トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F21 照明




【発明の名称】 車両用灯具のレンズ表面処理方法
【発明者】 【氏名】相川 信治

【氏名】中村 浩一

【氏名】安間 英任

【要約】 【課題】合成樹脂製のレンズの内表面に防曇塗装膜を形成するとともにその外表面にハードコート膜を形成する車両用灯具のレンズ表面処理方法において、レンズに傷をつけてしまうことなく防曇塗装膜を形成できるようにする。

【解決手段】レンズ12の外表面12bにハードコート膜28を塗布した後、該ハードコート膜28を加熱硬化させ、このハードコート膜28が形成されたレンズ12を、その内表面12aの温度が所定温度になるまで冷却し、この冷却が行われたレンズ12の内表面12aに防曇塗装膜26を塗布した後、該防曇塗装膜26を加熱乾燥させる。これにより防曇塗装膜26を形成する際に受け治具126がレンズ12の外表面12bに当接しても、レンズ12に傷がついてしまうのをハードコート膜28の介在によって未然に防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂製のレンズを備えた車両用灯具において、上記レンズの内表面に防曇塗装膜を形成するとともに該レンズの外表面にハードコート膜を形成するレンズ表面処理方法であって、上記レンズの外表面にハードコート膜を塗布した後、該ハードコート膜を加熱硬化させるハードコート膜形成工程と、上記ハードコート膜が形成されたレンズを、該レンズの内表面の温度が所定温度になるまで冷却する冷却工程と、上記冷却が行われたレンズの内表面に防曇塗装膜を塗布した後、該防曇塗装膜を加熱乾燥させる防曇塗装膜形成工程とを含む、ことを特徴とする車両用灯具のレンズ表面処理方法。
【請求項2】 上記ハードコート膜形成工程、冷却工程および防曇塗装膜形成工程が、同一のクリーンルーム内で行われる、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具のレンズ表面処理方法。
【請求項3】 上記所定温度が、上記クリーンルームの室温よりも高い温度に設定されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具のレンズ表面処理方法。
【請求項4】 上記所定温度が、35℃以下の温度に設定されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用灯具のレンズ表面処理方法。
【請求項5】 上記防曇塗装膜の膜厚が、10μm以下の値に設定されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用灯具のレンズ表面処理方法。
【請求項6】 上記防曇塗装膜形成工程における塗布完了から加熱乾燥開始までの時間が、上記クリーンルーム内の湿度上昇に応じて段階的に短縮補正される、ことを特徴とする請求項2〜5いずれか記載の車両用灯具のレンズ表面処理方法。
【請求項7】 上記防曇塗装膜形成工程における加熱乾燥温度が、110〜130℃の温度に設定されている、ことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の車両用灯具のレンズ表面処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、合成樹脂製のレンズを備えた車両用灯具に関するものであり、特に、そのレンズの表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ヘッドランプ等の車両用灯具においては、素通しレンズあるいはこれに近いレンズが多く用いられている。このようなレンズにおいては、その内表面に僅かな水滴が付着しただけでもレンズが曇って見えてしまい、外観品質上問題となる。このため従来より、レンズの内表面に防曇塗装膜を形成する工夫がなされている。
【0003】また、近年の車両用灯具は、ヘッドランプ等においても合成樹脂製のレンズが多く採用されるようになってきている。合成樹脂製のレンズは、ガラス製のレンズに比して軽量で耐衝撃性に優れている反面、耐擦傷性、耐候性および耐溶剤性に劣るので、その外表面にハードコート膜が形成されることが多い。
