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【発明の名称】 ディスプレーサとその製造方法およびそれを用いた極低温冷凍機
【発明者】 【氏名】完山 起尚

【氏名】喜多 雄一

【氏名】鳥居 宏年

【要約】 【課題】極低温でシリンダ内面との間のクリアランスを均一にでき、このクリアランスを経る冷媒ガスの漏れを抑えて、高い性能のディスプレーサを得る。

【解決手段】略同心をなして螺旋状に巻回された中空の布と、この布に含浸されたフェノールからなるピストンを有するディスプレーサ1であって、フェノール含浸布中の布の含有率が50〜80重量%である。上記ディスプレーサ1は、フェノールを含浸させた帯状の布2を、張力を加えながら心棒4に巻き付けた後、加熱して、上記心棒4を抜いた筒状体3の開口端に詰物を固着して製造される。上記ディスプレーサ1は、外周にシールリングを有しないか、外周にラビリンスシールを有する。上記ディスプレーサとこれを収容する金属のシリンダとで極低温冷凍機のシリンダを構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 略同心をなして螺旋状に巻回された中空の布とこの布に含浸されたフェノールからなるピストンを有するディスプレーサ。
【請求項2】 請求項1に記載のディスプレーサにおいて、上記ピストンに対する布の含有率が50乃至80重量%であることを特徴とするディスプレーサ。
【請求項3】 請求項1または2に記載のディスプレーサにおいて、上記ピストンは、外周にシールリングを有しないことを特徴とするディスプレーサ。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1つの記載のディスプレーサにおいて、上記ピストンは、外周にラビリンスシールを有することを特徴とするディスプレーサ。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1つに記載のディスプレーサ(1)と、このディスプレーサを収容する金属のシリンダ(11,12)を有する極低温冷凍機。
【請求項6】 フェノールを含浸させた帯状の(2)布を、張力を加えながら心棒(4)に巻き付けた後、加熱して、上記心棒(4)を抜いた筒状体(3)の開口端に詰物を固着することを特徴とするディスプレーサの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、極低温冷凍機のシリンダに嵌装されるディスプレーサおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ディスプレーサは、内部に銅スクリーンや鉛球などの蓄冷材を収容した有底筒状体で、極低温冷凍機のシリンダ内に摺動自在に嵌装される。そして、シリンダが吸気弁を経て圧縮機の吐出側に接続されると、流入するヘリウムなどの高圧冷媒ガスが、ディスプレーサを往動させつつ、ディスプレーサの一端開口から流入して内部の蓄冷材で冷却された後,他端開口から流出して、シリンダ内面の膨張空間を満たす。次に、シリンダが排気弁を経て圧縮機の吸込側に接続されると、上記膨張空間を満たしていた冷媒ガスが、圧縮機の吸引により一気に膨張して寒冷が生じ、寒冷となった冷媒ガスが蓄冷材を冷却しつつ,吸気と逆の経路をたどって回収され、これに伴ってディスプレーサを復動させる。このような吸気と排気のサイクルを繰り返すことによって、上記蓄冷材が所望の極低温まで冷却される。
