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【発明の名称】 吊り下げ器具
【発明者】 【氏名】久野 幸男

【要約】 【課題】

【解決手段】吊り下げ器具10は、吊り下げ部材11と、固定用部材12と、接着剤挟持部材13とを備え、固定用部材12と接着剤挟持部材13とはヒンジ部15を中心に折り畳み可能であり、固定用部材12と接着剤挟持部材13との間に形成された接着剤収容部14には接着剤16が収容されている。また、固定用部材12には、接着剤16を浸出させるための複数の浸出孔12aと、接着剤挟持部材13の先端部分と係合する係合部17とが形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被吊下物を保持する吊り下げ部材と、前記吊り下げ部材を支持体に固定するための固定用部材と、前記固定用部材に設けられた接着剤保持手段とを備えたことを特徴とする吊り下げ器具。
【請求項2】 前記接着剤保持手段として、前記固定用部材に付設された接着剤挟持部材と、前記固定用部材と前記接着剤挟持部材との間に形成された接着剤収容部と、前記接着剤収容部の外周に設けられた接着剤浸出口と、前記接着剤収容部の容積を減少させる圧縮機構とを備えた請求項1記載の吊り下げ器具。
【請求項3】 前記固定用部材または前記接着剤挟持部材に、前記接着剤を浸出させるための浸出孔を形成した請求項1〜2記載の吊り下げ器具。
【請求項4】 前記圧縮機構として、前記接着剤挟持部材と前記固定用部材とを蝶番状に連結する蝶番部材を設けた請求項2,3記載の吊り下げ器具。
【請求項5】 前記圧縮機構として、前記接着剤挟持部材と前記固定用部材とを接近可能に連結するネジを備えた請求項2,3記載の吊り下げ器具。
【請求項6】 前記圧縮機構として、前記接着剤挟持部材と前記固定用部材との間に、前記接着剤収容部の容積を減少させるスライド部材を設けた請求項2,3記載の吊り下げ器具。
【請求項7】 前記接着剤保持手段に、外部からの加圧力によって破裂する被覆材で被覆された接着剤を備えた請求項1記載の吊り下げ器具。
【請求項8】 前記接着剤収容部に、前記接着剤収容部の収縮によって破裂する被覆材で被覆された接着剤を内蔵させた請求項2記載の吊り下げ器具。
【請求項9】 前記接着剤が、互いに混合させることによって接着力を生じる複数の接着素材が前記被覆材で個別に被覆されたものである請求項7,8記載の吊り下げ器具。
【請求項10】 前記接着剤が、互いに混合させることによって接着力を生じる複数の接着素材で構成されるとともに、前記接着素材の少なくとも一つを多孔質材料に含浸させ、残りの前記接着素材を前記被覆材で被覆した請求項7,8記載の吊り下げ器具。
【請求項11】 前記接着素材の少なくとも一つを含浸させた前記多孔質材料に、前記被覆材で被覆した残りの前記接着素材を内蔵させた請求項10記載の吊り下げ部材。
【請求項12】 前記接着剤収容部を形成する前記固定用部材、前記接着剤挟持部材の少なくとも一方に、前記被覆材を破裂させるための突起部を設けた請求項8〜11記載の吊り下げ器具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物の天井裏の空間部分などにおいて、空調用ダクト、各種配管、配線類などを吊り下げ状態で保持するための吊り下げ器具に関する。
【0002】
【従来の技術】オフィスビルや工場などの各種建築物の内部には、空調用ダクト、給水管、排水管あるいは各種電気配線、通信用ケーブルなどが多数配置されている。これらの空調用ダクト、各種配管、各種電気配線類などは、吊り下げ器具を用いて、建築物の天井裏の空間部分に吊り下げ状態に保持されている。
【0003】例えば、オフィスビルなどの天井裏に空調用ダクトを取り付ける場合、従来より、図13(a)あるいは同(b)に示すような施工方法が採用されている。
