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【発明の名称】 吸収冷凍機の制御方法
【発明者】 【氏名】小野 仁意

【氏名】三浦 貴晶

【要約】 【課題】従来の制御では、経年変化により再生器1内における液位の制御性が著しく低下するとともにインバータ指令のハンチングを招く可能性があり、溶液ポンプ6の機器寿命の短命化、消費電力の増加といったことが問題であった。

【解決手段】再生器1内の不感帯領域(II)を液位が通過する際に要する時間に基づき、溶液ポンプ6を増減速する速度と時間とを変化させることによって再生器1内の溶液の液位を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷媒溶液を加熱し冷媒成分を気化させて冷媒蒸気を発生させる再生器と、該再生器において発生する冷媒蒸気を凝縮して冷媒液とする凝縮器と、該凝縮器において生成される冷媒液と冷凍対象物との間で熱交換を行わせ該冷凍対象物を冷却するとともに冷媒液を気化させて冷媒蒸気とする蒸発器と、該蒸発器において生成される冷媒蒸気を前記再生器において冷媒成分の気化後に残る溶液に吸収させて冷媒溶液とする吸収器と、該吸収器において生成される冷媒溶液と冷媒成分の気化後に残る溶液との間で熱交換を行う熱交換器と、前記再生器と吸収器との間で冷媒溶液を循環させる溶液ポンプと、前記再生器に対して供給される熱源の流入量を制御する制御弁とを備える吸収冷凍機について、前記再生器内の冷媒溶液の液位を制御する制御方法であって、前記再生器内の所定範囲を液位が移動する際に要する時間に基づき、前記溶液ポンプを増減速する速度と時間とを変化させることを特徴とする吸収冷凍機の制御方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸収冷凍機の制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】吸収冷凍機は、図4に示すように、再生器1、凝縮器2、蒸発器3、吸収器4、熱交換器5の各熱交換器と、溶液ポンプ6、冷媒ポンプ7、制御弁8から構成されている。
【0003】再生器1は、冷媒溶液を加熱し冷媒成分を気化させて冷媒蒸気を発生させるために設けられている。凝縮器2は、再生器1において発生する冷媒蒸気を凝縮して冷媒液とするために設けられている。蒸発器3は、凝縮器2において生成される冷媒液と管路9を流れる冷水との間で熱交換を行わせ冷水を所定の温度に冷却するとともに冷媒液を気化させて冷媒蒸気とするために設けられている。吸収器4は、蒸発器3において生成される冷媒蒸気を再生器1において冷媒成分の気化後に残る溶液に吸収させて冷媒溶液とするために設けられている。熱交換器5は、吸収器4において生成される冷媒溶液と冷媒成分の気化後に残る溶液との間で熱交換を行うために設けられている。溶液ポンプ6は、再生器1と吸収器4との間で冷媒溶液を循環させるために設けられている。制御弁8は、再生器1に対して供給される熱源の流入量を制御するために設けられている。
【0004】吸収冷凍機の主目的は蒸発器3内の冷媒液の蒸発熱を利用して管路9を流れる冷水を所定の温度に冷却することである。そこで、制御弁8では次のような制御が行われる。
【0005】冷水の温度が設定値よりも低い場合は再生器1への熱源流体の流入量を減少させ、設定温度より高い場合は流入量を増加させる。このように、再生器1への熱源流体の流入量は冷水の温度に応じて変化する。そのため、再生器1内の液位は、空焚き等を防止するために溶液ポンプ6を介して溶液が適宜供給され、一定レベルを保つように制御されている。すなわち、再生器1内の液位が低下した場合は、溶液ポンプ6のインバータ指令を増加させて再生器1への溶液の流入量を増やし、液位が増加した場合は、逆にインバータ指令を減少させて溶液の流入量を減らしている。
【0006】ところで、再生器1内の液位は、図5に示すように、再生器1内に略垂直に設置された4本の電極棒11a,11b,11c,11dにより検出されるようになっている。各電極棒は上端を一定の高さに揃えて固定されているが長さに長短が設けられている。そして、再生器1内の液位が最も長い(下端が最も低い位置にある)電極棒11aの下端を下回った場合は冷凍機トリップとなり、再生器1内の液位が最も短い(下端が最も高い位置にある)電極棒11dの下端を超えた場合は溶液ポンプトリップとなる。
【0007】以下では、電極棒11a〜11b間を増速領域(I)、電極棒11b〜11c間を不感帯領域(II)、電極棒11c〜11d間を減速領域(III)として従来の制御ロジックについて説明する。
【0008】従来の制御ブロックの構成を図6に示す。従来の制御ロジックでは、各電極棒11のON-OFF状態と再生器1内の圧力をパラメータとして、ON-OFF状態から決まるオーバーライド出力と再生器1内の圧力から決まるインバータ指令基準値とが加算器12に入力され、双方を加算して得られた出力がインバータ指令となる。
【0009】インバータ指令基準値は、インバータ指令基準値算出器13により再生器1内の圧力の2次関数として求められる。一方、オーバーライド出力は、以下の手順により算出される。
