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【発明の名称】 パルス管冷凍機の熱交換器
【発明者】 【氏名】鳥居 明人

【氏名】滝澤 敬次

【要約】 【課題】熱交換器の伝熱量を増やし、パルス管内の熱損失を低減して、冷凍能力を向上せしめる。

【解決手段】熱交換器断面の流路全体を包絡する面積を拡大してパルス管内の流速分布を一様にする。包絡面積を拡大する例として、十字形状(放射状)のフィンを設けたり、十字形状の細長い断面の管路にしたり、球状の磁性材料を管内に充填したりする。この結果、外部との伝熱面積が増加すること、流体が複数に分割された流路を通過して速度分布が一様になること、流体と固体壁との接触表面が増えて等温的な熱交換が起こること、球状の充填材は冷凍機の構成を小型化できること等の利点が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】圧縮機と、蓄冷器と、パルス管と、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器と、該パルス管に接続する位相調節器とからなる冷凍装置において、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器として該熱交換器の横断面が十字形状又は放射状のフィンが設けられてなることを特徴とするパルス管冷凍機の熱交換器。
【請求項2】圧縮機と、蓄冷器と、パルス管と、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器と、該パルス管に接続する位相調節器とからなる冷凍装置において、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器として該熱交換器の横断面に十字形状又は放射状の流路が設けられてなることを特徴とするパルス管冷凍機の熱交換器。
【請求項3】請求項1又は2に記載の低温及び/又は高温の熱交換器において、流路が細長い断面からなることを特徴とするパルス管冷凍機の熱交換器。
【請求項4】請求項1、2又は3に記載の低温及び/又は高温の熱交換器が、鉛、銅、ステンレス鋼及び磁性材料からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱容量の大なる球状物体により充填されてなるパルス管冷凍機の熱交換器。
【請求項5】圧縮機と、蓄冷器と、パルス管と、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器と、該パルス管に接続する位相調節器とからなる冷凍装置において、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器が該パルス管内部の封入されたガスの流速分布を一様に整流化成し得ることを特徴とするパルス管冷凍機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】高温超伝導現象が認められる温度域(50〜80K)にあるチャンバ内に置かれたパルス管冷凍機のパルス管低温側熱交換器端に設ける熱交換器の改良技術に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】パルス管冷凍機は、圧縮器にリニアモータを使用してレシプロカルに動くピストンにより、パルス管内に封じた作業ガスに圧縮膨張を繰り返させて強制振動を発生させ、パルス管の端部に設けた蓄冷器の高温及び低温の熱交換器(熱源)を動作させ、ガスの膨張時の吸熱作用を利用して、低温の蓄冷器から熱をさらに汲み上げる機能を備え、液体窒素温度以下の冷却が可能な装置である。したがって、この冷凍機は熱交換の効率によって、その性能が左右される。
【0003】パルス管冷凍機の冷凍能力の向上対策には、一つに熱交換の効率化があり、熱交換器の伝熱量を増やし、パルス管内の熱損失を低減することが有効である。また、他の一つに低温の熱交換器における変位と圧力との位相のずれ(位相差)を90度に可能な限り近づける位相調整技術がある。
【0004】そして、本発明は熱交換器の改良に係わるものである。
【0005】そこで、従来技術をみるに、パルス管冷凍機は、圧縮機、パルス管、蓄冷器、バッファータンク及びオリフィスを構成要部とし、図9に示すように、配置されている。この冷凍機のパルス管の先端部には、高温熱交換器が設けられ、更にその高温熱交換器の先にオリフィスとバッファタンクとからなる位相調節器が備えられる。そして、位相調節器はパルス管冷凍機の冷凍能力を左右する重要な構成部分の一つである。
【0006】パルス管冷凍機において、既に述べたとおり、その冷凍機能を高める手段の一つに、使用する熱交換器の形状、構造、材質等を適切なものとすることが挙げられる。蓄冷器の一端となる圧縮機側に高温熱交換器、パルス管の両端に低温及び高温の熱交換器がそれぞれ設けられる。パルス管に封じた作業ガスの管内流速分布と熱交換状況が作業ガスの粘性や慣性によって影響されるので、冷凍機の性能の面から、熱交換器の交換効率は極めて重要である。しかるに、熱交換器の機能の詳しい解析、熱効率の改良を含む熱交換器の設計等は、未だ開発過程にあると云える。
