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【発明の名称】 ボイラ伝熱管壁温度の予測方法及び予測装置
【発明者】 【氏名】福地 健

【氏名】岩元 英明

【氏名】山本 研二

【氏名】茶木 雅夫

【要約】 【課題】運用条件に対応して非定常時を含む運転時のボイラ伝熱管壁温度を予測する。

【解決手段】火炉空間を複数の3次元要素に分割して火炉解析要素を、伝熱管壁を複数の1次元又は2次元要素に分割して伝熱管壁解析要素を、それら解析要素の境界面を複数の2次元要素に分割してインターフェイス要素をそれぞれ設定し、火炉解析要素に基づいて火炉伝熱解析モデルにより火炉内の伝熱を解析し、これにより求められた伝熱管壁の伝熱量分布をインターフェイス要素ごとの伝熱量に置き換えた後、インターフェイス要素ごとの伝熱量を伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に置き換え、伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に基づいて伝熱管壁解析モデルにより伝熱管壁温度を演算することにより、火炉伝熱解析と伝熱管壁伝熱解析の解析要素の整合性を満たし、ボイラ運用条件に対応した非定常時を含む運転時の伝熱管壁温度を予測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボイラ火炉内の空間を複数の3次元の火炉解析要素に分割し、該火炉解析要素を用いて火炉伝熱解析モデルにより火炉内の伝熱を解析し、該解析に基づいてボイラ伝熱管壁に伝熱される伝熱量分布を求める一方、前記伝熱管壁を複数の1次元又は2次元の伝熱管壁解析要素に分割し、前記伝熱量分布と前記伝熱管壁解析要素を用いて伝熱管壁伝熱解析モデルにより前記伝熱管壁内の伝熱を解析し、該解析に基づいて前記伝熱管壁の温度を予測演算するにあたり、前記火炉解析要素と前記伝熱管壁解析要素の境界面に複数の2次元のインターフェイス要素を設定し、前記伝熱量分布を前記インターフェイス要素ごとの伝熱量に置き換えた後、該インターフェイス要素ごとの伝熱量を前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に置き換えて前記伝熱管壁伝熱解析モデルに与えることを特徴とするボイラ伝熱管壁温度の予測方法。
【請求項2】 前記伝熱量分布を前記インターフェイス要素ごとの伝熱量に置き換える際、及び前記インターフェイス要素ごとの伝熱量を前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に置き換えるにあたり、それぞれ前記火炉解析要素と前記インターフェイス要素との面積の重なり、前記インターフェイス要素と前記伝熱管壁解析要素との面積の重なりに応じて按分することを特徴とする請求項1に記載のボイラ水壁温度の予測方法。
【請求項3】 前記伝熱管壁伝熱解析モデルは、伝熱流体の温度、乾き度などの熱力学性質に係る物理量を演算する機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載のボイラ水壁温度の予測方法。
【請求項4】 入力手段と、演算処理手段と、記憶手段と、表示手段とを備えた計算機システムによりボイラ伝熱管壁温度を予測する装置において、前記記憶手段は、ボイラ火炉内の空間を複数の3次元要素に分割して設定された火炉解析要素に係るデータと、ボイラ伝熱管壁を複数の1次元又は2次元要素に分割して設定された伝熱管壁解析要素に係るデータと、前記火炉解析要素と前記伝熱管壁解析要素の境界面に複数の2次元要素を設定してなるインターフェイス要素に係るデータと、前記火炉解析要素ごとに火炉内の伝熱を解析する火炉伝熱解析モデルと、該火炉伝熱解析モデルにより演算された前記伝熱量分布に基づいて前記伝熱管壁解析要素ごとに前記伝熱管壁内の伝熱を解析する伝熱管壁伝熱解析モデルとが格納され、前記演算処理手段は、前記火炉伝熱解析モデルにより前記火炉内の伝熱を解析して前記伝熱管壁の伝熱量分布を演算する手段と、該演算により求められた前記伝熱量分布を前記インターフェイス要素ごとの伝熱量に変換する手段と、該インターフェイス要素ごとの伝熱量を前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に変換する手段と、該変換された前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に基づいて前記伝熱管壁解析モデルにより伝熱管壁温度を演算する手段とを備えたことを特徴とするボイラ伝熱管壁温度の予測装置。
【請求項5】 前記伝熱量分布を演算する手段は、前記入力手段から入力された前記記憶手段に格納された火炉形状及びバーナ配置などの固定情報と、燃料・空気の投入量及び温度、燃料性状などの運用条件に基づいて、前記火炉伝熱解析モデルにより火炉内の輻射・対流共存伝熱、ガス流れ、燃焼、水壁表面の汚れなどを解析して前記伝熱量分布を演算し、前記伝熱管壁温度を演算する手段は、前記入力手段から入力された前記記憶手段に格納された伝熱管配置などの固定情報と、給水量などの運用条件に従って前記伝熱管壁解析モデルにより伝熱管壁温度を演算することを特徴とするボイラ伝熱管壁温度の予測装置。
【請求項6】 請求項4又は5に記載のボイラ伝熱管壁温度の予測装置を備え、該予測装置から出力される伝熱管壁温度の予測値に基づいて、ボイラの燃料と空気の少なくとも一方を制御する制御手段を備えてなるボイラ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボイラ伝熱管壁温度の予測方法及び装置に係り、特に伝熱管壁強度の低下に関係する伝熱管壁温度の上昇を事前に予測するのに好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】火力発電用等のボイラは、一般に、燃料を燃焼する燃焼空間を伝熱管群からなる壁面で取り囲んで火炉を形成し、伝熱管に水等の冷却流体を通流して加熱することにより蒸気を発生するものである。一般に、燃焼空間を火炉内と称し、伝熱管群からなる壁面を伝熱管壁又は水壁と称している。
