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【発明の名称】 天然ガスパイプラインのガス輸送方法
【発明者】 【氏名】牧野 寛之

【要約】 【課題】鋼管材料の靭性向上をはかるための材料変更を伴わず、クラックアレスタ等を設けることもなく、天然ガスパイプラインの高速延性破壊を防止するガス輸送方法を提供する。

【解決手段】輸送前のメタン主体の天然ガスを−50℃〜0℃に冷却し、凝縮する成分を除去して高沸点成分の含有比を減じて輸送する。−30℃以下に冷却するとさらによい。または、高沸点成分(モル%)の荷重和を規定して輸送する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 輸送前のメタンを主成分とした天然ガスを−50℃〜0℃に冷却し、凝縮する成分を除去し、高沸点成分の含有比を減じて輸送することを特徴とする天然ガスパイプラインのガス輸送方法。
【請求項2】 冷却温度を−30℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載の天然ガスパイプラインのガス輸送方法。
【請求項3】 輸送前のメタンを主成分とした天然ガスのメタン以外の成分のモル%で表した含有比を下記の条件として輸送する事を特徴とする天然ガスパイプラインのガス輸送方法。
(エタン%)/27+(プロパン%)/7.0+(イソブタン%)/2.5+(ノルマルブタン%)/1.6+(イソペンタン%)/0.56+(ノルマルエンタン%)/0.39+(ヘキサン%)/0.091+(ヘプタン%)/0.020+(オクタン%)/0.0045+(H2 S%)/12+(CO2 %)/34≦1.0
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然ガス輸送用パイプラインにおける延性破壊の高速の伝播を抑制し、大規模なパイプライン破壊を防止するためのガス輸送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】メタンを主成分とした天然ガス輸送用パイプラインは輸送効率向上のため、輸送圧力の高圧化が進められている。このため、使用する鋼管の高強度化への要求が高まっている。以下の説明はメタンを主成分とした天然ガスを単に天然ガスという。
【0003】天然ガス輸送用パイプラインにおいては、管軸方向に高速に伝播する大規模な破壊、すなわち高速延性破壊の生じることが知られている。
【0004】図1はパイプラインの高速延性破壊の状況を示す模式図である。同図において、Vmは破壊時における管内減圧波の進行速度(減圧速度)、Vcは延性き裂の伝播速度を表す。VmとVcとが近い場合、同図のようなパイプライン特有の破壊が発生し、時には破壊が数kmにわたって伝播することがある。このため、高強度化とともに、破壊安全性確保の要求も高まっている。
【0005】破壊安全性を高めるには延性き裂の伝播を抑制して大規模な破壊を防止することが重要でこの対応として、以下の2つの方法がある。
【0006】(1) 鋼管の材質を管理し、破壊時における吸収エネルギーの高い高靭性材料を使用して、破壊安全性を確保する方法(例えば特公昭62−15609号公報)。
【0007】(2) クラックアレスタを要所に配置して構造的にき裂の伝播を阻止する方法(例えば特公昭51−36895号公報、特公平2−125190号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鋼管の材質を管理する方法は靭性を高めるため高価なNbやV等の合金成分を添加するための材料コストの上昇や、制御圧延等による材質対策の場合は、能率低下や製造コストの上昇をもたらす。
【0009】クラックアレスタを設ける方法も、破壊の範囲を局所に止めようとすると多数のクラックアレスタを配置することになり、やはりコスト上昇となる。
【0010】本発明の課題はパイプラインの高速延性破壊の伝播を抑制し、大規模な破壊を防止する事により、パイプラインの破壊安全性を向上させるガス輸送方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者はパイプラインの高速延性破壊はパイプライン自体の性能と、輸送対象である天然ガス自体の性質とに依存するものと考え、それぞれの相互関係について検討した。
