| 【発明の名称】 |
ポリビニルアルコールを利用した冷熱輸送方法及び装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】稲田 孝明
【氏名】矢部 彰
【氏名】スベイン グランダム
【氏名】呂 樹申
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| 【要約】 |
【課題】再結晶が抑制された氷スラリーによる冷熱輸送などの低コスト化を図ると共に、安全性、信頼性の向上した冷熱輸送、貯蔵を行なう。
【解決手段】ポリビニルアルコールを添加した液体を冷却して氷スラリーを生成し、氷スラリーを配管およびポンプにより輸送する。ポリビニルアルコールは、毒性、腐食性及び水への可溶性が良いので、安全性、信頼性の高い冷熱の輸送、貯蔵方法及び装置が得られるものとなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリビニルアルコールを添加した液体を冷却して氷スラリーを生成し、該氷スラリーを配管およびポンプにより輸送することを特徴とするポリビニルアルコールを利用した冷熱輸送方法。 【請求項2】 ポリビニルアルコールを添加した液体に氷核細菌を添加したことを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコールを利用した冷熱輸送方法。 【請求項3】 ポリビニルアルコールを添加した液体を冷却して氷スラリーを生成し、該氷スラリーを溜めることにより冷熱を保存することを特徴とするポリビニルアルコールを利用した冷熱保存方法。 【請求項4】ポリビニルアルコールを添加した液体に氷核細菌を添加したことを特徴とするポリビニルアルコールを利用した請求項3に記載の冷熱保存方法。 【請求項5】 ポリビニルアルコールを液体に添加し、該ポリビニルアルコールを添加した液体を冷却して氷スラリーを生成することを特徴とするポリビニルアルコールを利用した氷スラリー生成方法。 【請求項6】 ポリビニルアルコールを添加した液体に氷核細菌を添加したことを特徴とするポリビニルアルコールを利用した請求項5に記載の氷スラリー生成方法。 【請求項7】 ポリビニルアルコールを添加した液体と、該ポリビニルアルコールを添加した液体を輸送する配管と、該配管に設置されたポンプと、ポリビニルアルコールを添加した液体を冷却して氷スラリーを生成する冷熱付与手段とを備えたことを特徴とするポリビニルアルコールを利用した冷熱輸送方法。 【請求項8】 ポリビニルアルコールを添加した液体に氷核細菌を添加したことを特徴とするポリビニルアルコールを使用した請求項7に記載のポリビニルアルコールを利用した冷熱輸送装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、スラリー状の氷を配管を通して送ることにより、冷熱を輸送、貯蔵などする方法及び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】スラリー状の氷を用いる冷熱輸送、貯蔵方法として、従来、アンチフリーズ蛋白質を添加した液体を冷却して氷スラリーを生成し、この氷スラリーを貯蔵したり、あるいは配管およびポンプにより輸送することが知られている(以下、従来例と称する)。 【0003】単に液体を冷却する方法では、液体の顕熱のみを利用するので、輸送、貯蔵する冷熱量が比較的小さい。又、単に固体の氷を用いる冷熱輸送、貯蔵方法では、配管やポンプによる輸送が困難である。 【0004】しかるに、上記従来例にあっては、液体から氷を生成し、液体から氷へ相変化するときの潜熱分を蓄えるので、輸送する冷熱量を大きく確保でき、採冷熱時の応答性も良く、氷スラリーの良好な流動性から、配管及びポンプによる冷熱の輸送、貯蔵が可能となる。 【0005】ところが、氷が容易に再結晶(二次成長)してしまうようであると、氷スラリーを融解させて冷熱を採取するときの応答性が低下し、配管も閉鎖しやすくなり、長時間蓄熱や長距離輸送に適さない。これに対して、前記従来例にあっては、アンチフリーズ蛋白質を液体に添加することにより、氷の再結晶を抑制できるので、長時間蓄熱や長距離輸送にも適するものとなる。アンチフリーズ蛋白質は、北極や南極の近くに棲む魚類から採れる蛋白質である。北極や南極の近くに棲む魚類は、このアンチフリーズ蛋白質の作用により、血液が凍ることがない。 【0006】しかしながら、このアンチフリーズ蛋白質は、非常に高価なものである。そのため、再結晶が抑制された氷スラリーによる冷熱輸送にかかる費用が高いものについている。 【0007】一方、アンチフリーズ蛋白質に替えて、シランカップリング剤、アルカンチオール、脂肪酸などの人工高分子を用いるようにした冷熱輸送方法及び装置も本発明者らによって既に提案されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】ところが、前記既提案のシランカップリング剤、アルカンチオール、脂肪酸などの人工高分子を用いた冷熱輸送方法及び装置においても、なお価格、毒性、腐食性或いは水への可溶性の面で難点や不十分な点があり、実用化の点で十分なものということができなかった。