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【発明の名称】 前照灯用レンズ及びその製造方法
【発明者】 【氏名】二見 隆

【氏名】梅山 辰也

【要約】 【課題】従来のプロジェクタ型ヘッドランプ用のレンズにおいては、厚肉であるのでヒケの発生の問題から樹脂化が不可能で、現状以上のランプ全体の軽量化、コストダウンなどができない問題点を生じていた。

【解決手段】本発明により、前照灯用レンズ1は素材に透明樹脂を採用した射出成形とし、射出成形は同一素材により凸面部2の大半を成形する1次成形工程と凸面部2の残部と平面部3とを成形する2次成形工程とで成り、1次成形工程による成形の最大厚みを2次成形工程の最大成形厚みよりも厚く設定すると共に、1次成形工程による半製品Hの冷却後に2次成形工程が行われる前照灯用レンズ1の製造方法としたことで、厚肉の樹脂成形を行う際には避けることができないヒケ4の発生を、比較的に薄肉として行う2次成形工程により補修するとともに2次成形工程により生じるヒケを許容数値内として課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光軸方向での肉厚差が7mm以上であり凸面部と平面部とからなる非球面レンズ部の少なくとも1箇所を有する前照灯用レンズの製造方法において、前記前照灯用レンズは素材に透明樹脂を採用した射出成形とし、前記射出成形は同一素材により前記凸面部の大半を成形する1次成形工程と前記凸面部の残部と平面部とを成形する2次成形工程とで成り、前記1次成形工程による成形の最大厚みを前記2次成形工程の最大成形厚みよりも厚く設定すると共に、前記1次成形工程による半製品の冷却後に前記2次成形工程が行われることを特徴とする前照灯用レンズの製造方法。
【請求項2】 前記1次成形工程と前記2次成形工程とにはそれぞれに金型が用意され、前記2次成形工程は前記1次成形工程の金型で得られた半製品を2次成形工程の金型に装着して行うインサート成形であることを特徴とする請求項1記載の前照灯用レンズの製造方法。
【請求項3】 前記1次成形工程と前記2次成形工程とは移動部が設けられた同一金型で行われ、前記2次成形工程は前記1次成形工程の終了後に前記移動部を動作させることで対応するキャビテイを構成させて行われることを特徴とする請求項1記載の前照灯用レンズの製造方法。
【請求項4】 前記2次成形工程による最大成形厚みが6mm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の前照灯用レンズの製造方法。
【請求項5】 前記1次成形工程が前記平面部側の金型温度を凸面部側の金型温度よりも高い状態で行われることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の前照灯用レンズの製造方法。
【請求項6】 前記2次成形工程が前記平面部側からの加圧が行われる状態で行われることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の前照灯用レンズの製造方法。
【請求項7】 前記請求項1〜請求項6の何れかに記載の前照灯用レンズの製造方法により製造されたことを特徴とする前照灯用レンズ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はヘッドランプ、フォグランプなど照明を目的とする車両用灯具に関するものであり、詳細にはプロジェクタ型と称されている車両用灯具に用いられているレンズに係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の前照灯用レンズ90の例を示すものが図5であり、この前照灯用レンズ90は一方の面を凸レンズ状とする凸面部91とし、他方の面を平面の平面部92とする、いわゆる平凸レンズとして形成されている。また、前記凸面部91は球面収差を補正するために非球面として形成され、ハロゲン電球などである光源の発熱に耐えるようにガラス部材により形成されるものであり、形成手段としては溶融状態のガラス部材を金型内で加圧するなどして形状を整え、研磨して仕上げるものである。
