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【発明の名称】 自動車用空調装置の殺菌方法
【発明者】 【氏名】中津 清和

【要約】 【課題】既存の冷媒循環システムのみを利用できることでコスト上昇を招くことなく、しかも経時的に信頼性を低下させないようにすることが可能な自動車用空調装置の殺菌方法を提供する。

【解決手段】自動車用空調装置に用いられる熱交換器5を対象とした殺菌方法であって、冷房時に用いられる冷媒の液化および気化を繰り返す蒸気圧縮式冷媒サイクルを用い、上記熱交換器5の殺菌時には、上記蒸気圧縮式冷媒サイクルで発生する高圧高温状態の冷媒を上記熱交換器5内に流動させて該熱交換器5を高温加熱殺菌する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動車用空調装置に用いられる熱交換器を対象とした殺菌方法であって、冷房時に用いられる冷媒の液化および気化を繰り返す蒸気圧縮式冷媒サイクルを用い、上記熱交換器の殺菌時には、上記蒸気圧縮式冷媒サイクルで発生する高圧高温状態の冷媒を上記熱交換器内に流動させて該熱交換器を高温に設定することを特徴とする自動車用空調装置の殺菌方法。
【請求項2】 請求項1記載の自動車用空調装置の殺菌方法において、上記蒸気圧縮式冷媒サイクルには、コンプレッサ、コンデンサ、膨張弁および上記熱交換器をなすエバポレータをそれぞれ連絡する冷媒の循環経路が用いられ、上記コンデンサと上記膨張弁との間には冷媒の圧力が所定圧力に達したときに上記コンプレッサを停止させる高圧カットスイッチが配置され、殺菌時には上記高圧カットスイッチが作動したときにコンプレッサを停止させて上記循環経路中で高温高圧となった冷媒蒸気を、通常の循環方向と逆方向に流して上記エバポレータ内を高温加熱することを特徴とする自動車用空調装置の殺菌方法。
【請求項3】 請求項2記載の自動車用空調装置の殺菌方法において、上記高圧カットスイッチは制御部に接続され、該制御部は出力側にコンプレッサ、コンデンサファン、ブロワファンの駆動部が少なくとも接続され、入力側には上記高圧カットスイッチに加えて殺菌指令用スイッチが少なくとも接続されており、該殺菌指令用スイッチが投入されることにより、上記高圧カットスイッチが作動するまでの間、コンデンサファンを停止させてコンプレッサおよびブロワファンを稼働させることにより冷媒蒸気を高温高圧状態とし、高圧カットスイッチが作動したときにコンプレッサおよびブロワファンも停止させてコンプレッサの高圧側に位置する高温高圧の冷媒蒸気をエバポレータ内に逆流させて高温加熱することを特徴とする自動車用空調装置の殺菌方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用空調装置の殺菌方法に関し、さらに詳しくは、空調装置内の熱交換器として用いられるエバポレータを対象とした殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用空調装置には熱交換器としてエバポレータが用いられている。エバポレータには、冷媒を通すパイプの外周に空気との接触面積を大きくして内気あるいは外気の冷房及び除湿効果を上げるためのフィンが設けられている。フィンを含めたエバポレータの表面には、接触する空気の温度や湿度の影響により、細菌やカビあるいは酵母などの微生物が繁殖しやすい。このような微生物が生理作用による代謝物を生成し、悪臭や気管支炎等の原因を誘発する。そこで、従来では、エバポレータの抗菌処理を行うことが提案されている(例えば、特開平6−117797号公報)。この公報には、フィンの表面を腐食防止処理した後、有機系と無機系を組み合わせた親水性被膜を形成して半乾燥状態とし、その被膜表面から抗菌剤を浸透させる処理を行って抗菌効果のある被膜を形成する方法が開示されている。