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【発明の名称】 空気調和装置
【発明者】 【氏名】奥原 伸二

【氏名】甲斐 政和

【氏名】石塚 豊

【氏名】小嶌 収

【要約】 【課題】エンジン廃熱を回収可能なヒートポンプ式冷媒循環サイクルを備えた空気調和装置において、暖房能力を損なうことなく室外用熱交換器の着霜を防止する。

【解決手段】冷媒循環サイクル3に、高圧ラインと低圧ラインとを接続するバイパス通路21、22と、このバイパス通路を介して高圧ラインから低圧ラインへバイパスする冷媒流量を制御するバイパス弁23,34とを設ける。暖房運転時にエンジン廃熱を回収しても冷媒循環サイクル内の冷媒圧力が所定圧力以下となった場合に、バイパス弁を開として高圧ラインの冷媒の一部を低圧ラインへバイパスさせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンにて駆動する圧縮機、室外用熱交換器、室内用熱交換器、膨張装置、及び前記エンジンの廃熱を回収する廃熱回収器を構成要素に含むヒートポンプ式冷媒循環サイクルを備え、暖房運転時に前記圧縮機から吐出した冷媒を前記室内用熱交換器、膨張装置、室外用熱交換器の順で冷媒を通過させ、さらに前記廃熱回収器でエンジン廃熱を回収可能とする空気調和装置において、前記冷媒循環サイクル内の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、前記室内用熱交換器と前記膨張装置とをバイパスして前記冷媒循環サイクルの高圧ラインを低圧ラインへ接続するバイパス通路と、このバイパス通路を介して前記高圧ラインから低圧ラインへバイパスする冷媒流量を調節するバイパス弁とを設け、前記暖房運転時に前記冷媒循環サイクル内の低圧ラインの圧力が所定圧力以下となった場合に、前記バイパス弁を開として前記高圧ラインの冷媒の一部を前記低圧ラインへバイパスさせるようにしたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】 前記エンジン廃熱の回収は、低圧ラインの圧力が第1の所定圧以下である場合に行われ、このエンジン廃熱の回収にも拘わらず前記低圧ラインの圧力が前記第1の所定圧よりも低い第2の所定圧以下である場合に、前記バイパス弁を開とする請求項1記載の空気調和装置。
【請求項3】 前記高圧ラインと低圧ラインとを接続するバイパス通路は複数設けられ、それぞれのバイパス通路に前記バイパス弁を設け、開放されるバイパス弁の数を制御することによって前記高圧ラインから前記低圧ラインへ流れる冷媒量を調節することを特徴とする請求項1記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、住居や工場などに用いられるヒートポンプ式の冷媒循環サイクル、特に、エンジンでコンプレッサを駆動し、エンジン廃熱から吸熱できる機構を備えている空気調和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンにて駆動する圧縮機、室外用熱交換器、室内用熱交換器、及び膨張装置を構成要素に含むヒートポンプ式冷媒循環サイクルにおいて、暖房運転時に室外用熱交換器の着霜を防止又は解除する手法として大別してリバースサイクル方式とホットガスデフロスト方式とが知られている。
【0003】前者は、最も広く採用されている方式であり、冷媒の流れを逆転させて室外用熱交換器に高温高圧冷媒を供給するようにしたもので、例えば、特開昭60−33459号公報などがその例である。
【0004】この例では、四方弁や切換弁の切り替えによって、暖房運転時に、コンプレッサから吐出した冷媒を、室内用熱交換器、暖房用減圧素子、室外用熱交換器へとこの順で通過させて圧縮機へ戻し、暖房運転中に室外用熱交換器に着霜が生じた場合には、四方弁や切換弁を切り替えて、コンプレッサから吐出した冷媒を、室外用熱交換器、除霜用の補助減圧素子、エンジン廃熱回収用の熱交換器へとこの順で通過させて圧縮機へ戻すようにしたものである。
