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【発明の名称】 車両用標識灯
【発明者】 【氏名】秋山 一夫

【氏名】杉山 富士彦

【要約】 【課題】前面レンズとランプボディとが直接接合されているにもかかわらず、従来のように光源バルブ挿着用のリフレクタを介在させることを必要とせずに灯具を構成可能とする。

【解決手段】ランプボディ14を耐熱性樹脂材料で形成するとともに、該ランプボディ14に光源バルブ12を挿着する。そして、前面レンズ16とランプボディ14との接合をレーザ溶着により行う。ランプボディ14は耐熱性樹脂材料で形成されているので、該ランプボディ14に挿着された光源バルブ12の点灯発熱により加熱されても熱変形を生じてしまうことはない。したがって従来のような光源バルブ挿着用のリフレクタは介在不要となる。また、前面レンズ16とランプボディ14との接合がレーザ溶着により行われているので、ランプボディ14が耐熱性樹脂材料で形成されているにもかかわらず、何ら支障なく両者の接合を行うことができ、これにより十分な接合強度を確保することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前面レンズとランプボディとが接合されてなる車両用標識灯において、上記ランプボディが耐熱性樹脂材料で形成されるとともに、該ランプボディに光源バルブが挿着されており、上記接合がレーザ溶着により行われている、ことを特徴とする車両用標識灯。
【請求項2】 上記耐熱性樹脂材料が、PC(ポリカーボネート)を含むポリマーアロイからなる、ことを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
【請求項3】 上記レーザ溶着が半導体レーザを用いて行われている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用標識灯。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、前面レンズとランプボディとが接合されてなる車両用標識灯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】多くの車両用標識灯においては、前面レンズとランプボディとが接合された構成となっているが、その接合方法としては、従来より、シール材を介して接合する間接接合と、前面レンズとランプボディとを直接当接させて接合する直接接合とが知られている。間接接合の具体的方法としては、ホットメルトシール等が知られており、直接接合の具体的方法としては、熱板溶着、振動溶着および超音波溶着が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】間接接合においては、シール材分のコストが余分に掛かり、またこのシール材を塗布するために比較的大きな溝を形成する必要があり、さらにこの溝内のシール材を灯具外部から見えにくくするための装飾的処理も必要となる。
【0004】一方、直接接合においては、シール材の存在に起因する上記問題は解決可能である。しかしながら、上記従来の直接接合においては次のような問題がある。
【0005】すなわち、前面レンズとランプボディとの接合が熱板溶着、振動溶着あるいは超音波溶着で行われる場合において、ランプボディの材質としてPC(ポリカーボネート)等の耐熱性樹脂材料を用いると、溶着性が悪くなりバリ発生量も多くなるので、ランプボディを耐熱性樹脂材料で形成することはできない。このため、ランプボディに光源バルブを直接挿着した場合には、光源バルブの点灯に伴う発熱によりランプボディの光源バルブ挿着部が熱変形してしまうこととなる。
【0006】したがって、図4に示すように、上記従来の直接接合により前面レンズ6とランプボディ4とが接合されてなる車両用標識灯においては、光源バルブ2を一旦耐熱性樹脂材料からなるリフレクタ8に挿着し、このリフレクタ8をランプボディ4に支持せしめるという2重構造を採用せざるを得ず、このため灯具構造が複雑となり、また灯具コストが高いものとなっている。
【0007】本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構造でかつ低コストで灯具を構成することができる車両用標識灯を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明は、ランプボディの構成および該ランプボディと前面レンズとの接合方法に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】すなわち本願発明は、前面レンズとランプボディとが接合されてなる車両用標識灯において、上記ランプボディが耐熱性樹脂材料で形成されるとともに、該ランプボディに光源バルブが挿着されており、上記接合がレーザ溶着により行われている、ことを特徴とするものである。
【0010】上記「レーザ溶着」とは、レーザ光に対して透過性を有するレーザ光透過部材とレーザ光に対して透過性を有しないレーザ光不透過部材とを当接させた状態で、レーザ光透過部材を透して両部材の当接面にレーザ光を照射してレーザ光不透過部材を加熱することにより両部材を溶着する接合方法を意味するものである。この「レーザ溶着」に用いられるレーザの種類は特に限定されるものではなく、例えば、半導体レーザ、YAGレーザ等が採用可能である。
【0011】上記「耐熱性樹脂材料」とは、熱変形温度が115℃以上の樹脂材料を意味するものである。
