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【発明の名称】 空調装置及びポンプ装置
【発明者】 【氏名】高崎 俊伸

【氏名】佐貫 政美

【要約】 【課題】可変容量機構を有する圧縮機を電動モータにて効率良く制御する。

【解決手段】電動モータ120の実トルクが最大トルクとなるように吐出容量を増大させるととともに、目標空調能力となるように、電動モータ120の回転数を制御する。これにより、電動モータ120の大型化を招くことなく、ポンプ効率を高く維持した状態で空調装置を稼働させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 室内に吹き出す空気の調和を図る空調装置であって、冷媒を吸入圧縮する圧縮機構(Cp)及び前記圧縮機構(Cp)の吐出容量を連続的に変化させる可変容量機構(Vc)を有する圧縮機(110)と、前記圧縮機(110)を駆動する電動モータ(120)と、前記圧縮機(110)から吐出する冷媒をから熱を放出させる放熱器(200)と、前記放熱器(200)から流出する冷媒を減圧する減圧器(400)と、前記減圧器(400)から流出する冷媒を蒸発させ、冷媒に熱を吸収させる蒸発器(500)と、前記可変容量機構(Vc)及び前記電動モータ(120)を制御する制御手段(600)と、前記放熱器(200)で必要とする放熱量又は前記蒸発器(500)で必要とする吸熱量を決定する空調能力決定手段(S110)とを備え、前記制御手段(600)は、前記電動モータ(120)に実際に発生するトルクが、前記電動モータ(120)が発生し得る最大トルクとなるように、前記可変容量機構(Vc)を作動させて前記吐出容量を変化させるとともに、前記空調能力決定手段(S110)によって決定された空調能力が得られるように、前記電動モータ(120)の回転数を制御することを特徴とする空調装置。
【請求項2】 流体を吸入吐出するとともに、吐出容量を連続的に変化させる可変容量機構(Vc)を有するポンプ部(Cp)と、前記ポンプ機構(Cp)を駆動する電動モータ部(120)と、前記可変容量機構(Vc)及び前記電動モータ部(120)を制御する制御手段(600)とを備え、前記制御手段(600)は、前記電動モータ部(120)に実際に発生するトルクが、前記電動モータ部(120)が発生し得る最大トルクとなるように、前記可変容量機構(Cp)を作動させて前記吐出容量を変化させることを特徴とする特徴とするポンプ装置。
【請求項3】 流体を吸入吐出するとともに、吐出容量を連続的に変化させる可変容量機構(Vc)を有するポンプ部(Cp)と、前記ポンプ機構(Cp)を駆動する電動モータ部(120)と、前記可変容量機構(Vc)及び前記電動モータ部(120)を制御する制御手段(600)とを備え、前記制御手段(600)は、前記電動モータ部(120)に実際に発生するトルクが、前記電動モータ部(120)が発生し得る最大トルクとなるように、前記可変容量機構(Vc)を作動させて前記吐出容量を変化させるとともに、前記ポンプ部(Cp)の仕事量が、前記ポンプ部(Cp)で必要とされる必要仕事量となるように、前記電動モータ部(120)の回転数を制御することを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、室内に吹き出す空気の調和を図る空調装置に関するもので、車両用空調装置に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】一般的な車両用空調装置では、走行用のエンジン(内燃機関)から駆動力を得て圧縮機を稼働させているので、必要とする空調能力(以下、必要とする空調能力を単に空調能力と呼ぶ。)に応じて圧縮機の回転数を制御することはできない。
【0003】そこで、吐出容量を変化させる可変容量機構を圧縮機に内蔵し、空調能力に応じて吐出容量を変化させる車両用空調装置が実施されている。なお、空調能力とは、冷房運転時にあっては、蒸発器での冷凍能力を言い、ヒートポンプを用いた暖房運転時にあっては、凝縮器(放熱器)の放熱能力を言う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、信号待ち等の車両停止時にエンジンを停止することにより排気ガスの低減及び燃費向上を図った車両、又は走行用の電動モータとエンジンとを切換運転することにより排気ガスの低減及び燃費向上を図った車両(ハイブリット車両)等が研究されている。
