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【発明の名称】 車両用前照灯
【発明者】 【氏名】斉藤 記一

【要約】 【課題】内面にレリーフが形成された素通し状の前面レンズを有する車両用前照灯において、車両前方路面の視認性を高める。

【解決手段】素通し状に形成された前面レンズ16の内面16aに、3本のレリーフ16b1、16b2、16b3が、上下略等間隔で水平方向に延びるように形成されており、最下段のレリーフ16b3は光軸Axよりも下方に位置している。前面レンズ16におけるレリーフ16b3の上方近傍領域16A1は下向き拡散偏向プリズム状に形成されるとともにレリーフ16b3の下方近傍領域16A2は上向き拡散偏向プリズム状に形成されている。これにより、従来光源バルブ12からの直射光により車両前方路面に形成されていた左右方向に帯状に延びるレリーフ(16b3)の影を、上方近傍領域16A1からの下向き偏向光および下方近傍領域16A2からの上向き偏向光により消滅させ、車両前方路面に光ムラが発生するのを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源バルブと、この光源バルブからの光を前方へ反射させるリフレクタと、このリフレクタの前方に設けられた前面レンズとを備え、上記前面レンズが素通し状に形成されるとともに該前面レンズの内面における上記光源バルブよりも下方位置に略水平方向に延びるレリーフが形成されてなる車両用前照灯において、上記前面レンズにおける上記レリーフの上方近傍領域が、上記光源バルブからの光を下向きに偏向させる下向き偏向プリズム状に形成されるとともに、上記前面レンズにおける上記レリーフの下方近傍領域が、上記光源バルブからの光を上向きに偏向させる上向き偏向プリズム状に形成されている、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】 上記上方近傍領域が、上記光源バルブからの光を下向きに拡散偏向させる下向き拡散偏向プリズム状に形成されるとともに、上記下方近傍領域が、上記光源バルブからの光を上向きに拡散偏向させる上向き拡散偏向プリズム状に形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、内面にレリーフが形成された素通し状の前面レンズを有する車両用前照灯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の車両用前照灯においては、リフレクタに配光制御機能を持たせることにより前面レンズを素通し状に形成し、灯具の透明感を高めるようにした構成が多く採用されている。さらに、このような灯具構成において、図5に示すように、前面レンズ2の内面2aに水平方向に延びるレリーフ(浮き彫り)2b1、2b2、2b3を形成することにより、灯具に装飾性を付加するようにしたものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図5に示す灯具においては、3本のレリーフ2b1、2b2、2b3が上下方向に所定間隔をおいて形成されているが、最下段のレリーフ2b3は光源バルブ4よりも下方位置に形成されているので、該レリーフ2b3により車両前方路面に光ムラが発生してしまうという問題がある。
【0004】すなわち、光源バルブ4から前面レンズ2に入射する下向きの直射光のうち、レリーフ2b3以外の部分に入射する直射光は素通し状の前面レンズ2をそのまま透過するが、レリーフ2b3の部分に入射する直射光は該レリーフ2b3により上下方向に大きく拡散して前面レンズ2を透過する。
【0005】このため、図6に示すように、車両前方路面には、リフレクタ6の反射面6aからの反射光による配光パターンPrの手前側に、前面レンズ2を透過した直射光による配光パターンPdが形成されるが、レリーフ2b3の存在により車両前方路面に照射されるべき光の一部が欠落しているので、配光パターンPdの中にレリーフ2b3の影Dが左右方向に帯状に形成され、これにより車両前方路面に光ムラが発生することとなる。
【0006】そして、このような光ムラが発生すると車両前方路面が見づらくなってしまうという問題がある。
【0007】本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、内面にレリーフが形成された素通し状の前面レンズを有する車両用前照灯において、車両前方路面の視認性を高めることができる車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明は、前面レンズにおけるレリーフの上下近傍領域の断面形状に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】すなわち、本願発明に係る車両用前照灯は、光源バルブと、この光源バルブからの光を前方へ反射させるリフレクタと、このリフレクタの前方に設けられた前面レンズとを備え、上記前面レンズが素通し状に形成されるとともに該前面レンズの内面における上記光源バルブよりも下方位置に略水平方向に延びるレリーフが形成されてなる車両用前照灯において、上記前面レンズにおける上記レリーフの上方近傍領域が、上記光源バルブからの光を下向きに偏向させる下向き偏向プリズム状に形成されるとともに、上記前面レンズにおける上記レリーフの下方近傍領域が、上記光源バルブからの光を上向きに偏向させる上向き偏向プリズム状に形成されている、ことを特徴とするものである。