【0012】図2は、天然ガス輸送用パイプラインの高速延性破壊におけるき裂先端圧力Pとき裂伝播速度Vcとの関係(材料抵抗曲線)および圧力Pと管内減圧波の進行速度Vmとの関係(ガス減圧曲線)とを示すグラフである。同図に示すガス減圧曲線は破壊時に気相と液相の2相が現われる例を示している。このガス減圧曲線上に現れる「棚」状の部分は、破壊時における急激な断熱膨張による温度低下によってガスが2相となり、ガスの圧力低下を妨げる状態を示している。
【0013】パイプラインにおける高速延性破壊の危険性の程度は、材料抵抗曲線とガス減圧曲線との2つの曲線の関係より評価できる。
【0014】図3は材料抵抗曲線とガス減圧曲線の相互関係の差異を説明するグラフで、同図(a) は両曲線が離れている場合、同図(b) は両曲線が交差している場合である。両曲線の関係が図3(a) のような場合、破壊過程の圧力の全範囲において、き裂伝播速度Vcよりも減圧速度Vmの方が常に大きいため、き裂先端での圧力は徐々に低下し、やがてき裂伝播が停止する。図3(b) のような場合には、ある圧力でき裂伝播速度と減圧速度とがつり合う(Vc=Vm)状態が存在し、破壊過程でき裂先端の圧力が低下しないため、き裂が伝播しつづける事となる。
【0015】両曲線の関係が図3(a) のような場合、材料抵抗曲線がガス減圧曲線より上方にあって、両者の隔たりが大きい程、発生したき裂の伝播が速やかに停止しやすく、破壊に対して安全であるといえる。
【0016】次に、両曲線が図3(b) のように交錯するのを回避する方策について説明する。図4は材料抵抗曲線とガス減圧曲線が交差しない方策を説明するグラフで、同図(a) は材料の靭性を変化させる場合、同図(b) はクラックアレスタを設置する場合、同図(c) はガスの性質を変化させる場合である。
【0017】同図(a) に示すように、材料の靭性値を高めると材料抵抗曲線は勾配が急になり、ガス減圧曲線に対して上方に移動するように変化することが実験から知られており、鋼管の高靭性化によって破壊安全性が向上することが説明できる。
【0018】同図(b) はクラックアレスタを使用した場合で、材料抵抗曲線を部分的に左方に移動させる事によって、ガス減圧曲線から引き離し、破壊安全性を向上できることを意味している。
【0019】同図(a) および(b) に示すように、何らかの方法で材料抵抗曲線を変化させてガス減圧曲線との隔たりを大きくすれば、高速延性破壊に対する危険性を減少させることが可能である。すなわち、従来はき裂伝播時にいかに多くのエネルギーを吸収させるかの観点のみから、使用鋼管の高靭性化やクラックアレスタの使用が検討されてきた。これは当該分野における研究者が、ガス成分差違がおよぼす影響についての認識が低かったことによる。
【0020】発明者は、図4(c) のように、ガスの成分調整によってガス減圧曲線を下方に変化させ、材料抵抗曲線との隔たりを大きくすれば、破壊安全性の向上が可能であると着想した。
【0021】図5はガスの相平衡計算結果の一例を示す相状態図であり、同図(a) 〜(c) はガス組成が図中記載のように変化した場合である。
【0022】同図に示すように、天然ガスのような多成分系ガスは熱力学の知識により相平衡計算が可能である。ガス成分が変化すると相状態図の2相域の大きさが変化することがわかる。
【0023】なお、相平衡計算は文献(例えば、「気体・液体の物性値推算ハンドブック」、マグロウヒルブック株式会社)に紹介されているように、熱力学分野で用いられているBWRS状態方程式(Benedict-Webb-Rubin's state equation modified by Starling )に基づいて計算できる。
【0024】図6はパイプラインの操業圧力および操業温度で破壊が開始したときの管内ガスの状態変化を示す相状態図で、同図(a) 〜(c) はガス組成が図中記載のように変化した場合である。同図(a) 〜(c) に示すように、管内ガスの状態は破壊開始点から等エントロピー曲線に沿って左下方に変化するとして近似できる。この等エントロピー曲線が、ガス成分に特有の2相域の境界曲線と交わる点での圧力が、図2〜4のガス減圧曲線に現れる「棚」状の部分の圧力に相当する。すなわち、ガス成分の違いが、図2におけるガス減圧曲線の棚部分の圧力レベルを大きく変化させることを意味している。
