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【発明の名称】 圧力制御弁
【発明者】 【氏名】戸松 義貴

【氏名】伊勢 貞武

【要約】 【課題】ダイヤフラムの湾曲部の疲労破壊を防止する。

【解決手段】ダイヤフラム325と上側支持部材326との間に、湾曲部325aの曲率が所定範囲外となるまで(湾曲部325aが略平板状となるまで)ダイヤフラム325が変形することを抑制する変形抑制部328aを有するプレート328を配設する。これにより、湾曲部325aが大きく変形することを防止できる。したがって、圧縮機100(冷凍サイクル)の起動・停止を繰り返しても、湾曲部325aが早期に疲労破壊してしまうことを防止できるので、ダイヤフラム325の耐久性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 蒸気圧縮式冷凍サイクルの放熱器(200)から蒸発器(400)まで至る冷媒流路に配置され、前記放熱器(200)出口側の冷媒温度に応じて前記放熱器(200)出口側の冷媒圧力を制御する圧力制御弁であって、前記冷媒流路内に位置し、前記冷媒流路を上流側空間(315)と下流側空間(316)とに仕切るとともに、前記上流側空間(315)と前記下流側空間(316)と連通させる弁口(322)が形成された隔壁部(321)と、前記上流側空間(315)内に密閉空間(324)を形成し、前記密閉空間(324)内外の圧力差に応じて変位する、薄膜状の変位部材(325)、前記変位部材(325)の厚み方向一端側に配設され、前記変位部材(325)と共に前記密閉空間(324)を形成する第1部材(326)と、前記変位部材(325)の厚み方向他端側に配設され、前記第1部材(326)と共に前記変位部材(325)を保持する第2部材(327)と、前記変位部材(325)の厚み方向他端側にて前記変位部材(325)に接触して前記変位部材(325)と連動して変位し、前記弁口(322)を開閉する弁体(323)とを備え、前記変位部材(325)の厚み方向他端側には、前記放熱器(200)出口側の冷媒圧力が作用し、前記変位部材(325)の外縁部には、その厚み方向に突出して湾曲する湾曲部(325a)が形成され、さらに、前記変位部材(325)の厚み方向一端側には、前記湾曲部(325a)の曲率が所定範囲外となるまで前記変位部材(325)が変位することを抑制する変形抑制部(328a)が設けられていることを特徴とする圧力制御弁。
【請求項2】 前記変形抑制部(328a)は、前記変位部材(325)以上の剛性を有し、かつ、前記湾曲部(325a)の湾曲形状に沿うような形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御弁。
【請求項3】 前記変形抑制部(328a)は、前記変位部材(325)が中立状態にあるときに前記湾曲部(325a)に接触していることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力制御弁。
【請求項4】 前記変形抑制部(328a)は、前記第1部材(326)と別体に設けられたプレート(328)に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の圧力制御弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの放熱器出口側の冷媒圧力を制御する圧力制御弁に関するもので、二酸化炭素(CO2 )等の超臨界域で冷媒を使用す超臨界冷凍サイクルに用いて有効である。
【0002】
【従来の技術】圧力制御弁(膨張弁)は、例えば特開平7−133972号公報に記載のごとく、ダイヤフラムを挟んで一方側に形成された密閉空間内に冷媒等のガスを封入するとともに、他方側に減圧する前の高圧冷媒の圧力を作用させることにより、ダイヤフラムを変位させて弁体を可動させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、密閉空間内の圧力は、密閉空間内の冷媒温度に応じて変化するのに対して、ダイヤフラムの他方側には、圧縮機の吐出圧(放熱器出口側の冷媒圧力)が直接作用する。したがって、例えば、密閉空間内の冷媒温度が室温まで低下しているときに、圧縮機を起動すると、密閉空間内の冷媒圧力と圧縮機の吐出圧との差圧が大きくなるため、ダイヤフラムが過度に変形変位してしまう。
【0004】一方、ダイヤフラムの外縁部には、密閉空間内外の圧力差に対して応答性良くダイヤフラムが変位するようにその厚み方向に突出して湾曲する湾曲部が形成されている。このため、ダイヤフラムが変形変位すると、湾曲部に応力が集中してしまうので、圧縮機(冷凍サイクル)の起動・停止を繰り返すと、湾曲部が早期に疲労破壊してしまうおそれが高い。
