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【発明の名称】 車両用前照灯
【発明者】 【氏名】石田 裕之

【氏名】大塩 洋彦

【氏名】小林 正自

【要約】 【課題】リフレクタを上下方向に所定角度傾動させることによりロービームとハイビームとのビーム切換えを行うように構成された車両用前照灯において、ロービーム用の配光パターンをカットオフラインを有する配光パターンとした上で、ハイビーム走行時における車両前方上方の視認性を十分に確保する。

【解決手段】リフレクタ20の前端開口部20dの前方近傍に、リフレクタ20の上方側からその反射面20aの上端縁の高さ位置近傍まで略鉛直下方へ突出する上向き偏向プリズム40を設ける。これによりロービームからハイビームへのビーム切換えの際、リフレクタ20の上向き傾動と連動してその反射面20aからの反射光の一部を上向き偏向プリズム40に入射させ、該上向き偏向プリズム40の偏向透過作用によりビームの一部をカットオフラインの上方近傍に偏向照射させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源バルブと、この光源バルブからの光を前方へ反射させてカットオフラインを有する配光パターンでビームを照射するリフレクタと、このリフレクタを傾動可能に支持するランプボディと、上記リフレクタを上下方向に所定角度傾動させることにより上記ビームをロービームとハイビームとのいずれかに選択的に切り換えるビーム切換装置と、を備えてなる車両用前照灯において、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、上記リフレクタの上向き傾動と連動して上記ビームの一部を上記カットオフラインの上方近傍に偏向照射させるビーム偏向照射手段を備えてなる、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】 上記ビーム偏向照射手段が、上記リフレクタの前方において該リフレクタの上方側から該リフレクタの反射面の上端縁の高さ位置近傍まで突出するようにして上記ランプボディに固定支持された上向き偏向プリズムからなる、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【請求項3】 上記リフレクタが、上記光源バルブを固定支持する上部リフレクタとこの上部リフレクタの下側に配置された下部リフレクタとに分割形成され、かつ上記上部リフレクタが上記ランプボディに傾動可能に支持されるとともに上記下部リフレクタが上記ランプボディに固定支持されてなり、上記上部リフレクタがロービーム用の傾動角度位置にあるとき、該上部リフレクタによりカットオフラインを有する第1配光パターンを形成するとともに上記下部リフレクタにより上記カットオフラインの下側に第2配光パターンを形成するように構成されており、上記上部リフレクタの上記ランプボディへの支持が、該上部リフレクタの上向き傾動の際に上記光源バルブの発光部を前方側へ変位させるように行われている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【請求項4】 光源バルブと、この光源バルブからの光を前方へ反射させてカットオフラインを有する配光パターンでビームを照射するリフレクタと、このリフレクタを傾動可能に支持するランプボディと、上記リフレクタを上下方向に所定角度傾動させることにより上記ビームをロービームとハイビームとのいずれかに選択的に切り換えるビーム切換装置と、を備えてなる車両用前照灯において、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、上記リフレクタの上向き傾動と連動して上記カットオフラインの上方近傍に付加的に照射されるビームを生成する付加ビーム生成手段を備えてなる、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項5】 上記付加ビーム生成手段が、上記リフレクタの光軸方向所定位置において上記光源バルブの略上半分を囲むようにして上記リフレクタに固定支持された第1シェードと、この第1シェードで囲まれていない上記光源バルブの略下半分を囲むようにして上記ランプボディに固定支持された第2シェードとからなる、ことを特徴とする請求項4記載の車両用前照灯。