【0012】上記「ランプボディ」は、耐熱性樹脂材料で形成され、かつ、レーザ光に対して透過性を有さずかつ該レーザ光の照射により発熱して溶融するものであれば、その具体的材質は特に限定されるものではないが、例えば、耐熱AAS、耐熱ABS、PC等の樹脂材料や、PCとAAS、PCとABS、PCとPET、あるいはPCとPBT等のポリマーアロイ等が採用可能である。
【0013】その際、耐熱性樹脂材料にカーボンブラック等の補助材料を添加して黒色系素材とし、ランプボディのレーザ光吸収性をできるだけ高めておくことが、レーザ溶着を効率よく行う上で好ましい。
【0014】一方、上記「前面レンズ」は、可視光およびレーザ光に対して透過性を有しかつランプボディの溶融により該ランプボディと固着可能なものであれば、その材質は特に限定されるものではない。
【0015】
【発明の作用効果】上記構成に示すように、本願発明に係る車両用標識灯は、ランプボディが耐熱性樹脂材料で形成されるとともに、該ランプボディに光源バルブが挿着されており、前面レンズとランプボディとの接合がレーザ溶着により行われているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0016】すなわち、レーザ溶着においては、レーザ光不透過部材が耐熱性樹脂材料で形成されていても、該レーザ光不透過部材をレーザ光照射エネルギで加熱してこれを溶融させ、レーザ光透過部材と溶着することができる。そこで、本願発明においては、前面レンズとランプボディとの接合手段としてレーザ溶着を採用することにより、レーザ光不透過部材であるランプボディが耐熱性樹脂材料で形成されているにもかかわらず、何ら支障なく両者の接合を行うことができ、これにより十分な接合強度を確保することができる。また、本願発明に係る車両用標識灯は、ランプボディに光源バルブが挿着されており、該光源バルブの点灯発熱によりランプボディが加熱されるが、その加熱温度は115℃未満である。このため、耐熱性樹脂材料で形成されたランプボディが熱変形を生じてしまうおそれはない。
【0017】このように、本願発明によれば、前面レンズとランプボディとが直接接合されているにもかかわらず、従来のように光源バルブ挿着用のリフレクタを介在させることを必要とせずに灯具を構成することができる。
【0018】したがって、本願発明によれば、前面レンズとランプボディとが接合されてなる車両用標識灯において、簡単な構造でかつ低コストで灯具を構成することができる。
【0019】しかも、レーザ溶着の採用により、接合面の両側に大きなバリ等を発生させることなく接合を行うことができ、また、前面レンズとランプボディとの接合面の形状が3次元的に変化している場合であっても、何ら支障なく接合を行うことができ、これにより十分な接合強度を確保することができる。
【0020】上記構成において、請求項2に記載したように、耐熱性樹脂材料として、PC(ポリカーボネート)を含むポリマーアロイを採用するようにすれば、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、PCを含むポリマーアロイは耐熱性が高いため、小型の車両用標識灯に適用した場合においても、ランプボディの熱変形を防止することができる。また、PCを含むポリマーアロイは表面平滑性に優れているため、反射率の高い反射面を形成することができる。
【0021】上記「レーザ溶着」に用いられるレーザの種類が特に限定されないことは上述したとおりであるが、請求項3に記載したように、半導体レーザを採用すれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0022】すなわち、レーザ光透過部材となる前面レンズは、その光透過率が光の波長によって異なっており、さらにこの光透過率特性は前面レンズの材質によっても異なったものとなる。したがって、レーザ溶着に用いるレーザ光の波長も前面レンズの光透過率特性に応じて設定することが好ましい。しかしながら、YAGレーザ等においては発振波長が固定されているので、光透過率に優れた波長領域のレーザ光を得ることができない。これに対し、半導体レーザにおいては、発振波長が単一ではなく発振条件によって発振波長を変化させることができるので、その発振帯域を適当に調整することにより、前面レンズの材質に応じて光透過率に優れた波長領域のレーザ光を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0024】図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用標識灯を示す側断面図である。
【0025】図示のように、本実施形態に係る車両用標識灯10は、前後方向に延びる灯具基準軸Ax上において光源バルブ12が挿着されたランプボディ14と、このランプボディ14の前端開口部に接合された前面レンズ16とを備えてなり、ランプボディ14に形成された反射面14aにより光源バルブ12からの光を前方へ拡散偏向反射させるように構成されている。
【0026】前面レンズ16は、素通しレンズであり、PMMA、PC等の透明の熱可塑性樹脂材料で形成されている。この前面レンズ16の背面16aの外周縁近傍部位には、後方へ突出するシール脚16bが全周にわたって形成されている。このシール脚16bの先端面16b1は平面状に形成されている。
【0027】ランプボディ14は、カーボンブラックが添加された不透明の耐熱性樹脂材料で形成されており、この耐熱性樹脂材料としてはPCとAASとのポリマーアロイが用いられている。