【0005】本発明は、上記点に鑑み、湾曲部の疲労破壊を防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項1〜4に記載の発明では、変位部材(325)の厚み方向他端側には、放熱器(200)出口側の冷媒圧力が作用し、変位部材(325)の外縁部には、その厚み方向に突出して湾曲する湾曲部(325a)が形成され、さらに、変位部材(325)の厚み方向一端側には、湾曲部(325a)の曲率が所定範囲外となるまで変位部材(325)が変位することを抑制する変形抑制部(328a)が設けられていることを特徴とする。
【0007】これにより、湾曲部(325a)が大きく変形することを防止できるので、蒸気圧縮式冷凍サイクルの起動・停止を繰り返しても、湾曲部(325a)が早期に疲労破壊してしまうことを防止できる。延いては、変位部材(325)の耐久性を向上させることができる。因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0008】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)本実施形態は、本発明に係る圧力制御弁を二酸化炭素(CO2 )を冷媒とする超臨界冷凍サイクル(CO2 サイクル)に適用したものであって、図1は超臨界冷凍サイクル(以下、サイクルと略す。)の模式図である。
【0009】図1中、100は冷媒を吸入圧縮する圧縮機であり、200は圧縮機100にて圧縮された冷媒を冷却する放熱器(ガスクーラ)である。そして、放熱器200の出口側には、放熱器200の出口側の冷媒温度に基づいて放熱器200の出口側の冷媒圧力を制御する圧力制御弁300が配設されており、この圧力制御弁300は高圧の冷媒を減圧する減圧器も兼ねている。
【0010】400は圧力制御弁300にて減圧された液相冷媒を蒸発させる蒸発器であり、500は気相冷媒と液相冷媒とを分離するとともに、サイクル中の余剰冷媒を一時的に蓄えるアキュームレータ(タンク手段)である。なお、600は放熱器200から流出する冷媒を圧力制御弁300を迂回させて蒸発器400側に導くバイパス通路であり、このバイパス通路600には、放熱器200出口側の圧力が所定値(本実施形態では約15[MPa])以上となったときに開くリリーフ弁(弁手段)610が配設されている。
【0011】そして、圧縮機100、放熱器200、圧力制御弁300、蒸発器400及びアキュームレータ500は、それぞれ配管Pによって接続されて閉回路を形成している。次に、圧力制御弁300の詳細構造について図2を用いて述べる。310は放熱器200から蒸発器400に至る冷媒流路の一部を形成するとともに、制御弁本体320を収納するケーシングであり、このケーシング310は、放熱器200側に接続される流入口313が形成された第1ケーシング311、及び蒸発器400側に接続される流出口314が形成された第2ケーシング312から形成されている。
【0012】321は、制御弁本体320のケーシングの一部を兼ねるとともに、制御弁本体320を第2ケーシング312にネジ止め固定すための取付部(隔壁部)であり、この取付部(隔壁部)321は、ケーシング310内の空間(冷媒流路)を上流側空間315と下流側空間316とに仕切っている。そして、取付部(隔壁部)321には、両空間315、316とを連通させる弁口322が形成されており、この弁口322は、針状のニードル弁体(以下、弁体と略す。)323により開閉される。
【0013】また、上流側空間315には、密閉空間(ガス封入室)324が形成されており、この密閉空間324は、密閉空間324内外の圧力差に応じて変形変位する、ステンレス材からなる薄膜状のダイヤフラム(変位部材)325、及びダイヤフラム325の厚み方向一端側に配設されたダイヤフラム上側支持部材(第1部材)326から形成されている。
【0014】一方、ダイヤフラム325の厚み方向他端側には、ダイヤフラム上側支持部材(以下、上側支持部材と略す。)326と共にダイヤフラム325の外縁部を挟み込んでダイヤフラム325を保持するダイヤフラム下側支持部材(保持部材)327が配設されており、このダイヤフラム下側支持部材(以下、下側支持部材と略す。)327のうち、ダイヤフラム325の外縁部に形成された湾曲部(変形促進部)325aに対応する部位には、図3に示すように、湾曲部325aの湾曲形状に沿う形状に形成された凹部327aが形成されている。