【0004】以上のことから、車両用灯具のレンズとして、素通しあるいはこれに近い合成樹脂製のレンズを採用する場合には、その内表面に防曇塗装膜を形成するとともに外表面にハードコート膜を形成することが好ましい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような構成を採用した場合、無造作に防曇塗装膜およびハードコート膜を形成すると次のような問題が生じる。
【0006】すなわち、ハードコート膜や防曇塗装膜を形成する際にはレンズを支持するための受け治具が用いられるが、先に防曇塗装膜を形成し、その後ハードコート膜を形成するようにした場合には、図8に示すように、防曇塗装膜2を形成する際に用いられる受け治具4がレンズ6の外表面6aに当接するため、その際レンズ6に傷をつけてしまう可能性が高いという問題が生じる。
【0007】本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、合成樹脂製のレンズの内表面に防曇塗装膜を形成するとともにその外表面にハードコート膜を形成するようにした場合において、レンズに傷をつけてしまうことなく防曇塗装膜を形成することができる車両用灯具のレンズ表面処理方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明は、表面処理の順序に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】すなわち、本願発明は、合成樹脂製のレンズを備えた車両用灯具において、上記レンズの内表面に防曇塗装膜を形成するとともに該レンズの外表面にハードコート膜を形成するレンズ表面処理方法であって、上記レンズの外表面にハードコート膜を塗布した後、該ハードコート膜を加熱硬化させるハードコート膜形成工程と、上記ハードコート膜が形成されたレンズを、該レンズの内表面の温度が所定温度になるまで冷却する冷却工程と、上記冷却が行われたレンズの内表面に防曇塗装膜を塗布した後、該防曇塗装膜を加熱乾燥させる防曇塗装膜形成工程とを含む、ことを特徴とするものである。
【0010】上記レンズの内表面における「防曇塗装膜」の形成範囲は、曇りの発生が問題となる箇所を含む範囲であれば、内表面の全域であってもよいし、その一部領域であってもよい。
【0011】上記レンズの外表面における「ハードコート膜」の形成範囲は、傷の発生や耐候性、耐溶剤性が問題となる箇所を含む範囲であれば、外表面の全域であってもよいし、その一部領域であってもよい。
【0012】
【発明の作用効果】上記構成に示すように、本願発明においては、防曇塗装膜の形成前にハードコート膜の形成が行われるようになっているので、防曇塗装膜を形成する際に受け治具がレンズの外表面に当接しても、レンズに傷がついてしまうのをハードコート膜の介在によって未然に防止することができる。
【0013】したがって、本願発明によれば、合成樹脂製のレンズの内表面に防曇塗装膜を形成するとともにその外表面にハードコート膜を形成するようにした場合において、レンズに傷をつけてしまうことなく防曇塗装膜を形成することができる。
【0014】また、本願発明においては、レンズの内表面に防曇塗装膜が形成されるようになっているので、これを素通しレンズあるいはこれに近いレンズとした場合においても、防曇塗装膜の界面活性作用により、レンズの内表面に付着した水滴が水膜状になり、これによりレンズが曇って見えてしまうという外観品質不良の発生を未然に防止することができる。一方、レンズの外表面にはハードコート膜が形成されるようになっているので、その耐擦傷性、耐候性および耐溶剤性を向上させることができる。
【0015】上記「レンズ」は、その内表面にレンズ素子が形成されたものであってもよいし、レンズ素子が形成されていないものであってもよいが、後者の場合には、僅かな水滴が付着しただけでもレンズが曇って見えてしまうので、本願発明の構成を採用することが特に効果的である。
