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【発明の名称】 炭化水素系冷媒を用いた冷凍装置
【発明者】 【氏名】高橋 康樹

【氏名】齋藤 貴之

【要約】 【課題】摺動部材の腐食の発生やキャピラリチューブなどの詰りがなく、またマグネットワイヤなどの有機系材料への悪影響などの問題がなく、長期に亘り安定して運転でき耐久性に優れている冷凍装置を提供する。

【解決手段】冷媒として炭化水素系冷媒を用い、冷凍機油として炭化水素系冷媒に相溶性のある流動点が−15℃以下のナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油およびこれらの2つ以上の混合物から選択される冷凍機油を用いた冷凍装置であって、圧縮機の電動要素の固定子のマグネットワイヤや絶縁フィルム、ドライヤとしてCFC系冷媒使用時に用いられていたものを用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷媒として炭化水素系冷媒を用い、冷凍機油として流動点が−15℃以下のナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油およびこれらの2つ以上の混合物から選択される冷凍機油を用い、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を順次冷媒管でつないで冷凍サイクルを形成した冷凍装置であって、下記の(1)〜(3)の少なくとも1つを備えたことを特徴とする炭化水素系冷媒を用いた冷凍装置。
(1)圧縮機の電動要素の固定子のマグネットワイヤとして用いられたポリアミド樹脂をオーバーコートしたポリエステル樹脂被覆銅線(2)圧縮機の電動要素の固定子の絶縁フィルムとして用いられたオリゴマーを3量体で0.7〜1.5重量%含有するポリエステルフィルム(3)冷凍サイクル中の水分除去用のドライヤとして用いられた孔径4〜5Åのモレキュラーシーブ【請求項2】 部品組み立て油として、冷凍機油と同じ流動点が−15℃以下のナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油およびこれらの2つ以上の混合物から選択される油を用いたことを特徴とする請求項1記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭化水素系冷媒を用いた冷凍装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷蔵庫、自動販売機及びショーケース用の圧縮機は従来冷媒としてジクロロジフルオロメタン(R12)が多く使用され、また、空気調和機等は冷媒としてクロロジフルオロメンタ(R22)が使用されていた。そして、冷凍機油としては流動点が−15℃以下のナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油およびこれらの2つ以上の混合物が用いられており、冷凍サイクル中の水分除去用のドライヤとしては孔径4〜5Åのモレキュラーシーブが用いられて信頼性の高い製品が提供されていた。しかし、これらのCFC系冷媒およびHCFC系冷媒は、高いオゾン破壊の潜在性により、大気中に放出されて地球上空のオゾン層に到達すると、このオゾン層を破壊する問題からフロン規制の対象となっている。
【0003】このオゾン層の破壊は、冷媒中の塩素基(Cl)により引き起こされる。そこで、塩素基を含まない冷媒、例えば、ジフルオロメタン(HFC−32、R−32)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a、R−152a)、トリフルオロメタン(HFC−23、R−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125、R−125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a、R−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a、R−143a)、塩素基と水素を含まないフルオロカーボン系冷媒(FC系冷媒)などが前記冷媒の代替冷媒として考えられている。しかしR134a等のHFC系冷媒などはオゾン層の破壊の危険は抑制されるものの、地球温暖化効果が炭酸ガスより高い問題があるとともに、前記の鉱物油やアルキルベンゼン油等の冷凍機油との相溶性が悪く、圧縮機への油の戻りの悪化や寝込み起動時の分離冷媒の吸い上げなどから圧縮機の潤滑不良に至る問題がある。
【0004】このため、R134a等のHFC系冷媒と相溶性のある冷凍機油としてポリオールエステル系油が検討されているが、このポリオールエステル系油は圧縮機に使用する場合に、圧縮機内部の摺動部材の摩擦・摩耗で温度が上昇しやすく、その熱により加水分解したり、酸化鉄などの作用で分解したりして、脂肪酸や金属石鹸などが生じ、この脂肪酸などにより摺動部材に腐食を起こさせたり、摩耗によってスラッヂ成分が発生してキャピラリチューブなどを詰まらせる問題があった。
