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【発明の名称】 融着継手とその製造方法
【発明者】 【氏名】樋口 裕思

【氏名】宮木 誠二

【氏名】井上 博道

【要約】 【課題】熱可塑性樹脂製の継手本体を有し、この継手本体の接続管接合部に給電可能な抵抗加熱線が埋設されていている融着継手融着継手において、融着過程の融着熱によって、抵抗加熱線近傍の樹脂に含まれる酸化防止剤を消費し、融着後の継手接続部の耐熱性に問題があった。本発明は、このような事情を鑑みて、融着後も融着部が十分な耐熱性を有する融着継手とその製造方法を提供することを目的としている。

【解決手段】前記抵抗加熱線4を含む第1領域11に含まれる酸化防止剤の濃度を、前記継手本体2における、前記第1領域11以外の第2領域12に含まれる酸化防止剤の濃度よりも高くしたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂製の継手本体を有し、この継手本体の接続管接合部に給電可能な抵抗加熱線が埋設されていている融着継手であって、前記抵抗加熱線を含む第1領域に含まれる酸化防止剤の濃度を、前記継手本体における、前記第1領域以外の第2領域に含まれる酸化防止剤の濃度よりも高くした融着継手。
【請求項2】 前記抵抗加熱線の中心からみて、抵抗加熱線の半径の1.1〜7倍の領域内に、前記第1領域の少なくとも一部が備えられている請求項1記載の融着継手。
【請求項3】 前記第1領域に含まれる酸化防止剤の濃度が1000〜10000ppmである請求項1又は2記載の融着継手。
【請求項4】 熱可塑性樹脂製の継手本体を有し、この継手本体の接続管接合部に給電可能な抵抗加熱線が埋設されていている融着継手の製造方法であって、前記継手本体より高い濃度の酸化防止剤を含む被覆材を抵抗加熱線に被覆し、被覆した抵抗加熱線を円筒状の芯型に巻き付けた後に、金型に装着し、射出成形する融着継手の製造方法。
【請求項5】 熱可塑性樹脂製の継手本体を有し、この継手本体の接続管接合部に給電可能な抵抗加熱線が埋設されていている融着継手の製造方法であって、前記継手本体より高い濃度の酸化防止剤を含み、外周面に螺旋状の溝を形成した筒に、前記抵抗加熱線を螺旋状の溝に嵌まり込ませながら巻き付けた後に、金型に装着し、前記継手本体の樹脂により射出成形する融着継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、融着継手とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この融着継手は、たとえば、特公昭61−41292号公報や特開平4−347094号公報に記載されているように、熱可塑性樹脂で形成された継手本体の接続管接合部の内周面近傍に抵抗加熱線が螺旋状に埋設されて構成されている。この融着継手の使用に際しては、接続管接合部に同じく熱可塑性樹脂製の接続管を嵌め合わせたのち、電気融着装置を介して抵抗加熱線に通電し抵抗加熱線を発熱させ、この発熱によって接続管接合部の内周面とその近傍、および、接続管の外周面とその近傍を溶融することによって継手本体と接続管とを簡単に接合一体化できる。また、この種の融着継手で、ポリエチレン製の融着継手の場合、その製造過程において、抵抗加熱線を継手本体の樹脂と同等の被覆樹脂で被覆し、被覆した抵抗加熱線を円筒状の芯型に巻き付け、金型に装着し射出成形することがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この融着継手では、融着過程の融着熱によって、抵抗加熱線近傍の樹脂に含まれる酸化防止剤を消費し、融着後の継手接続部の耐熱性に問題があった。本発明は、このような事情を鑑みて、融着後も融着部が十分な耐熱性を有する融着継手とその製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明に係る融着継手は、熱可塑性樹脂製の継手本体を有し、この継手本体の接続管接合部に給電可能な抵抗加熱線が埋設されていている融着継手であって、前記抵抗加熱線を含む第1領域に含まれる酸化防止剤の濃度を、前記継手本体における、前記第1領域以外の第2領域に含まれる酸化防止剤の濃度よりも高くしたことにある。この構成により、融着時の前記抵抗加熱線の発熱で酸化防止剤が消費された後の、前記融着継手の継手接続部における耐熱性が改善される。また、前述の構成において、前記抵抗加熱線の中心からみて、抵抗加熱線の半径の1.1〜7倍の領域内に、前記第1領域の少なくとも一部が備えられていることが好ましく、1.1〜3.5倍とするのがさらに好ましい。しかし、前記幅を抵抗加熱線の径に対して1.1倍以下とすると、前記抵抗加熱線の発熱により、融着熱が前記第1領域に隣接している前記第2領域、および、酸化防止剤を多く添加していない部分の酸化防止剤を消費し、耐熱性の低下が考えられる。