【0003】このようなボイラにおいて、伝熱管が局所的に加熱されると伝熱管が損傷するおそれがある。また、伝熱管群の管間の温度が場所によって異なると、熱応力により伝熱管壁が変形するおそれがある。例えば、電力事業などに用いられる大型ボイラにおいては、蒸気圧力が高い(例えば、200気圧以上)のため、局所的な加熱により伝熱管や伝熱管壁の損傷の問題がある。特に、高負荷運用、高効率運用、等の運用条件が厳しいときに深刻な問題となるおそれがある。
【0004】このような問題に対処するため、従来、計算機を用いた数値解析を適用して、火炉内の伝熱解析及び伝熱管壁の伝熱解析が試みられている。例えば、特開平9‐133321号公報には、ボイラ火炉内の空間を複数の2次元又は3次元の火炉解析要素に分割し、火炉内伝熱解析モデルにより火炉解析要素ごとに燃焼、ガス流れ、火炉内の輻射・対流共存伝熱、及び伝熱管壁への伝熱量をシミュレーションして、火炉内の温度分布及びガス組成分布を求める炉内状態予測方法が提案されている。
【0005】一方、伝熱管壁を複数の伝熱管壁解析要素に分割し、伝熱管壁内の伝熱解析モデルにより伝熱管壁解析要素ごとに伝熱管内の流体の流動、対流・沸騰伝熱や壁内の熱伝導を解析して伝熱管壁の温度を予測する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報に提案された炉内状態予測方法では、火炉内の伝熱を解析して伝熱管壁における伝熱量(吸熱量)を求め、これに基づいて蒸気発生量を演算することが提案されているが、伝熱解析モデルを適用して伝熱管壁温度を予測することについては配慮されていない。
【0007】また、伝熱管壁内の伝熱解析モデルにより伝熱管壁の温度を予測する従来の方法にあっても、伝熱管壁における伝熱量又は分布を仮定する等、一定の経験則を適用するものであり、火炉内と伝熱管内の2つの伝熱解析を結合して、伝熱管壁温度を予測することについては配慮されていない。これは、両解析技術において熱移動の境界となる伝熱管壁面で、両者の数値解析要素の整合性がとり難いことに原因する。
【0008】また、従来のボイラ火炉設計は、上述した解析理論を考慮した火炉内現象と伝熱壁内現象に基づいて行われているが、3次元現象や、関連し合う物理現象の複合効果が複雑なため、全ての関連因子を正しく考慮することは不可能であるため、最終的には経験則に依存することが一般である。
【0009】そのため、従来の技術によると、特に、任意の火炉構造、製造実績がない新規の火炉構造には、経験則不足のために対応することができない。また、実際に使用しているバーナの配置パターンに依存する伝熱管壁の伝熱量に偏差などの空間分布のある現象や、ボイラの起動立ち上げ時などの時間変化のある現象、負荷が変化した場合など、伝熱管壁温度の条件が厳しくなる非定常現象への対応が十分にできないという問題がある。このような問題は、ボイラの設計段階及び運転中のいずれの場合においてもある。
【0010】本発明が解決しようとする課題は、任意の火炉構造、任意のボイラ運用条件に対応でき、かつ非定常時を含む運転時の伝熱管壁温度を予測可能にすることにある。
【0011】また、他の課題は、運転中のボイラの伝熱管壁温度を予測し、伝熱管壁に強度上の問題がある場合に、これを回避するように制御することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を次の手段により解決するものである。
【0013】本発明のボイラ伝熱管壁温度の予測方法は、先ず、ボイラ火炉内の空間を複数の3次元の火炉解析要素に分割し、該火炉解析要素を用いて火炉伝熱解析モデルにより火炉内の伝熱を解析し、該解析に基づいてボイラ伝熱管壁に伝熱される伝熱量分布を求める。一方、前記伝熱管壁を複数の1次元又は2次元の伝熱管壁解析要素に分割し、前記伝熱量分布と前記伝熱管壁解析要素を用いて伝熱管壁伝熱解析モデルにより前記伝熱管壁内の伝熱を解析し、該解析に基づいて前記伝熱管壁の温度を予測演算する。この場合に、前記火炉解析要素と前記伝熱管壁解析要素の境界面に複数の2次元のインターフェイス要素を設定し、前記伝熱量分布を前記インターフェイス要素ごとの伝熱量に置き換えた後、該インターフェイス要素ごとの伝熱量を前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に置き換えて前記伝熱管壁伝熱解析モデルに与えることを特徴とする。
【0014】このように、インターフェイス要素を導入して、火炉伝熱解析結果の伝熱量分布をインターフェイス要素を介して伝熱管壁伝熱解析の解析要素ごとの伝熱量に変換して渡すようにしたから、火炉伝熱解析と伝熱管壁伝熱解析の解析要素の整合性を容易にとることができる。その結果、火炉伝熱解析と伝熱管壁伝熱解析を結合でき、任意の火炉構造、任意のボイラ運用条件に対応でき、かつ非定常時を含む運転時の火炉内及び伝熱管壁内の伝熱解析に基づいて、伝熱管壁温度を予測することができる。
【0015】この場合において、前記伝熱量分布を前記インターフェイス要素ごとの伝熱量に置き換える際、及び前記インターフェイス要素ごとの伝熱量を前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に置き換えるにあたり、それぞれ前記火炉解析要素と前記インターフェイス要素との面積の重なり、前記インターフェイス要素と前記伝熱管壁解析要素との面積の重なりに応じて按分することが望ましい。
【0016】また、伝熱管壁内の伝熱解析モデルは、伝熱流体の温度、乾き度などの熱力学性質に係る物理量を演算する機能を備えることが好ましい。