【0010】再生器1内の液位は液位検出器14により検出され、増速領域(I)にある場合は増速レートが、減速領域(III)にある場合は減速レートが、不感帯領域(II)にある場合は0.0(増減速なし)が増減速レート選択器15によって選択され、積分器16に入力される。
【0011】再生器1内の液位が増速領域(I)あるいは減速領域(III)にある場合は、積分器16の出力結果がそのままオーバーライド出力となって加算器12に入力されるが、液位が領域(I)あるいは減速領域(III)から不感帯領域(II)に入った時は、オーバーライド選択器17によりオーバーライドゲインαが選択され、その時点での積分器16の出力をオーバーライドゲインαだけ小さくした値にオーバーライド出力が切換えられたうえで加算器12に入力される。
【0012】再生器1内の液位が3つの領域に跨って変動する場合の従来の制御フローを図7に示す。従来の制御では、液位が増速領域(I)あるいは減速領域(III)にある間は一定レートでインバータ指令が増減速される。そして、増速領域(I)あるいは減速領域(III)から不感帯領域(II)に戻った時点でオーバーライド出力がオーバーライドゲインαだけステップ状に小さくなり、インバータ指令値が再生器1内の圧力から決まるインバータ指令基準値に近づられけるようになっている。
【0013】そのため、オーバーライドゲインαによってインバータ指令がインバータ指令基準値の近傍まで引き戻される従来の制御では、溶液ポンプ6の性能低下、溶液の汚れ等の経年変化によってインバータ指令基準値とインバータ指令の定常値とのズレが大きくなった場合、再生器1内の液位やインバータ指令を定常値に落ち着かせることが困難になり、再生器1内の液位やインバータ指令が持続的に振動する現象が起こる可能性がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の制御では、経年変化により再生器1内における液位の制御性が著しく低下するとともにインバータ指令のハンチングを招く可能性があり、溶液ポンプ6の機器寿命の短命化、消費電力の増加といったことが問題となっていた。
【0015】本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、再生器内における液位の制御性を向上させることにより、溶液ポンプの機器寿命の延長ならびに消費電力の削減を可能とする吸収冷凍機の制御方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するための手段として、次のような吸収冷凍機の制御方法を採用する。すなわち、請求項1記載の吸収冷凍機の制御方法は、冷媒溶液を加熱し冷媒成分を気化させて冷媒蒸気を発生させる再生器と、該再生器において発生する冷媒蒸気を凝縮して冷媒液とする凝縮器と、該凝縮器において生成される冷媒液と冷凍対象物との間で熱交換を行わせ該冷凍対象物を冷却するとともに冷媒液を気化させて冷媒蒸気とする蒸発器と、該蒸発器において生成される冷媒蒸気を前記再生器において冷媒成分の気化後に残る溶液に吸収させて冷媒溶液とする吸収器と、該吸収器において生成される冷媒溶液と冷媒成分の気化後に残る溶液との間で熱交換を行う熱交換器と、前記再生器と吸収器との間で冷媒溶液を循環させる溶液ポンプと、前記再生器に対して供給される熱源の流入量を制御する制御弁とを備える吸収冷凍機について、前記再生器内の冷媒溶液の液位を制御する制御方法であって、前記再生器内の所定範囲を液位が移動する際に要する時間に基づき、前記溶液ポンプを増減速する速度と時間とを変化させることを特徴とする。
【0017】請求項1記載の吸収冷凍機の制御方法においては、再生器内の液位が不感帯領域を通過するのに要する時間に基づき、溶液ポンプを増減速する速度と時間とを変化させることにより、液位の制御性が向上するとともに、再生器内の液位の持続的な振動によるインバータ指令のハンチングを抑えることができる。これにより、溶液ポンプの機器寿命の延長ならびに消費電力の削減が図れる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明に係る吸収冷凍機の制御方法の実施形態を図1ないし図3に示して説明する。なお、本実施形態における吸収冷凍機、ならびに再生器の液位検出系の構成は従来と同様である。本実施形態における制御ブロックの構成を図1に示す。図において、符号20は液位検出器、21は前々ステップ領域記憶器、22は前ステップ領域記憶器、23は液位遷移判断器、24は不感度領域通過時間カウント器、25は減速レート-減速時間算出器、26は増速レート-増速時間算出器、27は減速漸減ゲイン、28は増速漸減ゲイン、29は前減速レート記憶器、30は前増速レート記憶器、31は漸減減速ゲイン切換器、32は漸減増速ゲイン切換器、33は減速レート選択器、34は増速レート選択器、35は増減速レート選択器、36は積分器である。
