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【発明の名称】 セラミックス管の接合方法及び接合構造
【発明者】 【氏名】高橋 秀雄

【氏名】村田 勝哉

【氏名】新頭 朋子

【要約】 【課題】複数のセラミックス管を連結して一本の長尺のセラミックス管接合体を提供するために必要なセラミックス管の接合において、接合部に発生する残留応力を低減し、長期間の実機運転にも耐える信頼性の高い接合方法及び接合構造を提供する。

【解決手段】複数のセラミックス管を、該セラミックス管の接合部を囲繞する筒状の接合用継ぎ手を用いて接合する方法であって、上記セラミックス管と上記接合用継ぎ手の25℃から1000℃までの平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃以下とし、上記セラミックス管の外側面と上記接合用継ぎ手の内側面との間に接合材からなる接合層を形成し、該接合層の厚さを上記セラミックス管の肉厚の15%以下とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のセラミックス管を、該セラミックス管の接合部を囲繞する筒状の接合用継ぎ手を用いて接合する方法であって、前記セラミックス管と前記接合用継ぎ手の25℃から1000℃までの平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃以下とし、前記セラミックス管の外側面と前記接合用継ぎ手の内側面との間に接合材からなる接合層を形成し、該接合層の厚さを前記セラミックス管の肉厚の15%以下とするセラミックス管の接合方法。
【請求項2】 前記接合層と前記接合用継ぎ手の25℃から1000℃までの平均熱膨張係数の差を10×10−7/℃以下とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】 前記接合用継ぎ手の外側面における残留歪みは、50×10−6以下である請求項1又は2に記載の接合方法。
【請求項4】 前記セラミックス管及び前記接合用継ぎ手がコーディエライト質骨材からなる請求項1,2又は3に記載の接合方法。
【請求項5】 前記接合材の主成分がコーディエライト質粒子又はスポジュメン質粒子からなる請求項1,2,3又は4に記載の接合方法。
【請求項6】 周方向に延びる径方向外向き面が形成されるように切欠かれた前記セラミックス管の切欠き端部を、前記内側面に内側突起を備えた前記接合用継ぎ手の各開口部から挿入し、前記各切欠き端部が対向して形成される凹部に前記内側突起を収容し、少なくとも前記セラミックス管と前記接合用継ぎ手の間に前記接合材により前記接合層を形成させる請求項1,2,3,4又は5に記載の接合方法。
【請求項7】 内側面に内側突起を備えた筒状のコーディエライト質接合用継ぎ手と、周方向に延びる径方向外向き面が形成されるように端部が切欠かれたコーディエライト質セラミックス管と、少なくとも前記接合用継ぎ手の前記内側面と前記セラミックス管の外側面との間に接合材から形成される接合層とを含むセラミックス管の接合構造であって、前記接合層は、前記セラミックス管の肉厚の15%以下の厚さであり、前記セラミックス管と前記接合用継ぎ手の25℃から1000℃までの平均熱膨張係数の差が2×10−7/℃以下であり、前記セラミックス管の各切欠き端部が対向して形成される凹部に前記接合用継ぎ手の前記内側突起が突出したセラミックス管の接合構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックス管の接合に関し、より詳細には例えば加圧流動床ボイラ、石炭ガス化炉、ゴミ及び産業廃棄物焼却炉などから排出される、高温ガス中の塵埃を除去するフィルタにも適用可能なセラミックス管の接合方法及び接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックス管は、高温ガスの除塵装置に用いられるフィルタ等、広い分野においてその用途が広がりつつある。特に、石炭を燃料とした次世代のクリーンで高効率な発電方式である加圧流動床複合発電や石炭ガス化発電を実用化する上で、セラミック管から製造されるフィルタはキーテクノロジーと考えられており、世界各国でその開発競争が繰り広げられている。さらに、このようなセラミック管から製造されるフィルタは、近年問題が顕在化しているダイオキシンに代表される環境汚染の観点から、ゴミ及び産業廃棄物の焼却炉への適用も検討されている。
