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【発明の名称】 ゴムホース
【発明者】 【氏名】川村 哲司

【氏名】高橋 博之

【氏名】石咲 友則

【氏名】川幡 信之

【要約】 【課題】自動車の油圧式パワーステアリングに用いられるようなゴムホースは、熱劣化によって圧縮永久歪みが発生すると、ゴムホースとパイプとの間の面圧が減少し、シール性が低下するおそれがあった。

【解決手段】内面ゴム層1の肉厚t1、外面ゴム層2の肉厚t2を、内面ゴム層1の内径をdとして、0.36d≦(t1+t2)かつ0.55(t1+t2)≦t1とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、繊維を編組した補強層を介在させてなるゴムホースにおいて、前記内面ゴム層の内径をd、内面ゴム層の肉厚をt1、外面ゴム層の肉厚をt2としたとき、前記内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.36d≦(t1+t2)かつ0.55(t1+t2)≦t1の条件を満たすように設定したことを特徴とするゴムホース。
【請求項2】 前記内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.36d≦(t1+t2)≦0.40dの条件を満たすように設定したことを特徴とする請求項1に記載のゴムホース。
【請求項3】 内面ゴム層と外面ゴム層との間に、繊維を編組した補強層を介在させてなるゴムホースにおいて、前記内面ゴム層の内径をd、内面ゴム層の肉厚をt1、外面ゴム層の肉厚をt2としたとき、前記内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.38d≦(t1+t2)かつ0.50(t1+t2)≦t1の条件を満たすように設定したことを特徴とするゴムホース。
【請求項4】 前記内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.38d≦(t1+t2)≦0.40dの条件を満たすように設定したことを特徴とする請求項3に記載のゴムホース。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低圧配管に用いられる、内面ゴム層と外面ゴム層との間に繊維補強層を介在させたゴムホースに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、たとえば自動車の油圧式パワーステアリングに用いられるゴムホースとして、内面ゴム層と外面ゴム層との間に繊維補強層を介在させた、内外2層のゴム層を有するものが知られており、特開平7−205309号公報等に記載されている。
【0003】そして、このようなゴムホースと金属または樹脂からなるパイプとの接続は、ゴムホースにパイプを挿入した後、ゴムホース端部の外周をホースクランプで締め付けることによりなされ、ホースクランプの締め付け力によってシール性が確保されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記のような従来のゴムホースにあっては、自動車の油圧式パワーステアリングに用いられた場合、エンジンルームの高温にさらされ続けると、ゴムが熱劣化を起こし、図6に示すように、ホースクランプ50によって締め付けられている応力の高い部位rから、その両側(ゴムホース10の軸方向両側)s、sへゴムが流動することがある。
【0005】ゴムホース10には、ホースクランプ50の締め付け力によって矢印Fの力が作用し、同時にゴムの弾発力F’が反力として作用するので、通常、前記ゴムの流動は生じない。
【0006】しかし、ゴムホース10のゴムが熱劣化を起こすと、前記弾発力F’が失われ、矢印F方向にゴムが流動する圧縮永久歪みが生じる。
【0007】このようなゴムの流動が起きると、ホースクランプ50による締め付け力、すなわちゴムホース10とパイプ40との間の面圧が減少して、シール性が低下するおそれがあった。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明では、内面ゴム層と外面ゴム層との間に、繊維を編組した補強層を介在させてなるゴムホースにおいて、前記内面ゴム層の内径をd、内面ゴム層の肉厚をt1、外面ゴム層の肉厚をt2としたとき、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.36d≦(t1+t2)かつ0.55(t1+t2)≦t1の条件を満たすように設定した。
【0009】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のものにおいて、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.36d≦(t1+t2)≦0.40dの条件を満たすように設定した。
【0010】請求項3に記載の発明では、内面ゴム層と外面ゴム層との間に、繊維を編組した補強層を介在させてなるゴムホースにおいて、前記内面ゴム層の内径をd、内面ゴム層の肉厚をt1、外面ゴム層の肉厚をt2としたとき、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.38d≦(t1+t2)かつ0.50(t1+t2)≦t1の条件を満たすように設定した。
【0011】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のものにおいて、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.38d≦(t1+t2)≦0.40dの条件を満たすように設定した。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係るゴムホースを、各図にしたがって説明する。
【0013】このゴムホースは、たとえば油圧式パワーステアリング装置の低圧配管に用いられるものであり、図1に示すように、内面ゴム層1と外面ゴム層2との間に補強層3を介在させ、これらを一体にしたものである。
【0014】この実施の形態では、内面ゴム層1には、耐油性に優れるNBR(ニトリルゴム)を、外面ゴム層2には、耐オゾン性に優れるCR(クロロプレンゴム)を用いているが、これらに限定されるものではなく、ACM(アクリルゴム)、AEM(エチレンアクリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ECO(エピクロルビドリンゴム)等、周知のゴム材料を、使用環境やゴムホースに流動させる流体の物性に応じて適宜、選択すればよい。
【0015】補強層3は、ナイロン、ビニロン、アラミド等の繊維を、スパイラル編み、ブレード編みといった周知の方法で編組したものである。
【0016】そして、本実施の形態に係るゴムホースの特徴とするところは、ゴムホースの総肉厚(内面ゴム層1の肉厚t1+外面ゴム層2の肉厚t2)を、ゴムホースの内径(内面ゴム層1の内径)をdとしたとき、0.36d≦(t1+t2)≦0.40dかつ0.55(t1+t2)≦t1、または、0.38d≦(t1+t2)≦0.40dかつ0.50(t1+t2)≦t1の条件を満たすように設定した点にある。このような構成は、以下に説明する試験、解析の結果に基づいて選択したものである。
【0017】まず、従来のゴムホースに見られた熱劣化に基づくシール性の低下を、従来のゴムホースを供試品とした冷熱衝撃試験により再現し、その要因を解析した。
【0018】この冷熱衝撃試験は、ゴムホース(1、2、3)とホースクランプ5を断面とした図2に示すように、実際の使用態様と同様、ゴムホースに鉄製パイプ4を挿入し、ゴムホースの端部外周をホースクランプ5により0.5MPaの締め付け力で締め付けた状態で周知のパワーステアリングオイルを封入し、120℃、−10℃の雰囲気下にそれぞれ所定時間置くことを1サイクルとして、これを連続して3サイクル程度行うものであり、以下、単に試験という。
【0019】また、以下に用いる解析手法に係る用語は、日科技連出版社発行「入門統計解析法」第7刷(1998年2月16日刊)に基づいている。
【0020】図3(a)は、ゴムホース(内面ゴム層1の内周)とパイプ4との間の面圧の、パイプ4の周方向での分布を示している。試験前にあっては、図3(b)に示すホースクランプ5の両端部が重なり合うh部が、他部位に比して突出して高い面圧を示しており、これはホースクランプ5の締め付け力がこの部位で最大となるからである。
【0021】そして、試験後にあっては、熱劣化によって圧縮永久歪みが発生し、パイプ4の全周にわたって面圧が大きく低下した。とりわけ、i部およびj部で著しく面圧が低下しており、これら部位からのパワーステアリングオイルの漏洩が確認された。
【0022】これは、ホースクランプ5の締め付け力が高い部位(h部)ではゴムホースに「しわ寄り」が生じ、隣接する部位(i部)の面圧が相対的に低下する傾向があり、この傾向が圧縮永久歪みによって助長されたためである。このi部の面圧低下により、i部と直径方向に対向するj部にも、著しい面圧の低下がもたらされている。
【0023】このことから、パイプ4の周方向での面圧の不均一が、シール性低下の一因であることが判明した。
【0024】ついで、ゴムホースの各諸元、すなわちゴムホースの内径(内面ゴム層1の内径d)、ゴムホースの総肉厚(内面ゴム層1の肉厚t1+外面ゴム層2の肉厚t2)、補強層3の編組角度θ、補強層3の糸材質、補強層3の編組方法につき、前記面圧の不均一への影響度を調査した。その結果を、表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】表1は、試験後の従来のゴムホースのオイル漏洩圧力を測定し、オイル漏洩圧力を目的変数とし、前記したゴムホース内径d等を説明変数として重回帰分析を行ったものである。この表1から明らかに、ゴムホースの総肉厚の影響が最も大きい(分散比44.9121)ことがわかる。なお、この重回帰分析は、重相関係数を0.827、自由度調整済寄与率を0.6として行っている。
【0027】さらに、前記ゴムホースの総肉厚を、総肉厚t1+t2そのものと、内面ゴム層1と外面ゴム層2との肉厚比率の2因子に分けて試験、解析を行った。ただし、前記肉圧比率は、内面ゴム層1の肉厚t1/総肉厚t1+t2として表している。
【0028】この試験では、前記各因子の条件を変更した12種の供試品(表2参照、A因子4水準とB因子3水準との組み合わせによって12種を設定)を用いた。
【0029】
【表2】