また、前記幅を抵抗加熱線の径に対して7倍以上にすると、前記抵抗加熱線の発熱による影響は十分に前記第1領域内に収まるが、材料費等が高騰し、製作上有利でない。前述の構成において、前記第1領域に含まれる酸化防止剤の濃度が1000〜10000ppmであるのが好ましく、1000〜5000ppmにするのがさらに好ましい。通常第2領域における酸化防止剤の濃度は500ppm程度であるが、これとの関係で、前記濃度を1000ppm以下にすると前記抵抗加熱線の発熱により消費される酸化防止剤の量を十分に補えない場合もある。この場合、融着後の接続管接合部の耐熱性を、継手本体部および管本体部と同等にすることができず、劣ってしまう。また、濃度を10000ppm以上にすると、実際に使用している樹脂のポリエチレン樹脂が混ざりにくくなり、成形加工時に問題があり、製作上有利でない。第2領域における酸化防止剤濃度と第1領域における酸化防止剤濃度との関係は前記の酸化防止剤濃度条件を満たして、後者が前者に対して1.5〜3倍とされていることが望ましい。
【0005】また、本発明に係る融着継手の製造方法は、熱可塑性樹脂製の継手本体を有し、この継手本体の接続管接合部に給電可能な抵抗加熱線が埋設されていている融着継手の製造方法であって、前記継手本体より高い濃度の酸化防止剤を含む被覆材を抵抗加熱線に被覆し、被覆した抵抗加熱線を円筒状の芯型に巻き付け、金型に装着し、射出成形することにある。また、本発明に係る融着継手の製造方法は、熱可塑性樹脂製の継手本体を有し、この継手本体の接続管接合部に給電可能な抵抗加熱線が埋設されていている融着継手の製造方法であって、前記継手本体より高い濃度の酸化防止剤を含み、外周面に螺旋状の溝を形成した筒に、前記抵抗加熱線を螺旋状の溝に嵌まり込ませながら巻き付けた後に金型に装着し、前記継手本体の樹脂により射出成形することにある。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の融着継手とその製造方法についての実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る融着継手について、1つの実施の形態をあらわしている。図1に示すように、本発明の融着継手2は、継手本体1と、端子9a、9bより給電可能な抵抗加熱線4を備えている。また、融着時に前記抵抗加熱線4の発熱の影響がある第1領域11と、前記継手本体1における前記第1領域11以外の第2領域12を備えている。この構成の融着継手において、第1領域11の前記幅を前記抵抗加熱線の2倍とする。
【0007】図2、3は本発明の実施の形態をあらわしている。酸化防止剤の濃度が1000ppmのポリエチレン樹脂の被覆材5を抵抗加熱線4に被覆し、被覆した抵抗加熱線4を円筒状の芯型6に巻き付け、図3で示す、金型7に装着し、酸化防止剤の濃度が500ppmのポリエチレン樹脂で射出成形する。ここで被覆材5の厚みは抵抗加熱線4の直径とほぼ同一である。なお、酸化防止剤とは樹脂の熱酸化劣化を防止する添加剤のことであり、ここでの酸化防止剤は、ほとんどの樹脂に使用されているフェノール系酸化防止剤を使用する。この製造方法により製造された融着継手2は、融着時に前記抵抗加熱線4の発熱により、被覆材5の酸化防止剤を消費する、しかし、前記被覆材5は前記継手本体1より高い濃度の酸化防止剤を含み、融着後の酸化防止剤の濃度を前記継手本体1と同等に保つことができ、融着後の耐熱性の低下を抑制することができる。
【0008】〔実験例〕以下に、継手全体において、酸化防止剤の濃度が500ppmのポリエチレン樹脂で形成されている従来の融着継手(以下、従来の融着継手)と、本発明に係る、抵抗加熱線近傍において、酸化防止剤の濃度が1000ppmのポリエチレン樹脂で形成され、それ以外の継手本体部分において、酸化防止剤の濃度が500ppmのポリエチレン樹脂で形成されている融着継手(本発明の融着継手)の比較した結果を示す。ここで、耐熱性を評価する手法(JIS K 6774:1998(ガス用ポリエチレン管)6.6熱安定性試験に基づく)として、酸化誘導時間(OIT)測定法を用いた。この方法は、測定試料を熱分析手法(DSC)を用いて昇温させ発熱までに要する時間を測定する方法である。すなわち、酸化誘導時間が長いと耐熱性がよい樹脂であり、短いと耐熱性がよくない樹脂であると判断できる。本試験に使用したポリエチレン樹脂に添加した酸化防止剤量と酸化誘導時間の関係はほぼ一意的な関係であることから、融着継手の融着時に消費する酸化防止剤の量を求め、融着時に消費される以上の酸化防止剤を融着継手の抵抗加熱線近傍に添加した本発明の融着継手を製作した。表1に、本試験における、管、融着継手本体、加熱抵抗線近傍の融着前、融着後の酸化誘導時間を表している。
【0009】
【表1】