【0015】なお、湾曲部325aとは、ダイヤフラム325の径外方側の一部をその厚み方向(本実施形態では下側支持部材327側)に向けて突出するように湾曲させたもので、ダイヤフラム325が密閉空間324内外の圧力差に略比例して変形変位するようにするためのものである。また、ダイヤフラム325と上側支持部材326との間には、湾曲部325aの曲率が所定範囲外となるまで(湾曲部325aが略平板状となるまで)ダイヤフラム325が変形変位することを抑制すべく、上側支持部材326と別に設けられた金属製のプレート328が配設されている。
【0016】そして、プレート328は、湾曲部325aの湾曲形状に沿うような形状にプレス成形されているとともに、このプレート328のうち湾曲形状に沿うように下側支持部材327側に向けて突出するように湾曲した部位(以下、この部位を変形抑制部328aと呼ぶ。)は、ダイヤフラム325の剛性と同等又はそれより高い剛性を有するように、材質及び板厚等が選定されている。
【0017】また、ダイヤフラム325は、ダイヤフラム325が中立状態から弁体304側(ダイヤフラム325の厚み方向他端側)に向けて変位したときに、弁体323が弁口322を閉じる向きに変位し、一方、ダイヤフラム325が厚み方向一端側(密閉空間324側)に向けて変位したときに、弁体323が弁口322を開く向きに変位するように、弁体323の長手方向一端側にステンレス材料からなる補強部材332と共に溶接されている。
【0018】ここで、ダイヤフラム325が中立状態であるとは、ダイヤフラム325が変形変位しておらず、変形変位に伴う応力が略0の状態をいう。また、ダイヤフラム325の厚み方向他端側には、圧力導入口329を介して放熱器200出口側の冷媒圧力(圧縮機100の吐出圧)が作用する。一方、ダイヤフラム325の厚み方向一端側には、図2に示すように、弁体323を介してコイルバネ(弾性部材)330の弾性力が作用するとともに、密閉空間324の内圧が作用しており、密閉空間324の内圧は、上流側空間315内の冷媒温度に応じて変化する。
【0019】したがって、圧力制御弁300(弁体323)は、上流側空間315に位置する密閉空間324により放熱器200出口側の冷媒温度を感知して、その内圧による力とコイルバネ330の弾性力との和(以下、この和を閉弁力と呼ぶ。)と、放熱器200出口側の冷媒圧力による力(以下、この力を開弁力と呼ぶ)との釣り合いにより可動する。
【0020】ところで、本実施形態では、密閉空間324内には、冷媒(CO2 )がその温度が0℃での飽和液密度から臨界点での飽和液密度に至る範囲の密度(本実施形態では約600kg/m3 )で封入され、一方、コイルバネ330の初期設定荷重(弁口322を閉じた状態での弾性力)は、冷媒が臨界圧力以下の凝縮域において、所定の過冷却度(本実施形態では約10℃)を有するように設定されている。
【0021】因みに、初期設定荷重は、密閉空間324内での圧力換算で約0.5〜1[MPa]であり、初期設定加重は、調整ナット331を回すことにより調節する。このため、圧力制御弁300は、図4の太い実線ηmax に示すように、超臨界領域では、600kg/m3 の等密度線に沿うように、放熱器200出口側の冷媒温度に基づいて放熱器200出口側の冷媒圧力(図4のC点)を制御する。一方、臨界圧力以下では、600kg/m3 の等密度線は、飽和液線SLに略沿って変化する。このとき、コイルバネ330によって弁体323に初期荷重が与えられているので、放熱器200出口側の冷媒が約10℃の過冷却度(サブクール)を有するように放熱器200出口側の冷媒圧力が制御される。
【0022】なお、324aは密閉空間324(感温部)に冷媒を封入する封入管であり、この封入管324aは、上流側空間315内の冷媒温度に対して密閉空間324内の冷媒温度を時間差無く追従させるべく、銅などの熱伝導率の高い金属にて形成されている。次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0023】本実施形態によれば、ダイヤフラム325と上側支持部材326との間には、湾曲部325aの曲率が所定範囲外となるまで(湾曲部325aが略平板状となるまで)ダイヤフラム325が変形変位することを抑制する変形抑制部328aが設けられているので、湾曲部325aが大きく変形することを防止できる。したがって、圧縮機100(冷凍サイクル)の起動・停止を繰り返しても、湾曲部325aが早期に疲労破壊してしまうことを防止できるので、ダイヤフラム325の耐久性を向上させることができる。
【0024】また、ダイヤフラム325は、ダイヤフラム325が中立状態からその厚み方向他端側に向けて変位したときに弁口322を閉じる向きに変位し、厚み方向一端側に向けて変位したときに弁口322を開く向きに変位するように構成されているので、ダイヤフラム325は中立状態からダイヤフラム325の厚み方向他端側及び一方側に変形変位することとなる。