【0003】ディスプレーサは、このように極低温冷凍機のシリンダ内を往復摺動する一種のピストンであるから、耐摩耗性と高強度に加えて軽量であることが要求され、従来、例えばフェノールを含浸させた布を用いて次のような方法で製造されている。即ち、フェノールを含浸させた帯状の綿布31を、端面から見て図5(A)に示すような所定の直径の円筒になるまで螺旋状に巻き、この円筒を外周から矢印で示すように中心に向かって均等な圧力で加圧成形した後、円筒の中心に所定深さの穴を明けるとともに外周面を真円に機械加工して、上記穴に蓄冷材を収容し、円筒の開口端にベークライト製の天蓋を接着し、この天蓋と底部に冷媒の連通流路を貫設して作成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来のディスプレーサは、螺旋状に巻いたフェノール含浸綿布31を図5(A)の如く外周から加圧して成形しているため、機械加工後の常温(300K)での円柱体は、図5(B)に示すように、外周が真円でも、内部に巻かれた布の布目が非円形に歪んでいて、布目の方向性にバラツキがあり、このバラツキに起因して半径方向の線膨張率が角度位置に応じて変動する。そのため、運転時の冷媒ガス温度である例えば液体窒素温度(77K)における半径方向の収縮率[縮み量(L300−L77)を常温での長さ(L300)で除した無次元量]は、上記線膨張率の変動により、角度位置を横軸にとった図2の曲線C5から判るように、角度位置0,90,180°で極小となり、中間の角度位置45,135°で極大となる。ディスプレーサの他の製造方法は、フェノール含浸綿布32を、端面から見て図6に示すような円筒になるように積層し、この円筒を同様に外周から均等な圧力で加圧成形するものであるが、この方法でも布目の方向性のバラツキに起因して、図2の曲線C6に示すように、液体窒素温度における半径方向の収縮率が、角度位置0,180°で極小となり、90°で極大となる。
【0005】このように、従来のディスプレーサは、使用温度である極低温において半径方向の収縮率が角度位置に依存して大きく変動するため、ディスプレーサを嵌装するシリンダの内周面とディスプレーサの外周面の間のクリアランスが不均一になり、このクリアランスを通る冷媒ガスの漏れにより、ディスプレーサの性能が低下するという問題がある。また、ディスプレーサの外周にシールリングを装着している場合は、上記クリアランスの不均一がシールリングの寸法変化をもたらし、同様にディスプレーサの性能低下が生じるという問題がある。
【0006】そこで、本発明の目的は、半径方向の収縮率が角度位置に拘わらず一定になるように構造を工夫することによって、使用温度である極低温でもシリンダ内面とのクリアランスを均一にでき、クリアランスを経る冷媒ガスの漏れをなくして高い性能を得ることができ、しかも容易かつ安価に製造することができるディスプレーサとその製造方法およびそれを用いた極低温冷凍機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため。請求項1の発明に係るディスプレーサは、略同心をなして螺旋状に巻回された中空の布とこの布に含浸されたフェノールからなるピストンを有する。
【0008】請求項1のディスプレーサは、略同心をなして螺旋状に巻回された中空の布とこの布に含浸されたフェノールからなるので、フェノールを含浸させた布を中実円柱状に巻回し,これを均等な圧力で外周から加圧成形した従来のディスプレーサと異なり、布目の方向性にバラツキがなく、それ故、使用温度における半径方向の収縮率が角度位置に拘わらず一定になる。従って、使用時にディスプレーサの外周面とシリンダの内周面の間のクリアランスを均一かつ狭くでき、このクリアランスを通る冷媒ガスの漏れを少なく抑えて、ディスプレーサの性能を向上できる。また、ディスプレーサの外周にシールリングを装着している場合も、上記クリアランスが均一なので、シールリングが寸法変化せず、ディスプレーサの性能が向上する。さらに、シリンダとの摺接面であるディスプレーサの外周面を真円に加工する手間が少なくて済むから、ディスプレーサを容易かつ安価に製造することができる。
【0009】請求項2のディスプレーサは、上記ピストンに対する布の含有率が50乃至80重量%であることを特徴とする。請求項2のディスプレーサでは、布の含有率が50重量%以上なので、使用温度における半径方向の収縮率が、金属等からなるシリンダの収縮率に比して大きくなりすぎず、また、布の含有率が80重量%以下なので、フェノールが少なすぎて布が剥がれる虞もない。従って、ディスプレーサを、その性能を保ちつつ長期間に亘って使用することができる。