【0005】また、これらにより圧縮機の電動要素のマグネットワイヤ(ナイロンをオーバーコートしたポリエステル被覆銅線)や絶縁フィルム(オリゴマーを3量体で0.7〜1.5重量%含有するポリエステルフィルム)などの有機系材料に悪影響がでたり、R134a等のHFC系冷媒が絶縁フィルムのオリゴマーを抽出して、抽出されたオリゴマーが冷凍サイクル中で析出して固まり、キャピラリー(減圧器)などを詰まらせ、圧縮機の耐久性を損なう問題があった。この問題を改善するために、絶縁フィルムとしてオリゴマーをできるだけ減少させた高価なポリエステルフィルムを用いることが提案されている。また、R134a等のHFC系冷媒を用いると、冷凍サイクル中の水分除去用のドライヤ(孔径4〜5Åのモレキュラーシーブ)に冷媒が吸着されてしまうので、冷媒の吸着が起こらない高価な孔径3Åのモレキュラーシーブを用いる必要があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、オゾン層の破壊の危険がなく、地球温暖化効果も抑制された冷媒を用いるとともに安定性が高く安価な鉱物油やアルキルベンゼン油等の冷凍機油を用い、かつ従来CFC系冷媒の系に用いられていた安価なマグネットワイヤ、絶縁フィルムやドライヤーを用いても、圧縮機の潤滑不良が起こらず、摺動部材の腐食の発生やスラッヂによるキャピラリチューブなどの詰りがなく、圧縮機の電動要素のマグネットワイヤや絶縁フィルムなどの有機系材料への悪影響などの問題のない、長期に亘り安定して運転することができる耐久性に優れた高性能な冷凍装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、炭化水素系冷媒を用いるとともに炭化水素系冷媒に相溶性があり、安定性の高い鉱物油やアルキルベンゼン油等の冷凍機油を用い、好ましくは部品組み立て油としても鉱物油やアルキルベンゼン油等を用いれば、安価なマグネットワイヤ、絶縁フィルムやドライヤーも使用でき課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】本発明の請求項1の発明は、冷媒として炭化水素系冷媒を用い、冷凍機油として流動点が−15℃以下のナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油およびこれらの2つ以上の混合物から選択される冷凍機油を用い、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を順次冷媒管でつないで冷凍サイクルを形成した冷凍装置であって、下記の(1)〜(3)の少なくとも1つを備えたことを特徴とする炭化水素系冷媒を用いた冷凍装置である。
(1)圧縮機の電動要素の固定子のマグネットワイヤとして用いられたポリアミド樹脂をオーバーコートしたポリエステル樹脂被覆銅線(2)圧縮機の電動要素の固定子の絶縁フィルムとして用いられたオリゴマーを3量体で0.7〜1.5重量%含有するポリエステルフィルム(3)冷凍サイクル中の水分除去用のドライヤとして用いられた孔径4〜5Åのモレキュラーシーブ【0009】本発明の請求項2の発明は、請求項1記載の冷凍装置において、部品組み立て油として、冷凍機油と同じ流動点が−15℃以下のナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油およびこれらの2つ以上の混合物から選択される油を用いたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明を図1〜2に基づいて詳細に説明する。図1に、蒸発気化した炭化水素系冷媒を圧縮して凝縮器bに吐出する電動型圧縮機a、同冷媒を凝縮液化する凝縮器b、同冷媒の圧力を減じる減圧器(キャピラリチューブ)c、液化冷媒を蒸発させる蒸発器dなどを順次冷媒管eでつないで形成した本発明の冷凍装置の冷凍サイクルを示す。fは冷凍サイクル中の水分を除去するためのドライヤであり、孔径4〜5Åのモレキュラーシーブが用いられている。
【0011】本発明で用いる炭化水素系冷媒としては、例えば、メタン、エタン、n−プロパン、i−プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサンなどの直鎖状あるいは分枝状炭化水素あるいはこれらの混合物などから成る炭化水素系冷媒などを挙げることができる。
【0012】上記の電動型圧縮機aの形式は特に限定されず、具体的には、回転式圧縮機、レシプロ式圧縮機、振動式圧縮機、マルチベーン式回転式圧縮機、スクロール式圧縮機などを例示することができる。以下、本発明を図2に示す回転式圧縮機の場合について説明する。
【0013】図2は、回転式圧縮機の縦断面図である。1は密閉容器で、この容器内には上側に電動要素2が、下側にこの電動要素2によって駆動される回転圧縮要素3が夫々収納されている。電動要素2は図示しない絶縁フィルム(オリゴマーを3量体で0.7〜1.5重量%含有するポリエステルフィルム)で相間などを絶縁されたマグネットワイヤ(ポリアミド樹脂をオーバーコートしたポリエステル樹脂被覆銅線)4を有する固定子5とこの固定子5の内側に設けられた回転子6とで構成されている。