【0025】したがって、弁体322の最大変位量に比べて、ダイヤフラム325の最大変形変位量を小さくすることができるので、ダイヤフラム325を中立状態から厚み方向一方側及び他方側のいずれか一方側のみで変形変位させる場合に比べて、ダイヤフラム325に発生する最大応力を小さくすることができる。延いては、ダイヤフラム325の耐久性を向上させることができる。
【0026】ところで、制御弁本体320単体を大気中に放置したとき、すなわち組立て工程における密閉空間324内外の圧力差(大気圧と密閉空間324との圧力差)は、冷凍サイクル中に圧力制御弁300を配設した場合における密閉空間324内外の圧力差(上流側空間315と密閉空間324との圧力差)に比べて非常に大きいので、組立て工程にダイヤフラム325が破損する可能性が高い。
【0027】これに対して、本実施形態では、下側支持部材327に湾曲部325aに沿う形状に形成された凹部327aが形成されているので、組立て工程中に、密閉空間324内外の圧力差により湾曲部325aにてダイヤフラム325が大きく変形することを防止することができる。延いては、組み立て工程時に、ダイヤフラム325が湾曲部325aにて破損することを防止できる。
【0028】また、変形抑制部328aは、金属製のプレート328にプレス加工を施すことにより形成されているので、例えば上側支持部材326の内壁に直接に変形抑制部328aを形成する場合に比べて、容易に変形抑制部328aを設けることができる。
(第2実施形態)第1実施形態では、金属製のプレート328にプレス加工を施して変形抑制部328aを設けたが、本実施形態は、図5に示すように、樹脂又はゴムにてプレートを形成したものである。
【0029】なお、このとき、プレート328(変形抑制部328a)の剛性は、第1実施形態と同様に、ダイヤフラム325と同等又はそれ以上とする必要がある。
(第3実施形態)本実施形態は、通常の冷房負荷においては、弁体323(ダイヤフラム325)の変位量(リフト量)は微少であることに基づいてなされたものである。具体的には、図6に示すように、ダイヤフラム325が中立状態にあるときに、湾曲部325aに変形抑制部328aが接触するように構成したものである。
【0030】そして、本実施形態では、ダイヤフラム325が中立状態にあるときに、弁口322が所定の開度を有するように、弁体323及びダイヤフラム325の位置を設定するとともに、通常の圧力制御時においては、ダイヤフラム325を中立状態にある位置より下側支持部材327側にて使用するように構成したものである。
【0031】これにより、圧縮機100(冷凍サイクル)の起動時に、ダイヤフラム325が中立状態を越えて大きく変形変位することを防止できるので、湾曲部325aが早期に疲労破壊してしまうことを確実に防止できる。
(第4実施形態)本実施形態は、図7に示すように、弁体323のうち弁口322の弁座(エッジ部)322aに接触する弁部323aに、弁体323が弁口322を開く向きに所定量だけ変位(リフト)したときに、それ以前に比べて、弁体323の変位量(リフト量)に対する実際の弁口322の開口面積の増加量が大きくなるように、弁部323aのテーパ角度θを弁体323の長手方向部位によって変化させた(θ1 >θ2 )としたものである。
【0032】これにより、弁体323が弁口322を開く向きに所定量だけ変位(リフト)したときに、それ以前に比べて、弁口322の開口面積が大きく増加するので、放熱器200出口側の冷媒圧力(吐出圧)が大きく上昇することが防止される。したがって、密閉空間324内外の圧力差が増大することを防止できるので、湾曲部325a(ダイヤフラム325)が大きく変形変位することが防止され、ダイタフラム325の耐久性を向上させることができる。
【0033】ところで、本発明に係る圧力制御弁は、二酸化炭素を使用した冷凍サイクルに使用が限定されるものではなく、例えば、エチレン、エタン、酸化窒素等の超臨界域で使用する冷媒を用いた冷凍サイクルは勿論、フロンを冷媒とする冷凍サイクルにも適用することができる。また、上側支持部材326の内壁に直接に変形抑制部328aを形成してもよい。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
【出願日】 平成10年12月24日(1998.12.24)
【代理人】 【識別番号】100100022
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外1名)
【公開番号】 特開2000−193347(P2000−193347A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−367417