【0003】一方セラミックス管は、セラミックスの持つ脆性に起因した脆さから、使用前の取り扱いや使用中の各種負荷によって破壊が生じることがあり、実使用時の長期信頼性の確保が重要な問題となっている。このようなセラミック管の長期信頼性を向上させるため、セラミックス管素材そのものの改善による強度の改善や、使用前の材料出荷検査技術の開発などが進められているが、まだ解決すべき問題も多いのが現状である。
【0004】セラミックス管を製造する上で、ばらつき少なく高品質単体を作ることができる大きさは、最大でも約1mである。セラミックス製造プロセス技術としては押し出し成型など、連続的に長尺の均一断面形状のセラミックス成型体を製造する技術は存在するが、ある程度重量のあるセラミックス成型体では、焼成時の材料収縮に起因する歪みにより欠陥が発生する問題がある。一例として挙げると、フィルタとして機能させるために多孔質化したセラミックス成型体は焼結体強度が低く、その製造時の長さに限界がある。したがって、所望する長さのセラミックス管を得るためには、複数のセラミックス管を互いに接合する必要がある。
【0005】また、フィルタ用途に限らずセラミックス管を使用する場合には、通常両端部を保持する必要性があり、装置全体の大きさに応じ、経済性といった面からセラミックス管にはある程度の長さ(たとえば3〜4m)が要求される。このため、焼成されたセラミックス管は、これらを何本かつないで一本の接合体とする接合技術が不可欠である。
【0006】特開平7-13808号公報に、セラミックス接合用組成物とフィルタとして用いられるセラミック管の接合方法とが提案されている。同公報では、径方向内側面にリング状突起が設けられた筒状接合用継ぎ手を、セラミックス管の径方向外側に配置させ、このリング状突起を2本のセラミックス管の端面で挟むようにしてセラミックス管を筒状継ぎ手に嵌合する方法が提案されている。同公報に開示されるように筒状接合用継ぎ手を用いた接合法は、強度が低下しがちな接合部に高い機械的強度を付与する点で非常に優れているが、セラミックス管と筒状接合用継ぎ手及び両者の隙間に充填される接合材の機械的、熱的特性の組み合わせによっては、筒状接合用継ぎ手に残留応力を発生させ、最悪の場合にはクラックを生じさせる場合もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、セラミックス管の接合において、接合部に発生する残留応力を低減し、長期間の実機運転における信頼性の高い接合方法及び接合構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、本発明のセラミックス管の接合方法を提供することにより達成される。すなわち、本発明の第1の構成では、複数のセラミックス管を、該セラミックス管の接合部を囲繞する筒状の接合用継ぎ手を用いて接合する方法であって、上記セラミックス管と上記接合用継ぎ手の25℃から1000℃までの平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃以下とし、上記セラミックス管の外側面と上記接合用継ぎ手の内側面との間に接合材からなる接合層を形成し、該接合層の厚さを上記セラミックス管の肉厚の15%以下とするセラミックス管の接合方法が提供される。
【0009】また、上記接合層と上記接合用継ぎ手の25℃から1000℃までの平均熱膨張係数の差を、10×10−7/℃以下とすることが好ましい。
【0010】さらに、上記接合用継ぎ手の外側面における残留歪みは、50×10−6以下であることが好ましい。
【0011】また、上記セラミックス管及び上記接合用継ぎ手がコーディエライト質骨材であることが好ましい。
【0012】さらに、上記接合材の主成分がコーディエライト質粒子又はスポジュメン質粒子を含有していることが好ましい。
【0013】また、本発明の接合方法では、周方向に延びる径方向外向き面が形成されるように切欠かれた上記セラミックス管の切欠き端部を、上記内側面に内側突起を備えた上記接合用継ぎ手の各開口部から挿入し、上記各切欠き端部が対向して形成される凹部に上記内側突起を収容し、少なくとも上記セラミックス管と上記接合用継ぎ手の間に上記接合材により上記接合層を形成させることが好ましい。