【0016】上記レンズ表面処理方法を構成するハードコート膜形成工程、冷却工程および防曇塗装膜形成工程を、全く異なる場所で行うようにしてもよいが、請求項2に記載したように、これら全工程を同一のクリーンルーム内で行うようにすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】すなわち、上記各工程を全く異なる場所で行うようにした場合には、その分の物流工数が必要になり、また、ハードコート膜が形成されたレンズを防曇塗装膜の形成が行われる場所まで運搬する間に、レンズに汚れが付着したりレンズに傷が付いたりするおそれがある。しかも、防曇塗装膜が形成される前に空気中の水分がレンズに吸収されてしまうので、防曇塗装膜形成工程において白化現象が生じてしまうおそれがある。すなわち、防曇塗装用の塗料は親水性を有するので、レンズに吸収されていた水分が塗布直後から防曇塗装膜内に水滴状に吸収され、その後の加熱乾燥により防曇塗装膜内の水分が蒸発し、これにより水滴の跡が残って防曇塗装膜が白っぽく見えてしまう現象が発生するおそれがある。
【0018】これに対し、上記全工程を同一のクリーンルーム内で行うようにすれば、物流工数の低減を図ることができるのみならず、運搬中におけるレンズの汚れや傷の発生を未然に防止することができ、また防曇塗装膜の白化現象についてもその発生を未然に防止することができる。
【0019】上記構成において「所定温度」は、ハードコート膜形成工程における加熱硬化直後の温度よりも低い温度であれば、特定の温度に限定されるものではないが、請求項3に記載したように、これをクリーンルームの室温よりも高い温度に設定するようにすれば、加熱硬化後のレンズ乾燥状態を維持したまま防曇塗装膜の塗布を行うことができるので、塗布前に空気中の水分がレンズに吸収されてしまうことによる白化現象の発生を未然に防止することができる。
【0020】一方、上記「所定温度」をあまり高い温度に設定すると、塗布後に塗料中の溶剤分が先に揮発してしまい、レンズの内表面における防曇塗装膜形成領域の全面にわたって均一な防曇塗装膜が形成されなくなる現象(レベリング不良)が発生してしまう。そこで、請求項4に記載したように、上記所定温度を35℃以下の温度に設定することが好ましい。
【0021】上記「冷却工程」において「所定温度になるまで冷却する」ための具体的方法は特に限定されるものではなく、例えば、冷気または空気等を強制的に吹き付けることにより冷却する方法等が採用可能であり、作業条件によっては自然冷却により冷却する方法も採用可能である。
【0022】ところで、防曇塗装膜の膜厚は特に限定されるものではないが、請求項5に記載したように、これを10μm以下の値に設定することが、以下の理由から好ましい。
【0023】すなわち、防曇塗装膜は薄くても厚くても防曇機能を発揮するが、その膜厚を厚くしすぎると、塗料を複数回重ね塗りしたり塗料の吐出時間を長くする必要がある。このため、作業時間の増加、過剰塗料分のコストアップ、塗料のタレ発生が生じてしまい、また塗料の架橋時間も長く必要となる。これに対し、防曇塗装膜の膜厚を10μm以下の値に設定すれば、これらの問題を完全にあるいはある程度解決することができる。
【0024】上記構成において、防曇塗装膜形成工程における塗布完了から加熱乾燥開始までの時間は、その間に空気中の水分が防曇塗装膜に吸収されてしまうのを防止する観点からは短い時間に設定することが好ましい反面、均一な防曇塗装膜を得る観点からはある程度の時間を確保することが好ましいので、両者をバランスさせた時間に設定するようにすればよいが、湿度が高くなると防曇塗装膜に水分が吸収されやすくなるので、請求項6に記載したように、塗布完了から加熱乾燥開始までの時間をクリーンルーム内の湿度上昇に応じて段階的に短縮補正することが好ましい。
【0025】また、上記構成において、防曇塗装膜形成工程における加熱乾燥温度は、特定の温度に限定されるものではないが、あまり高い温度に設定すると、ハードコート膜とレンズとの熱膨張率の差異によりハードコート膜にクラックが発生するおそれがあり、一方、あまり低い温度に設定すると、塗料に架橋が形成されず防曇塗装膜が硬化不足となり、その耐湿性を十分に確保することができなくなってしまう。そこで、請求項7に記載したように、防曇塗装膜形成工程における加熱乾燥温度を110〜130℃の温度に設定することが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0027】図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具のレンズ表面処理方法を示す工程図であり、図2は、本実施形態によるレンズ表面処理が施されたレンズを備えた車両用灯具10を示す側断面図である。
