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【発明の名称】 車両用灯具
【発明者】 【氏名】桜井 伸芳

【要約】 【課題】アウターレンズとインナーレンズを溶着したレンズにおいて、両レンズの溶着に際しての位置ずれを防止し、かつ複数の溶着箇所での均等な溶着を実現して溶着品質を向上する。

【解決手段】アウターレンズ121とインナーレンズ122とを溶着した構成のレンズ120を備える車両用灯具において、インナーレンズ122には複数の溶着面129が設けられ、この溶着面129においてアウターレンズ121の内面に突出された溶着脚126に溶着される。インナーレンズ122の溶着面129が同一平面上に位置されており、溶着装置にアウターレンズとインナーレンズを重ねて載置したときに、インナーレンズ122の溶着面129をほぼ水平方向の同一平面上に位置することが可能になり、アウターレンズ121に対するインナーレンズ122の位置ずれが防止され、かつ各溶着面129に均等に超音波が印加されることになり、各溶着面129での溶着状態が均一なものとなり、高品質の溶着構造が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 灯具ボディと、前記灯具ボディの開口に取着される回り込み部を有するレンズとを備え、前記レンズがアウターレンズとインナーレンズとを溶着した構成の車両用灯具において、前記インナーレンズに設けられて前記アウターレンズに溶着される複数の溶着面が同一平面上に位置されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】 前記アウターレンズにはレンズ内面から溶着脚が突出形成され、前記インナーレンズには前記溶着脚に対向する位置に溶着面部が凹設されており、前記溶着面部の一部の面が前記溶着脚の先端面が溶着される溶着面として構成される請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】 前記溶着面部には、前記アウターレンズの溶着脚に当接して前記アウターレンズに対する前記インナーレンズの位置決めを行うためのリブが設けられる請求項2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアウターレンズとインナーレンズを溶着したレンズを備える車両用灯具に関し、特に回り込み形状のレンズを備える車両用灯具に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の灯具としてレンズをアウターレンズとインナーレンズで構成したレンズを備える灯具が用いられる。例えば、自動車のリアコンビネーションランプのように、テール&ストップランプ、バックアップランプ、ターンシグナルランプのそれぞれ異なる色光で点灯することが要求されるランプを一体化し、かつレンズを共通化する灯具では、レンズを複数色のレンズを組み合わせて一体化する構成がとられている。このような場合に、一部の色のレンズをインナーレンズとして構成し、これを他の異なる色のレンズで構成したアウターレンズに一体化する構成が取られている。例えば、前記した例では、レンズを赤色レンズと白色(クリア)レンズとを一体化してアウターレンズを構成し、このアウターレンズにアンバー色レンズをインナーレンズとして一体化している。
【0003】この種のレンズを形成する場合、特にアウターレンズにインナーレンズを一体化するための技術として超音波溶着、振動溶着が提案されている。超音波溶着は、アウターレンズとインナーレンズをレンズの接合面と垂直な方向に超音波を印加して両者を接合する手法であり、振動溶着は両レンズの接合面と平行な方向に振動を印加して接合する手法である。いずれの場合でも、アウターレンズとインナーレンズを接合面を当接した状態で溶着装置に装填し、溶着装置から超音波あるいは振動を両レンズに印加して溶着を行っている。
【0004】ところで、近年のリアコンビネーションランプでは、車体の後方から側方にわたって灯具が延長配置される、いわゆる回り込み形状の灯具が提供されており、そのためレンズも回り込み形状に形成されている。図7はその一例を示す灯具の水平断面図であり、灯具ボディ301は自動車の車体の後方に向けられた正面領域から車体の側方に向けた領域にわたって開口302が設けられ、この灯具のレンズ303は前記開口302に沿って正面部から回り込み部にわたってほぼL字型に曲げた形状とされている。前記レンズ303はアウターレンズ304とインナーレンズ305とで構成されており、前記アウターレンズ304の内面の所要の領域にインナーレンズ305が配設され、かつインナーレンズ305はアウターレンズ304の内面に超音波溶着によって接合されている。