【0005】そして、上記した車両の研究に呼応して、車両用空調装置においても、電動モータによって圧縮機を駆動制御することが研究されている(特開平6−22724号公報等)。本発明は、上記点に鑑み、可変容量機構を有する圧縮機等のポンプ機構を電動モータにて効率良く制御することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項1に記載の発明では、電動モータ(120)に実際に発生するトルクが、電動モータ(120)が発生し得る最大トルクとなるように、圧縮機(110)の吐出容量を変化させるとともに、空調能力決定手段(S110)によって決定された空調能力が得られるように、電動モータ(120)の回転数を制御することを特徴とする。
【0007】これにより、ポンプ効率を高く維持した状態で圧縮機(110)を稼働させることができるので、後述するように、電動モータ(120)の大型化を招くことなく、空調装置を効率良く制御することができる。請求項2に記載の発明では、電動モータ部(120)に実際に発生するトルクが、電動モータ部(120)が発生し得る最大トルクとなるように、吐出容量を変化させることを特徴とする特徴とする。
【0008】これにより、請求項1に記載の発明と同様に、電動モータ(120)の大型化を招くことなく、ポンプ装置を効率良く制御することができる。請求項3に記載の発明では、電動モータ部(120)に実際に発生するトルクが、電動モータ部(120)が発生し得る最大トルクとなるように、吐出容量を変化させるとともに、ポンプ部(Cp)の仕事量が、ポンプ部(Cp)で必要とされる必要仕事量となるように、電動モータ部(120)の回転数を制御することを特徴とする。
【0009】これにより、請求項1に記載の発明と同様に、電動モータ(120)の大型化を招くことなく、ポンプ装置を効率良く制御することができる。因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0010】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)本実施形態は、本発明に係る車両用空調装置を、走行用電動モータMと走行用エンジン(内燃機関)Eとを有するハイブリット車両に適用したものであって、図1は本実施形態に係る空調装置の模式図である。
【0011】100は、冷媒を吸入吐出する圧縮機110と圧縮機110を駆動する電動モータ(以下、モータと呼ぶ。)120とが一体となった電動コンプレッサであり、この電動コンプレッサ100は、図2に示すように、電磁クラッチMgを介してエンジンEによって駆動される場合とモータ120によって駆動され場合とを切り換えることができる、いわゆるハイブリット型の電動コンプレッサである。
【0012】また、圧縮機110は、斜板111のを介してピストン112を往復運動させて冷媒を吸入圧縮する斜板型の圧縮機構Cpと、斜板111の傾き角を変化させることにより、ピストン112の行程(ストローク)を変化させて圧縮機110(圧縮機構Cp)の吐出容量を変化させる可変容量機構Vcとを有するものである。
【0013】因みに、斜板111の傾き角は、斜板111が回転する空間(斜板室)113内の圧力変化に連動して変化し、本実施形態では、斜板室113と圧縮機110(圧縮機構Cp)の吸入側との連通状態、及び斜板室113と圧縮機110(圧縮機構Cp)の吐出側との連通状態を制御することにより斜板室113内の圧力を制御している。
【0014】また、図1中、200は圧縮機110(圧縮機構Cp)から流出する高圧冷媒を凝縮させて凝縮熱を放熱する凝縮器(放熱器)であり、300は凝縮器200から流出する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するとともに、余剰液相冷媒を蓄えるレシーバ(受液器)である。400はレシーバ300から流出する冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)であり、この膨張弁400は、圧縮機110の吸入側での冷媒過熱度が所定値となるように開度を調節する、いわゆる温度式膨張弁である。
【0015】500は、膨張弁400から流出する低圧冷媒を蒸発させて、冷媒に蒸発熱を吸収させる蒸発器であり、この蒸発器500で吸熱した熱量が冷凍能力(冷房能力)となる。ところで、モータ120、可変容量機構Vc(斜板室113内圧力)を制御する制御バルブ(図示せず)及び電磁クラッチMgは、電子制御装置(ECU)600によって制御されており、このECU600には、室外温度を検出する外気温センサ、室内温度を検出する内気温センサや日射量を検出する日射センサ等の空調センサ610の検出値、乗員が希望する室内温度を設定する温度設定手段620の設定値、及び圧縮機110(モータ120)の回転数を検出する回転センサ630の検出値が入力されている。
