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【発明の名称】 水素吸蔵合金用フィルター
【発明者】 【氏名】浅野 潤一

【要約】 【課題】水素吸蔵合金の収納容器と通気路との途中に、粉末状の水素吸蔵合金が外部へ漏れだすのを防止するために配置するフィルターを安価に提供する。

【解決手段】収納容器1と通気管2との接続部分に配置されるフィルターFは、収納容器1と通気管2とを接続するチューブ11内にセラミックウール10を充填し、その両端部を網体からなる保持部材12,13で閉じて構成される。セラミックウール10は、充填率を調整することで通気抵抗を制御することができ、チューブ11に合わせて特定の形状に成形する必要がなく、しかも比較的安価である。チューブ11下端側に切断加工時に形成されるバリ14を残存させ、このバリ14に保持部材13を係止せしめる。従ってチューブの切断作業後にバリを除去する必要がなくなるので製作性が向上する。フィルターFは、セラミックウール10の清掃・交換が可能であり、所要箇所へ簡単に配置することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水素吸蔵合金の収納容器に接続した通気路中へ配置されて水素吸蔵合金の移動を阻止するためのフィルターであって、チューブ内にセラミックウールを充填して成ることを特徴とする水素吸蔵合金用フィルター。
【請求項2】 前記フィルターは、セラミックウールを充填したチューブの両端を通気性を有する保持部材で閉じて成るものである請求項1に記載の水素吸蔵合金用フィルター。
【請求項3】 前記チューブの少なくとも一端にバリを形成し、該バリに前記セラミックウール又は前記保持部材を係止させた請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金用フィルター。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素吸蔵合金の収納容器に接続した水素流通用の通気路内へ水素吸蔵合金が漏出して、バルブや圧力計等に悪影響を与えるのを阻止するためのフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】水素吸蔵合金は、水素の蓄蔵手段として、またヒートポンプや冷凍システム等の熱利用システムにおけるエネルギー源としての利用が提案されている。特に、環境保護の観点から、冷凍システムにおけるフロンの代替物としての利用が検討されている。水素吸蔵合金は、約1000倍の体積の水素を吸収・放出することができ、この水素を吸収・放出する過程で、熱エネルギーを放出・吸収する。すなわち、水素を吸収する際に発熱反応を起こし、水素を放出する際に吸熱反応を起こす。また、水素の放出・吸収反応は、水素分圧を変化させることで進行させることができ、しかも反応が可逆的であるから反復使用が可能であるという特性を持つ。従って、水素吸蔵合金を耐圧容器に収納し、この収納容器に対し水素を加圧供給することで熱エネルギーを供給する熱源とすることができ、反対に、収納容器に対し負圧を付与して水素を放出させることにより熱エネルギーを吸収する冷却源とすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】水素吸蔵合金の収納容器には、水素流通用の通気路が配管接続され、この通気路に、ポンプ・バルブ・圧力計等が接続される。ところで水素吸蔵合金は、水素の吸収・放出の効率を高めるため、微粉砕して粉末状とし、比表面積を大きく形成するのが普通である。そこで、粉末状の水素吸蔵合金が、収納容器から通気路へ漏出し、ポンプ・バルブ・圧力計等に悪影響を及ぼすのを防止するため、収納容器と通気路との接続部あるいは通気路の途中にフィルターが配置される。このフィルターは、従来、多孔質の焼結金属で製作したものが使用されており、比較的高価であった。また、焼結金属から成るフィルターを通気路に設置するには、フィルターを通気路に合わせて所定の形状に成形する必要があると共に、通気路側に特定の保持構造を設けねばならず、構造が複雑化し、コストが高くなるという問題を有している。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、粉末状の水素吸蔵合金が収納容器から外部へ漏れだすのを防ぐフィルターの新規な構造を提供するものであって、その特徴とするところは、水素吸蔵合金の収納容器に接続した通気路中へ配置され、チューブ内にセラミックウールを充填して成ることにある。この場合、前記フィルターを、セラミックウールを充填したチューブの両端を通気性を有する保持部材で閉じて成るものとすることができる。さらに前記チューブの少なくとも一端にバリを形成し、該バリに前記セラミックウール、又は、前記保持部材を係止させる構造を採用することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係るフィルターFを備えた水素吸蔵合金Zの収納容器1の一例を示すものである。同図(A)に示すように、収納容器1には、通気路を形成する通気管2が接続され、この通気管2に、圧力計3やバルブ4のほか、水素給排用のポンプ(図示せず)などが接続される。
