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【発明の名称】 冷凍サイクル装置
【発明者】 【氏名】吉田 雄二

【氏名】岡座 典穂

【氏名】船倉 正三

【氏名】松尾 光晴

【要約】 【課題】従来、アンモニア冷媒を用いる冷凍サイクル装置では、圧縮機からアンモニア冷媒とともに吐出された潤滑油が圧縮機に帰還しなくなる恐れがある。

【解決手段】少なくとも圧縮機1、凝縮器4(または6)、絞り装置5および蒸発器6(または4)を接続した循環回路14と、その循環回路14に封入された、アンモニアおよび、そのアンモニアと共沸様混合物を作る炭化水素類を含む混合作動流体と、アンモニアと非溶解性の鉱油および/またはアルキルベンゼン油の圧縮機用潤滑油とを備え、炭化水素類として、プロピレン、プロパンまたはジメチルエーテルを用い、その炭化水素類を、アンモニアとの共沸組成比以上の組成比となるように充填する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも圧縮機、凝縮器、絞り装置および蒸発器を接続した循環回路と、その循環回路に封入された、アンモニアおよび、そのアンモニアと共沸様混合物を作る炭化水素類を含む混合作動流体と、アンモニアと非溶解性の鉱油および/またはアルキルベンゼン油の圧縮機用潤滑油とを備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】 前記炭化水素類は、プロピレン、プロパンおよびジメチルエーテルのうちの全部または一部であることを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】 前記炭化水素類は、前記アンモニアとの共沸組成比以上の組成比となるように充填されることを特徴とする請求項2記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】 前記炭化水素類はプロピレンであって、そのプロピレンは前記アンモニアに対して70〜80重量%で充填されることを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】 前記炭化水素類はプロパンであって、そのプロパンは前記アンモニアに対して65〜75重量%で充填されることを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】 前記炭化水素類はジメチルエーテルであって、そのジメチルエーテルは前記アンモニアに対して40〜50重量%で充填されることを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】 前記循環回路を構成する金属材料は銅合金であることを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】 前記圧縮機からの前記混合作動流体の吐出温度を管理して、前記吐出温度が所定の温度を超えた場合、前記循環回路の凝縮器出口からも前記圧縮機に前記混合作動流体を注入することを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アンモニアおよび、そのアンモニアと共沸様混合物を作る炭化水素類を含む混合作動流体、および、アンモニアと非溶解性の圧縮機用潤滑油を用いたエアコン、冷凍機等の冷凍サイクル装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、エアコン、冷凍機等の冷凍サイクル装置は、圧縮機、必要に応じて四方弁、凝縮器、キャピラリーチューブや膨張弁等の絞り装置、蒸発器、アキュームレータ等を配管接続して冷凍サイクルを構成し、その内部に冷媒を循環させることにより、冷却または加熱作用を行っている。これらの冷凍サイクル装置における冷媒としては、ハロゲン化炭化水素類や酸素を含むエーテル類が知られ、ハロゲン化炭化水素類はR○○○、酸素を含むエーテル類はE○○○と記すことが、米国ASHRAE34規格により規定されている。
【0003】エアコン、空調機等においては、利用温度としては凝縮温度は実質上50℃、蒸発温度は実質上0℃の範囲において通常使用され、中でもR22(クロロジフルオロメタン、CHClF2、沸点−40.8℃)が冷媒として幅広く用いられている。また冷凍機等においては、利用温度はやや低いが、中でもR502(R22とR115:クロロペンタフルオロエタンの共沸冷媒、沸点−45.6℃)が冷媒として幅広く用いられてきた。このR22は塩素を含むフッ化炭化水素類(HCFC冷媒)、R502の成分であるR115は水素を含まないフッ化塩化炭素類(CFC冷媒)であり、成層圏オゾン破壊係数があるため、すでにモントリオール国際条約によって使用量及び生産量の規制が決定されている。成層圏オゾン層に及ぼす影響をほとんどなくするためには、分子構造中に塩素を含まないことが必要条件とされており、この可能性のあるものとして別の塩素を含まないフッ化炭化水素類(HFC冷媒)の代替冷媒が提案されている。
