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【発明の名称】 被覆金属管又は金属ロール及びその製造方法
【発明者】 【氏名】冨 口 明 彦

【氏名】曽 地 義 信

【要約】 【課題】

【解決手段】金属系の目地材と耐摩耗性の充填材の混合粉体を遠心鋳造技術を利用して母材表面に融着させて被覆し、サーメット被覆層の上層側又は下層側に目地金属材成分が分離状態に複合された複々合被覆製品を、工程増を伴わずに供給できるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属管又は金属ロールの表面に、金属系の目地材と耐摩耗性の充填材とを主成分とする被覆材料を母材を回転させながら融着させて、目地材中に充填材が密に充填された複合層と、目地材が上澄み状又は下澄み状に遠心分離した目地材分離層とが重層された複々合被覆層を形成したことを特徴とする被覆金属管又は金属ロール。
【請求項2】 前記目地材分離層の厚さを0.1〜1mmとした、請求項1に記載の被覆金属管又は金属ロール。
【請求項3】 前記目地材と充填材の比重の比が2:3以下又は3:2以上である、請求項1又は2に記載の被覆金属管又は金属ロール。
【請求項4】 金属管又は金属ロールの表面に、前記複合層の組成よりも目地材を過剰に配合した組成の前記被覆材料を配置し、管体又はロールをその軸線を中心に1G以上の遠心力が生じる回転数で回転させながら前記被覆材料中の目地材を加熱溶融させることにより、目地材の溶融によって流動化した被覆材料を管体又はロールの表面に融着させて前記複々合被覆層を形成させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆金属管又は金属ロールの製造方法。
【請求項5】 前記被覆材料が前記目地材の粉体と充填材の粉体の混合粉体である請求項4に記載の被覆金属管又は金属ロールの製造方法。
【請求項6】 前記加熱溶融を移動式の誘導加熱によって行う請求項4又は5に記載の被覆金属管又は金属ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属管又は金属ロールの表面に耐摩耗性の優れたサーメット系の被覆を施した内面被覆金属管又は金属ロール及びその製造方法に関し、具体的には、該被覆を、被覆の後加工や仕上げに有利なようにあるいはより強靭に形成した被覆金属管又は金属ロール及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】原動機や押出し機のシリンダーあるいはスラリー輸送管の内面、あるいは、ロールやボイラー管の外面には、耐摩耗性を向上させるために耐摩耗性材料を被覆することがよく行われる。該被覆の代表的なものとして炭化物セラミックスやホウ化物セラミックスなどの硬質材料を金属目地中に配合したサーメットの溶射被覆あるいは回転融着被覆がある。
【0003】上記サーメット被覆は、耐摩耗性被覆の中でも耐摩耗性が特に優れているが、被覆の研摩は容易でなく多大な研摩コストを要する。又、高価なサーメット材料を研摩屑として失うことも見過せない。そこで、この問題を解決する手段として、サーメット被覆の表面をクロムメッキやニッケルメッキなどの封止被覆層で封じた上で研摩して、サーメットとメッキが霜降り状に露呈した段階まで研摩したものを使用に供する技術が提案されている。上記技術によれば、サーメット表面の凹凸を埋めた状態で研摩を行うので、研摩がしやすくなり、又、サーメット研摩屑の発生量も小さくできる。しかし、メッキのつきにくいサーメット表面へのメッキのコストは多大であり、解決手段として十分満足なものとは云えない。
【0004】又、サーメット被覆には熱応力が残留しやすいので、母材に直接被覆せずに金属系の中間被覆層を介して被覆して、母材面との接合を強化し、あるいは、上記応力を緩和することにより被覆の強靭性を高めることが望ましいが、この場合も中間被覆層の形成に余分なコストがかゝる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、サーメット被覆を、その表面に前記封止被覆層が施された形で形成し、あるいは、前記中間被覆層を介して形成された金属管やロールを、余分な工程によるコスト増を伴わずに供給することのできる技術の提供を課題としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべくなされた本発明被覆金属管又は金属ロールは、金属管又は金属ロールの表面に、金属系の目地材と耐摩耗性の充填材とを含有する被覆材料を母材を回転させながら融着させて、目地材中に充填材が密に充填された複合層と、目地材が上澄み状又は下澄み状に遠心分離した目地材分離層とが重層された複々合被覆層を形成したことを特徴とする。なお、ここでいう金属管の表面とは、管の内面又は外面もしくは内外面を総称したものである。上記本発明構成によれば、被覆の目地材と充填材の比重差に基づく遠心分離作用により被覆の上層側か下層側かのいずれかに、充填材の殆ど含まれない目地材分離層を有するサーメット被覆、即ち、前記封止被覆層や中間被覆層を有するサーメット被覆の施された金属管やロールを、通常のサーメット被覆操作で一気に製造できるところとなって、前記本発明の課題が解決される。
【0007】上記金属管やロールの材質としては炭素鋼,低合金鋼,ステンレス鋼、あるいは銅や銅合金を例示できる。又、目地材としてはCo基あるいはNi−Cr基の自溶性合金を例示できる。充填材としてはWC,Cr32,SiC,TiCなどの炭化物セラミックス,TiB2などの硼化物セラミックス,Al23,TiO2,ZrO2などの酸化物セラミックス,Si34など窒化物セラミックス、あるいは、上記セラミックスの微粒子を、CoやNi−Cr合金などの金属をバインダーとして融結させたWC−Co系硬質材料を例示できる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明における前記目地材分離層は、これを前記封止被覆層として利用するケース、中間被覆層として利用するケースのいずれにおいても、0.1〜1mm程度の厚さに形成することが望ましい。0.1mm未満の厚さでは、本発明構成における前記複合層の目地材分離層との界面の凹凸を十分に埋めきれないことから所期の効果が得にくい。又、上記埋めならし効果は1mm程度で飽和するので、経済性の点で1mm以下が望ましい。もっとも、ロールの摩耗による外径の不足を、中間被覆層として配した2〜3mmの目地材分離層によって補うなどの形態も本発明の好ましい適用例の一つであり、目地材分離層の厚さが限定されるものではない。