【0006】本実施形態のフィルターFは、収納容器1と通気管2との接続部分に配置されるものであって、図1(B)に示す如く、収納容器1と通気管2とを接続するチューブ11内にセラミックウール10を充填し、その両端部を網体からなる保持部材12,13で閉じて構成したものである。フィルターFの主体として用いるセラミックウール10は、水素脆化しにくく耐熱性に優れているという特性を有するほか、充填率を調整することで通気抵抗を制御することが可能であり、チューブ11に合わせて特定の形状に成形する必要がなく、しかも比較的安価である等の多くの利点を有している。また本実施形態では、チューブ11の下端側(収納容器1側)に、チューブ切断加工時に形成されるバリ14を残存させ、このバリ14に保持部材13を係止せしめる構造を採用した。他方、チューブ11の上端側(通気管2側)に配置される保持部材12については、通気管2をチューブ11へ接続することによって押止される構造を採用している。従って本実施形態に係るフィルターFは、保持部材12,13を網体等の弾性変形し得る材質で形成することにより着脱が容易となり、必要に応じてセラミックウール10を清掃・交換するのが可能となる。上述の如く構成されるフィルターFは、収納容器1と通気管2との接続部分へ簡単に配置することができ、チューブ11内に充填したセラミックウール10により、収納容器1内から粉末状の水素吸蔵合金Zが外部へ漏れだすのを確実に防止する。
【0007】本発明に係るフィルターFは、図2に示すような構造も可能である。この実施形態は、チューブ11の両端部に切断加工によるバリ14,14を残存させ、このバリ14,14に、弾性変形可能な保持部材12,13を係止させる構造としたものである。かかる構造により、本実施形態のフィルターFは、切断加工したチューブ11を、後処理することなく、そのまま使用することができるという利点を有する。
【0008】なお、図示は省略するが、セラミックウール10は比較的保形性が良いから、前記保持部材12,13を省略して、セラミックウール10をチューブ11に形成したバリ14へ直接係止せしめる構成も採用可能である。また、セラミックウール10の保持部材12,13を用いる場合、これをチューブ11に係止させる手段として、切断加工時に形成されるバリを利用する以外に、図3に例示するような係止部材15をチューブ11に取着し、これに保持部材12,13を係合させる構造を採用することも妨げない。さらに保持部材12,13については、網体のほか、パンチングメタルなども使用可能である。
【0009】
【実施例】図4に示す水素吸蔵合金Zの収納容器1は、水素流通用の通気管2が接続されるほかに、初期活性化の有無を確認するためのパイロット部P、及び、熱交換器Qが設けられている。通気管2は、圧力計3,バルブ4,水素給排用ポンプ(図示せず)等が接続され、収納容器1への取付部分に本発明に係るフィルターFが配置されている。
【0010】パイロット部Pは、収納容器1へ水素の流通が可能に連結したケース20の内部に、収納容器1と同質の水素吸蔵合金Zを封入したものであって、その一部又は全体を透明ガラス(サイトガラス)等で形成して窓部21と成し、内部を目視により観察できるようなされている。窓部21は、拡大機能を持つレンズや、透明プラスチックで構成することも可能である。パイロット部Pと収納容器1とを接続する水素流通用の配管22内には、本発明に係るフィルターFが配置されており、パイロット部Pと収納容器1との間で水素吸蔵合金Zが移動するのを阻止している。なお、収納容器1及びパイロット部Pに対する水素吸蔵合金Zの適当な収納量は、それぞれの内容積の約80%程度とされる。
【0011】水素吸蔵合金Zは、初期活性化の過程で、発熱を生ずると共に、振動したり破砕したりする等の動的な振る舞いを起こす。そして初期活性化が完了すると、これらの運動が停止し合金粉末は鎮静化する。水素を流通可能に接続した収納容器1とパイロット部P内の水素吸蔵合金Zは、初期活性化工程中ほぼ等しい振る舞いを示すと考えられるので、本例では、パイロット部P内の水素吸蔵合金Zの挙動を窓部21から観察することにより、収納容器1における水素吸蔵合金Zの初期活性化の有無を確認することができ、また、その完了時期を容易に知ることができる。
【0012】熱交換器Qは、収納容器1内に充填した水素吸蔵合金Zを加熱し又は冷却する手段として設けられたものであり、例えばパイプ30内を温水又は冷水が循環流動するように構成されている。水素吸蔵合金Zは、加熱されると水素を放出し、冷却されると水素を吸収するという性質を有しているから、熱交換器Qにより水素吸蔵合金Zの温度を昇降させることで、水素の吸収・放出を制御することが可能である。
