながら大粒に成長して、あるいは直接に、遠心力の作用する方向に飛散させることができる。また、ワークの形状により水滴の飛散を妨げる障壁があっても、ワークが自転して向きを変えるので、障壁が水滴の飛散を妨げない位置に移動したときに、水滴を飛散させることができる。更に、また、ワークの自転により、ワーク表面が水滴を滑り易くする角度となるときがあり、水滴を大粒にして飛散し易くすることができる。その結果、ワ−クの乾燥をより短時間に、しかもより完全に行うことができる。
【0028】(2)請求項2に記載された本発明のワークの遠心乾燥装置は、遠心乾燥が高まるように高速で公転するので遠心乾燥の効果が大きく、公転の回転数を、ワークが変形しない範囲にしたので、ワークは変形を受けることなく何度も再使用できる。
(3)請求項3に記載された本発明のワークの遠心乾燥装置は、ワークを低速で自転するようにしたので、ワークに水分の飛散を妨げる障壁があっても、障壁が水滴の飛散を妨げない位置に移動したときに水分を飛散させることができる。また、ワークの自転により、ワークの表面は水滴を滑り易くする角度となるときがあり、水滴が滑る過程で他の水滴と合体して大径化し、飛散し易くなる効果がある。
(4)請求項4または請求項5に記載された本発明のワークの遠心乾燥装置は、熱風の送風または赤外線照射の加熱により、ワークに残留する小さな水滴を蒸発させて完全乾燥させることができる。
【出願人】 【識別番号】000221122
【氏名又は名称】東芝セラミックス株式会社
【出願日】 平成11年5月24日(1999.5.24)
【代理人】 【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
【公開番号】 特開2000−337768(P2000−337768A)
【公開日】 平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願番号】 特願平11−142752