【請求項6】 上記ビームの照射方向を車体の姿勢変化に応じて上下方向に変化させるレベリング装置を備えてなり、上記ビーム切換装置が、上記レベリング装置のアクチュエータを駆動することにより上記リフレクタを上下方向に傾動させるように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、リフレクタを上下方向に所定角度傾動させることによりロービームとハイビームとのビーム切換えを行うように構成された車両用前照灯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両用前照灯は、光源バルブからの光をリフレクタで前方へ反射させてロービーム用またはハイビーム用のビームを照射するようになっている。ロービームとハイビームとでは照射方向が異なるので、光源(放電発光部あるいはフィラメント)についてもロービームとハイビームとで異なる光源を用いるのが一般的であるが、単一の光源を用いた車両用前照灯も知られている。特に、光源バルブとして放電バルブを用いた2灯式前照灯においては、このような構成とせざるを得ない場合が多い。
【0003】このように単一の光源を用いた車両用前照灯においては、光源バルブやリフレクタ等の光学要素を機械的に変位させることによりロービームとハイビームとのビーム切換えを行うように構成されており、そのためのビーム切換装置を備えている。このビーム切換装置としてリフレクタを上下方向に所定角度傾動させることによりビーム切換えを行うものが考えられる。このようなビーム切換装置を採用することにより、レベリング装置のアクチュエータをビーム切換装置のアクチュエータとして流用することも可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、単にこのようなリフレクタ傾動式のビーム切換装置を採用した場合には次のような問題が生じる。
【0005】すなわち、ロービーム用の配光パターンとしては、自車ドライバの前方視認性確保と対向車ドライバに対するグレア防止とを両立させる観点から、図14(a)に示すようにカットオフライン(明暗境界線)CLを有する配光パターンP(L)とすることが好ましい。ところが、リフレクタを上下方向に傾動させてビーム切換えを行うようにした場合には、ロービームとハイビームとが同じ配光パターンで照射されることとなるので、ロービーム用の配光パターンとしてカットオフラインCLを有する配光パターンP(L)を採用した場合には、同図(b)に示すようにハイビームにおいてもカットオフラインCLを有する配光パターンP(H)となってしまい、ハイビーム走行時における車両前方上方(図中Aで示す部分)の視認性を十分に確保することができないという問題がある。
【0006】本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、リフレクタを上下方向に所定角度傾動させることによりロービームとハイビームとのビーム切換えを行うように構成された車両用前照灯において、ロービーム用の配光パターンをカットオフラインを有する配光パターンとした上で、ハイビーム走行時における車両前方上方の視認性を十分に確保することができる車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明は、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、リフレクタの上向き傾動と連動して既存のビームの一部あるいは新たに生成されるビームをカットオフラインの上方へ照射させる構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0008】すなわち本願発明は、請求項1および4に記載したように、光源バルブと、この光源バルブからの光を前方へ反射させてカットオフラインを有する配光パターンでビームを照射するリフレクタと、このリフレクタを傾動可能に支持するランプボディと、上記リフレクタを上下方向に所定角度傾動させることにより上記ビームをロービームとハイビームとのいずれかに選択的に切り換えるビーム切換装置と、を備えてなる車両用前照灯を前提とした上で、本願第1の発明は、請求項1に記載したように、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、上記リフレクタの上向き傾動と連動して上記ビームの一部を上記カットオフラインの上方近傍に偏向照射させるビーム偏向照射手段を備えてなる、ことを特徴とするものであり、本願第2の発明は、請求項4に記載したように、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、上記リフレクタの上向き傾動と連動して上記カットオフラインの上方近傍に付加的に照射されるビームを生成する付加ビーム生成手段を備えてなる、ことを特徴とするものである。