【0025】図6(a) 〜(c) に示すように、メタンを主成分とする天然ガスに対して、補助成分ガスのモル濃度が同じであっても、その分子量が大きいほど2相域曲線の領域は拡大し、等エントロピー曲線との交点の圧力は高くなる。前述のように、「棚」部の圧力が高いほど、ガス減圧曲線は材料抵抗曲線に接近し、ついには交差し、破壊安全性が低下するので、分子量の大きいガス成分、すなわち、一般の天然ガス成分において高沸点成分の含有比を低下させることがパイプライン破壊安全性の向上対策となる。
【0026】天然ガス成分を調整する方法としては、輸送前のガスを適当な圧力、冷却温度下において凝縮(液化)する成分を取り除く方法が有効である。
【0027】図7はガス成分の調整方法を説明する相状態図で、同図(a) は調整前のガスの場合、同図(b) は冷却時の圧力を5MPa、冷却温度を−10℃の条件下で冷却した場合、同図(c) は同様に5MPa、−30℃の場合、同図(d) は5MPa、−40℃の場合である(以下、「5MPa/−40℃」のように略記する)。同図を用いて以下にガス成分調整の計算例を示す(以下、ガス成分%はモル%で表す)。
【0028】成分調整前のガス成分を、メタン80%、エタン10%、プロパン6%、イソブタン4%、と仮定した場合、相平衡計算結果は図7(a) に示す2相域曲線となる。
【0029】今、このガスを5MPa/−10℃の条件で冷却したとすると、2相域内における相平衡計算により、メタン83.5%、エタン9.5%、プロパン4.6%、イソブタン2.4%、の組成を有する気相と、メタン33.5%、エタン17.0%、プロパン23.9%、イソブタン25.6%、の組成を有する液相とに分離する。すなわち、冷却前に比較して気相のメタン濃度が高くなり、エタン、プロパン、イソブタンの濃度は低下している。この方法による調整後のガス成分すなわち上記気相の組成を有するガス成分は図7(b) に示す2相域曲線となる。
【0030】同様に、輸送前の上記ガス成分に対し、5MPa/−30℃とした場合には、ガス成分は、メタン88.4%、エタン7.9%、プロパン2.7%、イソブタン1.0%、となり、図7(c) に示す2相域曲線となりる。
【0031】さらに、5MPa/−40℃とした場合には、ガス成分は、メタン90.8%、エタン6.7%、プロパン1.9%、イソブタン0.6%、となり、図7(d)に示す2相域曲線となる。
【0032】図7(a) 〜(d) に示すように、輸送前のガス成分から凝縮(液化、固化)しやすい成分、すなわち高沸点成分を優先的に取り除けば、2相域を縮小させるため、パイプラインの破壊開始点からの等エントロピーラインが2相域に突入する圧力、すなわちガス減圧曲線における棚部分の圧力を引き下げることができる。
【0033】ガス成分の調整方法にはこの他、吸着法があるが、装置が大型になることや効率の面ではあまり有効でない。
【0034】以上のべたように、天然ガスを冷却することによって、高沸点成分比を下げればパイプラインの安全性が高まることがわかった天然ガスの噴出成分がもともと高沸点成分含有量が少ないものであれば、比較的高い温度(例えば、−10〜0℃)の冷却でも効果がある。しかし、高沸点成分含有量が多い場合、どの程度の成分とすればよいか、あるいはどの程度冷却するのがよいかは冷却に要するエネルギコストも考慮して判断すべきである。本発明者はさらにこれらの限界条件を検討した。
【0035】その結果、天然ガス中のメタン以外の高沸点成分が図5等に示した二相域の変化に及ぼす影響を明らかにし、冷却温度が二相域の変化に及ぼす影響を基づいて、冷却温度の限界値を明らかにした。
【0036】本発明は上記の知見に基づいて完成したものであり、その要旨は以下の(1) 〜(3) にある。
【0037】(1) 輸送前のメタンを主成分とした天然ガスを−50℃〜0℃に冷却し、凝縮する成分を除去し、高沸点成分の含有比を減じて輸送することを特徴とする天然ガスパイプラインのガス輸送方法。
【0038】(2) 冷却温度を−30℃以下とすることを特徴とする前記(1) 項に記載の天然ガスパイプラインのガス輸送方法。
【0039】(3) 輸送前のメタンを主成分とした天然ガスのメタン以外の成分のモル%で表した含有比を下記の条件として輸送する事を特徴とする天然ガスパイプラインのガス輸送方法。
【0040】(エタン%)/27+(プロパン%)/7.0+(イソブタン%)/2.5+(ノルマルブタン%)/1.6+(イソペンタン%)/0.56+(ノルマルエンタン%)/0.39+(ヘキサン%)/0.091+(ヘプタン%)/0.020+(オクタン%)/0.0045+(H2 S%)/12+(CO2 %)/34≦1.0【0041】
