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【発明の名称】 冷媒循環システム
【発明者】 【氏名】井沢 毅司

【氏名】白藤 好範

【氏名】関屋 慎

【要約】 【課題】圧縮機の効率および摺動部の潤滑を良好にして性能と信頼性の高い冷媒循環システムを提供すること。

【解決手段】冷媒を循環させる冷媒回路と、この冷媒回路に設けられ、密閉容器内に電動要素と、この電動要素により駆動される圧縮要素とを有し、密閉容器内が圧縮要素より吐出された高圧冷媒ガス雰囲気である圧縮機と、冷媒回路内に封入されるHC(ハイドロカーボン)系の冷媒と、圧縮機に封入されるアルキルベンゼン系の冷凍機油とを備えたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷媒を循環させる冷媒回路と、この冷媒回路に設けられ、密閉容器内に電動要素と、この電動要素により駆動される圧縮要素とを有し、前記密閉容器内が前記圧縮要素より吐出された高圧冷媒ガス雰囲気である圧縮機と、前記冷媒回路内に封入されるHC(ハイドロカーボン)系の冷媒と、前記圧縮機に封入されるアルキルベンゼン系の冷凍機油と、を備えたことを特徴とする冷媒循環システム。
【請求項2】 前記冷媒として、R290又はR600aを使用したことを特徴とする請求項1記載の冷媒循環システム。
【請求項3】 前記圧縮機をローリングピストンの回転運動により冷媒の圧縮を行うロータリ圧縮機で構成したことを特徴とする請求項1記載の冷媒循環システム。
【請求項4】 前記圧縮機をスクロール圧縮機で構成したことを特徴とする請求項1記載の冷媒循環システム。
【請求項5】 前記圧縮機の容量制御を行うためのインバータ制御装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の冷媒循環システム。
【請求項6】 前記圧縮機をロータリ圧縮機で構成したことを特徴とする請求項5記載の冷媒循環システム。
【請求項7】 前記圧縮機をスクロール圧縮機で構成したことを特徴とする請求項5記載の冷媒循環システム。
【請求項8】 冷媒回路内に封入する冷媒としてCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を用い、既に生産出荷され、据えつけ稼動している当該冷媒循環システムから、冷媒を排出して、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に交換する(いわゆるレトロフィット)場合において、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に入れ替えるとともに、圧縮機に封入された冷凍機油をアルキルベンゼン系の油に入れ替えることを特徴とする冷媒循環システム。
【請求項9】 冷媒回路内に封入する冷媒としてCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を用い、既に生産出荷され、据えつけ稼動している当該冷媒循環システムから、冷媒を排出して、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に交換する(いわゆるレトロフィット)場合において、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に入れ替えるとともに、圧縮機をアルキルベンゼン系の油を冷凍機油として封入した高圧シェルタイプの圧縮機に交換することを特徴とする冷媒循環システム。
【請求項10】 前記圧縮機をロータリ圧縮機に交換することを特徴とする請求項9記載の冷媒循環システム。
【請求項11】 前記圧縮機をスクロール圧縮機に交換することを特徴とする請求項9記載の冷媒循環システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、冷媒としてHC(ハイドロカーボン)系冷媒を使用する冷媒循環システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、冷媒循環システムの冷媒としてはCFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)といったフロン系冷媒が広く使用されてきたが、オゾン層の保護及び地球温暖化の防止を目的として使用規制、代替化が行われている。そこで環境に与える影響が小さいHC(ハイドロカーボン)系の自然冷媒の検討・実用化が進められている。