【0009】上記「光源バルブ」は、特定種類の光源バルブに限定されるものではなく、例えば、放電バルブあるいは白熱バルブ(ハロゲンバルブを含む)等が採用可能である。
【0010】上記「所定角度」は、該所定角度分の上下方向傾動によりロービームおよびハイビームの各ビーム機能を発揮させることができる値であれば、その大小は特に限定されるものではなく、例えば2〜4°(あるいは2.5〜3.5°)程度の範囲内の適当な値(例えば3°)に設定することができる。
【0011】
【発明の作用効果】上記構成に示すように、本願発明に係る車両用前照灯は、リフレクタを上下方向に所定角度傾動させることによりロービームとハイビームとのビーム切換えを行うように構成されているが、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、本願第1の発明においては、リフレクタの上向き傾動と連動してビーム偏向照射手段によりビームの一部がカットオフラインの上方近傍に偏向照射されるようになっており、また本願第2の発明においては、リフレクタの上向き傾動と連動して付加ビーム生成手段により生成されたビームがカットオフラインの上方近傍に付加的に照射されるようになっているので、ロービーム用の配光パターンをカットオフラインを有する配光パターンとした上で、ハイビーム走行時における車両前方上方の視認性を十分に確保することができる。
【0012】また、このようにロービームからハイビームへのビーム切換えの際にカットオフラインの上方近傍にビームが偏向照射されることにより、ハイビーム用の配光パターンのカットオフライン鮮明度を低下させることができ、これによりハイビーム走行時において配光パターンにカットオフラインが存在することによる違和感を低減することができる。
【0013】本願第1の発明において、「ビーム偏向照射手段」は、リフレクタの上向き傾動と連動してビームの一部をカットオフラインの上方近傍に偏向照射するものであれば、その具体的構成は特に限定されるものでない。
【0014】上記「ビーム偏向照射手段」の具体的構成として、請求項2に記載したように、リフレクタの前方においてその上方側から該リフレクタの反射面の上端縁の高さ位置近傍まで突出するようにしてランプボディに固定支持された上向き偏向プリズムを採用することが可能である。このような構成を採用することにより、リフレクタがハイビーム用の傾動角度位置にあるときのみリフレクタ反射光を上向き偏向プリズムに入射させてこれを上向きに偏向透過させることができ、簡単な構成でカットオフライン上方近傍への偏向照射光を得ることができる。この「上向き偏向プリズム」は、単純なプリズムで構成してもよいし、左右拡散偏向機能等の付加的機能を備えたプリズムであってもよい。
【0015】あるいは、請求項3に記載したように、リフレクタを、光源バルブを固定支持する上部リフレクタとその下側に配置された下部リフレクタとに分割形成し、上部リフレクタをランプボディに傾動可能に支持するとともに下部リフレクタをランプボディに固定支持する構成とし、かつ、上部リフレクタがロービーム用の傾動角度位置にあるとき、該上部リフレクタによりカットオフラインを有する第1配光パターンを形成するとともに下部リフレクタによりカットオフラインの下側に第2配光パターンを形成する構成とした上で、上部リフレクタのランプボディへの支持を、該上部リフレクタの上向き傾動の際に光源バルブの発光部を前方側へ変位させるように行うことによっても、カットオフライン上方近傍への偏向照射光を得ることができる。しかも、このようにした場合、カットオフライン上方近傍への偏向照射光の光量を十分に確保することができる。
【0016】本願第2の発明において、「付加ビーム生成手段」は、リフレクタの上向き傾動と連動してカットオフラインの上方近傍に付加的に照射されるビームを生成するものであれば、その具体的構成は特に限定されるものでない。
【0017】上記「付加ビーム生成手段」の具体的構成として、請求項5に記載したように、リフレクタの光軸方向所定位置において光源バルブの略上半分を囲むようにしてリフレクタに固定支持された第1シェードと、この第1シェードで囲まれていない光源バルブの略下半分を囲むようにしてランプボディに固定支持された第2シェードとからなる構成を採用することが可能である。このような構成を採用することにより、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、リフレクタが上向きに所定角度傾動したとき、第1シェードの下端縁と第2シェードの上端縁とが上下に離れ、その隙間から漏れた光をカットオフラインの上方近傍に付加的に照射されるビームとして利用することができる。