【0003】よって、従来の前照灯用レンズ90においては、形成の素材としてガラス部材が採用されることで、重量が過大であると共に、研磨など手間の係る工程が必要となりコストアップするものと成ってはいたが、ガラス部材の採用はハロゲン電球などからの熱に耐えるためには必要な選択であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら近年にいたり、光源としてメタルハライド放電灯など放電灯が光源として採用される傾向となり、光源からの発熱量が減じるものとなって、例えばメタクリル樹脂など樹脂部材でも耐えられるものとなったが、樹脂部材はガラス部材に比較して成形時の収縮率が格段に大きく、上記した前照灯用レンズ90の形状など厚みのある形状を射出成形などで形成したときには、肉厚の部分にヒケを生じて期待する光学特性が得られず、結果として樹脂部材によるコストダウンに適する環境が整ったにも拘らず対応が不可能である問題点を生じている。
【0005】また、近年においては自動車デザインの他車との個性化を図るため、あるいは、性能の向上を図るために図6に示すように、非球面のシリンドリカルレンズ81の左右端に、中心線で2分割した半分の非球面レンズ82を接続した形状とした、異形レンズ80なども採用される傾向にあり、この場合にガラス部材で形成する時にはますますコストアップが著しくなると共に、形状によっては形成すること自体が不可能となる問題点を生じている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は前記した従来の課題を解決するための具体的な手段として、光軸方向での肉厚差が7mm以上であり凸面部と平面部とからなる非球面レンズ部の少なくとも1箇所を有する前照灯用レンズの製造方法において、前記前照灯用レンズは素材に透明樹脂を採用した射出成形とし、前記射出成形は同一素材により前記凸面部の大半を成形する1次成形工程と前記凸面部の残部と平面部とを成形する2次成形工程とで成り、前記1次成形工程による成形の最大厚みを前記2次成形工程の最大成形厚みよりも厚く設定すると共に、前記1次成形工程による半製品の冷却後に前記2次成形工程が行われることを特徴とする前照灯用レンズの製造方法を提供することで課題を解決するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1および図2は本発明に係る前照灯用レンズ1(図3を参照)の製造方法を工程の順に示すものであり、このときに、前照灯用レンズ1は従来例と同様に一方の面が凸レンズ状とした凸面部2で構成され、他方の面が平面の平面部3で構成されているものとして説明を行う。
【0008】また、図中に符号11で示すものは前記前照灯用レンズ1の主として平面部3側を形成する平面部金型であり、図中に符号12で示すものは前照灯用レンズ1の主として凸面部2側を形成する凸面部金型である。そして、前記凸面部金型12は固定部12aと移動部12bとで構成され、前記移動部12bは固定部12aに対して前照灯用レンズ1の光軸Z方向への移動を可能とする構成とされている。
【0009】上記の両金型11、12で前照灯用レンズ1を形成するにあたっては、図1に示すように前記凸面部金型12の移動部12bを設計寸法である前照灯用レンズ1の厚みよりも適宜寸法だけ平面部金型11側に移動させた状態で射出成形による1次成形工程を行う。尚、このときに注入する樹脂としては例えばメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂など透明度が高く、且つ、耐熱性に優れるものを採用する。
【0010】そして、本発明では、上記の射出成形を行った状態のまま、金型11、12中で樹脂を冷却させ固化させる。前記した冷却が進むと、上記に説明したように注入された樹脂は比較的に大きな収縮率を有するものであるので、金型11、12中に存在している半製品Hには必ず収縮率に対応する量のヒケ4を生じるものとなる。
【0011】本発明では、続く工程として図2に示すように移動部12bを設計寸法である前照灯用レンズ1の最大厚みtが得られる位置まで移動させる。このようにすると、上記移動部12bの移動により前記平面部金型11側には前記ヒケ4を含むキャビテイCを生じるものとなる。そして、このキャビテイCに1次成形工程と同じ樹脂部材で、同じ射出成形による2次成形工程を行うものである。