【0005】また、後者の方式は、図3に示されるように、ヒートポンプ式冷媒循環サイクルにおいて、サイクル経路上の室外用熱交換器Aの前後にそれぞれ膨張弁B,Cと開閉弁D,Eとを並列に設けたものである。通常の暖房運転時には、室外用熱交換器Aの上流側の開閉弁Dを閉、膨張弁Bを開、下流側の開閉弁Eを開、膨張弁Cを閉とし、コンプレッサFから吐出した冷媒を室内用熱交換器Gで放熱した後に膨張弁Bで減圧して室外用熱交換器Aで吸熱し、しかる後に開閉弁Eを通ってコンプレッサFに戻すようにしている。これに対して、室外用熱交換器Aを除霜する場合には、室外用熱交換器Aの上流側の開閉弁Dを開、膨張弁Bを閉、下流側の開閉弁Eを閉、膨張弁Cを開とし、コンプレッサFから吐出した冷媒を室内用熱交換器Gで放熱した後に開閉弁Dを通過させて減圧させることなく室外用熱交換器Aに流入し、ここでさらに放熱した後に膨張弁Cで減圧し、コンプレッサFに戻すようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のサイクル方式による除霜では、除霜運転を行っている間は室内を暖房することができず、暖房フィーリングを悪化させる大きな原因となっている。
【0007】また、エンジン廃熱を用いても十分な吸熱が行えない場合には、低圧ラインの圧力(低圧圧力)を高めて室外用熱交換器の除霜ができなくなる。即ち、R22を冷媒とする冷媒循環サイクルにおいて、図4で示す標準的なモリエール線図を用いて説明すると、吸熱量を多くする必要からエンジン廃熱を回収するような場合でも、例えば、外気温が低くなると、冷媒の状態変化が実線で示される状態から破線で示される状態へ変移し、低圧圧力はP1からP2へ低下してしまう。このため、ある低外気温でエンジン廃熱を回収して低圧飽和温度を氷点温度以上に保持することができたとしても、外気温が一層低くなった場合には、低圧飽和温度が氷点温度以下となって室外用熱交換器の着霜が進行してしまう。
【0008】この点を解決するためには、室外用熱交換器を流れる冷媒圧力を何らかの方法で高く保持すればよいわけであるが、後者のサイクル方式を利用してこれを実現する場合を考えると、後者の冷媒循環サイクルでは、室外用熱交換器Aの除霜中も室内の暖房が継続されるものの、着霜の防止や除霜のために室外用熱交換器Aで熱量が消費されてしまい、暖房能力は通常の暖房運転時よりも低下してしまう。つまり、暖房能力を犠牲にして着霜の防止又は除霜を行う構成となってしまう。また、後者の方式では、バイパス経路とこのバイパス経路を開閉する開閉弁とを室外用熱交換器の前後にそれぞれ設ける必要があることから、サイクル構成が複雑になり、コスト高になる不都合もある。
【0009】そこで、この発明においては、エンジン廃熱の回収にもかかわらず十分な吸熱量が得られない場合でも室外用熱交換器の着霜を確実に防止することができる空気調和装置を提供することを課題としている。また、暖房運転を行いながら着霜防止を行うことができ、しかもその際に暖房能力が損なわれることのない空気調和装置を簡易なサイクル構成によって実現することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、この発明にかかる空気調和装置は、エンジンにて駆動する圧縮機、室外用熱交換器、室内用熱交換器、膨張装置、及び前記エンジンの廃熱を回収する廃熱回収器を構成要素に含むヒートポンプ式冷媒循環サイクルを備え、暖房運転時に前記圧縮機から吐出した冷媒を前記室内用熱交換器、膨張装置、室外用熱交換器の順で冷媒を通過させ、さらに前記廃熱回収器でエンジン廃熱を回収可能とするものにおいて、前記冷媒循環サイクル内の冷媒圧力を検出する圧力検出手段と、前記室内用熱交換器と前記膨張装置とをバイパスして前記冷媒循環サイクルの高圧ラインを低圧ラインへ接続するバイパス通路と、このバイパス通路を介して前記高圧ラインから低圧ラインへバイパスする冷媒流量を調節するバイパス弁とを設け、前記暖房運転時に前記冷媒循環サイクル内の冷媒圧力が所定圧力以下となった場合に、前記バイパス弁を開として前記高圧ラインの冷媒の一部を前記低圧ラインへバイパスさせるようにしたことを特徴としている(請求項1)。