上記公報に開示されている抗菌処理とは別の方法として、熱交換器近傍にオゾン発生装置を設けて定期的にオゾン濃度を高めるようにした方法(例えば、特開平8−155338号公報)や、熱交換器近傍にイオン分解されたイオン水生成装置を設け、熱交換器に対してアルカリイオン水あるいは酸性イオン水を供給してカビやバクテリアの繁殖を抑止する方法(例えば、特開平6−300486号公報)が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記各公報に示された方法では、いずれの場合にも抗菌処理のための機構や装置および抗菌剤等の特別な材料が必要となり、コスト上昇の原因となる。しかも、エバポレータの製造過程で抗菌処理された場合には、経時的な変化が発生した場合に対処することが殆ど不可能であるので、極端な場合には熱交換器の交換ということになり、ユーザーのコスト負担が上昇してしまう虞がある。また、オゾンやイオン水の供給を行う場合には、その供給量によって乗員への悪影響や熱交換器素材への悪影響の問題が未だ残されている。
【0004】本発明の目的は、上記従来の抗菌方法における問題に鑑み、既存の冷媒循環システムのみを利用できることでコスト上昇を招くことなく、しかも経時的に信頼性を低下させないようにすることが可能な自動車用空調装置の殺菌方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、請求項1記載の発明は、自動車用空調装置に用いられる熱交換器を対象とした殺菌方法であって、冷房時に用いられる冷媒の液化および気化を繰り返す蒸気圧縮式冷媒サイクルを用い、上記熱交換器の殺菌時には、上記蒸気圧縮式冷媒サイクルで発生する高圧高温状態の冷媒を上記熱交換器内に流動させて該熱交換器を高温に設定することを特徴としている。
【0006】請求項2記載の発明は、請求項1記載の自動車用空調装置の殺菌方法において、上記蒸気圧縮式冷媒サイクルには、コンプレッサ、コンデンサ、膨張弁および上記熱交換器をなすエバポレータをそれぞれ連絡する冷媒の循環経路が用いられ、上記コンデンサと上記膨張弁との間には冷媒の圧力が所定圧力に達したときに上記コンプレッサを停止させる高圧カットスイッチが配置され、殺菌時には上記高圧カットスイッチが作動したときにコンプレッサを停止させて上記循環経路中で高温高圧となった冷媒蒸気を、通常の循環方向と逆方向に流して上記エバポレータ内を高温加熱することを特徴としている。
【0007】請求項3記載の発明は、請求項2記載の自動車用空調装置の殺菌方法において、上記高圧カットスイッチは制御部に接続され、該制御部は出力側にコンプレッサ、コンデンサファン、ブロワファンの駆動部が少なくとも接続され、入力側には上記高圧カットスイッチに加えて殺菌指令用スイッチが少なくとも接続されており、該殺菌指令用スイッチが投入されることにより、上記高圧カットスイッチが作動するまでの間、コンデンサファンを停止させてコンプレッサおよびブロワファンを稼働させることにより冷媒蒸気を高温高圧状態とし、高圧カットスイッチが作動したときにコンプレッサおよびブロワファンも停止させてコンプレッサの高圧側に位置する高温高圧の冷媒蒸気をエバポレータ内に逆流させて高温加熱することを特徴としている。
【0008】
【作用】請求項1乃至3記載の発明では、冷房時に用いられる蒸気圧縮式冷媒サイクルをそのまま用いて高温高圧状態の冷媒蒸気を熱交換機に流動させることで熱交換機を加熱殺菌することができる。特に請求項2および3記載の発明では、殺菌モードが選択された場合、コンデンサファンを停止させて蒸気圧縮式冷媒サイクルで循環する冷媒蒸気を容易に高温高圧下に設定できると共に、次いでコンプレッサを停止させることでコンプレッサの高圧側に位置する高温高圧状態の冷媒蒸気をエバポレータに逆流させることができるので、エバポレータを加熱殺菌することができる。
【0009】
