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【発明の名称】 冷媒輸送用ホース
【発明者】 【氏名】櫛笥 隆数

【要約】 【課題】本発明は内面樹脂バリア層を有することなく耐冷媒透過性にも優れ、かつ柔軟性にも優れた、そして製造時のマンドル抜き出し性も容易な冷媒輸送用ホースを比較的低コストにて供給することを目的としたものである。

【解決手段】内層側から内管ゴム層、補強層、そして外被ゴム層を順次積層してなる冷媒輸送用ホースにおいて、前記内管ゴム層が2層以上の異なる配合で構成された層からなることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内層側から内管ゴム層、補強層、そして外被ゴム層を順次積層してなる冷媒輸送用ホースにおいて、前記内管ゴム層が2層以上の異なる配合で構成された層からなることを特徴とする冷媒輸送用ホース。
【請求項2】 前記ホースにおいて、2層以上の内管ゴム層の少なくとも一方の層にIIR系ゴムを用いたことを特徴とする請求項第1項記載の冷媒輸送用ホース。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はゴム及び補強層の組み合わせにより構成される冷媒輸送用ホースに関するもので、特には自動車用冷媒輸送用ホースに係るものである。
【0002】
【従来の技術】最内層にナイロン等の内面樹脂層を有し、その外側に内管ゴム層、補強層及び外被ゴム層が順次積層されてなる複合ホースが、耐冷媒透過性、耐透水性、耐熱耐久性等に優れており、主に自動車用冷媒輸送ホースとして使用されている。
【0003】ところで、自動車のエンジンルームのコンパクト化等によるエンジンルームの高温化が進むこと、及び地球温暖化ガスの発散削減を図るために、ホ−スからの冷媒の透過量を抑える必要が出てきている。また自動車室内の振動騒音を低減するために、優れた柔軟性を持つホースが要求されている。このため、自動車用冷媒輸送用ホースについては、高温環境下における冷媒透過量低減と、優れた柔軟性を両立させるために、内面樹脂バリア層を持つホースが発明され既に実用に供せられている。
【0004】しかし、これまでに実用に供せられた自動車用冷媒輸送ホースは、耐冷媒透過性を良くしようとすれば比較的硬い内面樹脂バリア層を厚くせざるを得ず、柔軟性が犠牲になるといった状況にあった。
【0005】また、近年の高温化に対応し耐熱耐久性を向上させるためには、各構成材料を硬くすることでも効果があることが判明しているが、これもまた柔軟性が犠牲になっていた。逆に、柔軟性を向上させるために内面樹脂層を省いたホースも実用化されているが、冷媒透過量が多くなるという欠点があり、更には、内管ゴム層へ鱗片状の充填材(例えばミストロンペーパー)等の透過量を減らす材料を配合するという提案もされているが、この場合には製造時のマンドル抜き出し性が極度に悪化するといった欠点があり、この両者を同時に満足させることは非常に困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記二律背反する要求特性、すなわち内面樹脂バリア層を有することなく耐冷媒透過性にも優れ、かつ柔軟性にも優れた、そして製造時のマンドル抜き出し性も容易な冷媒輸送用ホースを比較的低コストにて供給することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の請求項は、内層側から内管ゴム層、補強層、そして外被ゴム層を順次積層してなる冷媒輸送用ホースにおいて、前記内管ゴム層が2層以上の異なる配合で構成された層からなることを特徴とする冷媒輸送用ホースである。
【0008】更に、本発明の第2の請求項は、前記ホースにおいて、2層以上の内管ゴム層の少なくとも一方の層にIIR系ゴムを用いたことを特徴とする冷媒輸送用ホースである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の冷媒輸送用ホースは、最内層にはマンドルの材質に対して離型性に優れた内管ゴム層(以下これを第1内管ゴム層という)があり、耐冷媒、耐油性に優れた材料で構成される。用いられる材質としては具体的には、IIR、EPDM、NBR、CRなどが好ましく使用される。この第1内管ゴム層の機能は主にマンドル抜き出し性の向上にあり、あまり厚くする必要はなく生産性を損なわない程度の厚さに決定することができる。通常は0.2〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1.0mmの厚さで用いるとよい。