【0030】その試験結果を図4に示す。これは、試験後において、各供試品のオイル漏洩圧力を測定した結果である。油圧式パワーステアリングの低圧配管におけるオイル漏洩圧力は、通常、0.5MPa以上が要求され、本試験においても0.5MPa以上を判定基準とした。
【0031】その結果、総肉厚t1+t2が0.36d以上、かつ内面ゴム層1の肉厚t1/総肉厚t1+t2が0.55以上の供試品が、熱劣化後にもオイル漏洩圧力の点で問題ないことが明らかになった。
【0032】また、総肉厚t1+t2が0.38d以上であれば、内面ゴム層1の肉厚t1/総肉厚t1+t2が0.50以上の供試品でも、熱劣化後、オイル漏洩圧力の点で問題ないことも明らかになった。
【0033】すなわち、内面ゴム層1の肉厚t1、外面ゴム層2の肉厚t2を、0.36d≦(t1+t2)かつ0.55(t1+t2)≦t1、または、0.38d≦(t1+t2)かつ0.50(t1+t2)≦t1と設定したことにより、熱劣化後のシール性が著しく改善されている。
【0034】これは、まず、下記(イ)、(ロ)の各作用によるものである。
(イ)総肉厚t1+t2の設定により、前記面圧の絶対値が増加するとともに、面圧の周方向での不均一を吸収するに十分な弾性変形が得られる。
(ロ)内面ゴム層1の肉厚t1を、ホースクランプ5の締め付け力を直接受ける外面ゴム層2の肉厚t2以上と厚くしたので、ホースクランプ5による締め付け力の不均一(従来のゴムホースに見られた、ホースクランプ両端部が重なり合う部位でのゴムホースのしわ寄り)の影響が内面ゴム層2に伝わっても、これを吸収するに十分な弾性変形が得られる。
【0035】そして、これら作用によって、熱劣化を起こしていない初期状態において、ゴムホース(内面ゴム層1の内周)とパイプ4との間の面圧の、パイプ4の周方向での不均一が相当程度、解消され、パイプ4の全周にわたって、熱劣化によって著しく面圧の低下する部位がなくなったからである(図5参照)。
【0036】また、以上の説明では、ゴムホースの総肉厚(内面ゴム層1の肉厚t1+外面ゴム層2の肉厚t2)について、その下限を示したが、上限を、(t1+t2)≦0.40dと設定することができる。
【0037】ゴムホースの総肉厚を増加させれば、シール性確保に必要なホースクランプ5の締め付け力も増加する。そして、ホースクランプ5をゴムホースに装着するには、工具等を用いてホースクランプ5を拡径させる必要があり、ホースクランプ5の締め付け力に比例して前記拡径させる力も大きくなり、それだけホースクランプ5の装着作業性が悪くなってしまう。
【0038】その装着作業性とゴムホースの総肉厚との関係を評価(感応評価)したところ、表3のようになり、ゴムホースの総肉厚(t1+t2)が0.40dを超えると装着作業性が悪化することがわかったため、総肉厚の上限を前記のように設定した。
【0039】
【表3】

