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【発明の名称】 超臨界冷凍サイクル
【発明者】 【氏名】山口 素弘

【氏名】西田 伸

【氏名】黒田 泰孝

【氏名】山中 康司

【要約】 【課題】超臨界冷凍サイクルの再起動時において、サイクルが破綻してしまうことを防止する。

【解決手段】封入冷媒質量Yが、圧縮機100から圧力制御弁300に至る冷媒通路の通路体積Xと、仕様最低外気温度(例えば10℃相当)における冷媒飽和液密度ρとの積より大きくとなるように選定する。これにより、仮に、高圧側全体に冷媒が満たされた状態においても低圧側に冷媒が存在し得るので、圧縮機100の停止後、圧縮機100が再起動したときであっても、低圧側に存在する冷媒が圧縮機100に吸入圧縮されて高圧側に吐出されることとなる。したがって、圧縮機100の稼働とともに高圧側の圧力を圧力制御弁300が開弁する圧力まで確実に上昇させることができるので、サイクル内に冷媒を確実に循環させることができ、サイクルが破綻することを防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷媒を圧縮する圧縮機(100)と、前記圧縮機(100)から吐出した冷媒を冷却するとともに、内部の圧力が冷媒の臨界圧力を超える放熱器(200)と、前記放熱器(200)から流出する冷媒を減圧するとともに、前記放熱器(200)出口側の冷媒温度に基づいて前記放熱器(200)出口側の冷媒圧力を制御する圧力制御弁(300)と、前記圧力制御弁(300)にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器(400)と、前記放熱器(200)から流出する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒を前記圧縮機(100)の吸入側に流出するとともに、余剰冷媒を蓄えるアキュムレータ(500)とを備え、前記圧縮機(100)から前記圧力制御弁(200)に至る冷媒通路の通路体積をXとし、封入冷媒質量をYとしたときに、通路体積と封入冷媒質量とは、Y>0.85X+5で示す関係を有することを特徴とする超臨界冷凍サイクル。
【請求項2】 前記冷媒は、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載の超臨界冷凍サイクル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放熱器内の圧力(高圧側の圧力)が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルに関するもので、二酸化炭素を冷媒とする超臨界冷凍サイクルに適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】例えば二酸化炭素を冷媒とする超臨界冷凍サイクルは、特表平3−50326号公報に記載されるように、高圧側の圧力を制御することにより冷凍能力(ヒートポンプ運転時にあっては暖房能力)を制御するものである。
【0003】また、超臨界冷凍サイクル(以下、サイクルと略す。)において、冷凍能力(ヒートポンプ運転時にあっては暖房能力)を増大させるには、放熱器出口側に設けられたバルブの開度を縮小させて放熱器出口側の冷媒圧力を冷媒の臨界圧力以上にまで上昇させる必要がある。
【0004】この必要性に対して、「次回のサイクル起動時に備えてサイクルの停止時においてはバルブを閉じて高圧側の圧力(放熱器出口側の冷媒圧力)が低下することを防止することができる超臨界冷凍サイクル用の圧力制御弁」を出願人は既に出願をしている(特願平10−168701等)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、サイクル停止時にバルブが閉じられていると言えども、サイクル(圧縮機)の停止とともに高圧側の圧力が次第に低下していくので、起動時においては、図5に示すように、高圧側の圧力が所定圧力に到達するまでの間は、バルブを閉じた状態で圧縮機が稼働することとなる。
【0006】一方、サイクル(圧縮機)が稼働しているときには、高圧側の冷媒は飽和液密度以上の高い密度を有しているため、冷凍サイクル中に存在する冷媒の多くは、高圧側に存在することとなる。
【0007】このため、サイクルの停止後、バルブを閉じたままサイクル(圧縮機)を再起動すると、低圧側に残存する冷媒が少ないため、圧縮機の吐出冷媒量が少なく、高圧側の圧力が上昇し難い。一方、バルブは、高圧側の冷媒圧力が所定圧力以上となるまでは、全閉状態を維持し続けるので、低圧側に冷媒が供給されず、高圧側の圧力が更に上昇し難くなる。
【0008】つまり、サイクル起動時において低圧側に残存する冷媒量が少ないと、冷媒がサイクル内を循環しなくなる可能性が高いので、蒸発器に冷媒が供給されず、サイクルが破綻してしまう。
【0009】本発明は、上記点に鑑み、サイクルの再起動時において、サイクルが破綻してしまうことを防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、請求項1、2に記載の発明では、圧縮機(100)から圧力制御弁(200)に至る冷媒通路の通路体積Xと封入冷媒質量Yとは、Y>0.85X+5で示す関係を有することを特徴とする。
【0011】これにより、仮に、高圧側(圧縮機(100)から圧力制御弁(300)に至る冷媒通路)全体に冷媒が満たされた状態においても、低圧側(圧力制御弁(300)から圧縮機(100)に至る冷媒通路内)に冷媒を残存させることが可能となるので、圧縮機(100)の停止後、圧縮機(100)が再起動したときであっても、低圧側に存在する冷媒が圧縮機(100)に吸入圧縮されて高圧側に吐出され得る。
【0012】したがって、圧縮機(100)の稼働とともに高圧側の圧力を圧力制御弁(300)が開弁する圧力まで確実に上昇させることができるので、サイクル内に冷媒を確実に循環させることができ、サイクルが破綻することを防止できる。
【0013】因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0014】