【0017】また、上記の予測方法を実施する装置は、入力手段と、演算処理手段と、記憶手段と、表示手段とを備えた計算機システムによりボイラ伝熱管壁温度を予測する装置において、前記記憶手段は、ボイラ火炉内の空間を複数の3次元要素に分割して設定された火炉解析要素に係るデータと、ボイラ伝熱管壁を複数の1次元又は2次元要素に分割して設定された伝熱管壁解析要素に係るデータと、前記火炉解析要素と前記伝熱管壁解析要素の境界面に複数の2次元要素を設定してなるインターフェイス要素に係るデータと、前記火炉解析要素ごとに火炉内の伝熱を解析する火炉伝熱解析モデルと、該火炉伝熱解析モデルにより演算された前記伝熱量分布に基づいて前記伝熱管壁解析要素ごとに前記伝熱管壁内の伝熱を解析する伝熱管壁伝熱解析モデルとが格納され、前記演算処理手段は、前記火炉伝熱解析モデルにより前記火炉内の伝熱を解析して前記伝熱管壁の伝熱量分布を演算する手段と、該演算により求められた前記伝熱量分布を前記インターフェイス要素ごとの伝熱量に変換する手段と、該インターフェイス要素ごとの伝熱量を前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に変換する手段と、該変換された前記伝熱管壁解析要素ごとの伝熱量に基づいて前記伝熱管壁解析モデルにより伝熱管壁温度を演算する手段とを備えることにより実現できる。
【0018】この場合において、伝熱量分布を演算する手段は、入力手段から入力され記憶手段に格納された火炉形状及びバーナ配置などの固定情報と、燃料・空気の投入量及び温度、燃料性状などの運用条件に基づいて、火炉伝熱解析モデルにより火炉内の輻射・対流共存伝熱、ガス流れ、燃焼、水壁表面の汚れなどを解析して伝熱量分布を演算するものとし、また、伝熱管壁温度を演算する手段は、入力手段から入力され記憶手段に格納された伝熱管配置などの固定情報と、給水量などの運用条件に従って伝熱管壁解析モデルにより伝熱管壁温度を予測することが好ましい。
【0019】これによれば、入力手段から、任意の火炉構造、任意のボイラ運用条件に対応した固定情報及び運用条件を入力することにより、非定常時を含む運転時の火炉内伝熱解析及び伝熱管壁内伝熱解析を行って、伝熱管壁温度を予測することができる。その結果、製造実績がない新規の火炉構造の場合であっても、容易に伝熱管壁温度を予測でき、これに基づいて強度上の問題の有無を判断して、設計を効果的に進めることができる。同様に、実際に使用しているバーナの配置パターンに依存する伝熱管壁の伝熱量に偏差などの空間分布のある現象や、ボイラの起動立ち上げ時などの時間変化のある現象、負荷が変化した場合などの伝熱管壁温度を予測して、設計に反映できる。
【0020】さらに、上記のように構成されたボイラ伝熱管壁温度の予測装置を備え、該予測装置から出力される伝熱管壁温度の予測値に基づいて、ボイラの燃料と空気の少なくとも一方を制御する制御手段を備えて構成することにより、運転中のボイラの伝熱管壁温度を予測し、伝熱管壁に強度上の問題がある場合に、これを回避するように制御することができる。
【0021】
【実施の形態】以下、本発明の実施形態を図を用いて詳細に説明する。
〔実施形態1〕図1乃至3は、本発明のボイラ伝熱管壁温度の予測手順の一実施形態に係るフローチャートである。図4は本発明を説明するためのボイラの一例の全体概要図、図5は伝熱を説明する水壁の断面図、図6はバーナの配置例を説明する図、図7は火炉内伝熱解析のための火炉解析要素の分割例、図8は伝熱壁内伝熱解析のための伝熱壁伝熱解析要素の分割例、図9は本発明の特徴に係るインターフェイス要素の一実施形態を示す図である。
【0022】ここで、図4、5、6を用いてボイラの概要を説明する。これらの図は、石炭火力発電に用いられる貫流ボイラの例であり、発電用ボイラの機能は、燃料系と水壁系(伝熱管壁系)に大別される。燃料系は、燃料、空気、排ガス循環の系からなり、水壁系は冷却媒体である水、蒸気の系からなる。図4において、ボイラ1は、バーナ2から供給される燃料と空気を燃焼する火炉空間を下部水壁3と上部水壁4により囲んで形成され、火炉内で発生した燃焼ガスは上部水壁部から煙道5を介して排出される。下部水壁3と上部水壁4は、図5に示すように、水又は蒸気が通流される複数の伝熱管21の相互間を平板のメンブレンバー22で溶接して構成されている。
【0023】水壁系は、煙道5内に設けられた節炭器6により予熱された給水が、マニホールド7を介して下部水壁3に供給され、下部水壁3を通流する間に火炉内の燃焼ガスにより加熱されて中間混合器8に導かれる。中間混合器8は複数の伝熱管を通ってきた水又は蒸気を混合した後、上部水壁4の各伝熱管に分配するものである。上部水壁4に供給され水又は蒸気は火炉内の燃焼ガスにより加熱されて火炉出口管寄9に至る。その後、図示していない過熱器を通って昇温されて蒸気タービンを駆動するようになっている。なお、火炉出口管寄9における蒸気温度は、ボイラ全体としての伝熱バランス、つまり火炉での伝熱量と、後部過熱器での伝熱量の分配と、水壁耐圧部強度を勘案して決定される。また、図示例の下部水壁3は、伝熱管21が火炉全体を螺旋状に囲んでなるスパイラル構造の場合を示しているが、これに限らず垂直構造のものでも本発明を適用できる。
【0024】一方、燃焼系は、バーナ2から供給される燃料と空気が火炉内で燃焼し、燃焼熱は下部水壁3、上部水壁4により吸熱され、燃焼ガスは煙道5を通って排出する系からなる。バーナ2は、図6に示すように、ボイラの上方から見て、缶前及び缶後から水壁に対して垂直に燃料と空気を噴出する壁面燃焼方式と、火炉内で旋回流れを形成する旋回燃焼方式がある。