【0013】水素吸蔵合金Zの組成は、どのような熱利用システムに適用するかによって適宜選択される。一般に、中高温用の加熱システムにおける熱源として利用する場合には、例えばZrMn2 系合金が用いられ、その特性改善のため、これにCo及びAlを添加したZr−Mn−Co−Al系合金が開発されている。他方、低温用の冷凍システムにおける冷却源として利用する場合には、例えばLaNi5系合金が用いられ、その特性改善のため、これにYを添加したLa−Y−Ni系合金や、さらにMnを添加したLa−Y−Ni−Mn系合金などが提案されている。
【0014】ところで、低温用のLaNi5 系合金にYを添加すると、プラトー領域の傾斜やヒステリシスを悪化させることなく、平衡水素圧力を上昇させることができるという効果が得られるが、Yの添加によって得られるLa−Y−Ni系あるいはLa−Y−Ni−Mn系の水素吸蔵合金は、初期活性化が困難であり長時間を要するという欠点を有している。具体的には、Yを含む水素吸蔵合金を初期活性化するには、従来、これを収納容器に充填し、約30kg/cm2Gの圧力下の純粋な水素雰囲気(純度99.99%以上)に維持し、一昼夜放置するという工程を行っており、非常に能率が悪い。
【0015】そこで本実施例では、Yを含む水素吸蔵合金の初期活性化時間を短縮する手段として、次に説明するような方法を採用する。図4に示す収納容器1に、Yを含む初期活性化の困難な水素吸蔵合金A(例えばLa0.8 0.2 Ni5 )と初期活性化の比較的容易な水素吸蔵合金B(例えばLaNi5 ,LaNi4.7 Al0.3など)とを混合して充填する。この状態で、収納容器1に水素圧を付与して初期活性化を開始する。活性化工程の当初は、易活性化合金がまず活性化し水素を吸蔵する。このとき、易活性化合金は発熱して熱エネルギーを放出する。この熱エネルギーにより、難活性化合金の反応性を高めることができ、難活性化合金の初期活性化に要する時間を短縮させることができる。
【0016】さらに、ある程度まで易活性化合金の水素吸蔵が進行した段階で、熱交換器に温水を流通させ、熱エネルギーを供給する。すると、易活性化合金が熱エネルギーを吸収することによって吸蔵している水素を放出し、収納容器1内の水素圧を著しく高める。その結果、難活性化合金への水素の吸蔵が促進され、難活性化合金の初期活性化時間が短縮化する。このように本実施例にあっては、初期活性化の難易度が異なる2種類の水素吸蔵合金を混合して1つの収納容器1に収容せしめたことにより、易活性化合金の反応熱を活用して難活性化合金の反応性を高めることができ、さらに、易活性化合金が吸蔵する水素を水素供給源とすることで収納容器1の容積をはるかに越える大量の水素を難活性化合金の初期活性化に利用できるから、Yを含む難活性化水素吸蔵合金の初期活性化を、従来よりも短時間で完了させることが可能である。
【0017】前述の工程において、難活性化合金を含む水素吸蔵合金Zの初期活性化の有無及び初期活性化の終了時期は、収納容器1に接続したパイロット部Pの窓部21から観察することで確認できる。また本実施例では、収納容器1と通気管2との接続部、及び、収納容器1とパイロット部Pとの接続部それぞれに配置するフィルターFを、本発明に基づき安価なセラミックウールを主体とするもので構成したから、装置のコストダウンを図ることができる。
【0018】
【発明の効果】請求項1に係る本発明によれば、水素吸蔵合金の収納容器に接続した通気路中へ配置するフィルターをセラミックウールを主体として構成するので、製作が非常に容易である。またセラミックウールは比較的安価なので、コストを下げることができる。さらにセラミックウールは、通気路に合わせて特定形状に成形する必要がなく、しかも、充填密度を調節することで通気性能を容易に制御できるという利点を有している。請求項2に係る本発明は、フィルターを、セラミックウールを充填したチューブの両端を通気性を有する保持部材で閉じて成るものとしたので、取扱いが容易な独立した部材となり、所要箇所への取付作業が簡単になる。なお保持部材は、セラミックウールの膨張・移動を抑える働きを持つ。請求項3に係る本発明によれば、チューブの少なくとも一端にバリを形成し、このバリにセラミックウール又は保持部材を係止させる構造としたので、チューブを所定寸法に切断するだけでよく、バリを除去する後加工が不要になるので製作性が向上する。また、バリをセラミックウール又は保持部材の係止手段に利用するから、セラミックウールや保持部材の係止構造を別途設ける必要がない。
【出願人】 【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ電機株式会社
【出願日】 平成10年12月4日(1998.12.4)
【代理人】 【識別番号】100082016
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敏彦
【公開番号】 特開2000−171125(P2000−171125A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−345210