【発明の実施の形態】本発明に係る高速延性破壊防止を目的としたガス成分の調整では、天然ガスを冷却しガス成分のうち高沸点成分の含有比を減じる。冷却温度は−50〜0℃とする。
【0042】生産井から噴出した高温の天然ガスに対して、水分を分離する等の目的で、常温ないしそれより若干高い温度まで冷却して気相と液相とに分離する処理は現在でも行われている。しかし、この処理のみでは本発明の狙いとする破壊安全性確保のためのガス成分調整には至らないし、本発明のガス成分調整における冷却は上記の常温またはそれ以上での処理とは明確に区別されるものである。従って、冷却温度の上限は0℃とする。
【0043】冷却温度の下限は−50℃とする。パイプラインの破壊安全性を向上させるには極力高沸点成分を除去するのが理想的であるが、経済性の観点からは有効ではない。また、−50℃より低温にしても、破壊安全性の向上の点からは効果は飽和する。
【0044】輸送前の天然ガスから高沸点成分をどの程度除去するか、すなわち、どの程度まで冷却するかは、ラインパイプの設計強度(特に靭性)、環境温度(パイプラインの敷設地域、季節)、輸送圧力等に依存する。
【0045】ここで、輸送中の自然冷却により到達する最低輸送温度(環境温度)と、破壊過程の断熱変化における温度低下幅(約30℃以上)を考慮した場合、好ましくは二相領域の右方への張り出し(図5参照)を−30℃以下に抑える事である。そのためには、−30℃以下への冷却が必要である。最適圧力下において−30℃に冷却した場合、ガス成分調整後の二相領域の張り出しをほぼ正確に−30℃とする事ができるが、一般的には−30℃以下への冷却が必要である。
【0046】次に、ガス成分と二相領域の張り出し(高速延性破壊の危険度でもある)との関係について説明する。メタンを主成分とする天然ガスにおいて考慮すべき高沸点成分は以下のガスである。
【0047】エタン:C2 6 、プロパン:C3 8 、イソブタン:(CH3 3 CH、ノルマルブタン:C4 10、イソペンタン:(CH3 2 CHC2 5 、ノルマルペンタン:C5 12、ヘキサン:C6 14、ヘプタン:C7 16、オクタン:C8 18、硫化水素:H2 S、炭酸ガス:CO2 である。
【0048】メタンを主成分とし上記いずれかの成分を補助成分とする2成分系において、図5と同様の相平衡計算の結果、二相領域の張り出しを−30℃以下に抑えるための条件は、以下の通りである。
【0049】エタン:27モル%以下、プロパン:7.0モル%以下、イソブタン:2.5モル%以下、ノルマルブタン:1.6モル%以下、イソペンタン:0.56モル%以下、ノルマルペンタン:0.39モル%以下、ヘキサン:0.091モル%以下、ヘプタン:0.020モル%以下、オクタン:0.0045モル%以下、H2 S:12モル%以下,CO2 :34モル%以下、である。
【0050】一方、天然ガスに不純物として含まれる成分である窒素(N2 )は、メタンより低沸点成分であり、パイプラインの破壊安全性の検討に際しては考慮する必要はない。
【0051】ここで、線形加算則が成り立つと仮定すれば、上記高沸点成分が複数同時に存在する多成分系ガスの場合、(エタン%)/27+(プロパン%)/7.0+(イソブタン%)/2.5+(ノルマルブタン%)/1.6+(イソペンタン%)/0.56+(ノルマルペンタン%)/0.39+(ヘキサン%)/0.091+(ヘプタン%)/0.020+(オクタン%)/0.0045+(H2 S%)/12+(CO2 %)/34≦1.0、の条件を満たすように高沸点成分の含有比を低下させれば、二相領域の張り出しを−30℃以下に抑えることができ、パイプラインの破壊安全性の向上対策となることが予想される。
【0052】以下に上記線形加算の妥当性を示す。表1に示す4種類の異なる組成を有する天然ガス成分ガス(a) 〜ガス(d) における相平衡計算を行った。また、表1中には、平均分子量並びに下記評価式で与えられる下記の係数Mの値を共に示す。
【0053】M=(エタン%)/27+(プロパン%)/7.0+(イソブタン%)/2.5+(ノルマルブタン%)/1.6+(イソペンタン%)/0.56+(ノルマルペンタン%)/0.39+(ヘキサン%)/0.091+(ヘプタン%)/0.020+(オクタン%)/0.0045+(H2 S%)/12+(CO2 %)/34【0054】
【表1】