【0004】図13(a)に示す施工方法の場合、天井91と床92との間にある空間に配置された空調用ダクト90は、吊り下げ器具93によって床92の下面側に吊り下げられている。吊り下げ器具93は、空調用ダクト90を把持するダクト把持具93aと、ダクト把持具93aを床92に固定する吊り金具93bなどによって構成されている。この場合、予め吊り金具93bをデッキプレート94を貫通させて鉄筋95などに絡めておき、その後、コンクリート96を打設して床92を形成するという工法が採用されている。
【0005】一方、図13(b)に示す施工方法の場合、空調用ダクト90は、ダクト把持具98aおよび吊り金具98bなどで構成される吊り下げ器具98によって床92の下面側に吊り下げられている。この場合、コンクリート96を打設して床92を形成した後、天井91側からデッキプレート94を貫通させてホールインアンカー97を打ち込み、これに吊り金具98bをねじ込んだ後、ダクト把持具98aを取り付けるという工法が採用されている。
【0006】ところが、これらの施工方法に用いられる吊り下げ器具93,98は、デッキプレート94およびコンクリート96などの支持体を加工して吊り金具93b,98bを吊り下げる必要があるため、作業が面倒である。また、一旦取り付けた吊り金具93b,98bの移動は容易でないため、吊り下げ位置の調整が必要となった場合の対応が困難である。さらに、吊り金具93b,98bの取り付け作業時などに、騒音や粉塵が発生し、作業者の負担も大である。
【0007】そこで、このような問題を解決することが可能な吊り下げ器具の一つとして、磁気式の吊り具が開発され、特開平8−338569号公報、特開平9−159067号公報などにおいて開示されている。これらの吊り具を用いることにより、ダクトや各種配管などの施工に際し、予め吊り金具をデッキプレートに設置したり、デッキプレートにホールインアンカーなどを打ち込む必要がなくなり、ダクトなどを容易に施工することができるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特開平8−338569号公報、特開平9−159067号公報などにおいて開示されている磁気式吊り具は、強磁性体でなければ吸着しないため、デッキプレートなどの支持体が非磁性体で形成されている建築物、構造物においては使用することができない。
【0009】また、強力な吸着力を得るためには比較的大型の磁石を必要とするので、磁気吸着部材が嵩張るとともに重量も重くなり、狭い場所における施工が困難であり、漏れ磁束対策も面倒である。さらに、長期間経過するうちに徐々に磁石の磁力が減衰して吸着部分が外れ、吊り下げているダクトなどが脱落する可能性も否定できない。
【0010】一方、特開平8−338569号公報においては、磁気式吊り金具の吸着力を補強するとともに、その位置ずれを防止するために接着剤を使用する例が開示されているが、デッキプレートなどの支持体が非磁性体である場合、接着剤を使用して吸着させたとしても、磁石は吊り下げ重量を増大させ、吊り金具の負担を増大させる無用な部材となるため、磁石が吸着しない支持体に対しては、実質的に使用不可能である。
【0011】また、接着剤を併用する場合、吸着作業の直前に接着剤を塗布しなければならないため、作業現場に接着剤を持ち込む必要があり、高い位置や狭い場所での施工が困難である。さらに、接着剤を併用しても、漏れ磁束対策などが必要であるため、前述した磁気式吊り金具特有の問題点を解決することはできない。
【0012】そこで、本発明が解決しようとする課題は、支持体の材質に左右されず容易に施工可能で、狭い場所などでの施工性も良好であり、長期間に渡って安定した吊り下げ機能を発揮する、吊り下げ器具を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明の吊り下げ器具は、被吊下物を保持する吊り下げ部材と、吊り下げ部材を支持体に固定するための固定用部材と、固定用部材に設けられた接着剤保持手段とを備えたことを特徴とする。このような構成とすることにより、接着剤保持手段で保持された接着剤を介して固定用部材は支持体に強固に固着されるため、吊り下げ部材で被吊下物を保持することができる。