【0003】図10,11は従来の冷媒循環システムを示す図で、図10は冷媒としてHC(ハイドロカーボン)系冷媒、圧縮機として低圧シェルタイプの圧縮機を用いた冷媒循環システムを示す図、図11は冷媒としてHC系冷媒、圧縮機として高圧シェルタイプの圧縮機を用いた冷媒循環システムである。図10、11において、1は冷媒ガスを圧縮する圧縮機、5はその密閉容器であり、密閉容器5内には電動要素6と圧縮要素7が収納され、また密閉容器5底部には冷凍機油8が貯留されている。冷凍機油8には、従来から一般的に鉱油を主成分とした油が使用されている。2は高温高圧の過熱冷媒ガスを凝縮する凝縮器、4は減圧装置3で減圧されて膨張した低温低圧の冷媒液を蒸発させる蒸発器、9は冷媒の流れ方向を切り換える四方弁である。
【0004】次に、図10により低圧シェルタイプの圧縮機を使用した冷媒循環システムの動作について説明する。圧縮機1を運転すると、電動要素6の回転力は圧縮要素7に伝達され、冷媒の吸入・圧縮・吐出を行う。低圧シェルタイプの圧縮機では、冷媒は吸入管より圧縮機1の密閉容器5内へ入り、電動要素6を冷却した後圧縮要素7に吸入され、吐出管を通って圧縮機1より流出する。このため、密閉容器5内は吸入された、低圧・低温の冷媒雰囲気となる。
【0005】一方、図11にて高圧シェルタイプの圧縮機を使用した冷媒循環システムの動作について説明する。高圧シェルタイプの圧縮機では、冷媒は吸入管より圧縮機の圧縮要素7へ吸入され、圧縮された冷媒は密閉容器5内に吐出され電動要素6を冷却した後、吐出管を通って圧縮機1より流出する。このため、密閉容器5内は圧縮された、高圧・高温の冷媒雰囲気となる。
【0006】図10,11にて、圧縮機1を出た高圧、高温の過熱冷媒ガスは凝縮器2にて外気と熱交換して潜熱を奪われて高圧、高温の冷媒液となり、減圧装置3によって減圧されて低圧の飽和冷媒液となり、さらに蒸発器4によって外気と熱交換し潜熱を奪われて冷媒ガスとなる。
【0007】ここで、圧縮機1の密閉容器2の底部に貯留された冷凍機油8は圧縮要素7に給油され、圧縮要素7の各摺動部を潤滑した後、密閉容器5の底部に戻される。このように、冷凍機油8は、摺動部の潤滑を良好に保つため十分な潤滑性を有することが必要となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来、冷媒としてHC(ハイドロカーボン)系冷媒を使用する冷媒循環システムにおいて低圧シェルタイプの圧縮機を使用する場合、圧縮機の効率および起動時の信頼性の面で高圧シェルタイプの圧縮機に劣るという問題があった。密閉型圧縮機は、密閉容器内のモータの冷却を冷媒ガスによって行っている。低圧シェルタイプの圧縮機の場合、吸入管から導入された低圧・低温の冷媒ガスによってモータの冷却を行っている。このため、吸入ガスはモータから熱を奪うことで加熱・膨張し、圧縮要素に吸入される冷媒ガスの密度は低下してしまう。この吸入ガスの過熱損失のため、低圧シェルタイプの圧縮機は、吸入ガスが直接圧縮要素に流入する高圧シェルタイプの圧縮機にくらべて、効率が低下するという問題点があった。
【0009】また、圧縮機の停止時、密閉容器内に貯留された冷凍機油には数十%の冷媒が溶け込んでおり、特に低温時には圧縮機内に冷媒が移動する寝込み現象により多量の液冷媒が溜まり込み、冷凍機油は希釈された状態となる。この状態で圧縮機を起動すると低圧シェルタイプの圧縮機ではシェル内の圧力が急激に低下するため冷凍機油に溶解していた冷媒が蒸発・発泡してしまい、圧縮要素に吸入・吐出されてシェル内の油面が急激に低下する現象が生じてしまう。これにより十分な潤滑が出来ずに摺動部の摩耗・焼き付き等の不具合を起こすという問題点があった。
【0010】また、従来、冷媒としてHC(ハイドロカーボン)系冷媒を使用する冷媒循環システムにおいて高圧シェルタイプの圧縮機を使用する場合、圧縮機の信頼性の面で以下の問題点があった。まず、HC(ハイドロカーボン)系冷媒を使用した場合、圧縮要素の潤滑性に問題があった。HC(ハイドロカーボン)系冷媒は分子中に塩素を持たないため、塩素によって生じる摺動部の極圧効果が得られない。また、従来より冷媒循環システムの圧縮機に封入する冷凍機油として一般的に使用されている鉱油は、HC(ハイドロカーボン)系冷媒との相溶性が非常に高い。このため、冷凍機油が高圧冷媒雰囲気中に貯留される高圧シェルタイプの圧縮機においては、冷媒の溶け込みによる冷凍機油の粘度低下が激しい。