【0005】この超音波溶着では、インナーレンズ305の周辺領域の複数箇所において前記アウターレンズ304の内面にそれぞれ溶着脚306を突出形成し、また、インナーレンズ305の外面には前記溶着脚306に対向する位置にそれぞれ溶着面307を形成し、これら溶着脚306と溶着面307とを溶着装置によって溶着することで一体化している。なお、図7において、308は電球、309は電球ソケットである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記した従来のレンズ303では、アウターレンズ304の溶着脚306とインナーレンズ305の溶着面307は、灯具の光軸方向を基準に形成されている。すなわち、溶着脚306は光軸方向に突出形成され、溶着面307はこの溶着脚306の突出方向と垂直な方向に当接面が形成されている。したがって、図6(b)に示すように、溶着装置200に装填するときには、溶着装置200のワーク載置台201上に灯具の光軸方向が溶着装置200の鉛直方向に向くように、すなわち溶着脚306の突出方向が溶着装置200の鉛直方向に向くようにアウターレンズ304を下側にして載置し、その上に溶着脚306上に溶着面307が位置するようにしてインナーレンズ305を載置し、その上で超音波を伝達するホーン202を上側のインナーレンズ305の背面側に押圧接触させ、その状態で超音波を印加している。
【0007】このため、前記したような回り込み部を有する形状のレンズ303では、複数の溶着面307はそれぞれ異なる平面上に位置される状態となり、したがってホーン202がインナーレンズ305に接触する際にインナーレンズ305に加えられる押圧力が各溶着面307に不均一に加えられ易くなり、結果としてインナーレンズ305がアウターレンズ304上で平面方向に移動して位置ずれが生じ、設計通りの溶着が行われないという問題が生じている。また、このように複数の各溶着面307に対する、ホーン202の接触高さ位置が異なることによって溶着装置200の延長方向に加えられる超音波が各溶着面307に均等に加えられない状況が生じると、各溶着面307において溶着脚306との均一な溶着が行われず、一の箇所では溶着が過度となり、他の箇所では溶着が不十分になる等、高品質の溶着を行うことが難しいという問題もある。
【0008】本発明の目的は、溶着の位置ずれを防止し、かつ複数の溶着箇所での均等な溶着を実現することが可能な車両用灯具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、アウターレンズとインナーレンズとを溶着した構成でかつ回り込み部を有するレンズを備える車両用灯具において、前記インナーレンズに設けられてアウターレンズに溶着される複数の溶着面が同一平面上に位置されていることを特徴とする。すなわち、前記アウターレンズにはレンズ内面から溶着脚が突出形成され、前記インナーレンズには前記溶着脚に対向する位置に溶着面部が凹設されており、前記溶着面部の一部の面が前記溶着脚の先端面が溶着される溶着面として構成される。
【0010】本発明においては、溶着装置の載置台上にアウターレンズとインナーレンズを重ねて載置したときに、インナーレンズの溶着面部の溶着面はほぼ水平方向の同一平面上に位置されることになり、インナーレンズはアウターレンズ上で安定した状態に載置され、アウターレンズに対するインナーレンズの位置ずれが防止される。また、溶着時にインナーレンズ及びアウターレンズに超音波を印加する際に、4箇所の溶着面はそれぞれ溶着装置の同じ平面上の位置において超音波が印加されるため、各溶着面には均等に超音波が印加されることになり、各溶着面での溶着状態が均一なものとなり、高品質の溶着構造を得ることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車の右側のリアコンビネーションランプに適用した実施形態の部分分解斜視図であり、下側からテール&ストップランプT&SL、ターンシグナルランプTSL、バックアップランプBULが上下方向に配置され、かつ各ランプが一体化されたリアコンビネーションランプ100として構成されている。