【0055】図8は表1の各種ガス成分の相平衡計算結果を示す相状態図である。同図に示すように、高速延性破壊に対する危険性は二相領域の大きさで表され、ガス(a) 、(b) 、(c) 、(d) の順に二相領域が増していくが、この順は表1に示すメタンのモル%の大きい順でもなく、平均分子量の小さい順とも一致しない。
【0056】しかしながら、上記評価式で表される係数Mの値の小さい順に一致している。さらに、M≦1.0であるガス(a) 、(b) については二相領域の張り出しが−30℃以下であるのに対し、M>1.0であるガス(c) 、(d) については、二相領域の張り出しが−30℃を超えている。これにより、上記で仮定した線形加算則が妥当なものであり、上記評価式の信頼性が確認できた。
【0057】本発明の冷却処理は輸送前に行うものとする。天然ガスは輸送前に気体単相にしてパイプラインに導入されるが、輸送中のパイプライン内で高沸点成分が気液2相に相変化することがあって、詰まりを防止するため、この液相を定期的に除去したり、操業中に抽出除去が行われることがある。これら輸送中またはパイプライン途中で自然冷却によって凝縮した液相を除去したり、高沸点成分の含有比を低減することは本発明の範囲には含まれない。
【0058】本発明においては冷却処理の際の圧力は特に規定しない。すなわち、ガス成分は生産井毎に異なり、最適な処理圧力はガス成分に依存するからである。また、冷却処理前のガス圧力および冷却処理後の圧力を有効に利用する観点からも好適な圧力がある。
【0059】ガス成分から最適な処理圧力を求めるには、上述した図7に示す方法で処理圧力を幾つか仮定し、相平衡計算を行いその中から最適な処理圧力を選べばよい。通常のメタンを主体とし、エタン〜ブタンまでの成分で大部分が構成されている天然ガスでは処理圧力は3〜10MPaとなる。
【0060】
【実施例】図9はバースト試験に供した試験体の概要図で、同図(a) は破壊前、同図(b)は 破壊後を表す。
【0061】同図(a) に示すように、外径318.5mm、肉厚8.0mm、長さ10mの鋼管1(JIS規格:STK400)の中央に長さ200mm、深さ2.0mmのノッチ2の加工を施し、鋼管の両端に鏡板3を設けたものを試験体とした。この試験体にガスを注入加圧し、全ガスバースト試験を実施した。注入するガス成分は、(a) 純メタン、(b) メタン90%+エタン10%、(c) メタン90%+プロパン10%、と変えて3試験体について試験した。試験結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】試験体にガスを加圧していくと、周方向応力が増大しついには鋼管1の破壊に至り、ノッチ底より発生したき裂4は管軸方向に伝播した後停止した。表2中のき裂伝播長さは、図9(b) に示す鋼管破壊後に計測した管軸方向のき裂長さである。
【0064】ここで試験体No.1とNo.2については、き裂は試験体の全長には至っておらず、破壊時における管内圧力の低下により発生したき裂の伝播が停止したと判断されるが、試験体No.3ではき裂が試験体の全長近くまで及んでおり、その伝播停止は管端の影響であると思われる。従って、実際のパイプラインにおける図3(b) の材料抵抗曲線とガス減圧曲線が交差するケースと考えられ、き裂伝播速度と減圧速度とがつり合い、大規模破壊につながるケースに相当すると判断される。
【0065】以上の結果から、ガス成分の差異が高速延性破壊のき裂伝播に与える影響が大きいことがわかり、ガス成分を調整する事で高速延性破壊による大規模なパイプライン破壊を防止できることがわかった。
【0066】
【発明の効果】本発明により、パイプライン材料の靭性を向上させるため合金元素を多量に添加、または作業能率を低下させる制御圧延をすることもなく、パイプライン中にクラックアレスターを多数用いることなく、高速延性破壊によるパイプラインの破壊安全性を向上させることが可能であるため、操業圧力上昇の要求に応えることができる。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成11年6月24日(1999.6.24)
【代理人】 【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
【公開番号】 特開2000−266300(P2000−266300A)
【公開日】 平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願番号】 特願平11−178482