【0011】これらの理由により、圧縮機の摺動部の潤滑を良好に保つことが難しくなり、摩耗・焼き付き等の不具合が生じやすく、圧縮機の信頼性を低下させていた。また、信頼性を確保するために摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要となり、コストアップの要因にもなっていた。また、HC(ハイドロカーボン)系冷媒は可燃性の冷媒であるため、装置からの漏洩が起きた場合の火災・爆発等の危険性を抑えるため、冷媒封入量はできるだけ少なくする必要がある。冷媒循環システムへの冷媒の封入量は冷凍機油への溶解量を考慮して決定するため、溶解量が多い場合はその分余分に封入する必要がある。しかし、高圧シェルタイプの圧縮機の場合、密閉容器内が高圧雰囲気となるために、貯留された冷凍機油への冷媒の溶解量が低圧シェルタイプの圧縮機に比べ多くなり、従って回路へ封入する冷媒量も多くなってしまうという問題点があった。
【0012】上記の問題点では、冷媒としてHC(ハイドロカーボン)系冷媒を使用した冷媒循環システムについて示したが、オゾン層保護・地球温暖化の観点から、CFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を冷媒として用い、既に生産出荷され、据えつけ稼動している冷媒循環システムから、冷媒を排出して、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に交換する(いわゆるレトロフィット)場合、以下のような問題があった。
【0013】まず、HC(ハイドロカーボン)系冷媒が分子中に塩素を持たないことによる潤滑性の低下が問題であった。また、回路・配管内に残留した冷媒・冷凍機油等のコンタミの混入が免れないため、これらの影響による冷凍機油の劣化、スラッジ発生による回路の閉塞等、冷媒循環システムに重大な欠陥を引き起こす恐れがあった。
【0014】この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、圧縮機の効率および摺動部の潤滑を良好にして性能と信頼性の高い冷媒循環システムを提供することを目的とする。また、可燃性であるHC(ハイドロカーボン)系冷媒の装置への封入量を低減させ、安全性の高い冷媒循環システムを提供することを目的とする。さらに、CFC・HCFC・HFC冷媒を使用した冷媒循環システムを、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に入れ替えるレトロフィットを実施する場合について、より信頼性の高い方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】この発明に係る冷媒循環システムは、冷媒を循環させる冷媒回路と、この冷媒回路に設けられ、密閉容器内に電動要素と、この電動要素により駆動される圧縮要素とを有し、密閉容器内が圧縮要素より吐出された高圧冷媒ガス雰囲気である圧縮機と、冷媒回路内に封入されるHC(ハイドロカーボン)系の冷媒と、圧縮機に封入されるアルキルベンゼン系の冷凍機油とを備えたものである。
【0016】また、冷媒として、R290又はR600aを使用したものである。
【0017】また、圧縮機をローリングピストンの回転運動により冷媒の圧縮を行うロータリ圧縮機で構成したものである。
【0018】また、圧縮機をスクロール圧縮機で構成したものである。
【0019】また、圧縮機の容量制御を行うためのインバータ制御装置を設けたものである。
【0020】また、圧縮機の容量制御を行うためのインバータ制御装置を設け、圧縮機をロータリ圧縮機で構成したものである。
【0021】また、圧縮機の容量制御を行うためのインバータ制御装置を設け、圧縮機をスクロール圧縮機で構成したものである。
【0022】また、冷媒回路内に封入する冷媒としてCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を用い、既に生産出荷され、据えつけ稼動している当該冷媒循環システムから、冷媒を排出して、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に交換する(いわゆるレトロフィット)場合において、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に入れ替えるとともに、圧縮機に封入された冷凍機油をアルキルベンゼン系の油に入れ替えるものである。
【0023】また、冷媒回路内に封入する冷媒としてCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を用い、既に生産出荷され、据えつけ稼動している当該冷媒循環システムから、冷媒を排出して、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に交換する(いわゆるレトロフィット)場合において、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に入れ替えるとともに、圧縮機をアルキルベンゼン系の油を冷凍機油として封入した高圧シェルタイプの圧縮機に交換するものである。