【0010】表1に示すように、本発明の融着継手の融着前に加熱抵抗線の近傍の酸化誘導時間は、酸化防止剤の融着時消費分以上の添加したことにより、他の部分より50分と長くなっている。融着後は融着熱により酸化防止剤を消費し、25分となり、管、融着継手、抵抗加熱線近傍の酸化誘導時間はほぼ均一になる。よって、本発明の融着継手は融着後でも抵抗加熱線近傍の耐熱性は管、継手本体と比べほぼ同等であり、従来の融着継手において、抵抗加熱線近傍の耐熱性の悪化という問題は解消できるといえる。比較例とし、継手本体において、酸化防止剤の濃度が500ppmのポリエチレン樹脂で形成されている従来の融着継手において、表1に示すように、融着前後の管、継手本体、抵抗加熱線近傍の酸化誘導時間を測定した。融着前後では、抵抗加熱線近傍の酸化誘導時間が28分から5分になり、融着時の抵抗加熱線の発熱により酸化防止剤が消費されていることがわかり、融着後の抵抗加熱線近傍の耐熱性に問題があることがわかる。このことより、抵抗加熱線近傍の酸化防止剤を融着時に消費される量を見込んで多く添加することにより、融着時の発熱による耐熱性の悪化が抑制されることがわかる。
【0011】〔別実施の形態〕前述の実施の形態において、前記抵抗加熱線4に被覆材5を被覆した製造方法としたが、図4に示すように、抵抗加熱線4を、外周面に螺旋状の溝17を形成した筒14の前記螺旋状の溝17に嵌まり込ませながら巻き付け、その後、金型15に装着し、継手本体16の樹脂により射出成形をし製造してもよい。また、継手本体において、その第1領域の酸化防止剤の濃度が1000ppmであり、第2領域の酸化防止剤の濃度が500ppmである例を示したが、本願の目的は、第1領域の酸化防止剤の濃度が、第2領域の酸化防止剤の濃度より高ければ程度の差こそあれ、融着において消費される酸化防止剤の補充の役割を果せる。さらに、第1領域の酸化防止剤の濃度は10000ppm程度まで許容される。また、前述の実施の形態において、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を使用したが、酸化防止剤としてイオウ系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤を使用してもかまわない。
【0012】
【発明の効果】本発明に係る融着継手およびその製造方法は、以上のように構成されているので、融着後の融着部において、管および継手本体と同等の耐熱性を有することが可能である。したがって、融着継手の配管システム全体としての信頼性が向上する。
【0013】
【出願人】 【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【出願日】 平成10年10月8日(1998.10.8)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2000−120972(P2000−120972A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−286326