【0014】この場合、嵩張る磁石や打ち込みが面倒なアンカーなどが不要であるため、支持体の材質に左右されず容易に施工可能であり、予め接着剤を接着剤保持手段に保持させておいて固着作業を開始可能であり、接着剤を作業現場に持ち込む必要がないため、高い位置や狭い場所での施工性も良好である。また、接着剤が硬化した後は固着力が減衰するおそれもなく、長期間に渡って安定した吊り下げ機能を発揮する。
【0015】なお、本発明の吊り下げ器具を用いて被吊下物を保持する場合、吊り下げ部材と被吊下物との間にワイヤーや吊りバンドなどの各種吊下用部材を介在させる工法、あるいは被吊下物を直接吊り下げ部材で保持する工法の何れをも採用可能であるため、被吊下物のサイズや形状、その他の施工条件などに応じて適切な工法を選択することができる。
【0016】また、接着剤保持手段として、固定用部材に付設された接着剤挟持部材と、固定用部材と接着剤挟持部材との間に形成された接着剤収容部と、接着剤収容部の外周に設けられた接着剤浸出口と、接着剤収容部の容積を減少させる圧縮機構とを備えることにより、接着剤収容部の容積を減少させるだけで、接着剤浸出口から外に接着剤が浸出して、接着可能な状態となるため、施工が容易である。
【0017】さらに、固定用部材または接着剤挟持部材に、接着剤を浸出させるための浸出孔を形成することにより、接着剤をスムーズに浸出させることが可能となるため、施工性が向上する。この場合、固定用部材または接着剤挟持部材に、複数の浸出孔を分散配置した構造にすれば、接着剤を均一に浸出させることが可能となるため、接着面の全面に渡ってムラのない安定した接着力を得ることができる。
【0018】ここで、圧縮機構として、接着剤挟持部材と固定用部材とを蝶番状に連結する蝶番部材を設けることにより、蝶番部材を中心にして接着剤挟持部材と固定用部材とが重なり合うように折り畳むだけで、接着剤収容部の容積が減少し、接着剤浸出口あるいは浸出孔から接着剤が浸出して、接着可能な状態となるため、施工性がさらに向上する。
【0019】この場合、圧縮機構として、接着剤挟持部材と固定用部材とを接近可能に連結するネジを備えた構造とすることにより、比較的強い締付け力を発揮するネジの作用で接着剤挟持部材と固定用部材とを接近させ、接着剤収容部の接着剤を浸出させることができるようになるため、粘性が高く、流動しにくい接着剤でも簡単に浸出させることが可能となる。
【0020】また、圧縮機構として、接着剤挟持部材と固定用部材との間に、接着剤収容部の容積を減少させるスライド部材を設けた構造とすることにより、スライド部材をスライドさせるだけで接着剤収容部の接着剤を浸出させることが可能となるため、作業者の負担を低減することができる。
【0021】ここで、接着剤保持手段に、外部からの加圧力によって破裂する被覆材で被覆された接着剤を備えた構造とすることにより、施工現場では、被覆材を加圧して破裂させれば接着剤が浸出して接着可能な状態となるため、接着剤を塗布したり注入する手間が省け、施工性が向上する。
【0022】また、接着剤収容部に、接着剤収容部の収縮によって破裂する被覆材で被覆された接着剤を内蔵させた構造とすることにより、接着剤収容部を収縮させるだけで、被覆材が破裂して接着剤が浸出して、接着可能な状態となるため、接着剤を塗布する手間が省けるとともに、作業者の手などが汚れるのを防止することができる。
【0023】さらに、接着剤として、互いに混合させることによって接着力を生じる複数の接着素材が被覆材で個別に被覆されたものを用いることができる。これによって、強力な接着力を発揮するエポキシ樹脂系接着剤あるいは二液混合式の急速硬化型接着剤などの使用も可能となるため、支持体などの材質に最適な接着剤を用いて確実な固着を行うことができるようになる。