【0010】上記「光源バルブよりも下方位置」とは、光源バルブの発光中心よりも下方に位置していることを意味するものである。
【0011】上記「レリーフ」の断面形状は特に限定されるものではない。
【0012】上記「前面レンズ」には、上記「レリーフ」以外のレリーフが形成されていてもよいし形成されていなくてもよい。
【0013】
【発明の作用効果】上記構成に示すように、本願発明に係る車両用前照灯は、素通し状に形成された前面レンズの内面における光源バルブよりも下方位置に略水平方向に延びるレリーフが形成されているが、前面レンズにおけるレリーフの上方近傍領域が下向き偏向プリズム状に形成されるとともにレリーフの下方近傍領域が上向き偏向プリズム状に形成されているので、従来光源バルブからの直射光により車両前方路面に形成されていた左右方向に帯状に延びるレリーフの影を、上方近傍領域からの下向き偏向光および下方近傍領域からの上向き偏向光により消滅させることができる。そしてこれにより、車両前方路面に光ムラが発生するのを防止することができる。特に、上方近傍領域および下方近傍領域双方の偏向光を用いているので、各々の偏向角を小さい値に設定することができる。このため、レリーフの影を消滅させるための光偏向制御により車両前方路面に新たな光ムラが発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0014】したがって、本願発明によれば、内面にレリーフが形成された素通し状の前面レンズを有する車両用前照灯において、車両前方路面の視認性を高めることができる。
【0015】上記「上方近傍領域」による下向き偏向は、光源バルブからの光を一律に下向きに偏向させるものであってもよいが、光源バルブからの光を下向きに拡散偏向させるようにすれば、該上方近傍領域の光偏向制御により車両前方路面に新たな光ムラが発生するのを確実に防止することができる。同様に、上記「下方近傍領域」による上向き偏向は、光源バルブからの光を一律に上向きに偏向させるものであってもよいが、光源バルブからの光を上向きに拡散偏向させるようにすれば、該下方近傍領域の光偏向制御により車両前方路面に新たな光ムラが発生するのを確実に防止することができる。また、このように構成することにより、灯具外観上、前面レンズの一部に上方近傍領域および下方近傍領域が形成されていることを、ほとんど目立たなくすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0017】図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯10を示す正面図であり、図2は、そのII-II 線断面図である。
【0018】これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、2輪車用の前照灯であって、光源バルブ12と、この光源バルブ12からの光を前方へ反射させる反射面14aを有するリフレクタ14と、このリフレクタ14の前方に設けられ、該リフレクタ14に取り付けられた前面レンズ16とを備えてなっている。
【0019】光源バルブ12は、そのバルブ軸に対して直角に延びるダブルフィラメント12a、12bを有するハロゲンバルブであり、両フィラメント12a、12bをリフレクタ14の光軸Axと直交する水平方向に配置するようにして該リフレクタ14の後頂部に挿着されている。
【0020】本実施形態に係る車両用前照灯10は、リフレクタ14に灯具としての配光制御機能が付与されており、前面レンズ16は素通し状に形成されている。そして、この前面レンズ16の内面16aには、断面略半円弧状の3本のレリーフ16b1、16b2、16b3が、上下略等間隔で水平方向に延びるように形成されている。これら3本のレリーフ16b1、16b2、16b3のうち、最下段のレリーフ16b3は、光軸Axよりも下方位置に形成されている。
【0021】前面レンズ16は、レンズ本体部16Aおよびその外周縁に形成されたフランジ部16Bからなっているが、光源バルブ12からの直射光およびリフレクタ14の反射面14aからの反射光がレンズ本体部16Aにのみ入射するよう、リフレクタ14の前端開口部には、前面レンズ16のフランジ部16Bに沿ってその前端部近傍まで延びるフランジ部14bが形成されている。
【0022】前面レンズ16のレンズ本体部16Aは肉厚一定で形成されているが、該レンズ本体部16Aにおける最下段のレリーフ16b3の上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2は、レリーフ16b3へ向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成されている。すなわち、上方近傍領域16A1は、光源バルブ12からの直射光を下向きに拡散偏向させる下向き拡散偏向プリズム状に形成されており、下方近傍領域16A2は、光源バルブ12からの直射光を上向きに拡散偏向させる上向き拡散偏向プリズム状に形成されている。