【0014】さらに、本発明の上記目的は、本発明の接合構造を提供することによって達成される。すなわち、本発明の第2の構成では、内側面に内側突起を備えた筒状のコーディエライト質接合用継ぎ手と、周方向に延びる径方向外向き面が形成されるように端部が切欠かれたコーディエライト質セラミックス管と、少なくとも上記接合用継ぎ手の上記内側面と上記セラミックス管の外側面との間に接合材から形成される接合層とを含むセラミックス管の接合構造であって、上記接合層は、上記セラミックス管の肉厚の15%以下の厚さであり、上記セラミックス管と上記接合用継ぎ手の25℃から1000℃までの平均熱膨張係数の差が2×10−7/℃以下であり、上記セラミックス管の各切欠き端部が対向して形成される凹部に上記接合用継ぎ手の上記内側突起が突出したセラミックス管の接合構造が提供される。
【発明の実施の形態】本発明におけるセラミックス管の接合方法は、接合される2本のセラミックス管、及び接合部の外周に配置される筒状接合用継ぎ手、さらにセラミックス管の径方向外側面と継ぎ手の径方向内側面の間に充填される接合材の機械的、熱的特性を検討することにより、接合後のセラミックス管及び筒状接合用継ぎ手に発生する残留応力を低減させ、その結果接合部の信頼性を向上させるものである。
【0015】セラミックス管の接合時に発生する残留応力は、セラミックス管、接合材、筒状接合用継ぎ手という、3つの部材の平均熱膨張係数の違いが原因である。なお、本明細書中においては、焼結された時の接合材の平均熱膨張係数を単に接合材の平均熱膨張係数と称する。例えば筒状接合用継ぎ手が高温で接合材と焼結されて接合部が一体化し、その後室温まで冷却される過程において、セラミックス管や接合材に比べて筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数が大きい場合には、最外部にある継ぎ手は、接合材やセラミックス管と比較してより収縮しようとする。その結果、接合用継ぎ手は内圧、すなわち内側から外側へと向いた圧力を受けることになり、引張残留応力が発生する。同時に接合材やセラミックス管は接合用継ぎ手により締め付けられることによる圧縮残留応力を受ける。
【0016】この様な残留応力は、線形弾性モデルや有限要素法による解析では評価が難しく、これまで定量的な検討が困難であった。これは、もともと粉体である接合材が焼結して固化し、その後接合用継ぎ手やセラミックス管と一体化してから応力を発現するために、応力発現温度を正確に特定しにくいこと、焼結温度から室温に冷却する過程で接合材には微視的亀裂や界面剥離が生じ、それらの不連続部分の取り扱いが困難であること、などによる。
【0017】そこで、本発明者等は、残留応力を定量的に評価する方法を見出し、この評価方法を用いて接合部に発生する残留応力を低減するセラミック管の接合方法を見出した。この残留応力の評価方法は、筒状接合用継ぎ手の切断によって残留歪みを解放させ、歪みゲージが示す切断前後の歪みの差をもって、接合時に発生していた残留歪みを測定するものである。この残留歪み測定方法を図1を用いて説明する。
【0018】図1は、本発明における残留応力測定のためのセラミックス管接合部及び歪みゲージ配置の一例を示している。セラミックス管接合部10は、セラミックス管12,14と、これらのセラミックス管12,14を包囲するようにして配置された筒状接合用継ぎ手16と、から構成されている。これらのセラミックス管12,14の端部は、互いに長手方向に沿って対向して設けられた筒状接合用継ぎ手16の2つの開口部にそれぞれ嵌合されている。筒状接合用継ぎ手16の径方向外側面には、切断線A−Aに近接し、かつ切断線A−Aに沿ってこの切断線から周方向に等距離に配置された3つの歪みゲージ18a,18b,18cが貼り付けられている。接合部に発生する周方向の歪みを精度良く測定するために、これらの歪みゲージ18a,18b,18cは、切断線A−Aに直交するように配置されている。
【0019】以下に、残留歪みの測定手順について説明する。まず、接合後の筒状接合用継ぎ手16の径方向外側面に歪みゲージ18a,18b,18cを貼り付ける。次いで、歪みゲージ18a,18b,18cのゼロ点を調節した後にその近傍を切断線A−Aに沿って切断し、歪みを測定する。検出された歪みが -100×10−6(-は圧縮を示す)を示したとすると、切断前には 100×10−6 の引張残留歪みが発生していたことになる。また、一般には歪みゲージ18a,18b,18cによる測定にはある程度の誤差が発生しうるので、歪みゲージ18a,18b,18cの各測定値の平均を算出することにより残留歪みの値とした。
【0020】この方法を用い、筒状接合用継ぎ手、セラミックス管のそれぞれの25℃から接合温度付近の1000℃までの平均熱膨張係数(以下、単に平均熱膨張係数という。)を変化させたいくつかの組み合わせについて接合を行ない、その歪み状態を検討したところ、本発明者等は、接合部に発生する残留歪みが、筒状接合用継ぎ手及びセラミックス管それぞれについての平均熱膨張係数の差に大きく支配されていることを見出した。