【0024】また、レトロフィットの場合に、圧縮機をロータリ圧縮機に交換するものである。
【0025】また、レトロフィットの場合に、圧縮機をスクロール圧縮機に交換するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
実施の形態1.図1〜3は実施の形態1を示す図で、図1は冷媒循環システムの構成図、図2は冷媒の冷凍機油中への溶解量を示した図、図3は冷媒雰囲気中における冷凍機油の潤滑性を示したものである。図1において、1は高圧シェルタイプの冷媒ガスを圧縮する圧縮機、2は高温高圧の過熱冷媒ガスを凝縮する凝縮器、3は減圧装置、4は低温低圧の冷媒液を蒸発させる蒸発器、8は密閉容器5底部に貯留される冷凍機油である。冷媒回路内に封入する冷媒としてHC系冷媒、圧縮機1に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用している。
【0027】実施の形態1では、まず圧縮機1として高圧シェルタイプの圧縮機を使用した。このため、吸入管より流入した冷媒ガスは直接圧縮要素7に入るので、従来の低圧シェルを使用した圧縮機に比べ、吸入ガスのモータによる加熱・膨張から生じる損失がなく高い圧縮機効率が得られる。
【0028】また、高圧シェルタイプとしたことで、圧縮機1停止時に冷媒回路内の冷媒が温度差により移動し圧縮機1の密閉容器5内で液化して溜まり込む、いわゆる寝込み現象が生じた場合においても、圧縮機1起動時に密閉容器5内の圧力が低下して起こる油の発泡現象が生じないため、急激な油面低下により引き起こされる摺動部の摩耗・焼き付き等の不具合が回避される。
【0029】次に実施の形態1では、圧縮機に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用した。図2は冷凍機油中に溶け込む冷媒の溶解率を示したものである。このように同一温度の場合、圧力が高くなるほど冷凍機油中に溶解する冷媒量も多くなる傾向にある。また、従来冷凍機油として主に使用されている鉱油に比べて、アルキルベンゼン系の油の方が同一条件において冷媒の溶解量が少ないことが分かる。このため冷媒回路内に封入する冷媒量は、アルキルベンゼン系の油を使用することで油中の溶け込み分を考慮して少なくすることが可能となり、可燃性であるHC(ハイドロカーボン)系冷媒が回路から漏洩した場合の安全性を向上させることができる。
【0030】図3は摩耗試験機(FALEX)にて行った、冷媒雰囲気中における冷凍機油の潤滑性を示したものである。HCFC冷媒であるR22と鉱油の組合せにくらべ、HC(ハイドロカーボン)系冷媒であるR290と鉱油の組合せではテスト材の摩耗量が増加している。これは、HC(ハイドロカーボン)系冷媒が分子中に塩素を持たないため、塩素によって生じる摺動部の極圧効果が得られないためと考えられる。
【0031】しかし、R290とアルキルベンゼン系の油の組合せにおいては、油の持つ優れた潤滑性によりテスト材の摩耗量はR22と鉱油の組合せと同等に抑えられている。よって、冷媒としてHC(ハイドロカーボン)系冷媒を使用した装置においてもアルキルベンゼン系の油を使用することで、圧縮機要素部の摩耗・焼き付きに対する信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0032】このように実施の形態1は、圧縮機1として高圧タイプの圧縮機を使用し、圧縮機に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用することで、性能・信頼性・安全性に優れた冷凍装置を安価に提供することができるものである。
【0033】HC(ハイドロカーボン)系冷媒の例としてR290を示したが、R290以外にR600aもある。
【0034】実施の形態2.図4は実施の形態2を示す図で、ロータリー圧縮機の圧縮要素を示す図である。冷媒循環システムの構成は、実施の形態1の図1と同様であり、圧縮機1として高圧シェルタイプのロータリ圧縮機を用いている。図4において、10は密閉容器5に嵌合して収納されたシリンダー、11は低圧室と高圧室を仕切りシリンダー10内に出没自在なベーン、12はローリングピストン、13はローリングピストン12が嵌合するクランクシャフト偏心部、14はクランクシャフト偏心部13に設けられた給油ポンプ穴、15は給油ポンプ穴14からローリングピストン12内周部に冷凍機油8を導くための給油穴、16はその油溝である。