【0010】その上の内管ゴム層(以下これを第2内管ゴム層という)の持つ機能としては、内圧を支持すると共に冷媒透過更には外部からの水分の侵入を減らす機能を持っている。この第2内管ゴム層は十分な耐冷媒透過性を持たせるために主ポリマーをIIR系のものとし、更に耐透過性能向上のため、例えばミストロンペーパー(鱗片状充填材)等のガスバリア機能を有する原料を配合することが好ましい。ガスバリア機能を有する原料を配合するとゴム自身の表面が荒れることによりマンドル抜き出し性が極度に悪化するが、本発明のように第2内管ゴム層に配合することにより問題にならない。
【0011】またゲージ設定に当たっては、耐透過性能、柔軟性等を考慮してゲージ設定することができる。ゲージを厚くすればより冷媒透過、水分の透過を抑える性能は当然向上する。通常0.5〜2.5mmの範囲で用いられ、より好ましくは0.8〜1.5mmの厚さで用いるとよい。
【0012】尚、2層以上の各内管ゴム層の接着をより強固なものとするために接着剤を用いることも可能であり、或いはコロナ放電処理等の表面処理を施してより強固な接着力をもたらすこともできる。
【0013】2層以上の内管ゴム層の上に補強層が積層されるが、この補強層は通常スパイラル状の構造に編み上げられる。この補強層は内部流体の圧力を支持する機能及び内圧を受けた時のホース内径変化を抑える機能を持つものであり、高い弾性率を有することが求められ、更には耐疲労性や耐熱性に優れていることが必要である。具体的な材質としては、PET糸、ビニロン、ナイロン、PEN、アラミド、芳香族PET糸等が好ましく使用されるが、特にこれらの材質に限定されるものではない。更には必要に応じて2種以上の材質を組み合わせた混紡糸を用いてもよい。
【0014】補強層における補強糸の太さ、編み上げ本数等については実使用圧力に対し安全率を考慮した設計が必要である。またスパイラルの補強構造は特に制限はないが、本発明の場合、反対方向に2層以上巻き付けることとし必要に応じて各層間に中間ゴム層を設けることもできる。更には補強層と内管ゴム層の間に下編み層を設けてもよい。また必要に応じて補強層の外周面に押え糸を設けることもできる。補強糸の弾性率を高くすると弾性率の低い補強糸を使用した場合に比べ加圧時の内径変化は少なくなり、同一使用環境下では相対的にホース内径が小さくなり、結果冷媒透過量を抑えられる。
【0015】この補強糸の太さは通常56〜778tex[500〜7000D]、好ましくは222〜556tex[2000〜5000D]の範囲の中のものが用いられる。また、補強糸の本数はホースの径にもよるが通常一層あたり8〜60本、好ましくは12〜36本の本数の範囲で用いられる。
【0016】補強層の上の最外層は外被ゴム層であり、主として補強層を保護する機能を有している。材料、ゲージの選定に当たっては、耐オゾンクラック性、耐熱耐油性、柔軟性、外観性能等を考慮して決定する。該ゴム層の厚さは0.5〜2.5mm、好ましくは0.8〜1.5mmの範囲の中のものを用いる。また必要に応じて外被ゴム表面にガス抜き用のブリッキングホールを設けてもよい。
【0017】
【実施例】図1に本発明による低透過性能を有する冷媒輸送用ホースの実施例を示すが、本発明は勿論これに限定されるものではない。本実施例は内管ゴム層が2層の場合についてのものであり、11は第1内管ゴム層、12は第2内管ゴム層、13、15は補強層、14は中間ゴム層、16は外被ゴム層である。
【0018】[実施例1]
(1)第1内管ゴム層11の主ポリマーとしてIIRを原料として用いた。尚、本実施例では第1内管ゴム層11中にはガスバリア性向上原料は配合されていない。この第1内管ゴム層11の厚さは0.5mmで作製した。
(2)第2内管ゴム層12の主ポリマーとしてIIRを原料として用いた。尚、本第2内管ゴム層12中にはガスバリア性向上原料(ミストロンペーパー)を配合した。この第2内管ゴム層12の厚さは1.5mmで作製した。