【0028】本実施形態に係るレンズ表面処理方法を説明する前に、車両用灯具10の構成について説明する。
【0029】図2に示すように、この車両用灯具10はヘッドランプであって、レンズ12とランプボディ14とで形成される灯室内に、光源バルブ18、リフレクタ20およびシェード22からなるリフレクタユニット16が上下および左右方向に傾動可能に設けられてなり、その灯室内におけるレンズ12の近傍にはエクステンションリフレクタ24が設けられている。
【0030】レンズ12は、合成樹脂製(具体的にはポリカーボネート樹脂製)のレンズであって、素通し状に形成されたレンズ本体部12Aと、このレンズ本体部12Aの外周縁に形成された周壁部12Bと、この周壁部12Bの先端に形成されたシール脚部12Cとからなり、シール脚部12Cの後端面においてランプボディ14の前端フランジ部14aに振動溶着により取付固定されている。
【0031】そして、レンズ12の内表面12aには、そのレンズ本体部12Aの全域にわたって防曇塗装膜26が形成されており、また、その周壁部12Bの全域にわたってレリーフ(例えば、ローレット、シボ、梨地等)12cが形成されている。一方、レンズ12の外表面12bには、そのレンズ本体部12Aおよび周壁部12Bの全域にわたってハードコート膜28が形成されている。
【0032】本実施形態に係るレンズ表面処理方法は、上記防曇塗装膜26およびハードコート膜28の形成を行う方法であって、図1に示すクリーンルーム100内において、ハードコート膜形成工程、冷却工程、防曇塗装膜形成工程の順で処理が行われるようになっている。
【0033】(1)まず、ハードコート膜形成工程について説明する。
【0034】本工程においては、まず、レンズパレット102からレンズ12を取り出して、これを静電ブロー装置104に入れ、コロナ放電によりレンズ12の静電気を除去するとともにレンズ12に圧縮空気を吹き付けて表面に付着しているホコリ等の異物を取り除いた後、レンズ12をハードコートブース106に入れ、レンズ12の外表面12bにハードコート膜28を塗布する。
【0035】このハードコート膜28の塗布は、図3(a)に示すように、レンズ12を、その外表面12bが上向きになるようにして、そのシール脚部12Cを受け治具108の上端部に当接させるようにして位置決めした状態で、スプレーガンのノズル110を外表面12bに沿って移動させ、該ノズル110からハードコート用の塗料を外表面12bに向けて吹き付けることにより行う。
【0036】上記ハードコート用の塗料は、紫外線硬化型の合成樹脂組成物と溶剤とからなり、その合成樹脂組成物としては、例えば、多官能アクリレート系(アクリル系)、シリコン系のものが用いられる。
【0037】次に、ハードコート膜28が塗布されたレンズ12を、ローラ搬送路112の上流端部に載せて、赤外線照射ゾーン114および紫外線照射ゾーン116を順次通過させる。赤外線照射ゾーン114においては、赤外線照射によりレンズ12を100℃以上の温度まで加熱して塗料中の溶剤を揮発させ、紫外線照射ゾーン116においては、紫外線照射により塗料中の合成樹脂組成物を硬化させ、これにより、塗布されたハードコート膜28をレンズ12よりも硬度の高い被膜として形成する。
【0038】(2)次に、冷却工程について説明する。
【0039】本工程においては、ローラ搬送路112に載せられたレンズ12を、上記紫外線照射ゾーン116の下流側に設けられた冷却ゾーン118を通過させ、その際、冷気ファンまたは送風ファンによりレンズ12に冷気または空気を吹き付けることにより、レンズ12をその内表面12aが35℃以下の温度になるまで冷却する。ただし、この冷却により内表面12aがクリーンルーム100の室温以下にはならないように調整しておく。