【0016】次に、本実施形態の作動を述べる。
1.エンジンEが稼働しているとき車両用空調装置の始動スイッチ(図示せず)が投入されているときであって、エンジンEが稼働しているときには、電磁クラッチMgに通電されてエンジンEの駆動力が圧縮機110(圧縮機構Cp)に伝達され、圧縮機110が稼働する。
【0017】空調センサ610及び温度設定手段620の設定値から必要とする空調能力(冷凍能力)を決定(算出)し、その決定した空調能力となるように、可変容量機構Vc(制御バルブ)を作動させて吐出容量を変化させる。ここで、空調能力、すなわち蒸発器500での冷凍能力は、蒸発器500を流通する冷媒の質量流量の増加に応じて増大するものである。したがって、空調能力が大きいときには、吐出容量を増大させ、一方、空調能力が小さいときには、吐出容量を減少させる。
【0018】なお、エンジンEにより圧縮機110を駆動する場合には、圧縮機110の回転数は制御することができないので、完全に、算出した空調能力となるように車両用空調装置を制御することは困難である。
2.エンジンEが停止しているとき車両用空調装置の始動スイッチが投入されているときであって、エンジンEが停止しているときには、電磁クラッチMgへの通電を遮断し、圧縮機110とエンジンEとの間での駆動力の伝達を遮断するとともに、モータ120へ通電して電動モータ120により圧縮機110を稼働させる。
【0019】このとき、ECU600は、モータ120に実際に発生する実トルクが、モータ120が発生し得る最大トルクとなるように、可変容量機構Vcを作動させて吐出容量を変化させるとともに、空調センサ610及び温度設定手段620の設定値から決定した空調能力(必要仕事量)となるように、モータ120の回転数を制御する。
【0020】なお、本実施形態では、モータ120のトルクはモータ120の電流値から判定しており、最大トルクか否かは、最大トルクに対応する電流値か否かによって判定している。因みに、図3はモータ120の制御の概略を示すフローチャートであり、以下、図3について説明する。
【0021】先ず、空調センサ610及び温度設定手段620の設定値を読み込むとともに(S100)、これらの読込値から空調能力(以下、この空調能力を目標空調能力と呼ぶ。)を決定する(S110)。次に、現在の可変容量機構Vc(制御バルブ)の状態、及び現在のモータ120の電流値から現在発揮している空調能力(以下、この空調能力を現在空調能力と呼ぶ。)を把握するとともに、目標空調能力と現在空調能力とを比較する(S120)。
【0022】そして、目標空調能力と現在空調能力とが等しい場合には、S100に戻り、目標空調能力が現在空調能力より小さい場合には、モータ120が実際に発生するトルク、つまり圧縮機110の駆動トルクが、モータ120の最大トルクとなるまで、圧縮機110の吐出容量を増大させるとともに、目標空調能力となるようにモータ120(圧縮機110)の回転数を低下させ(S130)、その後、S100に戻る。
【0023】なお、このとき、吐出容量が最大状態となっているときは、吐出容量は変化させないで、モータ120の回転数のみ低下させる。一方、目標空調能力が現在空調能力より大きい場合には、モータ120が実際に発生するトルクがモータ120の最大トルクとなるまで、圧縮機110の吐出容量を増大させるとともに、目標空調能力となるようにモータ120の回転数を増大させる(S140)、その後、S100に戻る。
【0024】なお、このとき、吐出容量が最大状態となっているときは、吐出容量は変化させないで、モータ120の回転数のみ増大させる。次に、本実施形態の特徴を述べる。空調能力(蒸発器500での冷凍能力)は、圧縮機110のポンプ仕事の増大に応じて増大するので、空調能力を増大させるには、圧縮機110のポンプ仕事を増大させる必要がある。
【0025】ここで、ポンプ仕事とは、吐出圧P、吐出容量V及び圧縮機110(モータ120)の回転数nの積(P・V・n)であるので、空調能力はポンプ仕事の関数となり、空調能力を増大させるには、吐出圧P、吐出容量V及び圧縮機110の回転数nのいずれかを増大させればよい。ところで、吐出圧Pは、圧縮機110の吐出側に接続される負荷、具体的には、膨張弁400で圧力損失(抵抗)によって決定するので、圧縮機110側では制御することができない。したがって、空調能力の制御は、吐出容量V及び圧縮機110の回転数nを制御することによって行われる。