【0023】図3は、図2のIII 部詳細図であって、光源バルブ12からの直射光が前面レンズ16の上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2を透過する様子を示す図である。
【0024】図中2点鎖線で示すように、仮に前面レンズ16における上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2に対応する部分が肉厚一定で形成されているとした場合には、前面レンズ16に入射した直射光は素通し状の前面レンズ16をそのまま透過して車両前方路面に照射されるが、レリーフ16b3´に入射した直射光は該レリーフ16b3´により上下方向に大きく拡散して前面レンズ2を透過するので、その分だけ車両前方路面に照射されるべき光が欠落してしまい、レリーフ16b3´の影が帯状に形成されることなる。
【0025】これに対し、本実施形態においては、上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2が下向き拡散偏向プリズム状および上向き拡散偏向プリズム状に各々形成されているので、車両前方路面においてレリーフ16b3の存在により照射光が欠落している部分へ下向き拡散偏向光および上向き拡散偏向光を割り振ることができる。そしてこれにより、車両前方路面にレリーフ16b3の影が発生するのを未然に防止することができる。
【0026】図4は、本実施形態の作用を説明するための路面配光パターンを示す図であって、メインビーム用のフィラメント12aを点灯させたときの様子を示す図である。
【0027】図示のように、車両前方路面には、その遠方にリフレクタ14の反射面14aからの反射光による配光パターンPrが形成され、この配光パターンPrの手前側に、前面レンズ16を透過した直射光による配光パターンPdが形成される。上述したように、本実施形態においては、上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2により車両前方路面にレリーフ16b3の影が発生するのを未然に防止するように構成されているので、車両前方路面における車両近傍領域は配光パターンPdにより略均一に照射される。
【0028】その際、本実施形態においては、上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2双方の偏向光を用いているので、各々の偏向角を小さい値に設定することができる。このため、レリーフ16b3の影を消滅させるための光偏向制御により車両前方路面に新たな光ムラが発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0029】したがって、本実施形態によれば、内面にレリーフが形成された素通し状の前面レンズを有する車両用前照灯において、車両前方路面の視認性を高めることができる。
【0030】特に、本実施形態に係る車両用前照灯10は2輪車用の前照灯であり、運転者は車両前方路面を車両直前領域まで見ることができるので、本実施形態の構成を採用することが極めて効果的である。
【0031】しかも、本実施形態においてはレリーフ16b3の上下に上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2が形成されているが、レリーフ16b3の形状自体は他の2本のレリーフ16b1、16b2と同じ断面形状で形成されているので、灯具意匠に違和感を与えることなく上記作用効果を得ることができる。
【0032】さらに、本実施形態においては、上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2による下向き偏向および上向き偏向が、光源バルブ12からの光を一律に下向きおよび上向きに偏向させるのではなく拡散偏向により行われるように構成されているので、上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2の光偏向制御により車両前方路面に新たな光ムラが発生するのを確実に防止することができる。また、このように構成することにより、灯具外観上、前面レンズ14の一部に上方近傍領域16A1および下方近傍領域16A2が形成されていることを、ほとんど目立たなくすることができる。
【0033】図4においては、メインビーム用のフィラメント12aを点灯させた場合の路面配光パターンを示したが、サブビーム用のフィラメント12bを点灯させた場合においても、リフレクタ14の反射面14aからの反射光による配光パターンPrが異なったものとなるだけで、前面レンズ16を透過した直射光による配光パターンPdは、図4の場合と略同様である。
【0034】本実施形態においては、車両用前照灯10が2輪車用の前照灯である場合について説明したが、乗用車、トラック等の他の種類の車両用の前照灯である場合においても、本実施形態と同様の構成を採用することにより本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成11年5月13日(1999.5.13)
【代理人】 【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
【公開番号】 特開2000−322904(P2000−322904A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−132291