【0040】(3)次に、防曇塗装膜形成工程について説明する。
【0041】本工程においては、まず、冷却ゾーン118を通過してローラ搬送路112の下流端部まで搬送されたレンズ12を、静電ブロー装置120に入れて表面の異物を取り除いた後、レンズ12を防曇塗装ブース122に入れ、レンズ12の内表面12aに防曇塗装膜26を塗布する。この防曇塗装膜26の膜厚は、10μm以下の値(例えば2〜10μm)に設定されている。
【0042】防曇塗装膜26の塗布は、図3(b)に示すように、レンズ12を、その内表面12aが上向きになるようにして、その周壁部12Bの外表面12bを該外表面12bと略同一形状の凹部を有する受け治具126に当接させるようにして位置決めするとともに、シール脚部12Cをマスキング治具128で覆うようにした状態で、スプレーガンのノズル130をレンズ本体部12Aの内表面12aに沿って移動させ、該ノズル110から防曇塗装用の塗料を内表面12aに向けて吹き付けることにより行う。
【0043】上記防曇塗装用の塗料は、主剤、硬化剤および希釈剤からなり、その配合比は例えば10:1:6〜9に設定されている。主剤は親水性アクリル樹脂と界面活性剤とからなり、親水性アクリル樹脂は親水性部分とレンズ12の内表面12aに付着する疎水性部分との化合物からなっている。
【0044】次に、防曇塗装膜26が塗布されたレンズ12を乾燥炉124に入れ、防曇塗装膜26を加熱乾燥させる。この加熱乾燥は110〜130℃の温度で行われる。その際、この加熱乾燥温度を4分以上維持することが、架橋を完全に形成する上から好ましい。
【0045】上記防曇塗装膜26の塗布完了から加熱乾燥開始までの時間は、クリーンルーム100内の湿度上昇に応じて段階的に短縮補正する。
【0046】最後に、上記加熱乾燥が完了したレンズ12を、乾燥炉124から取り出してレンズパレット102に戻す。
【0047】図1に示すように、クリーンルーム100内の各装置は、オペレータAがハードコート膜形成工程および冷却工程を分担し、オペレータBが防曇塗装膜形成工程を分担することにより、2名のオペレータで効率良くレンズ表面処理作業を行うことができるようにレイアウトされている。なお、ハードコートブース106、ローラ搬送路112、防曇塗装ブース122および乾燥炉124には、オンオフスイッチ132、134、136および138が各々設けられている。
【0048】図4は、防曇塗装膜形成工程において用いられる受け治具126およびマスキング治具128を支持する治具取付支持装置200を示す側面図であり、図5は、図4のV方向矢視図である。
【0049】これらの図に示すように、この治具取付支持装置200は、固定フレーム202と、この固定フレーム202に回動可能に支持された回動フレーム204と、固定フレーム202に昇降可能に支持された昇降台206とを備えてなっている。
【0050】受け治具126は、該受け治具126が固定支持された支持構体208を介して昇降台206にピン結合(図示せず)により着脱可能に載置固定されており、一方、マスキング治具128は、該マスキング治具128が固定支持された支持プレート210を介して回動フレーム204にスライド連結され、ピン結合(図示せず)により回動フレーム204に着脱可能に固定されている。そして、これにより塗料で汚れた受け治具126およびマスキング治具128を新しいものに容易に交換し得るようになっている。支持プレート210には、交換作業をさらに容易に行い得るようにするため、1対の把手210aが取り付けられている。
【0051】この治具取付支持装置200は、防曇塗装膜26を塗布する際には、まず、図4において2点鎖線で示すように、回動フレーム204を上方へ回動させるとともに、昇降台206を下降させた状態で、レンズ12をその外表面12bが受け治具126の凹部に面接触するように該受け治具126にセットし、次に、回動フレーム204を下方へ回動させるとともに昇降台206を上昇させて、レンズ12のシール脚部12Cをマスキング治具128で覆うようになっている。
【0052】回動フレーム204の回動および昇降台206の昇降はシリンダ駆動により行われるようになっている(図4には回動フレーム204回動用のシリンダ212のみが図示されている)。