【0026】また、圧縮機110のポンプ効率ηpは、図4(a)に示すように、吐出容量が大きくなるほど高くなるので、圧縮機110を効率良く稼働させるには、吐出容量をできるだけ大きくした状態で圧縮機110を稼働させることが望ましい。一方、圧縮機110の駆動トルクは、冷媒(流体)を圧縮吐出する際の圧縮反力に略比例して増大するので、吐出容量が大きくなるほど、大きくなる。
【0027】また、圧縮機110は、モータ120によって駆動されているので、ポンプ効率ηpを向上させるべく、単純に吐出容量を大きくさせると、圧縮機110の駆動トルクがモータ120の最大トルクを上回り、モータ120が脱調してしまい、モータ120を制御することができないという問題が発生してしまう。なお、この問題に対しては、モータ120の最大トルクを十分に大きくすれば、モータ120の脱調を防止することができるものの、モータ120が大型化してしまうという問題が新たに発生する。
【0028】これに対して、本実施形態のごとく、モータ120の実トルクが最大トルクとなるように吐出容量を変化させれば、モータ120が脱調しない程度まで、吐出容量を増大させることができるので、モータ120の大型化を招くことなく、ポンプ効率ηpを高く維持した状態で圧縮機110を稼働させることができる。ところで、本実施形態では、モータ120の実トルクが最大トルクとなるように吐出容量を増大させてモータ120の回転数を低下させるので、図4(b)に示すように、モータ120のモータ効率ηmが低下してしまう。
【0029】しかし、吐出容量の増加によるポンプ効率ηpの向上量に対して、吐出容量の増加に伴うモータ120の回転数の低下によるモータ効率ηmの低下量の方が小さいので、空調装置全体で見れば、効率が向上する。以上に述べたように、本実施形態に係る空調装置によれば、モータ120の大型化を招くことなく、空調装置を効率良く運転(制御)することができる。
【0030】ところで、本発明の特徴は、ポンプ効率ηpを向上させるために、モータ120が脱調しない程度まで吐出容量を増大させて圧縮機110を運転することであるので、本明細書で言う「モータ120に実際に発生するトルクが、モータ120が発生し得る最大トルクとなるように、可変容量機構Vcを作動させて吐出容量を変化させる」とは、厳密に実トルクと最大トルクとが一致するものではなく、モータ120を制御することができる程度に実トルクを最大トルクに近づけることを意味しており、例えば実トルクが最大トルクの±5%以内となるような状態を言う。
【0031】また、上述の実施形態では、圧縮機110(圧縮機構Cp)は斜板型圧縮機であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他形式の圧縮機でもよい。また、上述の実施形態では、圧縮機110とモータ120とが一体となった電動コンプレッサであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、圧縮機110とモータ120とを別体としてもよい。
【0032】また、上述の実施形態では、冷房運転のみを行う空調装置であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、冷暖房切換可能なヒートポンプサイクルにもて適用することができる。なお、この場合、空調能力とは、冷房運転時にあっては、蒸発器での冷凍能力を言い、暖房運転時にあっては、凝縮器200の放熱能力を言う。
【0033】また、上述の実施形態では、ハイブリット車両用空調装置を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の空調装置又はポンプ装置に対しても適用することができる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成10年9月9日(1998.9.9)
【代理人】 【識別番号】100100022
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外1名)
【公開番号】 特開2000−88366(P2000−88366A)
【公開日】 平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願番号】 特願平10−255632