なお、以降の説明において、上下方向、左右方向と称するのはそれぞれ図1の状態にレンズを見たときの鉛直方向、水平方向を意味している。また、図2は図1のAA線に沿う箇所の断面図、図3は図1のBB線に沿う箇所の断面図、図3は図2のC部の拡大断面図である。前記コンビネーションランプ100の灯具ボディ101は前記各ランプで共通の一体化構造をしており、自動車の後部に向けられた正面部102と、自動車の右側面に向けられた回り込み部103とを有する形状とされ、かつ前記灯具ボディ101の内面に設けられた隔壁104によって前記各ランプ領域が区画され、かつ各ランプ領域の前記灯具ボディ101内面はアルミニウムを塗布してリフレクタとして構成されている。また、各ランプ領域の前記灯具ボディ101の背面にはソケット取付穴105が開口され、各ランプの光源となる電球106を支持した電球ソケット107が各ソケット取付穴105に着脱可能に装着されている。さらに、前記灯具ボディ101の正面開口108の周縁に沿ってシール溝109が形成され、前記正面開口108に取着されるレンズ120は、その周縁部において前記シール溝109に充填された図外の封止剤によって封止されている。なお、図2において、110は前記レンズ120における各ランプ領域の境界部での遮光を行うためのシェードである。
【0012】前記レンズ120は、アウターレンズ121とインナーレンズ122とを備えており、前記灯具ボディ101の正面部102から回り込み部103にわたって水平断面形状がほぼL字型となるように形成されている。また、前記アウターレンズ121は赤色レンズ部123と白色レンズ部124とが一体化されたレンズとして構成されており、ここでは赤色樹脂と白色樹脂との二色成形法によって樹脂成形された二色レンズとして構成されている。一方、前記インナーレンズ122はアンバー色のレンズで形成され、前記正面部102から回り込み部103にわたる領域において前記アウターレンズ121の内面に超音波溶着によって一体化されている。なお、前記アウターレンズ121の赤色レンズ部123はテール&ストップランプT&SLのレンズとして、前記白色レンズ部124はテール&ストップランプT&SL、ターンシグナルランプTSL、バックアップランプBULの各レンズとして、さらに前記インナーレンズ122は前記アウターレンズ121の白色レンズ部124の一部領域の内面に対向して溶着されて前記ターンシグナルランプTSLのレンズとしてそれぞれ構成されている。
【0013】そして、前記アウターレンズ121の白色レンズ部124のうち、前記ターンシグナルランプTSLとして区画される領域の周辺4箇所には、前記白色レンズ部124の内面からそれぞれ灯具の背面側に向けて平行方向に突片状の溶着脚126が一体に突出形成されている。また、前記インナーレンズ122は、図5にその外面側から見た斜視図を示すように、前記溶着脚126に対向する周辺4箇所に溶着面部127が形成されており、これらの溶着面部127において前記溶着脚126の先端面に超音波溶着されている。前記インナーレンズ122の溶着面部127は、インナーレンズ122の周縁面に沿って外周方向に向けて周壁128が立設され、前記周壁128の前記した4箇所がインナーレンズ122の内面側、すなわち灯具の背面側に向けて三角形状に凹設されている。ここで、前記4か所の溶着面部127のうち、上下に対向位置される各溶着面部はほぼ同じ形状をしているが、水平方向の左右に配置される各溶着面部ではその三角形状が異なっている。そして、各溶着面部127では、三角形状をした一対のテーパ面129,130のうち、インナーレンズ122の水平方向の各外側に位置されるテーパ面129が溶着面として構成されており、しかも、図3に鎖線で示すように、4つの各溶着面部127の各溶着面129は同一平面上に位置するように構成されている。特に、この実施形態では、前記インナーレンズ122の外面を下側に向けて左右の端部がほぼ同じ高さ位置となるようにほぼ水平に近い状態としたときに、前記各溶着面が水平面となるように形成している。また、前記溶着面部127には、各溶着面部127の側面に相当する前記インナーレンズ122の周縁面にリブ131が突設されており、このリブ131はインナーレンズ122をアウターレンズ121に溶着する際にアウターレンズ121の前記溶着脚126に接触され、あるいは近接される高さにされている。