【0035】図4において、クランクシャフトの回転によりクランクシャフト偏心部4が偏心運動を行うことで、シリンダー2内では冷媒ガスの吸入・圧縮・吐出が繰り返される。そしてベーン19の先端部は、スプリングの押しつけ力と密閉容器5内の高圧ガスによる背圧を受けローリングピストン12の外周面に常に接触している。ローリングピストン12は、クランクシャフト偏心部13の偏心部に回転自在に挿嵌されているが、クランクシャフトの回転に伴いローリングピストン12も回転運動を行う。よってベーン19先端部とローリングピストン12外周面は常に接触したまま摺動しており、厳しい潤滑環境にさらされている。
【0036】この実施の形態よれば、高圧シェルタイプのロータリ圧縮機に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用している。よって、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性により、過酷な摺動条件となる高圧シェルタイプのロータリ圧縮機のベーン・ローリングピストンの摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0037】また、高圧シェルタイプとしたことによる吸入ガスの加熱・膨張損失の低減、低温起動時の冷凍機油の発泡・油面低下の回避、および冷媒の溶解量が少ないアルキルベンゼン系の油を使用したことによる回路内冷媒封入量の削減の効果が得られるのは言うまでもない。
【0038】実施の形態3.図5,6は実施の形態3を示す図で、図5は冷媒循環システムの構成図、図6はスクロール圧縮機の断面図である。図5において、1は高圧シェルタイプの冷媒ガスを圧縮するスクロール圧縮機、2は高温高圧の過熱冷媒ガスを凝縮する凝縮器、3は減圧装置、4は低温低圧の冷媒液を蒸発させる蒸発器、8は密閉容器5底部に貯留される冷凍機油である。冷媒回路内に封入する冷媒としてHC系冷媒、スクロール圧縮機1に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用している。
【0039】図6において、5は密閉容器、6は電動要素、8は冷凍機油、17は固定スクロール鏡板17aと、固定スクロールラップ17bとを有する固定スクロール、18は揺動スクロール鏡板18aと、揺動スクロールラップ18bと、揺動スクロール軸受部18cと、揺動スクロールオルダム溝18dとを有する揺動スクロール、19はオルダムリング、19aは揺動スクロール側オルダム爪、19bはフレーム側オルダム爪、20はフレーム、20aはフレーム軸受部、20bはフレームオルダム溝、21はクランクシャフトである。
【0040】図6において、電動要素6により駆動されるクランクシャフト21の回転力は、揺動スクロール軸受部18cを介して、揺動スクロール18に伝えられる。揺動スクロール18は自転防止機構であるオルダムリング19により円軌道を描く公転運動を行い、固定スクロール17との間に形成される圧縮室の容積変化に従って冷媒の圧縮が行われる。
【0041】ここで、オルダムリング19の揺動スクロール側オルダム爪19aと、フレーム側オルダム爪19bとは、それぞれ揺動スクロール側オルダム溝18dと、フレーム側オルダム溝20bとにおいて、線接触しながら往復運動を繰り返しており、かつ高温となるため、厳しい潤滑環境にさらされている。
【0042】また、揺動スクロール18の公転運動によって、固定スクロールラップ17b及び揺動スクロールラップ18b先端部はそれぞれ固定スクロール鏡板17a、揺動スクロール鏡板18aと常に摺動しており、同様に厳しい潤滑環境にさらされている。
【0043】この実施の形態によれば、高圧シェルタイプのスクロール圧縮機1に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用している。よって、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性により、過酷な摺動条件となる高圧シェルタイプのスクロール圧縮機1のオルダム爪19a,19b・オルダム溝18b,20b、固定・揺動スクロールラップ17b,18bの先端部の摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0044】また、高圧シェルタイプとしたことによる吸入ガスの加熱・膨張損失の低減、低温起動時の冷凍機油の発泡・油面低下の回避、および冷媒の溶解量が少ないアルキルベンゼン系の油を使用したことによる回路内冷媒封入量の削減の効果が得られるのは言うまでもない。