【0025】上述した水壁構造と燃焼方式は、ボイラの製造コストと壁面伝熱量の偏差を勘案して選択される。水壁面における火炉から受ける伝熱量の偏差、あるいは伝熱管内流体の流量の管相互間に偏差(管間偏差という)があると、伝熱管が局所的に加熱されて損傷したり、伝熱管壁に熱応力が作用して水壁が変形してしまうなどの重大な問題が生ずる。これらの問題は、中間混合器8により一定の範囲で回避することができる。つまり、上部水壁4に流入される流体は蒸気であるから、伝熱量偏差又は流量の管間偏差があると、それらの偏差が温度の上昇に直接結びつくため、下部水壁3における伝熱量偏差と流量の管間偏差を中間混合器8において均一化して上部水壁4に導くようにしている。中間混合器8の設置の是非、及び設置位置は、設計的事項である。また、流量の管間偏差を調整する他の方法としては、火炉出口管寄9と火炉入口管寄10の伝熱管21との接合部の各伝熱管にオリフィスを設置することが行われている。
【0026】ところで、最近の火力発電用ボイラにおいては、高負荷かつ高効率運用の要求があるため、蒸気の温度条件を高く、かつ厳しくする傾向にある。特に、昼夜の負荷変化に対応するためのボイラの非定常運用は、伝熱管内の流量と伝熱量の管間偏差を増大させることになるから、水壁温度を精度よく予測することが要望されている。また、その予測に基づいて、ボイラの運用を制御することが要望されている。特に、製造実績の無い新構造のボイラを設計する場合に、水壁温度を精度よく予測することは重要である。
【0027】以下、このような要望に対応した本発明の伝熱管壁温度の予測方法について、図1〜3及び他の図を適宜参照して詳細に説明する。図1は、伝熱管壁温度を予測するコンピュータプログラムの処理手順の全体を示し、図2、3はそれぞれ図1の要部の詳細手順を示すプログラムであり、それぞれ火炉伝熱解析モデルと伝熱管伝熱解析モデルに相当する。これらの解析モデルプログラムは、水壁温度を定常及び非定常的に予測するものであるが、非定常条件で予測するプログラムは、定常条件にも対応可能であるから、以下は非定常を年頭において説明する。
(ステップS1:不変情報入力)ここでは、ボイラの運用条件に依存しない火炉の形状と寸法、バーナ配置、水壁伝熱管の配置など、固有の不変情報を入力して計算機内のメモリに設定されたファイルに格納する。次いで、入力された不変情報に基づいて、先ず、解析に必要な解析要素の分割処理を行う。
【0028】例えば、火炉内については、図7に示すように、火炉内伝熱解析用の格子に分割する。すなわち、火炉空間を3次元的に格子分割して火炉解析要素を設定する。図7においては、伝熱管壁である水壁に接する火炉解析要素と水壁との境界面が鳥瞰図で表わされている。この格子分割は、バーナ近傍や燃焼反応領域など、火炉内解析で重要な空間の解析格子を細かくすることが望ましい。なお、ボイラ構造が同じでも、使用するバーナの本数や位置関係のからなるバーナパターンなどの運用条件が変われば、これに応じて格子分割を設定することが望ましい。
【0029】また、水壁については、図8に示すように、水壁伝熱解析用の格子に分割する。図8は、下部水壁3と上部水壁4を展開して2次元で表示している。図示のように、下部水壁3の伝熱管21がスパイラル構造であるので、伝熱管21は下部水壁3と上部水壁4の境界で折れ曲がっている。図では格子分割の全体の様子は示めされていないが、伝熱管21に沿って太線で示した領域が伝熱管壁の伝熱解析要素24である。伝熱管壁の伝熱解析要素24の幅Pは図5に示した伝熱管配置のピッチPに対応している。このように、伝熱管21ごとに、又は数本単位の伝熱管に沿って1次元的に格子要素に分割する。ただし、重力加速度方向の考慮は3次元的に行う。また、伝熱管のメタル自体は、熱容量と熱伝導抵抗が等価な肉厚を有する円管で近似することにより、同様に1次元に分割する。また、複数の伝熱管が出入りする管寄や中間混合器が途中にある場合は、これを回路網近似して扱う。これらの近似処理は、入力データに含まれる。
(ステップS2:運用条件入力)ここでは、伝熱管壁温度予測に係るボイラもしくは火炉の運用条件を入力する。つまり、燃量と空気の投入量及び温度、給水量、燃料性状、等など、時間に依存した運用条件を入力する。ところで、運用条件を時間に対して一定とすれば、定常条件による解析となり、時間に対して変化する運用パターンの場合は非定常解析となる。この場合は、後述するように、ステップS2〜S6を離散的な時間刻みにて繰り返し実行する。
(ステップS3:火炉内伝熱解析)ここで、火炉内から水壁にかけての伝熱機構について、図5、及び図10、11を参照して説明する。なお、火炉伝熱解析方法は、特開平9−133321号公報に記載されている方法を適用する。そもそも、熱はエネルギの一形態であり、温度差に起因して高温物体から低温物体に移動するエネルギが熱であり、図5に示すように、火炉内で発生した高温の火炎及び燃焼ガスから水壁3、4に熱の移動による伝熱が生ずる。伝熱には、伝導と輻射の2つの形態がある。物質は、温度レベルに応じた不規則な熱運動、振動をしている。ここで、振動とは、気体と液体では分子の振動と、原子に拘束された電子のエネルギ準位の高低、固体では結晶格子や自由電子の振動である。接触した物体による熱運動(振動)の機械的交換が伝導伝熱である。また、物質は一般に内部では電荷を持っており、電荷からは電気力線が出ている。熱運動により荷電粒子が運動すると、そこから出ている電気力線が振動して、電磁波が放射される。電磁波は空間内での電場、磁場の振動現象であり、真空内や物質内で進行する。輻射と電磁波は全く同じ意味である。輻射(電磁波)が物質に干渉すると、物質を構成する荷電粒子の振動が促進され、物質の保有する熱が増加する。熱運動に起因して熱→輻射→熱のように熱が移動するのが輻射伝熱である。一般に高温場では輻射熱の影響が強い。流体と固体間の伝熱(伝導及び/又は輻射)を熱伝達というが流体が流動している場合は対流熱伝達と称される。