【0011】上記構成においては、外気からの吸熱が十分でない場合においては、エンジン廃熱を回収することにより暖房運転を行うことが可能である。しかし、エンジン廃熱からの吸熱量が不充分な場合には、いくらエンジン廃熱を利用してもサイクル内の冷媒圧力は高くならず、暖房能力が低下すると共に蒸発温度の低下により着霜の恐れがでてくる。このことから、冷媒圧力が所定圧力以下となったことを検出することによって吸熱量の不足を知ることができ、この場合に、バイパス弁を開とすることで圧縮機から吐出した高圧冷媒の一部を膨張装置を通さずに低圧ラインへ直接導き、もって、低圧ラインの圧力を高めて暖房能力を向上させると共に着霜の防止を図ることができる。
【0012】バイパス弁を開けると、高圧冷媒の一部が低圧ラインに直接流れ込むことから、室内用熱交換器に全冷媒を循環させることができなくなるが、低圧ラインの圧力は上昇し、コンプレッサに吸入される冷媒の比容積は小さくなり、同じコンプレッサの吐出量でも冷媒全体の循環量は増加することとなる。また、低圧ラインの圧力を高めることでコンプレッサに負荷がかかるため、エンジン負荷の増大によりエンジン廃熱量を増加させることができ、廃熱回収量を多くすることができる。このため、バイパス弁を開放したことによって暖房能力が低下することはなく、暖房能力を維持又は増加させることができる。
【0013】エンジン廃熱を有効利用するためには、バイパス弁の制御に優先してエンジン廃熱の回収を行うことが望ましく、そのような具体的な構成としては、エンジン廃熱の回収を低圧ラインの圧力が第1の所定圧以下である場合に行い、このエンジン廃熱の回収にも拘わらず低圧ラインの圧力が前記第1の所定圧よりも低い第2の所定圧以下である場合にバイパス弁を開にするよい(請求項2)。
【0014】このような構成では、吸熱量が不足する場合には、まず、エンジン廃熱が有効に利用され、それにも拘わらず、低圧圧力が低いために着霜の恐れがあれば、バイパス弁が開放されて高圧ラインの冷媒が低圧ラインへバイパスし、低圧圧力を上昇させて室外用熱交換器の着霜の防止が図られる。
【0015】また、高圧ラインから低圧ラインへ戻される冷媒流量の調節は、バイパス弁によってバイパス通路の絞りを調節するものであっても、バイパス通路を複数設け、各バイパス通路に全開又は全閉のみの動作を行うバイパス弁を設け、開放されるバイパス弁の数を調節することでバイパスする冷媒流量を調節するもの(請求項3)であってもよい。
【0016】このような構成によれば、高圧ラインから低圧ラインへ戻される冷媒量を調節することで、冷媒圧力の低下の程度や着霜の恐れの度合いなどに応じて必要とするバイパス冷媒量を適切に制御することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明の構成例を図面により説明する。図1において、エンジン1によってコンプレッサ2を駆動するヒートポンプ式の冷媒循環サイクル3が示されている。
【0018】この冷媒循環サイクル3は、コンプレッサ2、四方弁5、室内用熱交換器6、膨張弁7、室外用熱交換器8、廃熱回収器9などによって構成され、より具体的には、エンジン1からの動力が電磁クラッチ4を介してコンプレッサ2に伝達され、コンプレッサ2の吐出側が四方弁5の高圧接続ポート5aに配管接続され、この高圧接続ポート5aと連通可能な第1切替ポート5bを室内用熱交換器6に配管接続し、この室内用熱交換器6を膨張弁7を介して室外用熱交換器8に配管接続している。そして、室外用熱交換器8は、四方弁5の第2切替ポート5cに接続し、このポートと連通可能な低圧接続ポート5dを後述する廃熱回収器9の冷媒流入部に接続し、廃熱回収器9の冷媒流出部をコンプレッサ2の吸入側に接続している。