【0045】実施の形態4.図7,8は実施の形態4を示す図で、図7は冷媒循環システムの構成図、図8はロータリ圧縮機のベーン・ローリングピストンの摺動速度と圧縮機運転周波数の関係を示した図である。図7において、1は高圧シェルタイプの冷媒を圧縮するロータリ圧縮機、2は高温高圧の過熱冷媒ガスを凝縮する凝縮器、3は減圧装置、4は低温低圧の冷媒液を蒸発させる蒸発器、8は密閉容器5底部に貯留される冷凍機油、22はロータリ圧縮機1の容量制御を行うためのインバータ制御装置である。
【0046】インバータ制御装置22により、ロータリ圧縮機1内のモータの回転数を幅広く可変させることができる。また、冷媒回路内に封入する冷媒としてHC系冷媒、ロータリ圧縮機1に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用している。尚、ロータリー圧縮機1の圧縮要素は、実施の形態2の図4で示したものと同じ構成であり、ベーン先端部とローリングピストン外周面は常に接触したまま摺動しており、厳しい潤滑環境にさらされている。
【0047】図8に示すように、圧縮機運転周波数の上昇とともに、ローリングピストン12の回転も上昇する傾向にあり、ベーン・ローリングピストンの潤滑もより厳しい状態となる。
【0048】この実施の形態によれば、高圧シェルタイプのロータリ圧縮機1に封入する冷凍機油としてアルキルベンゼン系の油を使用している。よって、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性により、インバータ制御装置22により高い周波数にて運転する場合でも、過酷な摺動条件となる高圧シェルタイプのロータリ圧縮機1のベーン・ローリングピストンの摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0049】これはスクロール圧縮機等、他の形式の圧縮機においても同様に得られる効果であり、また、高圧シェルタイプとしたことによる吸入ガスの加熱・膨張損失の低減、低温起動時の冷凍機油の発泡・油面低下の回避、および冷媒の溶解量が少ないアルキルベンゼン系の油を使用したことによる回路内冷媒封入量の削減の効果が得られるのは言うまでもない。
【0050】実施の形態5.上記実施の形態では、冷媒としてHC(ハイドロカーボン)系冷媒を使用した冷媒循環システムについて示したが、オゾン層保護・地球温暖化の観点から、CFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)等を冷媒として用い、既に生産出荷され、据えつけ稼動している冷媒循環システムから、冷媒を排出して、HC(ハイドロカーボン)系冷媒に交換する(いわゆるレトロフィット)場合について適用しても良く、既に封入されているパラフィン系鉱油やナフテン系鉱油、エステル油やエーテル油、PAG油等の合成油、もしくはそれらの混合油等の冷凍機油をアルキルベンゼン系の油に交換する場合、もしくは冷媒圧縮機をアルキルベンゼン系の油を冷凍機油として封入した高圧シェルタイプの圧縮機に交換する場合についても同様の効果を奏することができ、極めて信頼性の高い冷媒循環システムを提供することが出来る。
【0051】図9に、既設の冷媒循環システムより冷媒をHC(ハイドロカーボン)系冷媒に交換するレトロフィット方法のフローチャートを示す。この図からも解るように、レトロフィットの場合は、従来の冷媒やその冷媒用の従来の冷凍機油を装置内から完全に排除することが出来ず、微量の冷媒や冷凍機油が冷媒循環システム内へ残存した状態にて運転されるが、アルキルベンゼン系の油の様にコンタミ耐力が高く、熱・化学的に安定な冷凍機油の場合には、極めて優れた信頼性を有する。
【0052】
【発明の効果】この発明に係る冷媒循環システムは、密閉容器内が圧縮要素より吐出された高圧冷媒ガス雰囲気である圧縮機と、冷媒回路内に封入されるHC(ハイドロカーボン)系の冷媒と、圧縮機に封入されるアルキルベンゼン系の冷凍機油とを備えたことにより、圧縮機に流入した冷媒ガスは直接圧縮要素に入るので、従来の低圧シェルを使用した圧縮機に比べ、吸入ガスの電動要素による加熱・膨張から生じる損失が少なく高い圧縮機効率が得られる。また、圧縮機を高圧冷媒ガス雰囲気としたことで、圧縮機停止時に冷媒回路内の冷媒が温度差により移動し密閉容器内で液化して溜まり込む、いわゆる寝込み現象が生じた場合においても、圧縮機起動時に密閉容器内の圧力が低下して起こる油の発泡現象が生じないため、急激な油面低下により引き起こされる摺動部の摩耗・焼き付き等の不具合が回避される。また、アルキルベンゼン系の冷凍機油を使用したことで、鉱油に比べて冷凍機油中の冷媒の溶解量が減少するので、冷媒回路内に封入する冷媒量は油中の溶け込み分を考慮して少なくすることが可能となり、可燃性であるHC系冷媒が回路から漏洩した場合の安全性を向上させることができる。