【0030】図5に戻って、水壁3、4の火炉内面には、燃焼成生物である灰が付着して、汚れ23が存在する。特に、石炭焚きの場合は、灰付着が顕著である。したがって、火炉内の燃焼で高温になった火炎と燃焼ガスから強い輻射が水壁3、4方向に放射されると、汚れ23の表面に到達した輻射は、一部が反射され、一部は吸収されて熱になり、汚れ23の表面は輻射で加熱される。一方、水壁3、4の内部は水又は蒸気で冷却されているので温度勾配があるから、熱伝導による熱移動が生じて水壁3、4が加熱される。また、伝熱管21の内部では、水又は蒸気の相変化を伴う対流伝熱、つまり沸騰伝熱により熱が伝わる。なお、汚れ23の表面は輻射伝熱と同時に、高温ガスの接触による熱伝導及び対流伝熱でも加熱されるが、ボイラ火炉の運用条件における温度レベルでは、全伝熱量の90%以上が輻射伝熱によるものであり、残りが対流伝熱である。つまり、熱の輸送方向は、火炎/燃焼ガス→汚れ23→水壁3、4→水/蒸気の間系になる。
【0031】図5では、熱の移動を1次元的に示したが、火炉内の燃焼伝熱は3次元現象である。図10に火炉内燃焼の模式図を示す。図示のように、下部水壁3にバーナ2が設置され、バーナ2から供給される燃料と空気は噴流を形成して混合される。混合された燃料と空気が燃焼条件を満たしている場合に燃焼が起こり、燃焼ガスと灰が生成される。燃焼ガスと灰は火炉出口から排出されるが、灰の一部は水壁3、4の表面に付着して汚れとなる。燃焼により発生した熱は、図11の模式図に示すように、水壁3、4に伝熱する。水壁の一部領域25に着目すると、この一部領域25には、接触した高温ガスから対流伝熱により熱が移動し、またその領域から見える視野内の高温ガスから輻射伝熱により熱移動する。
【0032】周知のように、燃料、空気中の酸素と窒素、燃焼ガス中の水分と炭酸ガス、中間成生物の水素と一酸化炭素などの物質は、それらの物質の保有する熱エネルギは流れと拡散で輸送される。その熱エネルギの輸送は空間的に隣接した領域で起こるものであり、支配方程式は微分方程式である(近接作用)。また、支配方程式は、輸送項(微分)と、燃焼反応に伴う物質の生成と消滅、熱の発生からなる。ただし、輻射による熱輸送の効果は遠方に作用するため、支配方程式は微積分方程式になる(遠隔作用)。
【0033】これら近接作用と遠隔作用による火炉内での熱輸送現象(流動、燃焼、伝熱)は3次元である。また、各現象は相互に影響し合う。すなわち、流動により物質と熱エネルギ、ガス温度は分布が変化する。物質とガス温度が変化すると、燃焼反応速度(物質の生成及び消滅速度と発熱量)が変化し、ガス温度の変化は直接伝熱に影響する。伝熱が変化するとガス温度と水壁伝熱量が変化することになる。
【0034】このような火炉内伝熱機構をプログラム化した火炉内伝熱解析モデルに基づいて、ステップS3において、火炉内の伝熱解析を行い、その解として壁面伝熱量の分布を求める。このステップS3の詳細を図2に示して説明する。
【0035】(ステップS31:流動解析)流動解析は、流体の質量保存方程式と運動方程式(ナビエストークス方程式)が支配方程式であり、これに基づいて図7の火炉解析要素を用いて行う。質量保存方程式は、火炉内の全流体(燃料、空気、生成ガス、中間成生物)の保存則を表すもので、微小体積における密度変化と流れによる流入出のバランスの項からなっている。運動方程式は、流体運動量の保存方程式であり、非定常的な加速、流動と粘性による運動量空間輸送、圧力勾配と重力による力のバランスの項からなる。なお、ここでは、ガスの密度をガスの温度に依存させる。
【0036】(ステップS32:石炭反応解析)石炭反応解析は、石炭粒子の追跡計算、石炭粒子からの揮発分(ガス燃料)の放出、石炭内カーボン(チャー)とガスの反応計算を行う。これは、石炭燃料を用いた場合に固有のステップである。石炭粒子の追跡は、粒子径分布をヒストグラムで近似し、各粒径ごとに行う。揮発分放出と、石炭内カーボンとガスとの反応は、粒子温度とガス雰囲気に依存するが、この依存性は炭種ごとに異なるので、予め実験で求めておき、石炭物性として入力する(S2)。
【0037】(ステップS33:ガス反応解析)ガス反応解析は、投入した燃料と空気の反応を計算する。ここでの燃料は石炭放出ガスであり、空気は酸素分である。この計算は、各ガス化学種(燃料ガス、酸素、二酸化炭素、水分、水素、一酸化炭素など)ごとの流動、拡散による空間輸送と、化学反応速度の物理モデルに基づく生成・消滅項からなる基礎式を用いるものである。
【0038】(ステップS34:壁汚れ解析)燃料が石炭の場合は、灰が水壁に付着して伝熱の妨げになることから、灰粒子の生成、輸送、壁面付着を計算し、壁面熱抵抗を計算する。灰粒子の生成、輸送、壁面付着の計算方法は、例えば公知の文献(Wang, H. and Harb, L.N., Prog.Energy Combust. Sci. Vol. 23, p.267, 1997)に詳しい。また、壁面灰付着の熱抵抗は、例えば、文献(Wall, T. F. et. al., Prog. Energy Combust. Sci.Vol. 19, p.487, 1993)に記載された方法に基づいて計算する。
【0039】(ステップS35:伝熱解析)ステップS33、34で求めた発熱分布及び壁面熱抵抗に基づき、輻射・対流共存伝熱の計算を行う。ここでは図11で説明したように、流動と温度勾配による熱輸送、燃焼反応による発熱、輻射輸送による熱輸送項からなるエネルギ保存則を解くことによる。
【0040】(ステップS36:収束判定)上述のステップS31〜S35は物理現象として相互に影響し合うので、各時間刻みごとに反復計算を実行し、解である壁面伝熱量が一定の範囲内に収束したか否か判定し、収束するまでステップS31〜S35を繰り返す。
(ステップS4:インターフェイス要素の伝熱量変換)ステップS3で求められた伝熱量分布データを、図7と図8に示した火炉解析要素と水壁解析要素の分割が境界面で一致していない場合であっても、水壁伝熱解析モデルの各要素に対応した伝熱量分布データに変換するため、図9に示したインターフェイス要素の各要素の伝熱量データに変換する。