【0014】前記絶縁フィルムの具体例としては、相間絶縁フィルム、コイルエンド相間絶縁フィルム、スロット絶縁フィルムなどがある。
【0015】回転圧縮要素3はシリンダ7と、回転軸8の偏心部9によってシリンダ7の内壁に沿って回転させるローラー10と、このローラーの周面に圧接されてシリンダ7内を吸込側と吐出側とに区画するようにバネ11で押圧されるベーン12と、シリンダ7の開口を封じるとともに、回転軸8を軸支する上部軸受13及び下部軸受14とで構成されている。
【0016】そして、上部軸受13にはシリンダ7の吐出側と連通する吐出孔15が設けられている。また、上部軸受13には吐出孔15を開閉する吐出弁16と、この吐出弁16を覆うように吐出マフラ17とが取付けられている。
【0017】密閉容器1内の底部には炭化水素系冷媒、例えば、i−ペンタンが封入されており、この冷媒と相溶性のある冷凍機油である流動点が−15℃以下のナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油およびこれらの2つ以上の混合物から選択される冷凍機油18が封入されている。そして、冷凍機油18は回転圧縮要素3の摺動部材であるローラー10とベーン12との摺動面を潤滑している。
【0018】19は密閉容器1に取付けてシリンダ7の吸込側に冷媒を案内する吸込管、20は密閉容器1の上壁に取付けられて回転圧縮要素3で圧縮されて電動要素2を介して密閉容器1外に冷媒を吐出する吐出管である。
【0019】前記冷凍機油を使用した回転型圧縮機を運転すると、吸込管19からシリンダ7内の吸込側に流入した冷媒はローラー10とベーン12との協働で圧縮され、吐出孔15を通って吐出弁16を開放して吐出マフラ17内に吐出される。この吐出マフラ内の冷媒は電動要素2を介して吐出管20から密閉容器1外に吐出れさる。そして、冷凍機油18は回転圧縮要素3のローラー10やベーン12等の摺動部材の摺動面に供給されて潤滑を行って循環して使用される。また、シリンダ7内で圧縮された冷媒が低圧側にリークしないようにしている。
【0020】前記回転型圧縮機の電動要素2の固定子5のマグネットワイヤ4として、R12などのCFC系冷媒を使用した時に用いられていた公知の安価なポリアミド樹脂をオーバーコートしたポリエステル樹脂被覆銅線を用い、絶縁フィルムとして、やはりR12などのCFC系冷媒を使用した時に用いられていたオリゴマーを3量体で0.7〜1.5重量%含有する公知の安価なポリエステルフィルムを用いているが、炭化水素系冷媒とナフテン油、パラフィン油、アルキルベンゼン油などの冷凍機油を用いた系内ではこれらに悪影響がでたり、オリゴマーが抽出されてキャピラリー(減圧器)cなどを詰まらせることもなく、特に問題なく長期間にわたり使用できる。
【0021】またドライヤf(やはりR12などのCFC系冷媒を使用した時に用いられていた孔径4〜5Åの公知の安価なモレキュラーシーブ)もこの系内ではスラッジが詰まることもなく、特に問題なく水分のドライヤとして安定的に長期間にわたり使用できる。
【0022】本発明においては、前記回転型圧縮機の各部品組み立てたり、冷凍サイクルの他の部品を組み立てたりする際の組み立て油として、冷凍機油と同じ油を用いることが好ましい。冷凍機油と同じ油を部品組み立て油として用いることにより、部品組み立てをスムースに行うことができるとともに、部品組み立て時に使用した油が、冷凍サイクル中に混入しても特に問題を起こすことがなく、回転型圧縮機を含む冷凍サイクルを安定的に長期間にわたり運転できる。
【0023】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではないので、特許請求の範囲に記載の趣旨から逸脱しない範囲で各種の変形実施が可能である。
【0024】
【発明の効果】本発明の冷凍装置は、オゾン層を破壊する危険がない上、地球の温暖化効果を抑制した炭化水素系冷媒を用いるとともに炭化水素系冷媒に相溶性があり、安定性が高く安価な特定の鉱物油やアルキルベンゼン油等の冷凍機油を用い、かつ安価なマグネットワイヤ、絶縁フィルムやドライヤーを用いても、圧縮機への冷凍機油の戻りの悪化や寝込み起動時の分離冷媒の吸い上げなどから圧縮機の潤滑不良に至る問題がなく、また摺動部材の腐食の発生やスラッヂによるキャピラリチューブなどの詰りがなく、またマグネットワイヤや絶縁フィルムなどの有機系材料やドライヤへの悪影響の問題がなく、長期に亘り安定して運転でき、耐久性に優れている。
【0025】冷凍機油と同じ油を部品組み立て油として用いることにより、部品組み立てをスムースに行うことができるとともに、部品組み立て時に使用した油が、冷凍サイクル中に混入しても特に問題を起こすことがない。
【出願人】 【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
【出願日】 平成10年10月15日(1998.10.15)
【代理人】 【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
【公開番号】 特開2000−121179(P2000−121179A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−293898