【0024】この場合、接着剤として、互いに混合させることによって接着力を生じる複数の接着素材で構成されるとともに、接着素材の少なくとも一つを多孔質材料に含浸させ、残りの接着素材を被覆材で被覆したものを用いることができる。これにより、被覆材を破裂させて一方の接着素材を多孔質材料に移行させれば、接着素材が混合されて接着可能な状態となるため、施工現場における接着素材の混合作業が容易となり、混合作業中の接着素材の漏出なども防止することができる。
【0025】ここで、接着素材の少なくとも一つを含浸させた多孔質材料に、被覆材で被覆した残りの接着素材を内蔵させた構造とすることができる。このような構造とすることにより、被覆材で被覆された接着剤は多孔質材料で包まれた状態となるため、誤って被覆材が破裂するのを防止することができる。
【0026】さらに、接着剤収容部を形成する固定用部材、接着剤挟持部材の少なくとも一方に、被覆材を破裂させるための突起部を設けた構造とすることができる。このような構造とすることにより、固定用部材と接着剤挟持部材とを接近させる際に、突起部で被覆材を破裂させることが可能となるため、接着準備作業が容易となる。また、突起部以外の加圧力では破裂しないような、比較的高強度の被覆材で接着材または接着素材を被覆することが可能となるため、過誤による被覆材破裂を防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は第1実施形態の吊り下げ器具を示す斜視図、図2(a)(b)は前記吊り下げ器具の使用状態を示す説明図、図3は前記吊り下げ器具の施工方法を示す説明図である。
【0028】本実施形態の吊り下げ器具10は、図1に示すように、被吊下物を保持するための吊り下げ部材11と、吊り下げ部材11を支持体に固定するための固定用部材12と接着剤挟持部材13とを備えている。また、固定用部材12と接着剤挟持部材13とは、ヒンジ部15を中心にして折り畳み可能であり、固定用部材12と接着剤挟持部材13との間に形成された接着剤収容部14には接着剤16が収容されている。さらに、固定用部材12には、接着剤16を浸出させるため、複数の浸出孔12aが設けられるとともに、接着剤挟持部材13の先端部分と係合する係合部17が形成されている。
【0029】したがって、図2(a)に示すように、接着剤16によってデッキプレート19に固定された吊り下げ器具10の吊り下げ部材11に、ダクト18に装着された吊りバンド25を掛けることにより、ダクト18を保持することができる。また、ダクト18などに比べて外径が比較的小さい配管28や配線類などを吊り下げる場合は、図2(b)に示すように、接着剤16によってデッキプレート19に固定された吊り下げ器具10の吊り下げ部材11に、配管28などを直接吊り下げることもできる。
【0030】吊り下げ器具10を使用する場合、図3(a)に示すように、吊り下げ器具10の接着剤収容部14に接着剤16を収容させた後、固定用部材12が接着剤挟持部材13に重なり合うように折り畳んで、係合部17を接着剤挟持部材13の先端部分に係合させると、図3(b)に示すように、接着剤16が浸出孔12aから浸出して、接着可能な状態となる。この後、固定用部材12をデッキプレート19に押し付けると、浸出した接着剤16によって固定用部材12がデッキプレート19に固定されるので、接着剤16が硬化すれば、吊り下げ部材11に、ダクト18に装着された吊りバンド25あるいは配管28などを吊り下げることが可能となる。
【0031】このように、固定用部材12は、浸出孔12aから浸出した接着剤16を介してデッキプレート19に強固に固着されるため、吊り下げ部材11で、ダクト吊下用の吊りバンド25あるいは配管28などを吊り下げ状態に保持することができる。このように、吊り下げ器具10の場合、嵩張る磁石や打ち込みが面倒なアンカーなどが不要であるため、デッキプレート19の材質に左右されず容易に施工可能である。また、予め接着剤収容部14に接着剤16を収容させておいて固着作業を開始することが可能であり、接着剤を固着作業現場まで持ち込む必要がないため、高い位置や狭い場所での施工性も良好である。さらに、接着剤16が硬化した後、その固着力が減衰するおそれもなく、長期間に渡って安定した吊り下げ機能を発揮する。