【実施例】以下、図示実施例により本発明の詳細を説明する。図1は本発明実施例による殺菌方法が用いられる空調装置のうちの冷房システムを説明するための模式図であり、同図において冷房システムは、冷媒の液化・気化を繰り返す蒸気圧縮式冷媒サイクルが採用されている。本実施例の特徴は、蒸気圧縮式冷媒サイクルにおいて循環する冷媒蒸気を用いて熱交換器の殺菌を行うことにある。つまり、本実施例が適用される蒸気圧縮式冷媒サイクルには、コンプレッサ1、コンデンサ2、レシーバ・アンド・ドライヤ3、膨張弁4および熱交換器としてのエバポレータ5が連絡された構成が備えられている。なお、このサイクルには、膨張弁4の開閉制御を行う周知構造の感熱筒6を用いたキャピラリ・チューブ7が膨張弁4に連通させてある。コンデンサ2には、外気冷却によって冷媒を液化するためのコンデンサファン2Aが、また、エバポレータ5には、外気あるいは内気を吸熱するためのブロワファン5Aが近接して設けられている。このような蒸気圧縮式冷媒サイクルでは、図1中、矢印で示すように、冷媒の循環が行われてブロワファン5Aを介して冷房・除湿された空気が車内に供給される。
【0010】コンデンサ2とエバポレータ5との間の配管中にはこの配管内を流動する冷媒の圧力によってコンプレッサ2を停止させるための高圧カットスイッチ8が配置されている。高圧カットスイッチ8は、上記配管中を流れる冷媒の圧力が、通常の冷房時での圧力以上の所定圧力に達した時点でオンしコンプレッサ1を停止させる。
【0011】以上のような構成において、エバポレータ5の殺菌方法は以下のようなサイクルで実施される。すなわち、エバポレータ5でガス化された冷媒は、コンプレッサ1によって圧縮加圧された後、コンデンサ2において液化され、さらに、膨張弁4により圧力降下されてエバポレータ5に帰還される。このとき、コンデンサファン2Aを停止させると冷媒の液化が抑制され、コンプレッサ1からコンデンサ2を介して膨張弁4に至るまでの区間の冷媒の温度および圧力が急激に上昇する。そして、その圧力が所定圧力以上になり、高圧カットスイッチ8がオンすると、コンプレッサ1およびブロワファン5Aが停止される。コンプレッサ1が停止されると、冷媒サイクル内の圧力が平衡状態になろうとして、冷媒は、図2において矢印で示すように、通常の循環方向と逆方向に流れる。これにより、コンプレッサ1から膨張弁4の区間に存在する高温高圧の冷媒蒸気がエバポレータ5内に逆流し、エバポレータ5を高温加熱して殺菌する。また、冷媒が逆流すると、コンプレッサ1から膨張弁4の区間の圧力が低下して高圧カットスイッチ8は再びオフされる。このとき、再度、コンデンサファン2Aを停止したままコンプレッサ2とブロワファン2Aを作動させることにより同様のサイクルを繰り返すことができるが、このサイクルを複数回繰り返すことが殺菌効果の観点から好ましいといえる。
【0012】上記実施例によれば、通常の冷房時に用いられる冷媒の循環を利用して高温化することができるので、エバポレータの高温殺菌を行うための特別な構造を要しないで済む。
【0013】本実施例の特徴は、上記の構成を前提としてエバポレータに流れる高温高圧の冷媒蒸気を効率よく生成するための制御を行う点にある。つまり、図3は制御部の構成を説明するためのブロック図であり、同図において制御部9は、マイクロコンピュータによって主要部が構成され、図示しないI/Oインターフェースを介して入力側には高圧カットスイッチ8に加えて殺菌モードを選択するための殺菌指令用スイッチ10が接続され、出力側にはコンプレッサ2の駆動部(マグネットクラッチ)、コンデンサファン2A、ブロワファン5Aの各駆動部が接続されている。なお、図示しないが、コンプレッサ2の回転に伴うエンジン側でのアイドリング回転数の上昇動作は通常の冷房運転時と同様に行われるものとする。