【0010】請求項3のディスプレーサは、上記ピストンが、外周にシールリングを有しないことを特徴とする。請求項3のディスプレーサでは、上述の如くクリアランスを均一かつ狭くできるから、外周にシールリングを設けなくとも、上記クリアランスを通る冷媒ガスの漏れを少なく抑えて性能を高く維持でき、シールリングやその装着溝の加工を省略できるので、製造コストをさらに低減することができる。
【0011】請求項4のディスプレーサは、上記ピストンが、外周にラビリンスシールを有することを特徴とする。請求項4のディスプレーサでは、上述の如くクリアランスを均一かつ狭くできるから、外周にラビリンスシールを設けるだけで、上記クリアランスを通る冷媒ガスの漏れを殆どなくして性能を高く維持でき、シールリング等の省略で、製造コストの低減および耐用寿命の延長を図ることができる。
【0012】請求項5の極低温冷凍機は、上記ディスプレーサと、このディスプレーサを収容する金属のシリンダを有する。請求項5の極低温冷凍機では、上記ディスプレーサとシリンダとの間のクリアランスを均一かつ狭くできるから、このクリアランスを通る冷媒ガスの漏れを少なく抑えて、ディスプレーサひいては極低温冷凍装置の性能を向上できるとともに、ディスプレーサの製作,加工やシールが容易になって、極低温冷凍機の製造コストを低減することができる。
【0013】請求項6のディスプレーサの製造方法は、フェノールを含浸させた帯状の布を、張力を加えながら心棒に巻き付けた後、加熱して、上記心棒を抜いた筒状体の開口端に詰物を固着することを特徴とする。請求項6のディスプレーサの製造方法によれば、フェノールを含浸させた帯状の布を、張力を加えながら心棒に巻き付けた後、加熱して筒状体とするので、フェノールを含浸させた布を中実円柱状に巻回し,これを均等な圧力で外周から加圧成形する従来の製造方法と異なり、布目の方向性にバラツキがなく、それ故、使用温度における半径方向の収縮率が角度位置に拘わらず一定になる。従って、使用時にディスプレーサの外周面とシリンダの内周面との間のクリアランスを均一かつ狭くでき、このクリアランスを通る冷媒ガスの漏れを少なく抑えて、ディスプレーサの性能を向上できるとともに、ディスプレーサの製作,加工やシールが容易になって、製造コストを低減することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1(A),(B)は、本発明によるディスプレーサの夫々製造方法の一例を示す斜視図およびこの製造方法で製造されたディスプレーサの端面図である。このディスプレーサ1は、図1(A)に示すように、フェノールを含浸させた帯状の綿布2を、心棒4に張力を加えながら略同心円をなして螺旋状に巻き付けた後、加熱により硬化させる。次いで、硬化後に心棒4を抜いて、図1(B)に示すような円筒体3とし、シリンダと摺接する外周面3aを真円に機械加工する。さらに、後述するように、中心穴3bに蓄冷材を収容し、冷媒流路を貫設したベークライト製の盲蓋を円筒体3の両端に接着して作成される。
【0015】上記綿布2は、接線方向に張力を与えられながら心棒4に巻き付けられるので、従来例のように巻き付けた後に外周から均等な圧力で加圧せずとも、圧着状態で図1(B)の如く互いに重なり合う。従って、巻き付けられた綿布2の布目の方向性は、外周から加圧成形されていた従来のディスプレーサのようにバラツクことがなく一定となり、このバラツキに起因する角度位置に応じた半径方向の線膨張係数の差もなく、それ故、使用温度における半径方向の収縮率が、角度位置に拘わらず一定になる。上記フェノール含浸綿布2中の綿布の含有率は、50重量%〜80重量%、好ましくは略50重量%である。なぜなら、綿布の含有率が50重量%未満になると、フェノール含有率の増加により使用温度での収縮率が大きくなる一方、80重量%を超えると、フェノール含有率の減少により綿布相互の結合力が弱まって剥れが生じるからである。50重量%の綿布含有率が好ましいのは、その場合の使用温度における収縮率が、ディスプレーサを収容する18-8ステンレス鋼等からなるシリンダの収縮率に略等しいので、ディスプレーサとシリンダの間のクリアランスを最小に保つことができるからである。
