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【発明の名称】 圧力容器及びその製造方法
【発明者】 【氏名】下島 伸吾

【要約】 【課題】割れや隙間の発生を防止し、気密シールの信頼性を向上させるようにする。

【解決手段】本発明の圧力容器1は、繊維14を熱硬化性樹脂で含浸固定してなるFRP殻2を備えた圧力容器であって、FRP殻2が、熱溶融性のコア6の外周に該コア6より高い耐熱温度の繊維14を巻き付け、コア6の溶融温度より低温で熱硬化する熱硬化性樹脂で前記巻き付けた繊維14を含浸固定してなるものである。コア6は、前記含浸固定後に溶融除去される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊維を熱硬化性樹脂で含浸固定してなるFRP殻を備えた圧力容器であって、前記FRP殻が、熱溶融性のコアの外周に該コアより高い耐熱温度の前記繊維を巻き付け、前記コアの溶融温度より低温で熱硬化する前記熱硬化性樹脂で前記巻き付けた繊維を含浸固定してなるものであり、前記コアは、前記含浸固定後に溶融除去又は溶融減厚されるものであることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】 熱溶融性のコアの外周に該コアより高い耐熱温度の繊維を巻き付ける工程と、前記コアの溶融温度より低温で熱硬化する樹脂で前記巻き付けた繊維を含浸固定してFRP殻を形成する工程と、前記コアを溶融除去又は溶融減厚する工程とを含むことを特徴とする圧力容器の製造方法。
【請求項3】 前記FRP殻の内側に気密保持層を形成する工程を含む請求項2記載の圧力容器の製造方法。
【請求項4】 前記繊維を巻き付ける工程の前又は途中に、前記繊維が外周面に巻き付けられるフランジ部を備えた口金を前記コアの端部に取り付ける工程を含む請求項2又は3記載の圧力容器の製造方法。
【請求項5】 前記口金は、その外壁に加硫接着されたゴム皮膜を備えた請求項4記載の圧力容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CNG(圧縮天然ガス)等の各種圧縮ガス、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の各種液化ガス、その他の各種加圧物質を充填するための圧力容器及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、CNG用の圧力容器50として、図13に示すように、CNGを透過させないポリエチレン製のライナー51と、所定の耐圧規格を満たすFRP(繊維強化樹脂)製の補強層52とよりなる殻と、配管接続用の口金53とからなるものが知られている。この圧力容器50によれば、ライナー51が合成樹脂で形成されているため、自動車の燃料タンク等として用いる場合に、車両重量を軽量化できる利点がある。
【0003】圧力容器50の製造にあたっては、まず、口金53を金型にセットし、回転成形法でライナー51をポリエチレンにより成形する。そして、ライナー51の外周に、繊維を巻き付けるとともに熱硬化性樹脂で含浸固定してFRP(繊維強化樹脂)製の補強層52を形成すると、圧力容器50が完成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の圧力容器50によると、ライナー51とFRP製の補強層52との熱膨張率差によって殻に層間隙間54が発生しやすい。この層間隙間54が生じていると、ガス充填時の繰り返し応力に対し、ライナー51の伸びが追従せず、応力が集中する口金53の付近等に破壊が生じるおそれがある。特に低温時は、応力に対するライナー51の追従性が低下するため、図14に示すように口金53の付近にライナー51の割れ55等の破壊が生じやすくなる。
【0005】また、ポリエチレン製のライナー51と金属製の口金53とが一体成形されているため、ライナー51の口金53付近が成形残留応力で割れたり、ライナー51の口金53に対する締付応力が緩和したりしてガス漏れが生ずるおそれがある。
【0006】本発明の目的は、割れや隙間の発生を防止し、気密シールの信頼性を向上させることができる圧力容器及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の圧力容器は、繊維を熱硬化性樹脂で含浸固定してなるFRP殻を備えた圧力容器であって、前記FRP殻が、熱溶融性のコアの外周に該コアより高い耐熱温度の前記繊維を巻き付け、前記コアの溶融温度より低温で熱硬化する前記熱硬化性樹脂で前記巻き付けた繊維を含浸固定してなるものであり、前記コアは、前記含浸固定後に溶融除去又は溶融減厚されるものであることを特徴としている。