【0004】塩素を含まないフッ化炭化水素類(HFC冷媒)としては、ジフルオロメタン(CH2F2、R32、沸点−51.7℃)、ペンタフルオロエタン(CF3-CHF2、R125、沸点−48.1℃)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF3-CH2F、R134a、沸点−26.1℃)等の混合冷媒が、代替冷媒候補として考えられている。
【0005】ここで、HFC冷媒は、地球環境問題のもう一つの課題である地球温暖化に対する影響を示す地球温暖化係数(以下GWPと記す)が、従来のHCFC冷媒のR22と同程度に大きいという欠点をもつ。
【0006】一方、従来から用いられてきたアンモニア(NH3、R717、沸点−33.4℃)を冷媒として用いる場合には、物質としてのオゾン破壊係数や地球温暖化係数はないという利点をもつ。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アンモニア冷媒には毒性や弱可燃性の欠点がある。その欠点については、アンモニア冷媒を用いた1次冷媒サイクルと、間接的に接続されている2次冷媒サイクルを用いれば、負荷側と切り離されているため、大いに低減することができる。
【0008】また、アンモニア冷媒は、毒性や弱可燃性があるという欠点の他に、従来の圧縮機用潤滑油として用いられてきた鉱油やアルキルベンゼン油と相溶性が悪く、圧縮機から冷媒と一緒に吐出された潤滑油が低温の蒸発器から圧縮機に帰還しなくなる恐れがある。このため、アンモニア冷媒を、アンモニアと非溶解性の潤滑油と一緒に用いる場合には、凝縮器や蒸発器などへ潤滑油が滞留するのを防止するための油分離器などの設備を必要とし、または圧縮機用潤滑油として相溶性や流動性の良いポリアルキレングリコール油やエステル油を用いることが望ましいものとされている。しかしながら、吸水性の高いアンモニア冷媒と一緒に用いる場合、エステル油は加水分解しやすく、化学材料的な信頼性について細心の注意を払う必要がある。また、ポリアルキレングリコール油は、電気絶縁性が低いため、圧縮機の構造として、特別の配慮を必要とし、エネルギー効率を低下させるものである。
【0009】また、アンモニア冷媒は、吸水性が高く、冷凍サイクル装置中に含まれる水分が、従来の冷凍サイクル装置を構成する金属材料、特に熱交換器や接続配管を構成する銅の腐食を促進させるため、水分管理が重要であり、鉄系等の金属材料を使用する必要があるため、生産性が悪いものであった。
【0010】さらに、アンモニア冷媒は、物質としての性質から、冷凍サイクル装置の圧縮機からの吐出温度が高くなるため、圧縮機の吐出側に接続された油分離器を別の手段で冷却する必要があるものであった。
【0011】本発明は、従来、アンモニア冷媒を用いる冷凍サイクル装置では、圧縮機からアンモニア冷媒とともに吐出された潤滑油が圧縮機に帰還しなくなる恐れがあるという課題を考慮し、アンモニア冷媒を用いても、圧縮機からアンモニア冷媒とともに吐出された潤滑油が圧縮機に帰還する冷凍サイクル装置を提供することを目的とするものである。
【0012】また、本発明は、従来のアンモニア冷媒を用いる冷凍サイクル装置では、循環回路が腐食するという課題を考慮し、アンモニア冷媒を用いても、循環回路を腐食させない冷凍サイクル装置を提供することを目的とするものである。
【0013】さらに、本発明は、従来のアンモニア冷媒を用いる冷凍サイクル装置では、圧縮機の吐出側を冷却する必要があるという課題を考慮し、アンモニア冷媒を用いても、圧縮機の吐出側を冷却する必要がない冷凍サイクル装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】第1の本発明(請求項1に対応)は、少なくとも圧縮機、凝縮器、絞り装置および蒸発器を接続した循環回路と、その循環回路に封入された、アンモニアおよび、そのアンモニアと共沸様混合物を作る炭化水素類を含む混合作動流体と、アンモニアと非溶解性の鉱油および/またはアルキルベンゼン油の圧縮機用潤滑油とを備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0015】上述したように、本発明では、混合作動流体は、オゾン破壊係数や地球温暖化係数がほとんどないアンモニアおよび炭化水素類から実質上構成されるため、オゾン破壊係数や地球温暖化係数がほとんどないものである。またアンモニアと共沸様混合物を作る炭化水素類が、化学構造的に近い従来の鉱油、アルキルベンゼン油等の圧縮機用潤滑油との相溶性をもつことを利用して、従来の鉱油、アルキルベンゼン油等の加水分解のない圧縮機用潤滑油と一緒に、通常の冷凍サイクル装置にそのまま使用可能であるため、アンモニアと相溶性や流動性は良いが、その他の課題のあるポリアルキレングリコール油やエステル油を用いなくてもよくなるものである。なお、アンモニアと非溶解性の圧縮機用潤滑油は、鉱油またはアルキルベンゼン油の単独の圧縮機用潤滑油でもよいし、これらを混合した混合圧縮機用潤滑油でもよいことはもちろんのことである。