【0019】室内用熱交換器6は、複数設けられてこれらが並列に接続され、膨張弁7はそれぞれの室内用熱交換器ごとに設けられており、四方弁5から室内用熱交換器6へ通じる配管は、途中で分岐され、膨張弁7から室外用熱交換器8へ通じる配管は、途中で1つにまとめられている。
【0020】冷却水循環サイクル10は、エンジン冷却水を循環させる循環ポンプ11と、エンジン冷却水を放熱するラジエータ12と、このラジエータ12をバイパスして流れるエンジン冷却水を前記冷却サイクル3の冷媒と熱交換する廃熱回収器9と、エンジン冷却水をラジエータ12へ流すか廃熱回収器9へ流すかを切り替える三方弁13と、廃熱回収器9へ流れるエンジン冷却水の流量を調節する調節弁14と、ラジエータ12や廃熱回収器9をバイパスする通路に設けられた開閉弁15と、エンジン1からの排ガスとエンジン冷却水とを熱交換させる排ガス熱交換器16とから構成されている。
【0021】ここで、廃熱回収器9や排ガス熱交換器16は、エンジン冷却水と冷媒又は排ガスとを熱交換させる二重管によって構成しても、エンジン冷却水を蓄積する温水タンク内に冷媒循環サイクルの配管又は排ガス管を通す構成としても、並設された熱交換部の一方にエンジン冷却水を他方に冷媒又は排ガスを通し、共通のフィンによって一体に結合された一体型熱交換器などによって構成してもよい。
【0022】また、冷媒循環サイクル3の廃熱回収器9とコンプレッサ2の吸入側との間には、低圧ラインの冷媒圧力を検出する圧力センサ20が設けられ、コンプレッサ2の吐出側と廃熱回収器9の冷媒流入側との間には、2つのバイパス通路21,22が設けられ、各バイパス通路21,22には各々の通路を開閉するバイパス弁23,24が設けられている。
【0023】尚、室内用熱交換器6と膨張弁7は、室内に設置された室内機25に収納され、それ以外の構成要素は、室外に設置された室外機26にまとめて収納されている。
【0024】制御部30は、図示しない中央演算処理装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力ポート(I/O)等を備えると共に、四方弁や、バイパス弁、流量調節弁などを制御する駆動回路等を有して構成され、ROMに与えられた所定のプログラムにしたがって圧力センサ20などからの信号を入力処理し、四方弁5の切り替え制御やバイパス弁23,24の開閉制御等を行うようになっている。
【0025】上記構成において、次に動作を説明する。先ず、冷房運転時には、冷媒循環サイクル3の四方弁5を波線で示すように切り替え、バイパス弁23,24を閉とする。また、冷却水循環サイクル10の開閉弁15を開としてエンジン冷却水をラジエータ12及び廃熱回収器9をバイパスさせて循環させるか、三方弁13を切換えてエンジン冷却水を廃熱回収器9へ流さずにラジエータ12のみへ流すようにする。
【0026】これにより、コンプレッサ2によって圧縮された冷媒は、四方弁5を介して室外用熱交換器8に入り、ここで外気と熱交換して放熱した後に膨張弁7を介して各室内用熱交換器6に入り、室内空気から吸熱した後に四方弁5を介して廃熱回収器9に入り、ここでエンジン冷却水と熱交換することなくコンプレッサ2に戻される。
【0027】これに対して、暖房運転時には、四方弁5を実線で示すように切り替え、コンプレッサ2より吐出した冷媒を四方弁5を介して各室内用熱交換器6へ送り、ここで室内の空気と熱交換して放熱した後に膨張弁7を介して室外用熱交換器8に入り、外気から吸熱した後に廃熱回収器9を介してコンプレッサ2に戻される。
【0028】この際、冷房循環サイクル3のバイパス弁23,24及び温水循環サイクル10の各弁は、以下のように制御され、着霜を防止しつつ暖房性能を確保した除霜レス制御が行われる。
【0029】以下、この除霜レス制御を図2のフローチャートに基づいて説明すると、先ず、ステップ50において、圧力センサ20によって検出された低圧ラインの圧力Ps等が入力される。次に、ステップ52において、低圧飽和温度が0℃以上(氷点温度以上)となって室外用熱交換器8が着霜することのない条件を、低圧ラインの圧力Psが所定圧力α(例えば、4Kg/cm2G )以上であるか否かによって判定する。