即ち、シランカップリングは、未だ価格面で十分低コストとは言えない上、毒性や水への可溶性においても未だ不十分である。又、脂肪酸は、腐食性において難点が有り、毒性及び水への可溶性において不十分なものである。更に、アルカンチオールは、水への可溶性で難点があり、毒性や腐食性においても疑問点がある。そこで、本発明の目的は、再結晶が抑制された氷スラリーによる冷熱輸送、貯蔵などの一層の低コスト化を図ると共に、毒性、腐食性及び水への可溶性の良い材料を得ることにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明では、従来公知のアンチフリーズ蛋白質やシランカップリング剤、アルカンチオール、脂肪酸などの人工高分子に代えてポリビニルアルコールを用いるようにしたものである。 【0010】ポリビニルアルコールは、氷スラリーの再結晶抑制効果を有しており、アンチフリーズ蛋白質の価格に比べて約1/20000と、大幅に安価である。又、ポリビニルアルコールは、毒性、腐食性及び水への可溶性に優れた材料である。そのため、再結晶が抑制された氷スラリーによる冷熱輸送、貯蔵の低コスト化が得られ、安全性や高い信頼性が得られるものである。 【0011】ポリビニルアルコールは、その一般式が図1に示すように、(CH2C(OH)H)nで表される。−OH基は親水性の極性基(以下、親水基と称する)であり、−CH−は疎水基である。ポリビニルアルコール分子の親水基−OHは、図1に示すように、氷の表面と水素結合する。一方、−CH2−基は疎水性であるので、氷の二次的な成長が抑制され、氷同士の結合が抑制される。 【0012】このように、ポリビニルアルコールを使用すると、氷の再結晶が抑制されるものとなる。これによって、再結晶化の抑制された氷スラリーが得られ、氷スラリーの長時間貯蔵や、管路を通した長距離輸送が可能となるものである。なお、氷をつくる水分子H2Oは、H原子の端が正に帯電し、O原子の反対側が負に帯電する。この水分子のH原子が、上述のように、ポリビニルアルコール分子の−OH基と水素結合する。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を図2および図3を参照して説明する。 (第一実施形態)図2に、本発明の第一実施形態に係る冷熱輸送装置が示されている。この冷熱輸送装置は、配管1と、この配管1に設置されたポンプ2と、冷熱付与手段3と、冷熱放出手段4とを備えている。ここで、配管1は、ポリビニルアルコールを添加した例えば水のような液体(以下、ポリビニルアルコール水溶液と称する)が封入されている。前述の様に、ポリビニルアルコールは、水を冷却したとき、氷の再結晶を抑制する作用を有する。冷熱付与手段3は、冷凍機などからなっており、ポリビニルアルコール水溶液を冷却することにより、氷スラリーを生成するために設けられている。ポンプ2は、配管1を通して、ポリビニルアルコール水溶液および氷スラリーを強制循環させるためのものである。 【0014】この冷熱輸送装置にあっては、次のように冷熱を輸送する。配管1の中のポリビニルアルコール水溶液は、ポンプ2の作用により冷熱付与手段3に送られ、この冷熱付与手段3で冷却されて氷スラリーにされる。この氷スラリーは、冷熱放出手段4で冷熱を放出する。冷熱放出手段4で、氷スラリーは冷熱を放出し、ポリビニルアルコール水溶液に戻る。このポリビニルアルコール水溶液は、冷熱付与手段3に戻り、再び氷スラリーとされる。この冷却・放熱プロセスを繰り返しながら、冷熱輸送する。このように、ポリビニルアルコールが水に添加されることにより、氷スラリーの氷の再結晶が抑制されるので、配管1の閉鎖が防止され、もって長期間にわたる冷熱輸送が可能となるものである。 【0015】(第二実施形態)図3に、本発明の第二の実施形態に係る冷熱輸送装置が示されている。この冷熱輸送装置は、タンク11を有する冷熱付与手段3と、ポリビニルアルコール水溶液が封入された配管1と、第一のポンプ2Aと、タンク12を有する冷熱保存手段5と、第二のポンプ2Bと、冷熱放出手段4とを備えている。冷熱保存手段5は、氷スラリーを溜めておき(冷熱保存作用)、必要に応じて冷熱放出手段4に供給するものである。 【0016】この図3の冷熱輸送装置にあっては、次のように冷熱を輸送、保存する。冷熱付与手段3のタンク11内のポリビニルアルコール水溶液は、冷却されて氷スラリーにされる。このタンク11内の氷スラリーは、第一のポンプ2Aにより冷熱保存手段5に送られ、冷熱保存手段5のタンク12内に溜められる。この冷熱保存手段5で冷熱が保存される。冷熱保存手段5内の氷スラリーは、必要に応じて、第二のポンプ2Bにより、冷熱放出手段4に供給され、冷却に使用される。このように、ポリビニルアルコールが水に添加されているので、氷スラリーの氷の再結晶が抑制され、もって氷スラリーが冷熱保存手段5に長期保存される。 【0017】なお、上述した実施形態では液体に対してポリビニルアルコールのみに加えたが、本発明はこれに限らず、ポリビニルアルコールに加えて氷核細菌をも添加すれば、氷の生成が促進される。