【0016】第2の本発明(請求項2に対応)は、第1の本発明の冷凍サイクル装置において、前記炭化水素類が、プロピレン(CH3-CH=CH2、R1270、沸点−47.7℃)、プロパン(CH3-CH2-CH3、R290 、沸点−42.1℃)およびジメチルエーテル(CH3-O-CH3、E170 、沸点−24.8℃)のうちの全部または一部であることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0017】また上述したように、本発明は、炭化水素類が強可燃性をもつが、プロピレンまたはプロパンまたはジメチルエーテルの炭化水素類がアンモニアと共沸様混合物を作ることが見いだされたものであり、冷凍サイクル装置の循環回路を循環する際に、アンモニアや炭化水素類の組成成分の変動を防止できるものである。特にこれらの共沸様混合物は、構成成分であるアンモニアと炭化水素類のいづれの沸点よりも低くなるため、エアコン、空調機等のR22代替としてではなく、冷凍機等のR502代替としても利用可能である。さらに、これらの炭化水素類を混合した混合作動流体は、アンモニア単独使用時の冷凍サイクル装置の圧縮機の吐出温度が高くなる課題を改善する。
【0018】第3の本発明(請求項3に対応)は、第2の本発明の冷凍サイクル装置において、前記炭化水素類が、前記アンモニアとの共沸組成比以上の組成比となるように充填されることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0019】第4の本発明(請求項4に対応)は、第1の本発明の冷凍サイクル装置において、前記炭化水素類がプロピレンであって、そのプロピレンが前記アンモニアに対して70〜80重量%で充填されることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0020】第5の本発明(請求項5に対応)は、第1の本発明の冷凍サイクル装置において、前記炭化水素類がプロパンであって、そのプロパンが前記アンモニアに対して65〜75重量%で充填されることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0021】第6の本発明(請求項6に対応)は、第1の本発明の冷凍サイクル装置において、前記炭化水素類がジメチルエーテルであって、そのジメチルエーテルが前記アンモニアに対して40〜50重量%で充填されることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0022】また上述したように、本発明では、冷凍サイクル装置に充填され、アンモニアと混合される、プロピレンまたはプロパンまたはジメチルエーテルの炭化水素類から選ばれた1種の混合組成を、アンモニアと共沸混合物を作る組成比より若干多い組成比とすることによって、アンモニアと共沸様混合物を作る炭化水素類が、アンモニアと非溶解性の鉱油および/またはアルキルベンゼン油の圧縮機用潤滑油に選択的に溶解するため、冷凍サイクル運転時には、混合作動流体を共沸様混合物として循環させることが可能となるものである。なお、アンモニアと共沸混合物を作る際のプロピレン、プロパンおよびジメチルエーテルのアンモニアに対しての重量比は、それぞれ約70重量%、約65重量%、約40重量%である。その重量比については後に説明する。
【0023】第7の本発明(請求項7に対応)は、第1の本発明の冷凍サイクル装置において、前記循環回路を構成する金属材料が銅合金であることを特徴とする冷凍サイクル装置である。混合作動流体中に炭化水素類が含まれているので、混合作動流体中のアンモニア成分の割合が相対的に減少することと、冷凍サイクル装置中に含まれる水分が炭化水素類にも高い溶解性を示すことにより、銅合金の腐食の進行を防止できるものである。
【0024】第8の本発明(請求項8に対応)は、第1の本発明の冷凍サイクル装置において、前記圧縮機からの前記混合作動流体の吐出温度を管理して、前記吐出温度が所定の温度を超えた場合、前記循環回路の凝縮器出口からも前記圧縮機に前記混合作動流体を注入することを特徴とする冷凍サイクル装置である。循環回路の凝縮器出口からも圧縮機に混合作動流体を注入することにより、炭化水素類を混合した混合作動流体が、アンモニア単独使用時の冷凍サイクル装置の圧縮機の吐出温度が高くなる課題を改善する効果を、より有効ならしめるものである。また圧縮機の吐出温度が上昇する場合の混合作動流体(液冷媒)の注入位置は、循環回路の凝縮器出口から1台の圧縮機のシリンダに注入する場合だけでなく、2個の絞り装置の中間から2台の圧縮機の中間に液冷媒を注入してもよいことはもちろんのことである。