【0053】固定フレーム202には、係止プレート216が回動可能に取り付けられている。この係止プレート216は、回動フレーム204に取り付けられたコ字形の係止バー214と係合し得るようになっている。そして、この係止プレート216は、昇降台206が上昇したとき、該昇降台206に取り付けられたブラケット218が該係止プレート216に当接することにより上方へ回動し、下方回動状態にある回動フレーム204の係止バー214と係合するようになっている。一方、昇降台206が下降したときには、係止プレート216は、ブラケット218との当接が解除されるため、その自重により下方へ回動し、係止バー214との係合を解除するようになっている。
【0054】以上詳述したように、本実施形態においては、防曇塗装膜26の形成前にハードコート膜28の形成が行われるようになっているので、防曇塗装膜26を形成する際に受け治具126がレンズ12の外表面12bに当接しても、レンズ12に傷がついてしまうのをハードコート膜28の介在によって未然に防止することができる。
【0055】したがって、本実施形態によれば、合成樹脂製のレンズ12の内表面12aに防曇塗装膜26を形成するとともにその外表面12bにハードコート膜28を形成するようにした場合において、レンズ12に傷をつけてしまうことなく防曇塗装膜26を形成することができる。
【0056】しかも、本実施形態においては、素通しレンズ状のレンズ本体部12Aの内表面12aに防曇塗装膜26が形成されるようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0057】すなわち、図6は、図2のVI部詳細図であるが、同図(a)に示すように、灯室内に対して灯室外の温度が低くなると、灯室内の水蒸気がレンズ本体部12Aの内表面12aに結露する。その際、仮にレンズ本体部12Aの内表面12aに防曇塗装膜26が形成されていないとした場合には、同図(b)に示すように、内表面12aに結露した水蒸気は微小な水滴を生じるので、これら水滴により光が乱反射して内表面12aが曇って見えてしまう。これに対し、本実施形態においては、同図(c)に示すように、レンズ本体部12Aの内表面12aに防曇塗装膜26が形成されるようになっているので、その界面活性作用により内表面12aに結露した水蒸気は水膜となる。したがって、レンズ本体部12Aの素通し状態が維持され、これによりレンズ本体部12Aが曇って見えてしまうという外観品質不良の発生を未然に防止することができる。
【0058】また、本実施形態においては、レンズ12の外表面12bにハードコート膜28が形成されるようになっているので、その耐擦傷性、耐候性および耐溶剤性を向上させることができる。
【0059】さらに、本実施形態においては、ハードコート膜形成工程、冷却工程および防曇塗装膜形成工程が、同一のクリーンルーム100内で行われるようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0060】すなわち、仮に上記各工程を全く異なる場所で行うようにした場合には、その分の物流工数が必要になり、また、ハードコート膜28が形成されたレンズ12を防曇塗装膜26の形成が行われる場所まで運搬する間に、レンズ12に汚れが付着したりレンズ12に傷が付いたりするおそれがあるが、上記各工程を同一のクリーンルーム100内で行うことにより、物流工数の低減を図ることができ、かつ、レンズ運搬中における汚れや傷の発生を未然に防止することができる。
【0061】しかも、上記各工程を全く異なる場所で行うようにした場合には、防曇塗装膜26が形成される前に空気中の水分がレンズ12に吸収されるので、防曇塗装膜形成工程において白化現象が生じてしまうおそれがある。すなわち、防曇塗装用の塗料は親水性を有するので、図7(a)に示すように、レンズ12に吸収されていた水分が塗布直後から防曇塗装膜26内に水滴状に吸収され、その後の加熱乾燥により防曇塗装膜26内の水分が蒸発し、これにより水滴の跡が残って防曇塗装膜26が白っぽく見えてしまう白化現象が発生するおそれがある。