【0028】このランプボディ14の前端開口部には、灯具基準軸Axに対して略垂直に延びるフランジ部14bが形成されており、このフランジ部14bの前面がシール脚16bの先端面16b1と当接する受け面14b1を構成している。
【0029】そして、前面レンズ16とランプボディ14との接合は、シール脚16bの先端面16b1と受け面14b1とをレーザ溶着することにより行われている。
【0030】図2は、このレーザ溶着の工程を示す斜視図である。
【0031】図示のように、レーザ溶着は、車両用標識灯10を上向きに配置した状態で、レーザ溶着ロボット100を用いて行われるようになっている。
【0032】このレーザ溶着ロボット100は、図示しないロボット本体にレーザヘッド102が取り付けられてなっている。レーザヘッド102の側面には、光ファイバが収容されてなるファイバケーブル104が取り付けられており、レーザヘッド102の下面には、上記光ファイバの先端面が下向きに露出するようにして該光ファイバを支持する出射ノズル106が取り付けられている。そして、レーザヘッド102は、図示しないレーザ発振器で生成されたレーザ光を、ファイバケーブル104を介して出射ノズル106から鉛直下方へ出射するようになっている。上記レーザ発振器は、出力15〜100W程度で、発振波長0.8〜1.5μm程度の半導体レーザで構成されている。
【0033】レーザ溶着は、出射ノズル106から出射されるレーザ光Lが前面レンズ16におけるシール脚16bの基端部16b3の位置(図中2点鎖線で示す)に照射されるよう、レーザヘッド102を水平面内において図中矢印Aで示すように移動させることにより行われる。もっとも、このようにレーザヘッド102を水平面内で2次元的に移動させる代わりに、接合面形状に沿って3次元的に移動させるようにしてもよい。
【0034】図3は、上記レーザ溶着の様子を示す車両用標識灯10の要部断面図である。
【0035】図示のように、レーザ光Lのビームスポット径は、シール脚16b幅寸法よりもやや大きめに設定されている。そして、前面レンズ16に入射したレーザ光Lの大半は、シール脚16bを透過してその先端面16b1へ到達し、ランプボディ14の受け面14b1における先端面当接部位14b1aへ照射される。これにより受け面14b1の先端面当接部位14b1aは、レーザ光Lの照射エネルギで加熱されて溶融し、該先端面当接部位14b1aには溶融部Wが形成される。そして、この溶融熱によりシール脚16bの先端面16b1も溶融して相溶状態となる。このとき前面レンズ16をランプボディ14へ向けて加圧することにより、シール脚16bの先端面16b1と受け面14b1とが堅固に溶着する。
【0036】以上詳述したように、本実施形態に係る車両用標識灯10は、ランプボディ14に光源バルブ12が挿着されているので、光源バルブ12の点灯発熱によりランプボディ14が加熱されるが、ランプボディ14は耐熱性樹脂材料で形成されているので熱変形を生じてしまうことはない。そして、前面レンズ16とランプボディ14との接合がレーザ溶着により行われているので、ランプボディ14が耐熱性樹脂材料で形成されているにもかかわらず、何ら支障なく両者の接合を行うことができ、これにより十分な接合強度を確保することができる。
【0037】このように、前面レンズ16とランプボディ14とが直接接合されているにもかかわらず、従来のように光源バルブ挿着用のリフレクタを介在させることを必要とせずに灯具を構成することができ、これにより簡単な構造でかつ低コストで灯具を構成することができる。
【0038】また、レーザ溶着の採用により、前面レンズ16とランプボディ14との接合面の両側に大きなバリ等を発生させることなく接合を行うことができる。特に、本実施形態に係る前面レンズ16は素通しレンズであるので、効果的に接合面周辺の外観品質向上を図ることができる。また、レーザ溶着を採用することにより、接合面形状が3次元的に変化している場合であっても、接合面へのレーザ光到達距離が単に変化するだけであるので、何ら支障なく接合を行うことができ、これにより十分な接合強度を確保することができる。
【0039】しかも、ランプボディ14を形成する耐熱性樹脂材料にはカーボンブラックが添加されているので、ランプボディ14のレーザ光吸収性を高めてレーザ溶着を効率よく行うことができる。さらに、この耐熱性樹脂材料は耐熱性の高いPCとAASとのポリマーアロイであるので、小型の車両用標識灯に適用した場合にもランプボディ14の熱変形を防止することができる。また、PCとAASとのポリマーアロイは表面平滑性に優れているため、反射面14aの反射率を高めることができる。
【0040】さらに、上記レーザ溶着は、半導体レーザを用いてを行われるように構成されているので、その発振波長は単一ではなく発振条件によって発振波長を変化させることができる。したがって、その発振帯域を適当に調整することにより、前面レンズ16の材質に応じて光透過率に優れた波長領域のレーザ光を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成11年4月12日(1999.4.12)
【代理人】 【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
【公開番号】 特開2000−294012(P2000−294012A)
【公開日】 平成12年10月20日(2000.10.20)
【出願番号】 特願平11−103570