【0016】図2は、このようにして作られたディスプレーサの液体窒素温度における半径方向の収縮率[縮み量(L300−L77)を常温での長さ(L300)で除した無次元量]を、角度位置を横軸にとって表わしている。図中の直線Cから判るように、本発明によるディスプレーサの収縮率は、曲線C5,C6で示す従来例と異なり、角度位置に拘わらず一定で,しかも小さい値である。図3は、フェノール含浸綿布で作られた上記ディスプレーサの半径方向の収縮率(縦軸)を綿布含有率(重量%)(横軸)の関数として示した図であり、50重量%〜80重量%の綿布含有率が上述の適正範囲になる。また、綿布を織る糸を細径にする程、角度位置による収縮率の差を極力小さくできることが判明した。
【0017】こうして製造されたディスプレーサ1は、極低温である使用温度における半径方向の収縮率が、角度位置に拘わらず一定になるうえ、シリンダの収縮率と略等しくなるので、使用時にディスプレーサの外周面とシリンダの内周面との間のクリアランスを均一かつ最小にできるから、シールリングを装着せずとも上記クリアランスを通る冷媒ガスの漏れを少なく抑えることができ、またディスプレーサの外周にラビリンスシールを設ければ、上記冷媒ガスの漏れを殆どなくすことができ、その結果、極低温を発生するディスプレーサの性能が向上する。シールリングを省略すれば、その装着用の溝加工が不要になり、ラビリンスシールを設ければ、摺接部がなくなってディスプレーサの耐用寿命を延ばすことができる。一方、ディスプレーサの外周にシールリングを設けることもでき、そうすれば、冷媒ガスの漏れを無くすことができるとともに、上記クリアランスが均一なのでシールリングが寸法変化しないから、耐用寿命が延びるとともに、ディスプレーサの性能が更に向上する。
【0018】本発明では、図1で述べたような容易な方法で、略真円の中空円筒体3を製造できるので、従来例と異なり、ディスプレーサ1の外周面を機械加工する手間が少なく、蓄冷材を収容する中心穴3bの機械加工が不要なので、製造コストを低減することができる。
【0019】図4は、本発明の請求項5に記載の極低温冷凍機の一部をなすシリンダの一例を示す断面図である。このシリンダは、大径の第1シリンダ11とこの下部に連なる小径の第2シリンダ12からなり、内部に図1〜図3で述べたディスプレーサ1を嵌装するとともに、上端がシリンダヘッド13で覆われ、このシリンダヘッド13は、シンクロナスモータ14で回転駆動されるバルブ15とこれに摺接するバルブステム16を収容するとともに、冷媒ガスの吸気口17と排気口18を有する。
【0020】ディスプレーサ1は、図4(B)に示すように、シリンダに対応して,蓄冷材としの銅スクリーン7を収容した大径の第1ディスプレーサ5と、蓄冷材としての鉛球8を収容した小径の第2ディスプレーサ6とからなり、第1ディスプレーサ5の上端に突設した貫通穴5aをもつ鍔9a付きロッド9に、流路10a付きピストン10が昇降可能に遊嵌されている。第1ディスプレーサ5は、図1(B)の如く作られた円筒体3の上下端に夫々ベークライトからなる上下蓋を接着し、上蓋にアルミニウム製で貫通穴5aをもつ鍔付きロッド9を固着するとともに、下端側面に流路5bを貫設して作成され、第2ディスプレーサ6も、同様の上下蓋を接着し、上端側面および下端中央に流路6a,6bを夫々貫設して作成される。そして、第1,第2のディスプレーサ5,6を図4(B)の如く一体に接着し、第1ディスプレーサ5の頂部の鍔付きロッド9に、バルブステム16に外嵌するシールリング19(図4(A)参照)を内周に有するピストン10を遊嵌するとともに、これらの外周にシールリング20,21,22を図4(A)の如く嵌着した後、同図に示すように第1,第2シリンダ11,12内に摺動自在に嵌装し、第1シリンダ11の上端にシリンダヘッド13を取り付けて密閉している。なお、上記シールリングは、既述の如く省略したり、ラビリンスシールで代替することもできる。