【0018】ところで、近年の車両用前照灯においては、ロービームを最適な方向に照射するため、ビーム照射方向を車体の姿勢変化に応じて上下方向に変化させるレベリング装置を備えたものが多い。特に、放電バルブを光源バルブとして用いる場合には、その大きなパワーのためにレベリング装置を設ける必要性が高い。このような観点から、本願発明におけるビーム切換装置は、ビーム切換え専用の装置として設けるようにしてもよいが、レベリング装置を備えている場合には、請求項6に記載したように、レベリング装置のアクチュエータを駆動することによりリフレクタを上下方向に傾動させる構成とすることも可能である。このようにすることによりビーム切換えを安価に行うことができる。なお、このようにレベリング装置をビーム切換装置として利用した場合においても、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際のリフレクタ上向き角度をレベリング時におけるリフレクタの上向き最大調整角度よりも大きい角度に設定することにより、レベリング調整に支障が生じるおそれを回避することができる。
【0019】上記「レベリング装置」は、すれ違いビームの照射方向を車体の姿勢変化に応じて自動的に上下方向に変更制御するオートレベリング装置であってもよいし、すれ違いビームの照射方向を車体の姿勢変化に応じて手動で上下方向に調節するマニュアル式のレベリング装置であってもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0021】まず、本願第1の発明の第1実施形態について説明する。
【0022】図1は、本実施形態に係る車両用前照灯を示す側断面図である。
【0023】図示のように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、レンズ12とランプボディ14とで形成される灯室内に、リフレクタユニット16が上下方向および左右方向に傾動可能に設けられてなっている。
【0024】リフレクタユニット16は、光源バルブ(メタルハライド放電バルブ)18と、この光源バルブ18を固定支持するリフレクタ20と、光源バルブ18を所定範囲にわたって囲むシェード22とを備えてなっている。
【0025】レンズ12は素通しレンズであって、リフレクタユニット16に配光制御機能が付与されている。すなわち、リフレクタ20は、光源バルブ18の放電発光部18aからの光を前方へ反射する反射面20aを備えており、該反射面20aの拡散偏向反射機能により、後述するような配光パターンでビームを照射するようになっている。
【0026】リフレクタ20は、その左右両下端部に形成されたブラケット20bにおいて各々エイミングスクリュウ24を介してランプボディ14に支持されており、また、その右上端部(左上端部でもよい)に形成されたブラケット20cにおいてレベリング装置26のアクチュエータ28を介してランプボディ14に支持されている。
【0027】アクチュエータ28は、図2に詳細に示すように、ランプボディ14に固定されたアクチュエータ本体30と、このアクチュエータ本体30から前方へ突出する出力ロッド32とからなり、その出力ロッド32の球状先端部32aにおいてリフレクタ20のブラケット20cに連結されるようになっている。
【0028】そして、レベリング装置26は、レベリングコントローラ34により、アクチュエータ28を車体の姿勢変化に応じて駆動し、その出力ロッド32を前後方向に変位させることにより、図1において点Aを支点、点Bを作用点としてリフレクタユニット16を上下方向に傾動させ、これによりビーム照射方向を車体の姿勢変化に応じて常に最適な方向に維持するようになっている。なお、このレベリング制御は、ロービーム走行時において行われ、ハイビーム走行時には行われない。
【0029】リフレクタユニット16の光軸調整は、アクチュエータ28の出力ロッド32を図2に示すレベリング基準位置Lにセットした状態で、各エイミングスクリュウ24を調節することにより行われるようになっている。この光軸調整は、リフレクタ20の光軸Axが水平方向に対して0.57°下向きになるようにするものであって、この光軸調整が完了した状態においては、図4(a)に示すように、明瞭なカットオフライン(明暗境界線)CLを有しかつその水平ライン部分が0.57°Dに位置するロービーム用の配光パターンP(L)が得られるようになっている。このときのリフレクタ20の傾動角度位置を以下「レベリング基準角度位置」という。
【0030】なお、この配光パターンP(L)において実線で示す多重閉曲線は、内側のものほど明るく照射されることを示すゾーン区分であり、その中心の斜線で示すゾーンが最も明るく照射されるホットゾーンである。