【0025】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0026】(実施の形態1)最初に、アンモニア(NH3、R717、沸点−33.4℃)にいくつかの炭化水素類を混合した場合の共沸性を調べた。室温状態(25℃)で、所定量に計量されたアンモニアを一部充填したベッセル内に、炭化水素類を徐々に導入し、圧力の変化を調べた。プロピレン(CH3-CH=CH2、R1270、沸点−47.7℃)の場合は、アンモニアに対して約70重量%を導入した所で最も高い圧力1.82MPaを示した。またプロパン(CH3-CH2-CH3、R290 、沸点−42.1℃)の場合は、アンモニアに対して約65重量%を導入した所で最も高い圧力1.89MPaを示した。さらにジメチルエーテル(CH3-O-CH3、E170 、沸点−24.8℃)の場合は、アンモニアに対して約40重量%を導入した所で最も高い圧力1.07MPaを示した。これらの最高圧力は、25℃におけるアンモニアと各炭化水素類の単独圧力よりも格段に高く、共沸様混合物を作っていると考えられる。従って逆に、これらの共沸様混合物の大気圧における標準沸点は、構成成分であるアンモニアと各炭化水素類のいづれの単独の場合の沸点よりも低くなることが容易に予測できる。
【0027】さらに、これらの共沸様混合物を混合作動流体として冷凍サイクル装置に充填する場合には、アンモニアと混合される、プロピレン、プロパンまたはジメチルエーテルの炭化水素類の混合組成を、アンモニアとの共沸組成比以上の組成比となるようにすることが望ましいものであり、アンモニアと共沸様混合物を作る炭化水素類が、アンモニアと非溶解性の鉱油および/またはアルキルベンゼン油の圧縮機用潤滑油に選択的に溶解することを考慮して、各共沸組成比から約10重量%増加させた組成までが適当なものである。
【0028】従って、鉱油および/またはアルキルベンゼン油の圧縮機用潤滑油を使用する冷凍サイクル装置中でアンモニアと共沸様混合物を作るように炭化水素類を混合させるには、プロピレンの場合は70〜80重量%、プロパンの場合は65〜75重量%、ジメチルエーテルの場合は40〜50重量%が、適当なものである。
【0029】また、アンモニアを冷媒として単独使用する場合には、冷凍サイクル装置の圧縮機から吐出されるアンモニア冷媒の吐出温度はかなり高くなるが、炭化水素類は吐出温度を低下させる効果があるため、これらの炭化水素類を混合した混合作動流体を冷凍サイクル装置に封入する場合には、圧縮機からの混合作動流体の吐出温度が低くなるものである。
【0030】(実施の形態2)図1に、本発明の実施の形態2の、負荷側と2次冷媒サイクルにより間接的に接続されている室外に設置された1次側の冷凍サイクル装置の一実施例の構成図を示す。1次側冷凍サイクル装置は、一体型の匡体の内部に、インバータ2により駆動される圧縮機1、四方弁3、凝縮器や蒸発器として作用する熱源側熱交換器4、キャピラリーチューブや膨張弁等の2個の絞り装置5a、5b、蒸発器や凝縮器として作用する負荷側熱交換器6、アキュームレータ7、等を配管接続して循環回路14を構成し、熱源ファン8は熱源側熱交換器4を外気と熱交換している。また2個の絞り装置5a、5bの間から、圧縮機1のシリンダ(図示せず)の中間に混合作動流体(液冷媒)を注入するごとく、全閉全開式の膨張弁9を配管接続し、圧縮機1と四方弁3の間の混合作動流体の吐出配管には温度センサ10を設置している。この1次側冷凍サイクル装置には、アンモニア及び、アンモニアとの共沸組成比より若干多い組成比のプロピレンの2成分からなる混合作動流体(混合冷媒)と、アルキルベンゼン油の圧縮機1用潤滑油が封入されている。水等を2次冷媒とする2次冷媒サイクルは、循環ポンプ11が1次側の負荷側熱交換器6と熱交換された2次冷媒を、室内に設置された室内側熱交換器12に搬送し、室内ファン13は室内側熱交換器12を循環する2次冷媒を室内空気と熱交換している。
【0031】アンモニアとプロピレンの混合作動流体が冷媒として1次冷凍サイクル装置中を循環する際に、負荷側熱交換器6が凝縮器として作用する場合には2次冷媒サイクルは加熱作用の暖房運転、負荷側熱交換器6が蒸発器として作用する場合には2次冷媒サイクルは冷却作用の冷房運転を行う。
【0032】暖房運転時においては、冷媒が圧縮機1へ液バックしやすく、アキュームレータ7内において気相と液相の組成分離が起こる可能性がある。しかしながら、共沸組成比より若干多い組成比の多い分のプロピレンがアルキルベンゼン油に選択的に溶解しているため、アキュームレータ7内において気相と液相の組成分離が起こったとしても、気相および液相中のプロピレンとアンモニアは共沸様混合物となり、循環組成とほぼ同一である。また、プロピレンとアルキルベンゼン油の潤滑油との相溶性を利用して、圧縮機1から冷媒と一緒に吐出された潤滑油が低温のアキュームレータ7から圧縮機1に帰還することを保証することができる。