【0021】上記各シールリング19〜22によって、ディスプレーサ1外側のシリンダ1内の空間は、上から順に、シリンダヘッド13内の中圧室23に連通する第2作動室24、バルブステム16の軸心流路16aと貫通穴5aに連通する第1作動室25、流路5b,6aに連通する第1ディスプレーサ5下端の第1膨張室26、および流路6bに連通する第2ディスプレーサ6下端の第2膨張室27に仕切られる。上記シリンダヘッド13内のバルブ15は、矢印の如く回転駆動されて、バルブステムの軸心流路16aを、冷媒であるヘリウムガスを圧縮する図示しない圧縮機の吐出口に吸気口17を経て連通する高圧室28と、上記圧縮機の吸込口に連通する排気口18とに切換接続する一方、中圧室23は、図4(A)のシリンダと上記圧縮機の間に介設され,この圧縮機の吐出圧の略1/2の圧力を常時維持する中間圧室に図示しないポートを経て連通する。
【0022】図4に示すシリンダは、次のように動作して、ディスプレーサ1内の蓄熱材7,8に冷熱を蓄える。まず、バルブステムの軸心流路16aが、バルブ15によって排気口18に切換接続されると、第1,第2膨張室26,27第2作動室25ディスプレーサ1の内部空間を満たしていた冷媒ガスは、流路6b,6a,5b,5a,16aを通り排気口18を経て圧縮機に吸い込まれるとともに、第1作動室24に中間圧が常時加わっているので、ピストン10が、まず単独で下降し,ディスプレーサ1の上端面に当接した後はディスプレーサ1と一緒になって下死点まで下降する。次に、軸心流路16aが、バルブ15により吸気口17に連なる高圧室28に切換接続されると、下死点にあるピストン10とディスプレーサ1に、圧縮機からの高圧冷媒ガスが、上記排気と逆の経路,つまり流路16a,5a,5b,6a,6bをたどって供給され、ディスプレーサ1内を貫流しつつ、既にかなり低温になっている蓄冷材7と更に低温になっている蓄冷材8により2段階で冷却される。そして、第1作動室25が中間圧の第1作動室24よりも高圧なので、ピストン10が、まず単独で上昇し,ディスプレーサ1上端のロッド9の鍔9aに係合した後はディスプレーサ1と一緒になって、ロッド9の先端がバルブステム16に密着する上死点まで上昇する。
【0023】更に、軸心流路16aが、バルブ15により再び排気口18に切換接続されると、第1,第2膨張室26,27第2作動室25ディスプレーサ1の内部空間を満たしていた高圧の冷媒ガスが、流路6b,6a,5b,5a,16aを通り排気口18を経て圧縮機に吸い込まれ、第2膨張室27および第1膨張室26内の高圧冷媒ガスが2段階で一気に膨張して寒冷が生じ、寒冷となった冷媒ガスが排気に伴って第2,第1ディスプレーサ6,5内を貫流することによって蓄冷材8,7が冷却されて冷熱を蓄える。その後は、冒頭で述べたように、第1作動室24の中間圧によって、ピストン10,次いでディスプレーサ1が、下死点に向かって下降する行程に移行する。以上のような冷媒ガスの給排気に伴うピストン10およびディスプレーサ1の昇降行程を繰り返すことによって、蓄冷材に冷熱が逐次蓄えられて、第1シリンダ11の下端が50〜120Kの所定極低温,第2シリンダ12の下端が10〜20Kの所定極低温に夫々維持されるのである。