【0030】低圧ラインの圧力Psがαよりも小さい場合には、室外用熱交換器8の着霜の可能性があることから、ステップ54へ進み、ここで冷媒の吸熱量を多くするためにエンジン冷却水を廃熱回収器側9へ流すよう三方弁13を切換え、調節弁14の開度を調節してエンジン廃熱による冷媒加熱制御が行われる。すなわち、冷媒循環サイクル内の冷媒を廃熱回収器9によってエンジン冷却水と熱交換させることによってエンジン廃熱から吸熱し、もって、冷媒サイクル3の低圧圧力を高めて着霜防止を試みる。
【0031】ステップ54による低圧ラインの圧力調節の後に、ステップ56においては、エンジン廃熱を利用しても低圧圧力が室外用熱交換器8の着霜を防止できる圧力まで高めることができない状態であるか否かを判定する。即ち、室外用熱交換器8の着霜の恐れが依然として大きいか否かを、Psが前記αよりも低い設定値β(例えば、3.5Kg/cm2G )を基準として、これよりも低いか否かによって判定する。
【0032】Psが設定値αよりも低く、β以上である場合には、以下述べるステップ58,60をバイパスしてエンジン廃熱を回収する現状の暖房制御を継続させ、設定値βよりも低い場合には、ステップ58へ進み、Ps<βの状態が規定時間継続した状態にあるか否かを判定する。この判定は、着霜条件をより厳格に判定するもので、室外用熱交換器の着霜は、その進行状態を観察すると、低圧圧力が着霜可能領域に入っても、水蒸気が結晶化するまでには幾分時間がかかることによる。
【0033】したがって、ステップ58において、規定時間内であれば、ステップ60をバイパスしてエンジン廃熱を回収する現状の暖房制御を継続し、Ps<βの状態が規定時間継続した後であれば、ステップ60へ進み、バイパス弁23,24を開制御し、着霜防止を強化した暖房制御を行う。ここで、バイパス弁の開制御とは、室外用熱交換器の着霜の恐れの程度、即ち、低圧圧力の低下の程度によって開成する弁の数を調節することで低圧圧力を着霜が防止される圧力まで適切に高める制御のことであり、例えば、低圧圧力が著しく低ければ、2つのバイパス弁23,24を開とし、高圧ラインから低圧ラインへ両方のバイパス通路21,22を介して冷媒を直接バイパスさせ、そうでなければ、一方のバイパス弁23のみを開とし、一方のバイパス通路21を介して冷媒をバイパスさせる。
【0034】この際、コンプレッサから吐出した冷媒の一部は、四方弁を介して室内用熱交換器へ至ることなくバイパス通路を介して低圧ラインへ直接流れることから、室内用熱交換器6へは全冷媒が循環されないことになる。しかしながら、バイパス弁を開くと低圧圧力が上昇するため、コンプレッサ2の吸入冷媒の比容積は小さくなり、したがって、同じコンプレッサ2の吐出量でも循環冷媒量が増加することになる。例えば、3kg/cm2G と4.5kg/cm2G の飽和蒸気の比容積を比較すると、後者の方が35%ほど小さくなり、同じコンプレッサ回転数では、後者の方が冷媒循環量が多くなる。また、バイパス弁を開いて低圧圧力を高く維持させた場合には、コンプレッサ2に負荷がかかるため、エンジン負荷の増大によりエンジン1の燃料消費量が多くなって冷媒への廃熱回収量を大きくすることができる。よって、これら冷媒循環量の増加と廃熱回収量の増加によって、冷媒の一部が室内用熱交換器6へ流れなくなるにもかかわらず、暖房能力の低下はなく、バイパス弁を開とする前の暖房能力が維持される。
【0035】このように、上記構成の特徴は、従来のリバースサイクル方式やホットガスバイパス方式のように、暖房能力を犠牲にして除霜を行う方式とは異なり、暖房能力を維持したまま室外用熱交換器の着霜を防止でき、もって個別に除霜制御を行う必要がない点にある。したがって、常に安定した暖房が行われて暖房フィーリングを阻害することがなく、しかも、着霜防止機構をバイパス弁で開閉されるバイパス通路を付加するだけで構築できることから、サイクル構成の複雑化、コストの高騰を回避することができる。