【0040】
【発明の効果】以上、詳述したように、請求項1の発明では、内面ゴム層の内径をd、内面ゴム層の肉厚をt1、外面ゴム層の肉厚をt2としたとき、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.36d≦(t1+t2)かつ0.55(t1+t2)≦t1の条件を満たすように設定した。
【0041】このように構成したので、ゴムホースに金属または樹脂からなるパイプを挿入し、ゴムホースの端部外周をホースクランプで締め付ける使用態様において、熱劣化が起きる前の初期状態において、ゴムホースとパイプとの間の面圧の、パイプ周方向での不均一が改善される。
【0042】これにより、ゴムホースに熱劣化による圧縮永久歪みが生じて前記面圧が低下しても、局部的に面圧の著しく低下する部位が発生しないので、ゴムホースの熱劣化によってシール性を損なうことはない。
【0043】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のものにおいて、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.36d≦(t1+t2)≦0.40dの条件を満たすように設定した。
【0044】このように構成したので、まず、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0045】加えて、ゴムホースの総肉厚t1+t2の上限を設定したので、前記t1+t2が過大となって、ホースクランプの装着作業性を損ねることがない。
【0046】請求項3に記載の発明では、内面ゴム層と外面ゴム層との間に、繊維を編組した補強層を介在させてなるゴムホースにおいて、前記内面ゴム層の内径をd、内面ゴム層の肉厚をt1、外面ゴム層の肉厚をt2としたとき、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.38d≦(t1+t2)かつ0.50(t1+t2)≦t1の条件を満たすように設定した。
【0047】このように構成したので、ゴムホースに金属または樹脂からなるパイプを挿入し、ゴムホースの端部外周をホースクランプで締め付ける使用態様において、熱劣化が起きる前の初期状態において、ゴムホースとパイプとの間の面圧の、パイプ周方向での不均一が改善される。
【0048】これにより、ゴムホースに熱劣化による圧縮永久歪みが生じて前記面圧が低下しても、局部的に面圧の著しく低下する部位が発生しないので、ゴムホースの熱劣化によってシール性を損なうことはない。
【0049】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のものにおいて、内面ゴム層、外面ゴム層のそれぞれの肉厚を、0.38d≦(t1+t2)≦0.40dの条件を満たすように設定した。
【0050】このように構成したので、まず、請求項3に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0051】加えて、ゴムホースの総肉厚t1+t2の上限を設定したので、前記t1+t2が過大となって、ホースクランプの装着作業性を損ねることがない。
【出願人】 【識別番号】000003470
【氏名又は名称】豊田工機株式会社
【出願日】 平成11年2月23日(1999.2.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−240857(P2000−240857A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−44911