【0031】図2に示すように、レベリング調整範囲Rは、出力ロッド32が該レベリング調整範囲Rの後端位置まで変位したとき、リフレクタ20がレベリング基準角度位置に対して2°上向きになり、一方、出力ロッド32がレベリング調整範囲Rの前端位置まで変位したとき、リフレクタ20がレベリング基準角度位置に対して3°下向きになるように、そのストロークが設定されている。
【0032】レベリング装置26は、このようなレベリング制御を行うだけでなく、ロービームとハイビームとのビーム切換えを行うビーム切換装置としての機能をも果たすようになっている。このためレベリングコントローラ34には、ビーム切換えスイッチ36からのビーム切換え信号が入力されるようになっている。
【0033】上述したように、レベリング制御はアクチュエータ26の出力ロッド32をレベリング調整範囲R内において変位させることにより行われるが、ビーム切換えスイッチ36からハイビーム切換え信号がレベリングコントローラ34に入力されると、出力ロッド32がレベリング調整範囲Rの後端位置よりも後方のハイビーム切換え位置Hまで変位して、リフレクタユニット16をレベリング基準角度位置に対して3°上向きとなる角度位置まで傾動させ、これによりロービームからハイビームへのビーム切換えを行うようになっている。
【0034】図1において、灯室内におけるリフレクタ20の前方には、該リフレクタ20の前端開口部20dを囲むようにしてエクステンションリフレクタ38が設けられている。このエクステンションリフレクタ38はランプボディ14に固定支持されている。
【0035】また、リフレクタ20の前端開口部20dの前方近傍には、リフレクタ20の上方側からその反射面20aの上端縁の高さ位置近傍まで略鉛直下方へ突出する上向き偏向プリズム40が設けられている。この上向き偏向プリズム40は、その上端部においてランプボディ14とエクステンションリフレクタ38とで挟持されるようにしてランプボディ14に固定支持されている。この上向き偏向プリズム40は、下端部から上方へ向けて肉厚が増大するプリズムであって、該上向き偏向プリズム40を透過する光を4°上向きに偏向透過させるように構成されている。
【0036】図3(a)に示すように、リフレクタ20がロービームにおけるレベリング調整範囲内の上向き傾動角度(すなわち最大でレベリング基準角度位置から2°上向き)では、リフレクタ20の反射面20aからの反射光は上向き偏向プリズム40に入射しないが、同図(b)に示すように、ビーム切換えによりリフレクタ20がハイビーム用の傾動角度位置(すなわちレベリング基準角度位置から3°上向き)になると、リフレクタ20の反射面20aからの反射光は上向き偏向プリズム40に入射する。そして、この上向き偏向プリズム40に入射した光は、そのプリズム作用により4°上向きに偏向されて該上向き偏向プリズム40を透過し、上向きビームとなって前方へ照射される。
【0037】同4(b)は、リフレクタ20がハイビーム用の傾動角度位置まで上向きになったときの配光パターン、すなわちハイビーム用の配光パターンP(H)を示す図である。
【0038】図示のように、この配光パターンP(H)は、図4(a)に示すロービーム用の配光パターンP(L)を3°上向きにしたものと略同じであるが、カットオフラインCLの近傍に該カットオフラインCLを上下に跨ぐようにして上方照射パターンpが形成されている点で異なっている。この上方照射パターンpは、上向き偏向プリズム40に入射して上向きに偏向透過した上向き偏向照射光によるものであり、配光パターンP(L)において2点鎖線で示す位置を照射していた光を4°上向きに偏向させることにより、配光パターンP(H)のカットオフラインCLの水平部分の上方約3°まで広がるようにして形成される。
【0039】以上詳述したように、本実施形態においては、上向き偏向プリズム40を設けることにより、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、リフレクタ20の上向き傾動と連動してビームの一部をカットオフラインCLの上方近傍に偏向照射させるように構成されているので、ロービームでは遠方視認性に優れた配光パターンP(L)を確保した上で、ハイビームでは車両走行時における車両前方上方の視認性を十分に確保可能な配光パターンP(H)を得ることができる。
【0040】しかも、このようにロービームからハイビームへのビーム切換えの際にカットオフラインCLの上方近傍にビームが偏向照射されることにより、ハイビーム用の配光パターンP(H)のカットオフライン鮮明度を低下させることができ、これによりハイビーム走行時において配光パターンP(H)にカットオフラインCLが存在することによる違和感を低減することができる。