【0014】このように構成されたアウターレンズ121とインナーレンズ122を溶着する際には、図6(a)に示すように、溶着装置200のワーク載置台201上にアウターレンズ121を外面を下側にして載置し、その上にインナーレンズ122を外面を下にして載置する。このとき、アウターレンズ121及びインナーレンズ122はいずれも左右両端部の高さがほぼ等しい高さとなるような状態でワーク載置台201上に載置する。また、インナーレンズ122は、4箇所の溶着面部127がアウターレンズ121の4つの溶着脚126に対向するように位置決めする。これにより、インナーレンズ122の溶着面部127では、各溶着面129が溶着脚126の先端面に当接された状態となり、また、同時に各溶着面129は水平方向の同一平面上に位置されることになる。また、このとき、各溶着面部127のリブ131は、図4に示したように、溶着脚126の内面に接触され、アウターレンズ121に対するインナーレンズ122の上下方向(図6の紙面と垂直な方向)の位置決めが行われる。そして、前記インナーレンズ122の上から溶着装置200のホーン202を接触させ、かつ押圧しながら両レンズ121,122に超音波を印加することにより、アウターレンズ121の溶着脚126の先端面と、インナーレンズ122の溶着面129とを溶着し、両レンズ121,122を一体化する。
【0015】このとき、前記したように溶着装置200のワーク載置台201上に載置したアウターレンズ121上にインナーレンズ122を重ねて載置したときに、インナーレンズ122の溶着面129はほぼ水平方向に向けられているため、すなわち4つの各溶着面129はほぼ同じ高さに位置されるため、インナーレンズ122はアウターレンズ121上で安定した状態に載置される。これにより、溶着装置200に各レンズを装填する際の作業時はもとより、ホーン202がインナーレンズ122の内面に当接されて超音波が印加される溶着時においても、アウターレンズ121に対するインナーレンズ122の位置ずれ、特にインナーレンズ122の左右方向の位置ずれが防止される。また、前記したように、リブ131によりインナーレンズ122の上下方向の位置ずれが防止される。さらに、前記ホーン202によってインナーレンズ122及びアウターレンズ121に超音波を印加する際に、4箇所の溶着面129はそれぞれ溶着装置200の同じ高さ位置において超音波が印加されるため、各溶着面129には均等に超音波が印加されることになり、各溶着面129での溶着状態が均一なものとなり、高品質の溶着構造を得ることができる。
【0016】なお、前記実施形態ではインナーレンズの4箇所に溶着面部を設けた例を示したが、この数に限られるものではなく、複数個設けられた溶着面部の各溶着面が同一面上に形成されるものであれば、前記した実施形態と同様に、位置ずれが防止され、かつ複数の溶着面において均一に溶着されたレンズを得ることが可能になる。また、前記実施形態では超音波による溶着の例を示したが、振動溶着による溶着の場合にも同様に本発明を適用することが可能である。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、アウターレンズとインナーレンズとを溶着する回り込み部を有する構成のレンズにおいて、インナーレンズに設けられる複数の溶着面が同一平面上に位置する構成としているので、溶着装置の載置台上にアウターレンズとインナーレンズを重ねて載置したときに、インナーレンズの溶着面部の溶着面はほぼ水平方向の同一平面上に位置されることになり、アウターレンズに対するインナーレンズの位置ずれが防止される。また、溶着時にインナーレンズ及びアウターレンズに超音波を印加する際に、4箇所の溶着面はそれぞれ溶着装置の同じ平面上の位置において超音波が印加されるため、各溶着面には均等に超音波が印加されることになり、各溶着面での溶着状態が均一なものとなり、高品質の溶着構造を得ることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成10年11月11日(1998.11.11)
【代理人】 【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
【公開番号】 特開2000−149618(P2000−149618A)
【公開日】 平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願番号】 特願平10−320140