(3)補強層は2層のスパイラル構造13、15とし、その間に中間ゴム層14を設けた。補強層を構成する補強糸材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。
(4)外被ゴム層16は材料にはEPDMを用いた。厚さは1mmである。また本例では補強層に溜ったガスを抜くためにブリッキングホールを設けた。
【0019】[実施例2]実施例1において、第1内管ゴム層11、第2内管ゴム層12の厚さを夫々1.0mmとした以外には実施例1と同一の条件で作製した。
【0020】[実施例3]実施例1において、第1内管ゴム層11の主ポリマーとしてIIRの代わりにEPDMを原料として用いた以外は全く実施例1と同じ条件で作製した。
【0021】[実施例4]実施例1において、第1内管ゴム層11の主ポリマーとしてIIRの代わりにNBRを原料として用いた以外は全く実施例1と同じ条件で作製した。
【0022】[比較例1]第2内管ゴム層を有しない通常の構造のホースとし、内管ゴム層の材料を通常用いられるIIR配合としたもので、該内管ゴム層の厚さを2.0mmで作製した。それ以外の補強層、外被ゴム層の条件は実施例1と同一のものとした。
【0023】[比較例2]比較例1において、内管ゴム層の材料を通常用いられるIIR配合とし、更に透過量を減ずるためのミストロンペーパー(鱗片状充填材)を配合したもので、他の条件はいずれも比較例1と同一のものとした。
【0024】以上のように構成した低透過性を有する冷媒輸送用ホースについて、試作実施し評価を行った。結果は図2に示す通りである。尚、この図2に示すホースの寸法はすべて同一(内径15.0mm、外径23.6mm)であり、また第1、第2内管ゴム層の材質、ゲージを除く他すべての条件は同一として試作し評価を行った。
【0025】柔軟性についてはR100のマンドルに巻き付けた時の荷重を測定した。
【0026】冷媒透過性についてはホ−ス内容積に対し0.6g/cm3 の冷媒(HFC−134a)を封入し、80℃の恒温槽中に96時間放置し、試験開始後24〜96時間における重量変化を測定してその値を冷媒透過量とした。
【0027】水分透過性については100℃×24時間の予備乾燥を実施したホ−スの内容積に対し、0.5g/cm3 の乾燥剤(モレキュラシ−ブス(4A))を封入し密栓する。なお、乾燥剤は十分乾燥したものを用い、封入する分の質量について予め秤量しておく。その後、60℃×95%Rhの環境下に168時間放置し、試験後の乾燥剤の質量を秤量しその質量変化を水分透過量とした。
【0028】コストについてはホ−ス製造時の生産性等をも考慮して評価した。
【0029】上記の結果から分かるように、実施例1〜3においては、評価した項目全てにおいて必要かつ十分な結果を得ることができた。又実施例4においても、若干水分透過性が犠牲となってはいるが十分実用レベルにあることが明白となった。
【0030】一方、比較例においては、第2内管ゴム層を持たない通常の構造としたものであり、比較例1においては該ゴム層を通常の配合であるIIRとしたためマンドル抜き出し性は必要十分であるが、冷媒透過性が悪く、また比較例2においては内管ゴム層にミストロンペーパーのごとき鱗片状充填材を配合したことにより冷媒透過性は改善され優れているものの、マンドル抜き出し性が顕著に悪化するという結果となった。
【0031】
【発明の効果】本発明のホ−スにあっては、内面バリア層がないにも係らず耐冷媒透過性に優れ、更には柔軟性に優れ、その上製造時のマンドル抜出し性においても優れた冷媒輸送用ホースを比較的廉価に供給することが可能となり、当初の目的を達成することができたものである。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成10年10月16日(1998.10.16)
【代理人】 【識別番号】100086896
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 悦郎
【公開番号】 特開2000−120943(P2000−120943A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−295233