【0021】本発明の接合方法においては、筒状接合用継ぎ手とセラミックス管との平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃以下とする、特には1×10−7/℃以下とするのが好ましい。これにより接合部残留歪を実使用時にほとんど問題のない50×10−6以下まで大きく低減しうることを見出したのである。
【0022】例えば、高温ガスの除塵装置のフィルタとして用いられるセラミックス管としては、耐熱衝撃性の観点から、低熱膨張性のものが好ましく、平均熱膨張係数が12×10−7/℃程度であるものが好ましく用いられている。したがって、上記セラミックス管を接合する際には、平均熱膨張係数が12×10−7〜14×10−7/℃である筒状接合用継ぎ手を用いるのが好ましい。
【0023】ここで、本発明における上述した残留歪みと残留応力の関係は、本発明の検討において用いた筒状接合用継ぎ手のヤング率がおよそ3000kgf/mm2であることを考慮すると、100×10−6の引張残留歪みがおよそ30kgf/cm2の引張応力に相当する。筒状接合用継ぎ手の切り出し強度は100kgf/cm2あるものの、脆性セラミックス材料の強度が有効体積に依存し、大きな部材ほど強度が低下することから、実際の強度はその半分の50kgf/cm2程度のものも含まれていると考えられる。従って、30kgf/cm2を越える引張応力が発生した場合には、確率論的には、筒状接合用継ぎ手の数百個に1個は破壊されることも予想され、実機での信頼性確保には無視できない値となる。このため、接合部の残留歪みはできるだけ小さくすることが好ましいのである。
【0024】本発明においては、セラミックス管の外側面と筒状接合継ぎ手の内側面との間に接合材を充填して接合層を形成する。このような接合材としてはセメント、アルカリ金属ケイ酸塩の脱水縮合反応を用いたもの、リン酸塩の脱水縮合反応を用いるもの、コーディエライト質粒子又はスポジュメン質粒子又はこれらの双方をを用いるもの、を挙げることができる。
【0025】しかしながら、いずれの接合材でも程度の差こそあれ、その平均熱膨張係数はセラミックス管に比較して低熱膨張化が困難なので接合部の残留歪みを増大させてしまう大きな一つの要因となり得る。このためセラミックス管及び筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数を近づけたとしても、接合材による残留歪みが発生してしまったのではセラミックス管接合部の全体としての残留応力は低減できないことになる。
【0026】図2は、2つのセラミックス管20,22と、接合層24と、筒状接合用継ぎ手26から構成された接合部の図1の切断線A−Aに沿った断面図である。接合層24は、セラミックス管の径方向外側面と筒状接合用継ぎ手の径方向内側面との間に画成された接合材充填空間に接合材が充填されて形成されている。接合層24を形成する接合材充填空間の離間幅が接合層の厚み(t)である。接合部は、筒状接合用継ぎ手の内側面に形成された内側突起が、セラミックス管の切欠き端部を互いに対向させて形成した凹部に突出するように構成されている。
【0027】この内側突起とセラミックス管との対向端部によって形成された凹部の間及び各セラミックス管相互の間には、同様に接合材が充填され、接合層により互いに接合されている。この部分の接合層の厚さは、製造上の都合により適宜設定することが可能である。この接合構造を構成する筒状接合継ぎ手及び切欠き端部を備えたセラミックス管は、例えば特公平7-79935号に開示されているようにアイソスタチックプレスといった方法により、管体及び端部段差構造を一体に形成した後、焼成させることによって形成することもできる。また、ダイヤモンドの回転砥石を用いて筒状のセラミックス管を切削加工することによっても形成できる。
【0028】通常コーディエライト質のセラミックス管同士を接合する場合、上述したように接合材を焼結させて接合するが、一般的に接合材は焼結したときの平均熱膨張係数が、上記セラミックス管の平均熱膨張係数よりも大きいため接合材からなる接合層は焼結後に収縮が起こり亀裂が発生しやすい。