【0007】従来技術では、図10(金尾憲一ら、第5回日中ジョイントセミナー、1997年9月)に示すように、平行な平板形状のフィンを用いて、液体と接触する個体の表面積を増加させると、フィンの厚さが減り、フィンが薄くなった分だけ熱伝導性が低減するという問題があった。また、パルス管へ流入する液体の速度分布が一様にならないという問題も解消されていない。
【0008】さらに、図11に示したように、メッシュを用いて液体と接触する固体の表面積を増加させると、メッシュの線径が細く、断面が小さいので、熱伝導性が低下するという問題がある。もっとも、薄いフィンや細い線径のメッシュに伴う熱伝導性の低減の問題は本質的なものであるから回避できない。してみると、従来技術に拘らず、熱交換器の開発には技術的にブレークスルーが求められる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】パルス管冷凍機熱交換器の固有の特性を解析したところ、■外部から出入りする熱流は外周の壁を通過する。
■流体と外周の壁との間に熱を輸送する経路が存在する。
■パルス管と接続している。
といった特色があり、熱交換器の性能を向上させるには、■外周の壁を通過する熱を増やす。
■流体と個体との接触面積を増やして、等温的に熱交換させる。
■パルス管内部の流体の流れを一様にする。
等の対策が有効であると推測でき、この方向に沿って、鋭意開発を進めた結果、上記の課題は、具体的には、熱交換器断面の流路全体を包絡する面積を拡大してパルス管内の流速分布を一様にする。包絡面積を拡大する例として、十字形状(放射状)のフィンを設けたり、十字形状の細長い断面の管路にしたり、球状の磁性材料を管内に充填したりする対応が効果的である。
【0010】設計的には、外部との伝熱面積が増加すること、流体が複数に分割された流路を通過して速度分布が一様になること、流体と固体壁との接触表面が増えて等温的な熱交換が起きること、及び球状の充填材は冷凍機の構成を小型化できること等の利点がある。
【0011】そこで、熱交換器の伝熱量を増やし、パルス管内の熱損失を低減して、冷凍能力を向上せしめることを前提として、位相調整が容易にでき、しかも設計的に設備規模に広く適用可能であるうえに、到達温度が低い、ヒートポンプとしての効率(蓄冷熱量/運転における消費エネルギー量)が高い等の特徴と、運転調整のし易さを課題として、パルス管冷凍機の改良を試みる。
【0012】
【課題を解決するための手段】熱交換器の材質は、基本的には熱伝導性の大きいことが絶対要件となる。銅、真鍮等の材料が選択される。
【0013】熱交換器の形状は、直線状のパルス管のときが基本となるが、U字管状に変形できれば、冷凍装置全体の容量がコンパクト化でき、装置としては直線状パルス管の場合より設計範囲が拡がる利点がある。
【0014】課題を解決するための具体的な手段は、以下に開示するとおりである。
【0015】しかして、請求項1の発明は、圧縮機と、蓄冷器と、パルス管と、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器と、該パルス管に接続する位相調節器とからなる冷凍装置において、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器として該熱交換器の横断面が十字形状又は放射状のフィンが設けられてなることを特徴とする。
【0016】請求項2の発明は、圧縮機と、蓄冷器と、パルス管と、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器と、該パルス管に接続する位相調節器とからなる冷凍装置において、該蓄冷器若しくは該パルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器として該熱交換器の横断面に十字形状又は放射状の流路が設けられてなることを特徴とする。この発明は、フィンを流路に変えたもので、熱交換に際し、方向性を配慮して、バランスよく熱交換を行うものである。
【0017】請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の低温及び/又は高温の熱交換器において、流路が細長い断面からなることを特徴とする。
【0018】更に、請求項4の発明は、低温及び/又は高温の熱交換器が、鉛、銅、ステンレス鋼及び磁性材料からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱容量の大なる球状物体により充填されてなるパルス管冷凍機熱交換器であって、メッシュに較べて空間率が小さいので、内部容積が同一の場合には、熱交換器の断面の外周を長く設計でき、熱効率を向上することが可能となる。
【0019】請求項5の発明は、熱交換器によりパルス管内部のガスの流れを整流化する作用をもたらすものである。パルス管内部の封入されたガスの流速分布を一様に成し得るとパルス管内のガスの温度分布も一様になる結果、熱交換の効率が向上する効果が生じる。
【0020】
【作 用】本発明の熱交換器はその断面の流路全体を包絡する面積が拡大するので、外部との伝熱面積が増加する。
【0021】また、本発明の熱交換器を使用すると、流体が複数の流路を通過してパルス管内に流入するので、流体の速度分布が一様になる。しかも、流体と固体壁との界面の接触面積が増えて、等温的に熱交換する。
【0022】請求項2に記載の発明の場合は、熱が伝導する断面積が増加する(実施例2:フィンが厚いことと等価)ので、熱交換が有利に行われる。