【0033】また、炭化水素類のプロピレンは、圧縮機1の吐出温度を低下させる効果があるため、このアンモニアとプロピレンからなる混合冷媒を封入した1次側冷凍サイクル装置は、圧縮機1の吐出温度が低くなるものである。さらに、圧縮機1中に滞留するアルキルベンゼン油の潤滑油は、圧縮機1が高温になり、冷媒中に微少の水分が含まれることがあっても、エステル油のように加水分解することがなく、アンモニアとプロピレンからなる混合冷媒は、従来の鉱油、アルキルベンゼン油等の加水分解のない圧縮機用潤滑油と一緒に、通常の冷凍サイクル装置にそのまま使用可能であるため、従来吸水性の高いアンモニア冷媒と一緒に用いていたエステル油が加水分解しやすいという欠点を改良できるものである。
【0034】このようにして、混合冷媒中にプロピレンが含まれることによるアンモニア成分の減少と、冷凍サイクル装置中に含まれる水分が炭化水素類であるプロピレンにも高い溶解性を示す効果とが相まって、冷凍サイクル装置の循環回路を構成する熱交換器や接続配管の銅合金の腐食の進行を防止できるものである。従って、従来アンモニアには使用困難とされてきたCuZn系等の銅合金が使用可能となり、生産性が向上するものである。
【0035】次に、冷房運転時においては、冷媒が圧縮機1へ液バックすることはほとんどないが、外気温度によっては、圧縮機1の吐出温度が上昇する可能性がある。この場合には、圧縮機1と四方弁3の間の吐出配管に設置した温度センサ10を用いて圧縮機1からの冷媒(混合作動流体)の吐出温度を管理して、吐出温度が所定の温度を超えた場合膨張弁9を開放制御し、2個の絞り装置5a、5bの間から圧縮機1のシリンダに液冷媒を注入することにより、圧縮機1の吐出温度の低下をより有効ならしめることができる。必要に応じてインバータ2により圧縮機1の回転数を低下させてもよい。
【0036】またアンモニアと混合される炭化水素類として、プロピレンの代わりに、プロパンまたはジメチルエーテルを用いても、同様の効果を期待することができ、圧縮機用潤滑油は、アルキルベンゼン油の代わりに、鉱油を用いても、同様の効果を期待することができる。
【0037】以上の説明から明らかなように以下の効果が生じる。すなわち(1)アンモニアとの共沸組成比よりも若干多い組成比の炭化水素類をアンモニアとともに用いることにより、冷凍サイクル装置中では主に炭化水素類が圧縮機用潤滑油に溶解するため、冷凍サイクル中のすべての構成要素中でアンモニアと炭化水素類との混合割合をほぼ同一の共沸様組成とすることができる。(2)選択された炭化水素類は、化学構造的に近い鉱油やアルキルベンゼン油の従来の圧縮機用潤滑油との相溶性を改善でき、アンモニアに対し、高コストで、水分の共存下において分解しやすいエステル油や、電気絶縁性が低いポリアルキレングリコール油を用いなくてよい。(3)アンモニアと一部の炭化水素類からなる共沸様混合物は、構成成分であるアンモニアと炭化水素類のいづれの沸点よりも低くなるため、エアコン、空調機等のR22代替としてではなく、冷凍機等のR502代替としても利用可能である。(4)混合作動流体中のアンモニア成分の減少と、冷凍サイクル装置中に含まれる水分が炭化水素類にも高い溶解性を示すため、銅合金の腐食の進行を防止できる。(5)炭化水素類を混合した混合作動流体が、アンモニア単独使用時の冷凍サイクル装置の圧縮機の吐出温度が高くなる課題を改善する。
【0038】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明は、アンモニア冷媒を用いても、圧縮機からアンモニア冷媒とともに吐出された潤滑油が圧縮機に帰還する冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0039】また、本発明は、従来のアンモニア冷媒を用いる冷凍サイクル装置では、循環回路が腐食するという課題を考慮し、アンモニア冷媒を用いても、循環回路を腐食させない冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0040】さらに、本発明は、アンモニア冷媒を用いても、圧縮機の吐出側を冷却する必要がない冷凍サイクル装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成11年1月13日(1999.1.13)
【代理人】 【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
【公開番号】 特開2000−205669(P2000−205669A)
【公開日】 平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願番号】 特願平11−7077