【0041】また、本実施形態においては、上向き偏向プリズム40をビーム偏向照射手段として用いているので、簡単な構成でカットオフラインCLの上方近傍への偏向照射光を得ることができる。
【0042】なお、本実施形態においては、上向き偏向プリズム40が上向き偏向のみを行う単純なプリズムで構成されているが、該上向き偏向プリズム40に左右拡散ステップを形成することにより上方照射パターンpを広拡散パターンとすることも可能であり、また、上向き偏向プリズム40に上下方向の曲率を付与して上方照射パターンpを上方へ拡げるようにすることも可能である。
【0043】次に上記第1実施形態の変形例について説明する。
【0044】図5は、本変形例に係る車両用前照灯により形成される配光パターンを示す図である。
【0045】同図(a)に示すように、本変形例は、ロービーム用の配光パターンとして、カットオフラインCLを有する配光パターンP(L)´を採用した上で、そのホットゾーンを通常の配光パターン(図4(a)に示す配光パターンP(L))よりもやや下方中心寄りの位置(例えば2.5°D−V近傍)に設定するとともに、ビーム切換え時におけるリフレクタ20の上下方向の傾動角度を大きめ(例えば約4°)に設定するようにしたものである。
【0046】このような配光パターンP(L)´を採用することにより、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際の上向き傾動角度を大きめに設定しても、同図(b)に示すように、ハイビーム用の配光パターンP(H)´のホットゾーンが灯具正面方向(H−V)から上方へ外れてしまうのを防止することができる。そして、上向き傾動角度を大きめに設定することによりハイビーム用の配光パターンP(H)´のカットオフラインCLの位置を高めに設定することができるので、ハイビーム走行時における車両前方上方の視認性を一層向上させることができる。
【0047】なお、上向き偏向プリズム40により形成される上方照射パターンpが、配光パターンP(H)´のカットオフラインCLの水平部分の上方約3°まで広がるように形成される点については第1実施形態と同様であるので、カットオフラインCLの位置が高めに設定される分だけ、ハイビーム走行時における車両前方上方の視認性が向上することとなる。
【0048】ただし、このような構成を採用した場合には、ロービーム走行時、同図(a)に示すように車両前方の近距離路面が非常に明るくなるので、その遠方側の路面の視認性が低下してしまうという弊害が生じる。したがって、ロービームとハイビームとのいずれの配光パターンを重視するかにより、本変形例を構成を採用するか第1実施形態の構成を採用するかを決定するようにすればよい。なお、本変形例と第1実施形態との中間的な配光パターンを採用することももちろん可能である。
【0049】次に、本願第1の発明の第2実施形態について説明する。
【0050】図6は、本実施形態に係る車両用前照灯を示す側断面図である。
【0051】図示のように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、リフレクタ20が、光源バルブ18を固定支持する上部リフレクタ20Aと、この上部リフレクタ20Aの下側に配置された下部リフレクタ20Bとに分割形成され、かつ上部リフレクタ20Aがランプボディ14に傾動可能に支持されるとともに下部リフレクタ20Bがランプボディ14に固定支持されてなっている。
【0052】上部リフレクタ20Aは、その上端部に形成されたブラケット20Abにおいてエイミングスクリュウ24を介してランプボディ14に支持されるとともに、その下端部に形成されたブラケット20Acにおいてレベリング装置26のアクチュエータ28を介してランプボディ14に支持されており、点Aを支点、点Bを作用点として上下方向に傾動するようになっている。そしてこれにより、図7に示すように上部リフレクタ20Aが上向きに傾動したとき、図8に示すように光源バルブ18の放電発光部18aを前方側へ変位させるようになっている。
【0053】一方、下部リフレクタ20Bのランプボディ14への固定支持は、該下部リフレクタ20Bの下端部に形成されたランスブラケット20Bbをランプボディ14の底部内面に形成されたランス係合部14aに前方から挿着係合することにより行われるようになっている。
【0054】本実施形態においては、光源バルブ18からの光が下部リフレクタ20Bの反射面20Baにも入射するよう、シェード22の下部に切欠き孔22aが形成されている。