【0023】細長い流路断面を有する場合(実施例2)や請求項4の発明に示した球を詰めた場合には、低温熱交換器の位置で蓄冷器とパルス管の配置を曲げることにより、冷凍機の構成を小型化できる。冷凍機の設計に多様性があり、適用範囲も拡がる。
【0024】付加的効用であるが、熱交換器によりパルス管内部のガスの流れを整流化する作用をもたらす。パルス管内部の封入されたガスの流速分布を一様に成し得れば、パルス管内のガスの温度分布も一様になる結果、熱交換の効率が向上する。
【0025】
【実施例】以下に実施例を示す。
<実施例1>本発明では熱交換器として、図1に示したような、円形断面に十字形状のフィンを置き作業ガスとの熱交換を計ることができる。フィンの形状としては十字形以外にも、例えば、放射状に5個乃至20個程度設けることも可能である。流体ガスが複数の流路を通過してパルス管内に流入するので、流体の速度分布が一様になる。しかも流体と固体壁との界面の接触面積が増えて、緩やかに等温的な熱交換が起こる。
【0026】なお、作業ガスが円滑にパルス管内を流れるためには、熱交換器の部分においても流路の容積が変化しないような構造であることが必要である。言い換えれば、流路の断面積が略一定であり、例えば、フィンにより遮られる断面積部分に加えて、作業ガスの流れるための有効な断面積が確保されていなければならない。従って、熱交換の条件が同一であるならば、図1の流路の断面積は、その外形の大きさに差異があるにも拘わらず、以下に示す図2〜図5の流路の断面積と基本的には同等となる。
<実施例2>この実施例では熱交換器として、その横断面が、図2に開示しているような、放射状の流路又は、図3に示すような、細長い断面の流路からなる。この場合は、熱が伝導する断面積が大きいことが特長であり、熱交換効率が高い。
<実施例3>図4に示す本発明の熱交換器は円形断面の流路であり、やや大きめのものが十字型に配置されており、また図5に示す実施例の熱交換器も円形断面の流路であるが、やや小さめの複数のものが放射状に配置されている。これらの流路の形状や配置は状況に応じて選択できる。
<実施例4>フィンや流路からなる熱交換器に替えて、球状物を充填して同様な機能を持たせることができる。図6は熱容量の大なる球状物体により充填されてなるパルス管冷凍機熱交換器であって、空間率が40〜50%と小さいので、内部容積が同一の場合には、熱交換器の断面の外周を長く設計でき、熱効率を向上させることが可能となる。
【0027】充填に適する球状物は熱交換の温度によって変わる。20K以下の極低温では磁性材料が、20〜50K程度では鉛が、70〜80K程度ではステンレス鋼や銅が、作業ガスと比熱、熱容量比等の関係から使用できる。
【0028】更に、熱交換器として球を詰めた場合には、図7に示す如く、低温熱交換器の位置でU字型に蓄冷器とパルス管の配置を曲げることにより、冷凍機の構成を小型化できる。冷凍機の設計に多様性があり、適用範囲も拡がる。なお、球を詰めた場合にはその両端をメッシュで挟むとよい。
<実施例5>熱交換器の効用は単に熱を交換するのみでなく、パルス管内部の流速分布を整流化し、均一化することにある。パルス管内部の封入されたガスの流速分布を一様に成し得ると、パルス管内のガスの温度分布も一様になる結果、熱交換の効率が向上する効果が生じる。図8は本発明の熱交換器を使用した際のパルス管内部におけるガスの流速分布を示す。
【0029】
【発明の効果】請求項1の発明は、蓄冷器若しくはパルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器として、その横断面が十字形状又は放射状のフィンが設けられているため、外周を通過する熱量が増加し、また作業ガスとの接触面積が増え熱交換が一層効率化する効果を奏する。
【0030】請求項2の発明は、蓄冷器若しくはパルス管に接続する低温及び/又は高温の熱交換器として該熱交換器の横断面に十字形状又は放射状の流路が設けられている。特定形状のフィンを同型状の流路に変えたもので、バランスよく熱交換が成される効果がある。
【0031】請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の低温及び/又は高温の熱交換器において、流路が細長い断面からなるので、パルス管をU字型に変形でき、装置全体をコンパクトに納めることが可能となる。
【0032】請求項4の発明は、熱交換器が、鉛、銅、ステンレス鋼、磁性材料等の熱容量の大なる球状物体により充填されたパルス管冷凍機熱交換器であって、メッシュに較べて空間率が小さいので、内部容積が同一の場合には、熱交換器の断面の外周を長く設計でき、熱効率を向上することが可能となる。この場合もパルス管をU字型に変形でき、装置全体をコンパクトに納めることが可能となる。
【0033】請求項5の発明は、熱交換器によりパルス管内部のガスの流れを整流化する結果、熱交換の効率が向上する効果が奏する。
【出願人】 【識別番号】595000793
【氏名又は名称】株式会社移動体通信先端技術研究所
【出願日】 平成11年1月8日(1999.1.8)
【代理人】 【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
【公開番号】 特開2000−205674(P2000−205674A)
【公開日】 平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願番号】 特願平11−2854