【0029】本発明の接合方法によって得られる接合構造、特に周方向に延びる径方向外向き面が形成されるように切欠かれたセラミックス管の切欠き端部を、内側面に内側突起を備えた上記接合用継ぎ手の開口部から挿入し、内側突起をセラミックス管の開口端部により形成される凹部に収容させて位置決めするとともに、セラミックス管と接合用継ぎ手の間に接合材により接合層を形成させることによって形成される接合構造は、仮にセラミックス管の接合部分の一部に亀裂が発生したとしても、接合部分がジグザグ状であることから亀裂が生じた部分が貫通した連続孔にはならないため、特にフィルタとして用いた場合にガス漏れを生じさせず、より信頼性を向上させることができる。
【0030】本発明者等は、さらにセラミックス管の長期信頼性を向上させるべく、接合層の厚みtと接合材との関係について鋭意検討した結果、接合材の影響を最小限にするためには、接合層の厚みtをセラミックス管の肉厚に対して15%以下、特には10%以下とすることで、比較的高い平均熱膨張係数を持つ接合材を使用する場合であっても、その影響を無視しうることを見出した。
【0031】また、残留歪みの方向についていえば、筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数がセラミックス管よりも小さい場合には、筒状接合用継ぎ手には圧縮方向の残留歪みが発生し、逆に大きい場合には引張方向の残留歪みが発生する。しかしながら、接合層の厚みをセラミック管の15%以下とし、筒状接合用継ぎ手とセラミックス管の平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃以下とすることで、接合部に発生する歪みを50×10−6以下にできる。
【0032】また、前述のセラミックス管と筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃以下とした場合に、具体的には標準的なセラミックス管の肉厚である14mmに対し、接合層の肉厚tをセラミックス管の肉厚の15%以下、すなわち2mm以下とすれば、接合材の平均熱膨張係数がセラミックス管の平均熱膨張係数に比較して大きい場合、例えば接合材とセラミックス管の平均熱膨張係数の差が10×10/℃程度であっても、接合部における残留歪みは50×10−6以下に抑えることができた。一方で接合材とセラミックス管の平均熱膨張係数の差が10×10−7/℃を越える場合には、接合層の肉厚tを薄くしても接合部の残留歪みを50×10以下にすることは困難であった。したがって、接合材とセラミックス管の平均熱膨張係数の差は、10×10−7/℃以下であるのが好ましい。
【0033】一方、上述した接合層の肉厚tが0.5mm未満では、施工上接合材を隙間に充填することが難しくなる。したがって、用いる接合層の肉厚tは、セラミックス管の肉厚が14mmである場合、0.5mm〜2mmとすることが望ましい。
【0034】接合層の厚さtが2mmを超え、かつ筒状接合用継ぎ手やセラミックス管に比較して焼結された接合材の平均熱膨張係数が大きい場合には、焼成した後冷却する際に、接合材がより収縮するために接合部剥離が起こる。この接合部剥離を防止するには筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数を、接合材の平均熱膨張係数に近づけるために大きくする必要があるが、この場合筒状接合用継ぎ手とセラミックス管の平均熱膨張係数の差が増大してしまう。
【0035】これまで説明したように、セラミックス管の接合に際し、接合材が充填されて形成される接合層の肉厚tをセラミックス管の15%以下とし、セラミック管と筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃とすることにより、接合部の残留歪みをほぼゼロにすることが可能となる。
【0036】本発明の接合方法を適用できるセラミックス管としては、特に限定されないが、例えばアルミナ質、コーディエライト質、ムライト質又は炭化珪素質などのセラミックス管を挙げることができる。特に平均熱膨張係数の小さいコーディエライト質のセラミック管を接合する場合はセラミックス管と接合材の平均熱膨張係数の差が大きくなるため、本発明の接合方法が好ましく用いられる。
【0037】なお、コーディエライト質セラミックス管同士を接合する場合は、コーディエライト質セラミックスからなる筒状接合用継ぎ手を用いるのが好ましく、接合材としては主成分がコーディエライト質粒子又はスポジュメン質粒子からなるものを用いるのが好ましい。
【0038】