【0041】すなわち、任意の火炉運用条件に対して水壁温度の予測を行うためには、火炉内伝熱と水壁内伝熱を連成して行う必要がある。このとき、図5で説明したように、火炉内火炎/燃焼ガス→汚れ→水壁→水/蒸気の連続した熱移動を解析するためには、水壁を貫く熱移動の保存則を満足させるために、図7の火炉解析要素と図8の水壁解析要素の解析要素を互いに一致させる必要がある。しかし、図10,11に示した火炉内の流動と燃焼と、水壁管内の流動は固体壁で仕切られているから、火炉解析要素と水壁解析要素は直接関係がない。そのため、一般に、火炉伝熱解析に適した解析要素と水壁伝熱解析に適した解析要素は異なるものとなる。
【0042】特に、水壁温度の予測が目的のときは、図8に示した水壁解析要素の分割に合わせて、火炉解析要素の分割をすることが好ましい。しかし、水壁構造を、例えばスパイラル構造から垂直構造に変更して設計を検討するような場合は、その変更の都度、火炉解析要素の再分割及びそれに基づいた火炉内伝熱解析を実行しなければならないから、効率がよくない。また、火炉内での流動と燃焼の解析の際に要求される格子分割は、水壁構造とは関係がないので、数値解析の精度が一般には確保できない。
【0043】そこで、本発明では、火炉解析要素と水壁解析要素の熱移動の境界面における要素の形状を一致させることなく、火炉伝熱解析と水壁伝熱解析を複合した解析を行うことができるようにするため、仲立ちの機能を有するインターフェイス要素を導入したのである。これにより、任意の条件において水壁温度の予測を可能にすることができる。
【0044】ここで、インターフェイス要素について図9を用いて詳細に説明する。図4に示したボイラの下部水壁3と上部水壁4を展開して2次元的に表すと図9の形状になる。図中太線で区画した領域はパネル31であり、水壁設置方向(面)において管寄や中間混合器で仕切られた水壁の構成単位である。このパネル31内を2次元格子状に細かく分割してインターフェイス要素32が設定されている。このインターフェイス要素32の形状は図示のものに限られるものではなく、任意の多角形あるいは曲線で囲まれた2次元領域などを採用できる。要は、インターフェイス要素32の集合がパネル31を過不足なく覆っていればよい。しかし、インターフェイス要素32の形状は単純なほうが好ましいことから、この例では長方形を採用している。つまり、この場合は、パネル31内のインターフェイス要素32の識別は2次元の配列(I、J)により行える。なお、任意の不規則な形状の場合は、1次元配列(I)で通し番号を付けることにより識別する。
【0045】また、インターフェイス要素32の大きさは、水壁伝熱量分布が大きく変化しない程度の大きさを選定する(例えば、本例では、50cm四方)。全てのインターフェイス要素32の集合をインターフェイスと称する。また、水壁が平面であればパネル31とインターフェイスも平面になるが、水壁が円筒などの曲面であれば、それに応じてパネルとインターフェイスも曲面になる。また、管寄や中間混合器に無関係にパネル分割をしてもよい。インターフェイス要素の分割は、水や蒸気の流れる部分の全ての水壁について行う。つまり、図9では、火炉水壁の主用部のみを示しているが、天井壁、後部煙道も対象とする。また、パネル31に分けることは必ずしも必要ではない。
【0046】このように設定したインターフェイス要素32について、その要素ごとに、位置、幾何形状、面積A(I、J)〔m〕を計算機内のファイル及び外部のファイルに記憶させる。このインターフェイス要素は火炉構造のみに依存し、火炉内伝熱や水壁内伝熱の物理現象には依存しないので、独立に定義できる。また、ボイラ火炉の運用条件に対応させて、水壁における伝熱量をインターフェイス要素に対応付けてQ(I、J)〔W〕として記憶させる。
【0047】すなわち、火炉伝熱解析の結果得られる壁面伝熱量は、火炉解析要素のうち水壁に接する火炉解析要素に集約されて求まる。そこで、水壁に接する火炉解析要素に対し、2次元的に重なりを持つインターフェイス要素を割り出し、その面積の重なりに応じて伝熱量を按分し、インターフェイス要素ごとに伝熱量Q(I、J)を算出する。この火炉解析要素からインターフェイス要素への伝熱量の換算処理は冗長であるが、ルーチン化は容易であり、ディジタル計算機での計算にも問題はない。また、換算処理における計算誤差を防止するには、火炉伝熱解析で求めた壁面伝熱量の総和と、全インターフェイス要素の伝熱量の総和を比較して、一定量以上の差があれば補正するようにすればよい。
【0048】なお、インターフェイス要素の伝熱量Q(I、J)をデータベースとして保存しておけば、水壁構造や水壁関係の運用条件を変更して検討する場合など、火炉伝熱解析の演算を省略して解析処理を短縮できる。
(ステップS5:水壁解析要素の伝熱量変換)ここで、ステップS4で求めた各インターフェイス要素の伝熱量Q(I、J)に基づいて、水壁解析要素ごとの伝熱量を求める。この求め方は、ステップS4の場合と同様に、インターフェイス要素に対し、2次元的に重なりを持つ水壁解析要素を割り出し、その面積の重なりに応じて伝熱量を按分し、各水壁解析要素ごとの伝熱量を算出する。このようなインターフェイス要素の導入により、火炉伝熱解析の解析格子と水壁伝熱解析の解析格子を独立に扱えることから、それぞれの解析に適した格子分割を採用することができると共に、熱量の保存と伝熱量分布の受け渡しが可能になる。
(ステップS6:水壁伝熱解析)ステップS5で求められた水壁解析要素ごとの伝熱量に基づいて、水壁伝熱解析を実行し、水壁温度及び水・蒸気の熱力学的性質を求める。水壁伝熱解析に際して、伝熱管内の沸騰伝熱は伝熱抵抗にはならず、伝熱量を支配しているのは火炉内輻射伝熱である。したがって、火炉伝熱解析結果の伝熱量分布を、水壁伝熱解析の条件として一方的に与えればよい。また、輻射伝熱では伝熱量は概ね絶対温度の4乗に比例するため、高温の火炎温度の変化の影響は大きいが、伝熱管内の流体温度の変化に伴う水壁側からの輻射伝熱の変化は無視し得る。また、火炉内での対流伝熱に寄与は少ないので、火炉内伝熱解析時の水壁温度は、運用条件から想定される伝熱管内の代表流体温度で与えておけば実用上問題となる誤差なく計算できる。また、水壁側の解析による温度変化は、火炉伝熱解析側に与える必要はない。