【発明の実施の形態】本実施形態は、本発明に係る超臨界冷凍サイクルを車両用のCO2 サイクルに適用したものであり、図1はCO2 サイクルの模式図である。
【0015】図1中、100は冷媒(CO2 )を吸入圧縮する圧縮機であり、この圧縮機100は、電磁クラッチ110を介して車両走行用エンジン(図示せず)から駆動力を得て稼動する。200は圧縮機100から吐出した冷媒を大気と熱交換して冷却するとともに、内部の圧力が冷媒の臨界圧力を超える放熱器でり、300は放熱器200から流出する冷媒を減圧するとともに、放熱器200出口側の冷媒温度に基づいて放熱器200出口側の圧力を制御する圧力制御弁である。なお、圧力制御弁300の詳細についていは、後述する。
【0016】400は圧力制御弁300にて減圧された冷媒を蒸発させて空気を冷却する蒸発器であり、500はCO2 サイクル内の余剰冷媒を貯えるとともに、蒸発器400から流出する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒を圧縮機100側に流出させるアキュームレータ(気液分離手段)である。
【0017】なお、600は蒸発器400にて冷却された空気の温度を検出する温度センサ(温度検出手段)であり、電子制御装置(ECU)700は、温度センサ700の検出温度に基づいて電磁クラッチ110のON−OFFを制御している。
【0018】具体的には、検出温度が3℃以下となったときには、電磁クラッチ110をOFFとして圧縮機100を停止させ、検出温度が4℃以上となったときには、電磁クラッチ110をONとして圧縮機100を稼動させる。
【0019】また、本実施形態では、CO2 サイクル内封入する封入冷媒質量Yが、圧縮機100から圧力制御弁300に至る冷媒通路の通路体積Xと、仕様最低外気温度(本実施形態では、約10℃)における冷媒飽和液密度ρとの積より大きくとなるように選定されており、具体的には、圧縮機100から圧力制御弁300に至る冷媒通路の通路体積Xと封入冷媒質量Yとが、下記数式1で示す関係を有するように選定している。
【0020】
【数1】Y>0.85X+5因みに、図2は、数式1をグラフ化したものであり、封入冷媒質量Yは、図2のA領域に属している。
【0021】次に、圧力制御弁300について述べる。
【0022】図3は圧力制御弁300の断面図であり、301、302は冷媒通路を構成するとともに、制御弁本体303を収納するケーシングである。そして、制御弁本体303のうち、304は冷媒温度を感知する感温部であり、この感温部304は、薄膜状のダイヤフラム(圧力応動部材)305、およびダイヤフラム305と共に密閉空間306を形成するハウジング307から構成されている。
【0023】そして、密閉空間306内には、冷媒(CO2 )の温度が0℃での飽和液密度から冷媒の臨界点での飽和液密度に至る範囲の密度(本実施形態では約625kg/m3 )で封入されている。
【0024】なお、307aは感温部304(密閉空間306)に冷媒を封入する封入管であり、この封入管307aは、ケーシング301、302内の冷媒温度に対して密閉空間306内の冷媒温度を時間差無く追従させるべく、銅などの熱伝導率の高い金属製である。
【0025】309は圧力制御弁300(制御弁本体303)の弁口310の開度を調節するニードル弁体(以下、弁体と略す。)であり、弁体309はダイヤフラム305に接合されている。このため、感温部304(密閉空間306内)の温度上昇(内圧上昇)すると、弁体309は、弁口310の開度を縮小させる向きに変位する。
【0026】311は弁口310を閉じる向きの弾性力を弁体309に作用させるとともに、圧力制御弁300の閉弁圧を調節するバネ(弾性体)であり、このバネ311の初期設定荷重は、調整ナット312を回すことにより調節される。そして、初期設定荷重(弁口310を閉じた状態での弾性力)は、冷媒が臨界圧力以下の凝縮域において、所定の過冷却度(本実施形態では約10℃)を有するように設定されており、具体的には、初期設定荷重における、密閉空間306内での圧力換算で約1[MPa]である。
【0027】したがって、圧力制御弁300は、超臨界領域では、625kg/m3 の等密度線に沿うように、放熱器200出口側の冷媒温度に基づいて、放熱器200出口側の冷媒圧力を制御し、凝縮域では、所定の過冷却度を有するように冷媒圧力が制御される(図4の太線ηmax 参照)。
【0028】次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0029】封入冷媒質量Yが、圧縮機100から圧力制御弁300に至る冷媒通路の通路体積Xと、仕様最低外気温度における冷媒飽和液密度ρとの積より大きくとなるように選定されているので、仮に、高圧側(圧縮機100から圧力制御弁300に至る冷媒通路)全体に冷媒が満たされた状態においても、低圧側(圧力制御弁300から圧縮機100に至る冷媒通路内)に冷媒が存在し得る。
【0030】したがって、圧縮機100(CO2 サイクル)の停止後、圧縮機100(CO2 サイクル)が再起動したときであっても、低圧側に存在する冷媒が圧縮機100に吸入圧縮されて高圧側に吐出されるので、圧縮機100の稼働とともに高圧側の圧力を圧力制御弁300が開弁する圧力まで確実に上昇させることができる。延いては、CO2 サイクル内に冷媒を確実に循環させることができるので、CO2 サイクルが破綻することを防止できる。
【0031】ところで、上述の実施形態では、冷媒としてCO2 を用いたが本発明に係る超臨界冷凍サイクルの冷媒はこれに限定されるものではなく、例えば、エチレン、エタン、酸化窒素等でもよい。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成11年5月25日(1999.5.25)
【代理人】 【識別番号】100100022
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外1名)
【公開番号】 特開2000−337721(P2000−337721A)
【公開日】 平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願番号】 特願平11−145324