尚、氷核細菌については、人工雪の製造装置などにおいて既に使用されており、公知のものであるから、その説明を省略する。 【0018】(実験例1) 氷再結晶化の観察の実験本実験の目的は、ポリビニルアルコールが氷の再結晶化に及ぼす影響を調べることにある。本実験では、ポリビニルアルコール水溶液から生成した細かい粒状氷結晶の再結晶化を観察した。ポリビニルアルコールとしては、■平均分子量500、■平均分子量2000、■平均分子量31000〜50000、■平均分子量85000〜146000、■平均分子量124000〜186000の5種類を用いた。また、比較のため、純水、エチレングリコールの水溶液、アンチフリーズ蛋白質の水溶液から生成した氷結晶の再結晶化を併せて観察した。 【0019】実験方法としては、−100°C以下に冷却したガラス板に約2mの高さからポリビニルアルコール水溶液の液滴を落下させ、ガラス板上に細かい粒状結晶からなる氷の薄膜を形成し、この氷薄膜を−7°Cの環境下に14時間放置することによって氷結晶の再結晶化を観察した。 【0020】その観察結果は次の通りとなった。 ■ ポリビニルアルコール(平均分子量500) 再結晶化した数百μm程度の大きさの氷結晶が観察された。 ■ ポリビニルアルコール(平均分子量2000) 再結晶化した数百μm程度の大きさの氷結晶が観察された。 ■ ポリビニルアルコール(平均分子量31000〜50000) 細かい粒状氷結晶は再結晶化せず、50μm以下の大きさの氷結晶が観察された。 ■ ポリビニルアルコール(平均分子量85000〜146000) 細かい粒状氷結晶は再結晶化せず、50μm以下の大きさの氷結晶が観察された。 ■ ポリビニルアルコール(平均分子量124000〜186000) 細かい粒状氷結晶は再結晶化せず、50μm以下の大きさの氷結晶が観察された。 一方、比較例として純水では、再結晶化した数百μm程度の大きさの氷結晶が観察された。エチレングリコール水溶液では、再結晶化した数百μm程度の大きさの氷結晶が観察された。アンチフリーズ蛋白質では、細かい粒状氷結晶は再結晶化せず、50μm以下の大きさの氷結晶が観察された。 【0021】この観察結果により、次のようなことが判った。再結晶化の抑制効果が観察されたポリビニルアルコールは、いずれも平均分子量が31000以上のものである。これに対して、再結晶化の抑制効果が観察されなかったポリビニルアルコールは、平均分子量が2000以下のものである。このことから、氷の再結晶を抑制するには、平均分子量が少なくとも2000以上のポリビニルアルコールを用いる必要があることが判った。 【0022】(実験例2) 氷表面の観察の実験本実験の目的は、ポリビニルアルコールが氷表面に吸着するメカニズムを解明することにある。本実験では、純水の氷表面と、平均分子量89000〜98000のポリビニルアルコールが吸着した氷表面とを、STM(走査トンネル顕微鏡)を用いて観察した。 【0023】その観察結果は、次の通りとなった。純水の氷表面では、全体として平坦状であった。一方、ポリビニルアルコールが吸着した氷表面では、溝が観察された。 【0024】この観察結果と(実験例1)の結果により、次のような考察が得られた。平均分子量が少なくとも2000以上のポリビニルルコールは、分子中の親水基を介して水素結合によって氷表面に吸着し、分子中の疎水基によって氷の結晶成長を抑制していると考えられる。一方、平均分子量が2000以下のポリビニルアルコールは、水素結合によって氷表面に吸着するのに十分な親水基の数を有していないために、氷の結晶成長を抑制することができず、再結晶化の抑制に効果がないと考えられる。 【0025】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、次のような効果を奏する。本発明では、ポリビニルアルコールを添加した液体を冷却して氷スラリーを生成する。したがって、従来のようなアンチフリーズ蛋白質やシランカップリング剤等を添加する場合に比べて、再結晶を抑制された氷スラリーによる冷熱輸送・冷熱保存・氷スラリー生成・冷熱輸送装置を大幅に低コストにて実現できる。 【0026】ポリビニルアルコールを添加した液体に、さらに氷核細菌を添加すると、氷スラリー生成を促進できる。 【0027】ポリビニルアルコールは、毒性、腐食性及び水への可溶性が良いので、安全性、信頼性の高い冷熱の輸送、蓄熱方法及び装置が選られるものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001144 【氏名又は名称】工業技術院長
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| 【出願日】 |
平成11年5月25日(1999.5.25) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2000−337742(P2000−337742A) |
| 【公開日】 |
平成12年12月8日(2000.12.8) |
| 【出願番号】 |
特願平11−145710 |
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