【0024】極低温冷凍機の一部をなす図4のシリンダでは、極低温で半径方向の収縮率が、角度位置に拘わらず一定で,かつシリンダの収縮率と略等しい図1〜図3で述べたディスプレーサ1を用いるとともに、ディスプレーサ1の外周にシールリング21,22を装着しているので、ディスプレーサ1の外周とシリンダの内周の間のクリアランスを均一かつ狭くできるから、不均一なクリアランスでシールリングが寸法変化することもなく、クリアランスを経る冷媒ガスの漏れを無くして、ディスプレーサの性能,ひいては極低温冷凍機の効率を著しく向上できるうえ、シールリングの耐用寿命を延ばすことができる。なお、クリアランスを均一かつ狭くできるから、性能をさほど低下させることなくディスプレーサ1の外周のシールリングを省略したり、これをラビリンスシールで代替することもでき、前者の場合は、リング溝加工の省略により製造費の低減を、後者の場合は、摺接部のないラビリンスにより耐用寿命の延長を図ることができる。
【0025】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、請求項1に係る発明のディスプレーサは、略同心をなして螺旋状に巻回された中空の布とこの布に含浸されたフェノールからなるので、従来のディスプレーサと異なり、布目の方向性にバラツキがなくて、使用温度における半径方向の収縮率が角度位置に拘わらず一定になる。従って、ディスプレーサの外周とシリンダの内周との間のクリアランスを均一かつ狭くでき、このクリアランスを経る冷媒ガスの漏れを少なく抑えて、ディスプレーサの性能を向上でき、ディスプレーサの外周にシールリングを装着している場合は、加えてシールリングが寸法変化しないうえ、ディスプレーサの外周面を真円加工する手間が少なくて済んで、ディスプレーサを容易かつ安価に製造することができる。
【0026】請求項2の発明に係るディスプレーサは、ピストンに対する布の含有率が50重量%以上なので、使用温度における半径方向の収縮率が、金属等からなるシリンダの収縮率に比して大きくなりすぎず、また、ピストンに対する布の含有率が80重量%以下なので、フェノールが少なすぎて布が剥がれる虞もないから、ディスプレーサをその性能を高く保ちつつ長期間に亘って使用することができる。
【0027】請求項3の発明に係るディスプレーサは、上述の如くクリアランスを均一かつ狭くできることから、外周にシールリングを設けていないので、冷媒ガスの漏れを少なく抑えて性能を高く維持しつつ、シールリングやその装着溝の加工を省略できて、製造コストをさらに低減することができる。
【0028】請求項4の発明に係るディスプレーサは、上述の如くクリアランスを均一かつ狭くできることから、外周にラビリンスシールを設けるだけなので、冷媒ガスの漏れを殆どなくして性能を高く維持しつつ、シールリング等の省略で、製造コストの低減および耐用寿命の延長を図ることができる。
【0029】請求項5の極低温冷凍機は、上記ディスプレーサと金属のシリンダとの間のクリアランスを均一かつ狭くできるので、このクリアランスを経る冷媒ガスの漏れを少なく抑えて、ディスプレーサひいては極低温冷凍装置の性能を向上できるとともに、ディスプレーサの製作,加工やシールが容易になって、極低温冷凍機の製造コストを低減することができる。
【0030】請求項6の発明に係るディスプレーサの製造方法は、フェノールを含浸させた帯状の布を、張力を加えながら心棒に巻き付けた後、加熱して筒状体とするので、従来の製造方法と異なり、布目の方向性にバラツキがなく、それ故、使用温度における半径方向の収縮率が角度位置に拘わらず一定になる。従って、使用時にディスプレーサの外周面とシリンダの内周面と間のクリアランスを均一かつ狭くでき、このクリアランスを経る冷媒ガスの漏れを少なく抑えて、ディスプレーサの性能を向上できるとともに、ディスプレーサの製作,加工やシールが容易になって、製造コストを低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【出願日】 平成10年12月3日(1998.12.3)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
【公開番号】 特開2000−171113(P2000−171113A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−344060