【0049】伝熱管内部での現象を要素として取り出すと、水又は蒸気の流体は受熱してエンタルピが上昇すると同時に、密度、乾き度、温度などの熱力学的性質が変化する。乾き度とは、亜臨界圧の2相状態において、飽和蒸気質量を飽和蒸気質量と飽和水質量の合計で割った値で定義される量である。亜臨界圧で2相状態であれば相変化(沸騰)が進み、体積が増加する。亜臨界圧の圧縮水や過熱蒸気、明確な相変化のない超臨界圧でも、やはり体積が増加し、密度が低下する。いずれにしても、受熱によって体積が増加し、質量保存則に従って流速が増加し、運動量が増加する。注目した要素内での運動量(流動)バランスは、圧力差、管内面摩擦、重力と加速による運動量増加で決まる。要素における運動量バランスを流れ方向に積分すると、伝熱管1本の出入り口の圧力差が決まる。各伝熱管の出入り口の圧力は、管寄で接続している他の伝熱管と影響し合うので、各伝熱管の流量は他の伝熱管とのバランスで決まる。また、伝熱管での流量が変化すると、粒体の単位時間、単位質量あたりの受熱量も変化するので、流体の熱力学的性質も変化し、流量(運動量)の変化となる。伝熱管内流体に関しても、流れ(運動量)と伝熱が互いに連成している。また、空間的には、局所を見ると1次元流れであるが、サーキット(流路)として繋がっている全ての領域で圧力が影響するので、本質的には3次元の現象である。以下、ステップS6の詳細を、図3に示した処理手順に沿って説明する。
【0050】(ステップS41:管内流動解析)図12に、一例として、スパイラル構造の水壁の伝熱管及び管寄の部分の模式図を示す。図示のように、入口管寄45と出口管寄46が多数の伝熱管21で接続して構成され、水又は蒸気の流れは、入口管寄45から各伝熱管21に分配されて出口管寄46で合流する流れになる。伝熱管内の流動計算は、給水ポンプによる加圧、重力、慣性力、管摩擦のバランスに基づいて行い、管内流量を求める。
【0051】(ステップS42:管内エンタルピ解析)ステップS41で求めた管内流量と、先に求めた水壁伝熱量より、水又は蒸気のエンタルピバランスを求める。このとき、伝熱管メタルを熱容量と熱伝導抵抗が等価な肉厚を持つ円管で近似することにより、計算を高速化できる。
【0052】(ステップS43:水壁伝熱メタル内伝熱解析)伝熱管内が正常な伝熱をしているときは、内部流体温度とメタル温度はほぼ等しい。しかし、ボイラ運転から見て沸騰危機と呼ばれる異常な伝熱モードが予測される場合は、メタル温度は流体温度よりも顕著に高くなる。したがって、この計算は、メタルの幾何形状を正しく考慮して行われる。
【0053】(ステップS44:計算収束判定)ステップS41〜43の解析ステップを解析結果が一定の範囲に収まるまで繰り返し行う。つまり、水又は蒸気の圧力、温度、エンタルピ、密度等の熱力学的性質と共に反復計算を行う。
【0054】このようにして求めた、水壁温度と水又は蒸気の熱力学的性質を出力する。
(ステップS7:時間刻み増加)ここで、解析時間刻みのステップを増加する。
(ステップS8:計算終了判定)所定の火炉運用パターンを模擬した解析が終了したか否か判定し、終了するまでステップS2に戻って、上記の解析処理を繰り返し実行する。
【0055】上述した水壁温度予測により得られる壁面伝熱量、沸騰開始位置及び沸騰終了位置、水壁温度の一例を、それぞれ図13〜15に示す。これらは、表示装置の画面に出力表示するものである。
【0056】図13は、壁面伝熱量を熱流束〔W/m〕を等高線として示したものである。図から明らかなように、壁面中央部の伝熱が顕著であり、これは輻射伝熱に固有の幾何的関係から説明できる。
【0057】図14は、内部流体の熱力学的性質の一例として、サンプル伝熱管の沸騰開始位置(液相から2相流への遷移開始位置)及び沸騰終了位置(2相流から完全な蒸気に変化する位置)をシンボルで示した図であり、温度、圧力などの情報も得られている。
【0058】図15は、火炉上部における水壁メタル温度の実測値と、上記実施形態により得られた予測温度(計算)を比較して示した図である。図から明らかなように、両者の一致は良好である。
【0059】以上説明したように、本実施形態によれば、インターフェイス要素を導入して、火炉伝熱解析結果の伝熱量分布をインターフェイス要素を介して水壁伝熱解析の解析要素ごとの伝熱量に変換して渡すようにしたから、火炉伝熱解析と水壁伝熱解析の解析要素の整合性を容易にとることができる。その結果、火炉伝熱解析と水壁伝熱解析を連成できるため、解析プログラムの作成や計算過程を独立にできることから、効率的である。したがって、任意の火炉構造、任意のボイラ運用条件に対応でき、かつ非定常時を含む運転時の火炉内及び伝熱管壁内の伝熱解析に基づいて、伝熱管壁温度を予測することができる。
【0060】例えば、火炉運転条件(燃料、空気の投入量)が一定で、水壁への水供給量や水壁内圧力が変わる変圧運転の場合は、火炉内伝熱解析は一度の定常計算でよく、水壁のみ非定常計算を行えばよい。
【0061】また、火炉内の現象の時定数に比べて、水壁内の現象の時定数は大きいから、一般の非定常運転の場合であっても、火炉内伝熱解析は定常解析を時間をおいて実行して補間すればよく、水壁内伝熱のみ時間刻みを小さくして非定常解析すればよい。例えば、現状では、火炉内伝熱解析の処理時間は水壁伝熱解析の10倍以上であるから、本発明によれば極めて効率よくボイラ水壁温度の予測演算を実行できる。
【0062】上記においては、火炉解析要素、水壁解析要素、インターフェイス要素は、それぞれ独立に設定する例を説明したが、例えば、火炉解析要素(図7)とインターフェイス要素(図9)の要素を一致させれば、伝熱量の換算を省略できる。あるいは、インターフェイス要素内を細分化したものに火炉解析要素を一致させたり、その逆の関係に設定することにより、同様に計算時時間を短縮できる。また、図16に示すように、インターフェイス要素と水壁解析要素を設定すれば、伝熱量変換計算を簡略化できる。すなわち、インターフェイス要素32と伝熱管21の中心線の交点を水壁解析要素の長さに設定する。そして、それらの重なり面積を、伝熱管21の中心線の長さと伝熱管ピッチPの積にすることにより、計算を簡単化できる。