【0009】本発明構成における前記遠心分離作用は、目地材と充填材の比重の比が大きいほど顕著に生じる。たとえば、目地材として比重が約8の自溶性合金を用いるものとして、比重が14以上のWC,WBあるいはこれらのCo融結材を充填材とすれば、充填材の方が回転の外側方向に分離しようとする結果、目地材が内側方向に分離する作用が顕著に生じる。又、比重が5以下のTiC,SiC,TiB2,BN,Al23,TiO2などを充填材とすれば、目地材の方が外側方向に分離する作用が顕著に生じる。遠心分離作用は、又、母材の回転速度にも高次に依存するが、回転融着法に好適な範囲の回転数においては、目地材と充填材の比重の比が2:3以下(上記自溶性合金/WC−Co等)あるいは3:2以上(上記自溶性合金/TiB2等)である組合わせが、本発明における目地材分離層を能率よく形成するのに適している。
【0010】上記目地材と充填材の比重の大小関係を都合よく利用して、以下に述べるように、種々の態様の被覆を有する本発明被覆金属材を実現できる。図1は、シリンダー用金属管2の内面に自溶性合金を目地材としてこれに目地材よりも比重の大きいWC−Coを充填した材料により被覆を施した本発明製品1の態様を例示した図であり、目地材中に充填材が密に充填された複合層3、即ち、好ましい形に形成されたサーメット層の上層側に上澄み状に分離した目地材分離層4が形成された複々合被覆層5が形成された態様となっている。この態様によれば被覆面の研摩が容易になる。図2は、図1の充填材を、目地材より比重の小さいTiCを充填した材料に替えた例を示しており、比重が大きい方の目地材の分離層4が複合層3の下層側に下澄み状に形成された態様となっている。この態様とすれば、サーメット被覆の強靭性が向上する。図3は、図1の被覆材料を金属管2の外面に被覆した例であって、比重が小さい方の目地材の分離層4が複合層3の下層側に下澄み状に形成されており、図2の例と同様に被覆の強靭性を向上させている。図4は、図2の被覆材料をロール6の表面に適用した例であり、比重が大きい方の目地材の分離層4が複合層3の上層側に上澄み状に形成されており、研摩が容易になっている。
【0011】次に、本発明金属管あるいは金属ロールの製造方法について説明する。本発明製品は、上述のように、自溶性合金などの目地材とWC−Coなどの充填材を主成分とする被覆材料を、金属管やロール表面に配置し、母材である金属管やロールをその軸線を中心に回転させながら融着させて製造するが、具体的には以下のようにする。
【0012】先ず、清浄にした母材の表面への被覆材料の配置は、たとえば、目地材の粉体と充填材の粉体の混合粉体などの粉体状の被覆材料を、管内面に被覆する場合であれば、管内に管長手方向略均等に投入し、管周方向の均等化は管の回転に委ねる形で配置することができる。又、径の大きい管の内面や管外面あるいはロール表面に被覆する場合であれば、溶射法によって配置することができる。但し、上記配置手段に限定されるものではなく、粉体を液剤中に分散させたスリップを塗布する方法、あるいは、溶湯を流しかけるなどの方法によってもよい。
【0013】こゝで、上述のようにして配置する被覆材料の目地材/充填材の配合比は、該被覆材料が母材面に融着したときに、目地材中に充填材が密に充填された複合層に加えて、目地材が上澄み状又は下澄み状に分離した目地材分離層が形成されるように設定しなければならない。このような配合比は、たとえば、所定の回転速度で得られる前記複合層中の目地材/充填材の量目の比率を複合層の比重測定や分析によって求め、これに所望の厚さの目地材分離層を形成するのに必要な目地材の過剰量を計算により求めて加算する手法により決定することができる。
【0014】このあと、被覆材料を配置した母材を回転させながら、被覆材料中の目地材成分を加熱により溶融させることにより被覆材料を流動化させて母材表面に融着させるのであるが、本発明構成の被覆内の分離状態を得るには、1G以上の遠心力が生じる回転数で回転させることが必要であり、更に望ましくは3G以上の回転数とする。被覆内の分離作用は遠心力即ち回転数と共に増すが、7G程度でこの効果は飽和する。又、外面に被覆する際に流動化した被覆材料が飛散するのを避けるためにも7G以下の回転数に留めることが望ましい。
【0015】上記回転融着操作における加熱手段は任意に選定されてよいが、被覆材料が流動化したあとの目地材の分離は時間と共に進むので、急速加熱により短時間で流動化させることができて、所望の分離状態に達した段階でこの状態を凍結させることが容易であるという点で、誘導加熱法によることが望ましい。誘導加熱法は、被加熱材の近くに電磁コイルを配置してこれに交流通電し、被加熱材中に誘導電流を生じさせて発熱させる加熱法であり、加熱したい局部を集中的に急速加熱できる。とりわけ、電磁コイルを移動させながら順次加熱を行って行く移動式の誘導加熱によれば急速加熱と冷媒を吹付けての急冷を一定の短い時間差で安定して進めることができるので、前記所望の分離状態を正確にかつ能率よく実現してこれを凍結する操作が極めて行いやすく、特に好ましい加熱手段となる。
【0016】(実施例1)呼び径100Aの鋼管(JIS STPG,内径102mmφの内面に、Ni系自溶性合金(JIS SFNi4 比重7.5)の粉体35重量部とWC−12%Co(比重14)の粉体65重量部を混合した被覆材料を、溶射法によって層状に配置した。次いで管体を300rpm(管内面で5.1G)で回転させながら、管の一端から他端に向かって管外面から移動式誘導加熱(5mm/s)を行って上記自溶性合金を溶融し、上記被覆材料を流動化させて管内面に遠心鋳造被覆して本発明被覆金属管を得た(断面検鏡写真の再現図、図5参照)。管2の内面に形成された複々合被覆層5の諸元は下記の通りであった。