【0055】そして本実施形態においては、上部リフレクタ20Aがロービーム用の傾動角度位置にあるとき、図9(a)に示すように、上部リフレクタ20AによりカットオフラインCLを有する第1配光パターンP(1)を形成するとともに下部リフレクタ20BによりカットオフラインCLの下側に第2配光パターンP(2)を形成し、これらを合成した配光パターンによりロービーム用の配光パターンP(L)を形成するようになっている。そして、図7に示すように上部リフレクタ20Aがハイビーム用の傾動角度位置になったときには、図9(b)に示すように、上部リフレクタ20Aにより形成される第1配光パターンP(1)は該上部リフレクタ20Aの上向き傾動角度分だけ上向きに照射されるが、下部リフレクタ20Bにより形成される第2配光パターンP(2)は、第1配光パターンP(1)に対して相対的に上方へ変位して第1配光パターンP(1)のカットオフラインCLの上方近傍に偏向照射される。
【0056】ロービームからハイビームへのビーム切換えによりこのような配光パターンが生じる理由について、図8に基づいて説明する。
【0057】同図に示すように、上部リフレクタ20Aの反射面20Aaは、光源バルブ18の放電発光部18aの後方近傍の点Faを焦点とする焦点距離faの回転放物面を基準面として形成されているのに対し、下部リフレクタ20Bの反射面20Baは、光源バルブ18の放電発光部18aの前方近傍の点Fbを焦点とする焦点距離fb(fb>fa)の回転放物面を基準面として形成されている。
【0058】このため、上部リフレクタ20Aの光軸Axaと下部リフレクタ20Bの光軸Axbとが一致している状態においては、図中実線で示すように、上部リフレクタ20Aの反射面20Aaからの反射光も下部リフレクタ20Bの反射面20Baからの反射光も下向きビームとして前方に照射される。
【0059】この状態から、上部リフレクタ20Aが上向きに傾動してハイビーム用の傾動角度位置になると、図中2点鎖線で示すように、上部リフレクタ20Aの反射面20Aaからの反射光は上向き傾動分だけ上向きに照射されるが、下部リフレクタ20Bの反射面20Baからの反射光は、下部リフレクタ20Bに対して光源バルブ18の放電発光部18aが前方へ変位することにより該放電発光部18aから反射面20Baに入射する光の入射角が小さくなり、その反射光は上部リフレクタ20Aの上向き傾動分よりも大きな角度で上向きに照射される。
【0060】そしてこれにより、第2配光パターンP(2)が第1配光パターンP(1)に対して相対的に上方へ変位し、第1配光パターンP(1)のカットオフラインCLの上方近傍に上方照射パターンpとして偏向照射されることとなる。
【0061】なお、第2配光パターンP(2)の上方変位量を大きくするためには、上部リフレクタ20Aの上向き傾動により放電発光部18aから反射面20Baに入射する光の入射角がさらに小さくなるようにすればよい。そのためには上下方向の傾動の支点Aの位置を光軸Axaの上方でかつ放電発光部18aよりも前方側の位置に設定することが好ましい。
【0062】以上詳述したように、本実施形態においては、リフレクタ20を分割形成し、上部リフレクタ20Aのみを傾動させることにより、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、上部リフレクタ20Aの上向き傾動と連動して下部リフレクタ20Bからの反射光をカットオフラインCLの上方近傍に偏向照射させるように構成されているので、ロービームでは遠方視認性に優れた配光パターンP(L)を確保した上で、ハイビームでは車両走行時における車両前方上方の視認性を十分に確保可能な配光パターンP(H)を得ることができる。
【0063】しかも、このようにロービームからハイビームへのビーム切換えの際にカットオフラインCLの上方近傍にビームが偏向照射されることにより、ハイビーム用の配光パターンP(H)のカットオフライン鮮明度を低下させることができ、これによりハイビーム走行時において配光パターンP(H)にカットオフラインCLが存在することによる違和感を低減することができる。
【0064】また、本実施形態においては、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、下部リフレクタ20Bからの反射光がすべてカットオフラインCLの上方近傍に振り向けられるので、カットオフライン上方近傍への偏向照射光の光量を十分に確保することができる。
【0065】なお、本実施形態においても、基本となる配光パターンとして第1実施形態の変形例の配光パターン(図5参照)を採用することが可能であり、このようにした場合には該変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】次に、本願第2の発明の一実施形態について説明する。