【0063】〔実施形態2〕図17に、上記のボイラ水壁温度予測方法を適用したボイラ水壁温度装置ないしボイラ水壁温度シミュレータ装置のブロック構成図を示す。図示のように、装置は、計算機51、入力装置52、出力装置53、外部記憶装置54、及びネットワーク接続装置55を含んで構成される。計算機51は、主記憶装置及び演算装置を備え、主記憶装置に図1〜3で説明した解析を実行するコンピュータプログラムが格納されている。そして、出力装置55にはCRTなどの表示装置又はプリンタを備えており、図13〜15に示した解析結果を表示するようになっている。
【0064】このように構成されることから、任意の火炉構造について、任意の運用条件に対し、定常又は非定常の水壁温度をシミュレーションできるから、設計段階、運用計画検討、その他のさまざまな状況においても、経験則を用いることなく、水壁の温度を予測して強度上問題のないボイラを設計することができる。
【0065】〔実施形態3〕上記の実施形態1又は2により水壁温度を予測した結果、熱応力から定まる許容値以上になった場合、火炉耐圧部の障害を事前に回避する方策を採ることができる。水壁温度は、図13に示した壁面伝熱量分布と、図4に示した伝熱管21の幾何配置との組み合わせで決まる。水壁温度分布は火炉構造とバーナ配置が主たる要因であり、伝熱管配置は火炉構造そのものに依存する。したがって、これらの因子を設計変更することにより、火炉耐圧部の障害を回避できる。また、水壁の伝熱管の流量分布を調整して水壁温度を許容値以下に調整できる。その方策の1つを図18を用いて説明する。同図は、伝熱管21と入口管寄45及び出口管寄46の部分を拡大して示したものであり、各伝熱管の入口部オリフィス穴径47を調整して流動抵抗を加減することにより、内部流体の流量分布を変化させて水壁温度を調整できる。つまり、異常な水壁温度の箇所に基づき、火炉構造、バーナ配置、伝熱管配置、伝熱管入口オリフィス穴径、中間混合器等を適宜変更して、再度ボイラ水壁温度予測を実行することにより、設計の段階で水壁強度低下の問題を解消したボイラを提供できる。
【0066】〔実施形態4〕図19に、本発明の水壁温度予測装置を適用して、水壁温度を許容値以下に制御する制御装置を備えたボイラの一実施形態の全体構成図を示す。図示のように、ボイラの火炉61の壁面に、それぞれバーナ2とアフターエアーポート62が1又は複数設けられている。見る67で粉砕された石炭はバーナ2から火炉61内に供給される。また、ブロア63からの空気がバーナ2とアフターエアーポート62を通して、火炉61内に供給される。バーナ2に供給する空気量は、コントローラ70から出力される指令に基づき、ダンパ64及びバーナダンパ65により調整される。また、アフターエアポート62に供給する空気量もコントローラ70からの指令に基づき、ダンパ64及びバーナダンパ65により調整される。バーナ2に供給される石炭量と微粉炭の粒度はコントローラ70からの指令に基づいて調整される。さらに、コントローラ70は、排ガス循環用ダンパ68を調整して火炉に供給する排ガス循環量を調整する。なお、排ガス循環により火炉全体を流れるガス量が変化するから、水壁温度予測に係る火炉の熱容量が変化することになる。また、スーツブロア69もコントローラ702より制御され、水壁面に付着した灰を除去する。これにより、水壁温度予測に係る水壁面の伝熱抵抗が変化することになる。
【0067】コントローラ70には、図17に示したボイラ水壁温度シミュレータ装置と同様の構成を有するシミュレータ装置71が結合されている。シミュレータ装置71で求められた伝熱量分布及び壁面伝熱量のデータはコントローラ70に出力されている。また、コントローラ70の制御情報もシミュレータ装置71に出力され、両者は同調してボイラを制御するようになっている。つまり、シミュレータ装置71は、不変情報と時々刻々変化する運用条件をコントローラ70から受け取り、これに基づいて火炉壁面の伝熱量分布と水壁温度を先行して予測する。その結果、例えば、水壁温度が上昇している場合は、伝熱管の経路(伝熱面内での配置)と壁面伝熱量分布との組み合わせを考慮して、メタル温度上昇の原因となっているバーナを推定する。これに基づき、コントローラ70は、そのバーナの燃料と空気の投入量を制御したり、アフターエアーポートの空気量を制御して、水壁温度の異常上昇を抑える。また、スーツブロアの動作及び排ガス循環量を考慮して火炉伝熱解析及び壁面伝熱量の予測を行うことにより、一層適切な水壁温度予測を行うことができ、運転中のボイラの水壁温度の異常上昇を回避することができる。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、任意の火炉構造、任意のボイラ運用条件に対応でき、かつ非定常時を含む運転時の伝熱管壁温度を予測することができる。
【0069】また、運転中のボイラの伝熱管壁温度を予測し、伝熱管壁に強度上の問題がある場合に、これを回避するように制御することができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】000005441
【氏名又は名称】バブコック日立株式会社
【出願日】 平成11年6月8日(1999.6.8)
【代理人】 【識別番号】100066979
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜沼 辰之
【公開番号】 特開2000−346304(P2000−346304A)
【公開日】 平成12年12月15日(2000.12.15)
【出願番号】 特願平11−160396