上記本発明製品の内面をホーニング加工により前記霜降り状態まで研摩して2Sの仕上面を得た。この仕上は、WC−Coが露呈した従来のサーメット被覆の20%の時間で行うことができ、本発明製品の研摩適性に関する優位性が確認された。
【0017】(実施例2)外径300mmの中空ロール胴体の外周面に、実施例1と同じ被覆材料を用い、ロール胴体を130rpm(ロール外周面で2.8G)で回転させて複々合被覆を施し、本発明被覆金属ロールを得た。被覆層の諸元は下記の通りであった。

上記本発明製品を6Sに精密研摩後、下地目地材層を有しない従来のサーメット被覆を施した比較材と共に落重衝撃試験に供したところ、被覆が破壊しない最大エネルギーが、本発明材と比較材とで約2:1であり本発明製品の被覆の強靭性に関する優位性が確認された。上記実施例に見る通り、本発明構成によれば、従来のサーメット被覆金属管や被覆ロールよりも被覆の研摩適性あるいは強靭性の優れた被覆製品が工程増を伴わずに従来のサーメット被覆製品と殆ど変わらないコストで供給できることが判る。
【0018】
【発明の効果】本発明は、上述のように、金属管やロールに耐摩耗性のサーメット被覆を施した製品を、遠心鋳造技術によって、サーメット被覆層(複合層)の上層側又は下層側に、目地金属材層を上澄み状又は下澄み状に分離した状態に形成させて追加複合した複々合被覆を施した構成で提供したことにより、被覆の研摩適性あるいは強靭性を顕著に向上させた。上記本発明構成によれば、上記複々合被覆製品を、工程増を伴わずに、従来のサーメット被覆製品と殆ど変わらないコストで供給できる。即ち、目地材分離層形成分の僅かな材料費増で上記製品特性の顕著な向上が果たせたものであり、産業界への貢献は絶大である。
【出願人】 【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
【出願日】 平成10年12月7日(1998.12.7)
【代理人】 【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助 (外1名)
【公開番号】 特開2000−170987(P2000−170987A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−361985