【0008】また、本発明の圧力容器の製造方法は、熱溶融性のコアの外周に該コアより高い耐熱温度の繊維を巻き付ける工程と、前記コアの溶融温度より低温で熱硬化する熱硬化性樹脂で前記巻き付けた繊維を含浸固定してFRP殻を形成する工程と、前記コアを溶融除去又は溶融減厚する工程とを含むことを特徴としている。
【0009】前記コアの材料としては、例えば、ワックス、低融点合金、ポリエチレン又はポリプロピレンの独立高発泡体等を使用できる。前記繊維の材料としては、ガラス、カーボン、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル等を例示できる。また、同繊維の含浸固定用の熱硬化性樹脂としては、エポキシ、ビニルエステル、不飽和ポリエステル等を例示できる。
【0010】前記繊維を含浸固定する工程は、特に限定されないが、真空中又は減圧下で行うことが好ましい。こうすると、熱硬化性樹脂の中にある空気が脱泡され、FRP殻が緻密になるからである。
【0011】前記圧力容器の製造方法は、前記FRP殻の内側に気密保持層を形成する工程を含んでいることが好ましい。この気密保持層を形成する方法については、特に限定されないが、ガス不透過材料(例えば、ガス透過性の少ないエポキシ樹脂、セラミック、エチレンビニルアルコール、塩化ビニリデン等)を使用した次の方法を例示できる。
(1)ガス不透過材料を前記コアの表面にあらかじめ塗布しておき、前記繊維を含浸固定する工程において、前記FRP殻の内面に転写することにより気密保持層を形成する方法。なお、前記繊維を含浸固定する工程を真空中又は減圧下で行うときは、(a)ガス不透過材料の中にある空気が脱泡され、気密保持層が緻密になる、(b)FRP殻と気密保持層との密着性が向上するという効果を得ることができる。
(2)コアを溶融させた後で、前記ガス不透過材料を前記FRP殻の内面にコーティング又はライニングすることにより気密保持層を形成する方法。
【0012】また、前記圧力容器の製造方法は、前記繊維を巻き付ける工程の前又は途中に、前記繊維が外周面に巻き付けられるフランジ部を備えた口金を前記コアの端部に取り付ける工程を含むようにすることができる。前記口金は、その外壁に加硫接着されたゴム皮膜を備えた態様を例示できる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明をCNG用の圧力容器に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す圧力容器1は、繊維14を熱硬化性樹脂で含浸固定してなるFRP殻2と、FRP殻2の内面に形成された気密保持層3と、FRP殻2の両端部に設けられた口金4,5とから構成されている。
【0014】FRP殻2は、熱溶融性のコア6の外周に該コア6より高い耐熱温度の繊維14を巻き付け、コア6の溶融温度より低温で熱硬化する熱硬化性樹脂で繊維14を含浸固定してなるものである。繊維14は、熱硬化性樹脂が含浸されたもので、コア6の外周に内外2層に巻き付けられている。コア6は、熱溶融性材料を用いて図2に示すように一体成形されるか、或いは、図3に示すように分割成形されたもので、繊維14を含浸固定後に溶融除去されている。
【0015】口金4,5はボス部4a,5aとフランジ部4b,5bとを備え、アルミニウム等の金属材料で形成されている。図において、右側の口金4のボス部4aは配管用ジョイント(図示略)に接続され、左側の口金5のボス部5aは栓部材7によって密閉されている。左右の口金4,5のフランジ部4b,5bはFRP殻2の内層部2aと外層部2bとの間に挟み込まれるように設けられている。ボス部4a,5a及びフランジ部4b,5bはNBR等の耐熱性及び接着性の優れたゴム皮膜8で覆われている。そして、FRP殻2の加熱硬化時に、繊維14中に含浸された熱硬化性樹脂によりフランジ部4b,5bのゴム皮膜8がFRP殻2に固定されている(図1の太線9は固定部を示す)。
【0016】気密保持層3は、ガス不透過材料をコア6の外周にあらかじめ塗布しておき、繊維14を含浸固定するときに、FRP殻の内面に転写することにより形成されている。
【0017】次に、以上のように構成された圧力容器1の製造方法を工程順に説明する。
【0018】[コア成形工程] 図2に示すように、金型11と穴明きシャフト12とを用い、コア6を熱溶融性材料でシャフト12上に一体成形する。或いは、図3に示すように、コア6を2分割して成形した後にシャフト12上で合体させる。次いで、図4に示すように、ガス不透過材料13をコア6の外周面に塗布する。