【0036】以上のような着霜防止暖房制御に対して、ステップ52において、Psがα以上であれば、ステップ62へ進み、ここで、ステップ60の着霜防止暖房制御が実行中であるか否かを判定し、このステップ62で着霜防止暖房制御が実行中であると判定された場合には、ステップ64へ進み、着霜防止暖房制御の終了条件が満たされたか否かを判定する。
【0037】即ち、ステップ62,64では、ステップ60の着霜防止暖房制御から通常の暖房制御への復帰の適否を判定するもので、着霜防止暖房制御が既に終了している場合や着霜防止暖房制御の終了条件を満たしていない場合には、ステップ66をバイパスして現状の制御を継続させ、着霜防止暖房制御の実行中に終了条件が満たされた場合には、もはやバイパス弁23,24を閉じても着霜の恐れはないものと判定してステップ66へ進み、開放されている全てのバイパス弁を閉とする閉制御を行う。
【0038】ここで、着霜防止暖房制御の終了条件としては、低圧圧力Psがα以上であることを前提として、例えば、外気温度が所定温度以上であるとか、Ps≧αの状態が所定時間経過した場合などとすることが考えられ、バイパス弁を閉としても室外用熱交換器8の着霜の恐れが全くない条件が用いられる。
【0039】したがって、上述の構成によれば、暖房運転が開始された後に、着霜の恐れが認められれば、エンジン廃熱の回収が優先して行われ、それにも拘わらず、着霜の恐れを回避できなければ、ステップ60の着霜防止暖房制御が行われる。そして、この着霜防止暖房制御中に終了条件を満たせば、再び通常の暖房制御に復帰される。よって、暖房運転中は、常に所定の暖房性能が保たれると共に室外用熱交換器8の着霜が防止され、従来のように室外用熱交換器が一旦着霜した後に、暖房制御を犠牲にして除霜を行うような制御が不要となる。
【0040】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、暖房運転時にエンジンで駆動する圧縮機から吐出した冷媒を室内用熱交換器、膨張装置、室外用熱交換器の順で冷媒を通過させ、さらに廃熱回収器でエンジン廃熱を回収可能とする冷媒循環サイクルにおいて、冷媒圧力が所定圧力以下となった場合に高圧ラインと低圧ラインとを連通させて圧縮機から吐出した高圧冷媒の一部を膨張装置を通さずに低圧ラインへ直接導くようにしたので、低圧圧力を上昇させてコンプレッサ吸入冷媒の比容積を小さくし、冷媒全体の循環量を増加させることができる。また、低圧ラインの圧力を高めることでコンプレッサの負荷が高められ、エンジン負荷を増加させてエンジン廃熱量を高めることができ、エンジン廃熱の回収量を多くすることができる。このため、高圧ラインから低圧ラインへ冷媒の一部をバイパスさせても暖房能力が損なわれることはなく、暖房能力を維持乃至は増加させた状態で室外用熱交換器の着霜の防止を確実に図ることができる。
【0041】しかも、高圧ラインと低圧ラインとの間にバイパス弁を備えたバイパス通路を設け、このバイパス弁をサイクル内の圧力が低い場合に開成する構成としたので、既存のサイクル構成を大幅に変更する必要がなく、簡易なサイクル構成をもって快適な暖房フィーリングと着霜防止を両立させることができる。
【0042】また、バイパス通路を複数も設け、開放されるバイパス通路の数を調節することで、低圧側へバイパスする冷媒量を調節する構成とすれば、冷媒圧力の低下の程度や着霜の恐れの程度などに応じてバイパス冷媒量を適切に制御することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003333
【氏名又は名称】株式会社ゼクセル
【出願日】 平成10年8月11日(1998.8.11)
【代理人】 【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保 (外1名)
【公開番号】 特開2000−55506(P2000−55506A)
【公開日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願番号】 特願平10−226984