【0014】制御部9では、冷房時、通常の蒸気圧縮式冷媒サイクルのための制御が実施される一方、殺菌指令スイッチ10が操作されると、高圧カットスイッチ8からの信号が入力されるまでの間、コンデンサファン2Aを停止させると共にコンプレッサ1およびブロワファン5Aの回転を維持する。この場合には、当然ことではあるが、エンジンのアイドリング回転は上昇されている。コンプレッサ1から膨張弁4の区間の冷媒温度および圧力が上昇し、高圧カットスイッチ8が作動して信号を出力すると、制御部9では、コンプレッサ2およびブロワファン5Aをそれぞれ停止させる。
【0015】この制御部9の動作を図4のフローチャートにより説明する。同図において殺菌指令用スイッチ10の操作状態を判別することで殺菌モードであるかどうかが判別される(ST1)。ステップST1において殺菌モードである場合には、コンデンサファン2Aが停止され、コンプレッサ1およびブロワファン5Aが作動された状態で蒸気圧縮式冷媒サイクルが実行される(ST2)。これにより、コンプレッサ1により圧縮加圧された冷媒蒸気が液化されることなく膨張弁4間での区間の冷媒温度および圧力が急激に上昇する。
【0016】コンデンサ2と膨張弁4との間の冷媒の圧力が通常冷房時での圧力以上の所定圧力に達したかどうかが高圧カットスイッチ8の動作状態によって判別される(ST3)。高圧カットスイッチ8がオンすると、コンプレッサ1およびブロワファン5Aが停止される(ST4)。これにより、図2に示したように、コンプレッサ1の高圧側に位置する冷媒蒸気がコンプレッサ1の低圧側と圧力平衡を保つために逆流し、高温高圧の冷媒蒸気がエバポレータ5内に流れ込み、エバポレータ5を高温殺菌する。なお、冷媒の逆流後、コンデンサ2から膨張弁4の区間の圧力が低下して高圧カットスイッチ8がオフされると、再度、コンデンサファン2Aを停止したままコンプレッサ2とブロワファン5Aを作動させることにより同様のサイクルを繰り返す。このサイクルは複数回繰り返される。このような殺菌処理は、殺菌指令用スイッチ10の操作が行われたときに実行されるようにするだけでなく、空調装置の空気吐出用ダクトに嗅覚センサを設置してそのセンサにより空気の汚れ具合を検知する毎にあるいは走行距離や空調装置の使用頻度などを検出することで定期的に行うようにすることも可能である。また、高圧カットスイッチ8に代えて、あるいは高圧カットスイッチ8とともに、温度スイッチあるいは温度センサを用いてコンデンサ2から膨張弁4の区間の冷媒温度の上昇を検出し、所定温度以上になったときにコンプレッサ1およびブロワファン5Aの作動を止めるようにしてもよい。
【0017】
【発明の効果】請求項1乃至3記載の発明では、冷房時に用いられる既存の冷媒循環サイクルをそのまま用いて高温高圧状態の冷媒蒸気を熱交換機に流動させることで熱交換器を高温加熱殺菌することができる。特に請求項2および3記載の発明では、殺菌モードが選択された場合、コンデンサファンを停止させて蒸気圧縮式冷媒サイクルで循環する冷媒蒸気を容易に高温高圧下に設定できると共に、次いでコンプレッサを停止させることでコンプレッサの高圧側に位置する高温高圧状態の冷媒蒸気をエバポレータに逆流させることができるので、エバポレータを高温加熱殺菌することができる。この結果、冷房システムに用いられる既存の冷媒循環サイクルのみを用いて熱交換器の殺菌が可能となり、特別な機構や殺菌剤などを要しないようにしてコスト上昇を防ぐことができる。しかも、既存の冷媒循環サイクルを用いるだけであるので、経時的な機能劣化を生じることがなく、殺菌効果の低下を防止することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成11年3月31日(1999.3.31)
【代理人】 【識別番号】100063565
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 信淳
【公開番号】 特開2000−283582(P2000−283582A)
【公開日】 平成12年10月13日(2000.10.13)
【出願番号】 特願平11−90712