【0019】本実施形態における制御ロジックでは、電極棒ON-OFF状態を基準として液位検出器20によって再生器1内の液位がどの領域にあるかが検出され、前々ステップ領域記憶器21、前ステップ領域記憶器22によって前々回までに再生器1内の液位がどの領域にあったかが記憶される。
【0020】これをもとに、液位遷移判断器23によって再生器1内の液位の遷移パターンが判断される。液位遷移判断器23以降の制御ロジックについては、増速時と減速時ともまったく同じ動きとなるので、以下では増速時の動きについてのみ説明する。
【0021】遷移パターンが減速領域(III)→不感帯領域(II)→増速領域(I)のように変動する場合は、不感帯通過時間が不感帯領域通過時間カウント器24によりカウントされる。そして、不感帯通過時間から増速レート-増速時間算出器26により漸減前増速レートならびに増速時間が算出される。再生器1内の液位が不感帯領域(II)から増速領域(I)に入った時点から増速時間が経過するまでは漸減増速ゲイン切換器32により漸減前増速レートが選択され、増速レートとして出力される。増速時間が経過した後も再生器1内の液位が引き続いて増速領域(I)にある場合は、増速漸減ゲイン28により漸減前増速レートが1/βu倍に小さくなって増速レートとして出力される。
【0022】一方、遷移パターンが不感帯領域(II)→減速領域(III)→増速領域(II)、あるいは減速領域(III)→不感帯領域(II)→減速領域(III)というように不感帯領域(II)を跨がずに変動する場合は、前増速レート記憶器30で記憶している前ステップの増速レートが増速レート選択器34により選択される。
【0023】減速レートについてもまったく同じフローで算出され、現状の再生器1内の液位から増減速レート選択器35によって増速レート、減速レート、0.0(増減速なし)のいずれかが選択され、積分器36に入力される。本制御ロジックでは、積分器38の出力がインバータ指令となる。
【0024】再生器1内の液位が3つの領域に跨って変動する場合の制御フローを図2に示す。本実施形態における制御では、再生器1内の液位が増速領域(I)から不感帯領域(II)を跨いで減速領域(III)まで変動する場合、図のように不感帯領域(II)を再生器1内の液位が通過する時間td1が計測される。そして、減速レート-減速時間算出器25により時間td1に基づいて減速レートkd1と減速に要する時間tu1'とが算出される。
【0025】再生器1内の液位が減速領域(III)に入った時点から時間tu1'が経過するまでは、減速レートkd1が漸減減速ゲイン切換器31、減速レート選択器33、増減速レート選択器35により選択される。この出力が積分器36に入力され、インバータ指令値は減速レートkd1で減速される。
【0026】再生器1内の液位が減速領域(III)に入った時点から時間tu1'が経過した後も引き続いて再生器1内の液位が減速領域(III)にある場合は、漸減減速ゲイン27により減速レートkd1を1/βd倍に小さくしたレートが漸減減速ゲイン切換器31で選択される。その結果、インバータ指令は減速の度合いが緩やかになり、再生器1内の液位が不感帯領域(II)に達するまで減速を続ける。再生器1内の液位が減速領域(III)から不感帯領域(II)を跨いで増速領域(I)まで変動する場合についても全く同様である。
【0027】従来の制御と本実施形態における制御とをシミュレーションにより比較した結果を図5に示す。図中(a)は再生器1内の液位の基準値(不感帯領域(III)の中間点)からの変動量を示し、(b)は増減速レートを示している。点線は従来制御であり、実線は従来の制御から1000秒(図中Pの位置)の時点で本実施形態における制御に切り換えた場合の結果である。図中(c)は本実施形態における増減速時間を示し、(d)は本実施形態における増減速レートを示している。(c)、(d)によると、従来の制御から本実施実施形態における制御に切り換えることにより、減速時間が32秒、減速レートが0.103hz/secで減速されていることがわかる。
【0028】図5に示すように、再生器1内の液位は、従来の制御のままでは持続的に振動し続けるが、本実施形態に示した制御に切り換えることで、増速領域(I)に至ることなく減速領域(III)から緩やかに不感帯領域(II)に収束するのである。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る吸収冷凍機の制御方法によれば、再生器内の液位の制御性が向上するとともに、再生器内の液位の持続的な振動によるインバータ指令のハンチングを抑えることができる。これにより、溶液ポンプの機器寿命の延長ならびに消費電力の削減を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成10年8月17日(1998.8.17)
【代理人】 【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴 (外3名)
【公開番号】 特開2000−55499(P2000−55499A)
【公開日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願番号】 特願平10−230989