【0062】これに対し、上記全工程を同一のクリーンルーム100内で行うことにより、レンズ運搬中における水分吸収の問題がなくなるので、防曇塗装膜26の白化現象の発生を未然に防止することができる。
【0063】また、本実施形態においては、ハードコート膜28の形成後、レンズ12の内表面12aを35℃以下の温度でかつクリーンルーム100の室温よりは高い温度まで冷却するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0064】すなわち、レンズ12の内表面12aがクリーンルーム100の室温よりも高い温度に維持されることにより、ハードコート膜形成工程での加熱硬化後のレンズ乾燥状態を維持したまま防曇塗装膜26の塗布を行うことができるので、塗布前に空気中の水分がレンズ12に吸収されてしまうことによる白化現象の発生を未然に防止することができる。一方、レンズ12の内表面12aが35℃以上の温度に維持されることにより、内表面12aが高温状態のままで防曇塗装膜26を塗布した場合に生じるレベリング不良(すなわち、防曇塗装膜26の塗布後に塗料中の溶剤分が先に揮発してしまうことによる、レンズ本体部12Aの内表面12a全面にわたって均一な防曇塗装膜26が形成されなくなる現象)の発生を未然に防止することができる。
【0065】さらに、本実施形態においては、防曇塗装膜26の膜厚が10μm以下の値に設定されているので、塗料を複数回重ね塗りする必要がなく、また塗料の吐出時間を短くすることができる。したがって、作業時間および塗料の架橋時間の短縮、塗料の節約、および塗料のタレ発生の未然防止を図ることができる。
【0066】また、本実施形態においては、防曇塗装膜26の塗布完了から加熱乾燥開始までの時間(加熱乾燥待機時間)をクリーンルーム100内の湿度上昇に応じて段階的に短縮補正するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0067】すなわち、加熱乾燥待機時間が長いと、図7(b)に示すように、その間に空気中の水分が防曇塗装膜26内に水滴状に吸収されてしまうので、その後の加熱乾燥により防曇塗装膜26内の水分が蒸発し、これにより水滴の跡が残って防曇塗装膜26が白っぽく見えてしまう白化現象が発生してしまう。一方、防曇塗装膜26を均一に形成するためには、加熱乾燥待機時間をある程度長くすることが好ましい。
【0068】そこで、本実施形態のように、加熱乾燥待機時間をクリーンルーム100内の湿度上昇に応じて段階的に短縮補正することにより(すなわち、空気中の水分が吸収されにくい低湿度雰囲気では加熱乾燥待機時間を十分長く確保し、空気中の水分が吸収されやすい高湿度雰囲気では加熱乾燥待機時間を短くすることにより)、白化現象を発生させることなく、より均一な防曇塗装膜26を得るようにすることができる。
【0069】さらに、本実施形態においては、防曇塗装膜形成工程における加熱乾燥温度が110〜130℃の温度に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0070】すなわち、加熱乾燥温度を130℃を超える高い温度に設定すると、ハードコート膜28とレンズ12との熱膨張率の差異によりハードコート膜28にクラックが発生するおそれがあり、一方、110℃に達しない低い温度に設定すると、塗料に架橋が形成されず防曇塗装膜26が硬化不足となり、その耐湿性を十分に確保することができなくなってしまうが、本実施形態によれば、このような事態が発生するのを未然に防止することができる。
【0071】上記実施形態においては、車両用灯具10がヘッドランプである場合について説明したが、フォグランプや標識灯のような他の車両用灯具においても、上記実施形態と同様のレンズ表面処理方法を採用することにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成10年12月17日(1998.12.17)
【代理人】 【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
【公開番号】 特開2000−182409(P2000−182409A)
【公開日】 平成12年6月30日(2000.6.30)
【出願番号】 特願平10−359003