【0019】[繊維巻き付け工程及び口金取り付け工程] 図5に示すように、繊維14をコア6の外周に巻き付け、内層部2aを形成する。次いで、繊維14の巻き付けを一旦止め、図6に示すように、左右の口金4(左側の口金5は図示略)をシャフト12に挿通し、フランジ部4bを内層部2aの端面に当て付ける。次いで、図7に示すように、繊維14の巻き付けを再開し、繊維14を内層部2a及びフランジ部4bの外周に巻き付け、外層部2bを形成する。こうして、内層部2aと外層部2bとの間に挟み込まれるようにフランジ部4bを設ける。
【0020】[FRP殻形成工程] 図8に示すように、巻き付けた繊維14を約80〜90℃の温度で2〜3時間程度加熱することにより、繊維14に含浸された熱硬化性樹脂で巻き付けた繊維14を含浸固定することによりFRP殻2を形成する。このとき、コア6の外周面に塗布されたガス不透過材料13がFRP殻2に転写され、FRP殻2の内面に気密保持層3が形成される。また、口金4の周囲において、FRP殻2に含浸された熱硬化性樹脂によりフランジ部4bのゴム皮膜8がFRP殻2に固定される。なお、予めゴム皮膜8の表面を粗面加工しておくと、FRP殻2により強く固定されるようになる。
【0021】本工程は、特に限定されないが、真空中又は減圧下で行うことが好ましい。こうすると、次の効果が得られる。
(1)熱硬化性樹脂やガス不透過材料13の中にある空気が脱泡され、FRP殻2や気密保持層3が緻密になる。
(2)FRP殻2と気密保持層3との密着性が向上する。
【0022】[コア溶融除去又は溶融減厚工程] 図9に示すように、加熱温度を約120〜150℃まで高め、コア6を溶融させる。ここで、コア6の材料にワックスや低融点合金等を用いた場合は、図10に示すように、液状の溶融物15をFRP殻2からシャフト12の穴12aを通して外部に排出することにより溶融除去する。その後、シャフト12を引き抜き、FRP殻2を冷却すれば、図1に示すような圧力容器1が完成する。
【0023】なお、コア6の材料としてポリエチレンやポリプロピレン等の高発泡体を用いた場合は加熱温度を約140〜160℃まで高めることにより、溶融減厚して体積を極少化する。軟化した溶融物15は、図11に示すように、気密保持層3に付着させるか、シャフト12と同時に取り出す。
【0024】このように本実施形態によれば、圧力容器1の殻が実質的にFRP殻2のみで構成されており、従来とは異なり、ポリエチレン製のライナー51が無いので、FRPとポリエチレンとの熱膨張率差によって殻の割れ等の原因となる層間隙間が発生するという問題は一切生じない。
【0025】また、FRP殻2の内面は気密保持層3によって被覆されているので、FRP殻2におけるガス漏れの心配もない。
【0026】また、前記口金の外壁と前記ゴム皮膜とは加硫接着されており、前記ゴム皮膜とFRP殻2とは熱硬化性樹脂で固定されているので、FRP殻2と口金4,5との接合部の気密シールの信頼性を向上することができる。しかも、FRP殻2の内層部2aと外層部2bとの間に口金4,5のフランジ部4b、5bが装着されることにより、口金4,5のフランジ部4b、5bとFRP殻2とが広い面積で接合しているので、この接合部がより強固に固定されるとともに、この接合部の気密シールの信頼性をより向上することができる。
【0027】なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【0028】(1)繊維巻き付け工程の前に、口金取り付け工程を行うことにより、図12に示すように内層部2aを省くこと。
【0029】(2)コア溶融除去又は溶融減厚工程の後で、ガス不透過材料をFRP殻2の内面にコーティング又はライニングすることにより気密保持層を形成すること。
【0030】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の圧力容器及びその製造方法によれば、割れや隙間の発生を防止し、気密シールの信頼性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
【出願日】 平成11年3月18日(1999.3.18)
【代理人】 【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
【公開番号】 特開2000−266289(P2000−266289A)
【公開日】 平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願番号】 特願平11−73586