【0012】ついで、上記の製造方法としたことによる本発明の作用、効果について説明する。尚、理解を容易とするために前照灯用レンズ1の最大厚みtが30mmであり、このときの樹脂部材の収縮率は0.05%であるとして説明を行う。ここで、もしも前照灯用レンズ1を1回の成形のみで形成するとすれば、ヒケ4の寸法は30mm×0.05%で求められる数値0.15mmとなり、この数値では前照灯用レンズ1として期待する性能は到底得られるものとはならない。
【0013】本発明では2次成形工程を行うものとしたことで、この2次成形工程により1次成形工程で生じた上記の数値(例えば0.15mm)に近いヒケ4は充填されると共に、この2次成形工程により生じるヒケは2次成形工程が行われた厚さに依存するものとなる。従って、2次成形工程が行われる厚さ、言い換えれば移動部12bを移動する量を調整することで2次成形工程により生じるヒケの量は自在に制御できるものとなる。
【0014】発明者によるこの発明を成すための検討の結果では、前記前照灯用レンズ1としての性能を保つためにはヒケ4は0.03mm以下であることが必要であることが確認された。この確認事項から逆算すると上記の樹脂部材の収縮率が0.05%とする条件においては2次成形工程を行う厚さは6mm以下とすれば良いものとなる。
【0015】以上の説明で明らかなように、本発明の成形方法でヒケ4の発生のない前照灯用レンズ1を得るためには、1次成形工程が行われた後の時点で、半製品Hには以後に2次成形工程が行われる側にのみヒケ4が発生しているものとしないと精度の確保は期待できないものとなる。
【0016】これに対処するために、本発明では平面部金型11を凸面部金型12に比較して温度を高い状態として1次成形工程を行うことで、前照灯用レンズ1の凸面部2側が先に冷却されて固化し、ヒケ4は固化が遅れる平面部3側に集中して発生するようにしている。尚、ヒケ4の発生は重力による影響も受けるものであるので、凸面部2側が下方となるように金型の設置を行うなども有効な手段である。
【0017】このようにすることで、図3に示すような厚肉の前照灯用レンズ1が樹脂部材においても製造が可能となり、そして、この樹脂部材による前照灯用レンズ1を採用し、図4に示すように反射鏡21、光源22、遮光板23などと組合わせることでプロジェクタ型のヘッドランプ20の生産が可能となる。従って、ヘッドランプ20の軽量化が行えるとともに、樹脂部材の射出成形品は表面が美麗であるので研磨工程など仕上げの工程も不要となり工数低減によるコストダウンも可能となるものである。
【0018】尚、図2および図3には、理解を容易とするために1次成形工程が行われた部位と2次成形工程が行われた位置との接合線Jが破線で示してあるが、実際の製品では1次成形工程と2次成形工程が同じ樹脂部材で行われるので、視覚上でも光学的にも図示のような接合線Jが生じることはないものである。
【0019】また、図3は正面形状が円形で且つ1個の凸レンズ状である前照灯用レンズ1の例で示したが、例えば正面形状が円形以外の形状、或は、複数の凸レンズが連接された形状など、いかなる形状においても実施が可能であり、本発明は成形が行われる形状を限定するものではない。
【0020】
【発明の効果】以上に説明したように本発明により、前照灯用レンズは素材に透明樹脂を採用した射出成形とし、前記射出成形は同一素材により前記凸面部の大半を成形する1次成形工程と前記凸面部の残部と平面部とを成形する2次成形工程とで成り、前記1次成形工程による成形の最大厚みを前記2次成形工程の最大成形厚みよりも厚く設定すると共に、前記1次成形工程による半製品の冷却後に前記2次成形工程が行われる前照灯用レンズの製造方法としたことで、厚肉の樹脂成形を行う際には避けることができないヒケの発生を、比較的に薄肉として行う2次成形工程により解決し、従来は不可能とされたこの種プロジェクタ型前照灯用レンズの樹脂化を可能とし、軽量化とコストダウンとに極めて優れた効果を奏するものである。
【出願人】 【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
【出願日】 平成10年10月2日(1998.10.2)
【代理人】 【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
【公開番号】 特開2000−113701(P2000−113701A)
【公開日】 平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願番号】 特願平10−281355