また、アルキルベンゼン系の油を使用したことで、HC系冷媒が分子中に塩素を持たないために生じる冷媒による潤滑効果の低下を、アルキルベンゼン系の冷凍機油の高い潤滑性により補うため、圧縮機要素部の摩耗・焼き付きに対する信頼性が向上するとともに、摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0053】また、冷媒としてR290又はR600aを使用し、これらの冷媒とアルキルベンゼン系の油の組合せたものは、油の持つ優れた潤滑性により摩耗量はR22と鉱油の組合せと同等に抑えられるという効果を奏する。
【0054】また、圧縮機がローリングピストンの回転運動により冷媒の圧縮を行うロータリ圧縮機の場合、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性により、過酷な摺動条件となるロータリ圧縮機のベーン・ローリングピストンの摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0055】また、圧縮機がスクロール圧縮機の場合、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性により、過酷な摺動条件となるスクロール圧縮機のオルダムリング・スクロールラップの摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0056】また、圧縮機の容量制御をインバータ制御装置で行う場合、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性により、インバータにて高速で運転される圧縮機の摺動部摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0057】また、圧縮機の容量制御をインバータ制御装置で行い、圧縮機がロータリ圧縮機の場合、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性により、さらに過酷な摺動条件となるロータリ圧縮機のベーン・ローリングピストンの摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0058】また、圧縮機の容量制御をインバータ制御装置で行い、圧縮機がスクロール圧縮機の場合、さらに過酷な摺動条件となるスクロール圧縮機のオルダムリング・スクロールラップの摩耗を抑えることが可能となり、信頼性が向上するとともに摺動材料の変更・表面処理の追加等も必要なく価格も低く抑えられる。
【0059】また、レトロフィットを行う場合においても、従来の冷媒やその冷媒用の従来の冷凍機油を装置内から完全に排除することが出来ず、微量の冷媒や冷凍機油が冷媒循環システム内へ残存した状態にて運転されるが、アルキルベンゼン系の油の様にコンタミ耐力が高く、熱・化学的に安定な冷凍機油の場合には、極めて優れた信頼性を有する。
【0060】また、レトロフィットの場合に、圧縮機をアルキルベンゼン系の油を冷凍機油として封入した高圧シェルタイプの圧縮機に交換することにより、最良の選択である高圧シェルタイプの圧縮機とアルキルベンゼン系の油を組み合わせにでき、安全性・信頼性上の問題を回避できるとともに、効率・コストについても効果を得ることができるものである。
【0061】また、圧縮機をロータリ圧縮機に交換するレトロフィットの場合に、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性、熱安定性、化学安定性、絶縁性、冷媒との相溶性のため、潤滑条件の厳しい高圧シェルタイプのロータリ形式の冷媒圧縮機を使用した場合についても極めて信頼性の高い冷媒循環システムを提供することができる。
【0062】また、圧縮機をスクロール圧縮機に交換するレトロフィットの場合に、アルキルベンゼン系の油の持つ高い潤滑性、熱安定性、化学安定性、絶縁性、冷媒との相溶性のため、潤滑条件の厳しい高圧シェルタイプのスクロール圧縮機を使用した場合についても極めて信頼性の高い冷媒循環システムを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成11年5月12日(1999.5.12)
【代理人】 【識別番号】100099461
【弁理士】
【氏名又は名称】溝井 章司 (外2名)
【公開番号】 特開2000−320912(P2000−320912A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−131063