【0067】図10は、本実施形態に係る車両用前照灯を示す側断面図である。
【0068】図示のように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、灯具の基本構造は本願第1の発明の第1実施形態と同様であるが、上向き偏向プリズム40は設けられておらず、またシェード22の構成が異なっている。
【0069】すなわち、本実施形態においては、シェード22が、リフレクタ20に固定支持された第1シェード22Aと、ランプボディ14に固定支持された第2シェード22Bとからなっている。
【0070】第1シェード22Aの先端部には、リフレクタ20の光軸Axよりも下方側の部分が切り欠かれた切欠き部22Aaが形成されている。
【0071】一方、第2シェード22Bは、第1シェード22Aの先端部の略下半分を覆うシェード本体22Baとこのシェード本体22Baを支持するステー22Bbとからなっている。この第2シェード22Bのランプボディ14への固定支持は、ステー22Bbの下端部に形成された切起こし片22Bcをランプボディ14の底部内面に形成された溝部14bに前方から圧入することにより行われるようになっている。なお、リフレクタ20の下端部には、第2シェード22Bとの干渉を防止するための切欠き部20eが形成されている。
【0072】第2シェード22Bの上端縁22Bdは、光軸Axよりも僅かに上方において後方へ向けて僅かに下方に傾斜するように形成されている。そして、図10および12(a)に示すように、リフレクタ20がロービーム用の傾動角度位置にあるときには、第1シェード22Aと第2シェード22Bとが重なり合っているため、光源バルブ18の放電発光部18aからシェード22の先端部へ向かう光は完全に遮断されるようになっている。そしてこれにより、図13(a)に示すように、カットオフラインCLを有するロービーム用の配光パターンP(L)が得られるようになっている。
【0073】一方、レベリング基準角度位置から上向きに2°以上傾動すると、第1シェード22Aの切欠き部22Aaの下端縁と第2シェード22Bの上端縁22Bdとが上下に離れ、図11および12(b)に示すように、リフレクタ20がハイビーム用の傾動角度位置まで傾動すると、第1シェード22Aと第2シェード22Bとの間に所定間隔の隙間が形成されるようになっている。そして、第1シェード22Aと第2シェード22Bとの隙間から漏れたやや上向きの光が、リフレクタ20の反射面20aに入射して前方上方へ反射されることにより、あるいは上記隙間から漏れたやや上向きの直射光が、図13(b)に示すようにカットオフラインCLの上方近傍に上方照射パターンpとして付加的に照射されるようになっている。
【0074】以上詳述したように、本実施形態においては、シェード22を第1シェード22Aと第2シェード22Bとに分割形成し、ロービームからハイビームへのビーム切換えの際、第1シェード22Aと第2シェード22Bとの隙間から漏れた光をカットオフラインCLの上方近傍に付加的に照射させるように構成されているので、ロービームでは遠方視認性に優れた配光パターンP(L)を確保した上で、ハイビームでは車両走行時における車両前方上方の視認性を十分に確保可能な配光パターンP(H)を得ることができる。
【0075】しかも、このようにロービームからハイビームへのビーム切換えの際にカットオフラインCLの上方近傍にビームが付加的に照射されることにより、ハイビーム用の配光パターンP(H)のカットオフライン鮮明度を低下させることができ、これによりハイビーム走行時において配光パターンP(H)にカットオフラインCLが存在することによる違和感を低減することができる。
【0076】また、本実施形態においては、上方照射パターンpが付加的に照射されるので、その分だけハイビームの照射光量を増大させることができ、これによりハイビーム走行時における車両前方上方の視認性を一層向上させることができる。
【0077】なお、本実施形態においても、基本となる配光パターンとして第1実施形態の変形例の配光パターン(図5参照)を採用することが可能であり、このようにした場合には該変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成10年9月17日(1998.9.17)
【代理人】 【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
【公開番号】 特開2000−90717(P2000−90717A)
【公開日】 平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願番号】 特願平10−262695