【実施例】以下本発明のセラミックス管接合方法を実施例によって具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)コーディエライトを基材とするセラミックス管(外径168mm、肉厚14mm、長さ25cm)を2本接合して、セラミックス接合部を有するセラミックス管フィルタを作成した。この接合部の径方向外側には、同じくコーディエライトを基材とする筒状接合用継ぎ手を配置した。用いたセラミックス管の平均熱膨張係数は、12×10−7/℃であり、筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数は、14×10−7/℃であり、接合層の厚みtは、2mmである。また、用いた接合材は、コーディエライト質粒子を主成分とし、その平均熱膨張係数は、18×10−7/℃であった。
【0039】セラミックス管の接合は、次のようにして行った。まず、接合するセラミックス管の接合部外面にシリカ成分を30重量%含むシリカゾルを塗布して接合材との濡れ性を向上させた後、塗布可能な粘度に調整した接合材をセラミックス管外側面に塗布し、このセラミックス管をシリカゾルを内面に塗布した筒状接合用継ぎ手の一方側の開口部に嵌合させた。同様にして筒状接合用継ぎ手の反対側の開口部から別のセラミックス管を嵌合して24時間乾燥させた。乾燥後、セラミックス管及び筒状接合用継ぎ手を900℃にて24時間焼成させて接合を完了した。なお、この接合は特開平7-138081号公報にしたがって行った。
【0040】このようにして得られたセラミックス管の接合部に生じた残留歪みを、図1で説明した歪みゲージを用いる方法により測定した。得られた結果をセラミックス管、筒状接合用継ぎ手、接合材の平均熱膨張係数、並びにそれぞれの肉厚、厚みとともに表1に示す。表1に示すように、セラミック管の接合部に生じた残留歪みは歪みゲージの測定誤差限界程度と低く、良好な接合部を有するセラミックス管の接合体であるセラミック管フィルタが得られた。
【0041】(実施例2〜実施例7)平均熱膨張係数の異なった種々のセラミックス管及び筒状接合用継ぎ手を用い、さらに接合層の厚みtを変化させたことを除き、同様の方法によりセラミックス管接合体を作成してその接合部の残留歪みを測定したところ、接合部の残留歪みが充分に低い良好なセラミックス管接合体が得られた。
【0042】(比較例8〜比較例11)表1には、同時に比較例8〜11として得られた結果を示している。これらの比較例に示されるように、セラミックス管及び筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数差が2×10−7/℃より大きい場合及びセラミックス管及び筒状接合用継ぎ手の平均熱膨張係数が2×10−7/℃であっても、接合層の厚みtがセラミックス管の肉厚14mmに対して15%より大きい場合、すなわち2mmを超える場合には、接合部に大きな残留歪みの生じたセラミックス管の接合体しか得られなかった。
【0043】上記実施例の結果から、残留歪みを実使用時に問題のない50×10−6以下とするためには、接合材が充填されて形成される接合層の肉厚を2mm以下、すなわち、セラミックス管の肉厚に対して15%以下とし、かつ、セラミックス管及び接合用継ぎ手との平均熱膨張係数差を2×10−7/℃以下とすれば良いことがわかる。
【0044】
【発明の効果】本発明の接合方法によれば、接合材の充填される接合層の肉厚をセラミックス管肉厚の15%以下とすること、さらにはセラミックス管と筒状接合用継ぎ手との平均熱膨張係数の差を2×10−7/℃以下とすることにより、接合部に発生する残留歪みを充分に低くすることができる。この結果、接合部に残留歪みを生じさせずにセラミックス管を接合させたセラミックス管の接合体を提供できる。この接合体は、接合部が屈曲した構造を備えているため、接合部に亀裂が生じた場合でも接合部の内側面から外側面までの連続孔を形成することが無く、より信頼性を高めることができる。これは石炭発電など長期連続運転が要求される用途に応用する際の長期信頼性を確保する上で非常に大きな利点であり、産業上の利用効果は多大である。
【出願人】 【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
【出願日】 平成10年10月14日(1998.10.14)
【代理人】 【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
【公開番号】 特開2000−120973(P2000−120973A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−291226