【0032】また、吊り下げ器具10の場合、固定用部材12には、複数の浸出孔12aが分散配置されているため、接着剤16をスムーズに浸出させることが可能で施工性が良好であるとともに、固定用部材12の上面全体に接着剤16を均一に浸出させることが可能であるため、ムラのない安定した接着力を得ることができる。なお、固定用部材12の係合部17が、接着剤挟持部材13の先端部分と係合することによって離れないように固定されるため、施工後、固定用部材12と接着剤挟持部材13とが開くようなことはない。
【0033】ここで、図4を参照して、吊り下げ器具10に用いる接着剤に関する他の実施形態について説明する。図4は図1の吊り下げ器具に他の接着剤を用いた状態を示す一部切欠平面図である。
【0034】図4(a)に示す実施形態では、接着剤収容部14に、外部からの加圧力によって破裂する被覆材20で被覆された接着剤21を収容している。したがって、施工現場において、固定用部材12を接着剤挟持部材13に重ね合わすように折り畳むことにより、被覆材20を加圧して破裂させれば内部の接着剤21が、図3(b)の場合と同様に浸出して接着可能な状態となるため、接着剤を塗布したり注入する必要がなくなり、施工性が向上する。
【0035】また、図4(b)に示す実施形態においては、接着剤収容部14に、互いに混合させることによって接着力を生じる二つの接着素材22,23を加圧力によって破裂する被覆材で個別に被覆したものを市松模様状に配列して収容している。したがって、施工現場において、固定用部材12を接着剤挟持部材13に重ね合わすように折り畳めば、加圧力によって接着素材22,23の被覆材が破裂して内部の接着素材22,23が流出するとともに互いに混ざり合って、図3(b)の場合と同様に浸出して接着可能な状態となるため、接着剤を塗布したり注入する手間が不要となり、施工性が向上する。
【0036】図4(b)の場合、強力な接着力を発揮するエポキシ樹脂系接着剤あるいは二液混合式の急速硬化型接着剤などの使用も可能となるため、支持体であるデッキプレート19に最適な接着剤を用いれば強力に固着することが可能である。また、材質に応じた接着剤を選択すれば、金属材料に限らず、コンクリート材や木材面などに対しても固着することができる。
【0037】次に、図5,6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態の吊り下げ器具を示す斜視図、図6は前記吊り下げ器具の施工方法を示す説明図である。
【0038】本実施形態の吊り下げ器具30は、図5,6に示すように、被吊下物である配管31を保持する吊り下げ部材32と、円盆形状の固定用部材33と、固定用部材33と対向配置された接着剤挟持部材34と、固定用部材33と接着剤挟持部材34との間に形成された接着剤収容部35と、固定用部材33と接着剤挟持部材34とを接近、離隔させるネジ部36およびナット37とを備えている。また、吊り下げ部材32と接着剤挟持部材34とは連結されている。
【0039】吊り下げ器具30を使用する場合、固定用部材33または吊り下げ部材32を回転させることによって、接着剤収容部35の容積を減少させると、接着剤収容部35に収容された接着剤38は、図6(b)に示すように、接着剤挟持部材34の外周から放射状に浸出して、接着可能な状態となる。したがって、固定用部材33を上にしてデッキプレート39に押し付ければ、接着剤38によって固定用部材33がデッキプレート39に固定されるので、接着剤38が硬化すれば、ダクト吊下用の吊りバンド25やワイヤー、あるいは配管31などを吊り下げることが可能となる。
【0040】吊り下げ器具30は、固定用部材33と接着剤挟持部材34とを、比較的強い締付け力を発揮するネジの作用で接近させ、接着剤収容部35の接着剤38を浸出させる構造であるため、接着剤38の粘性が高く、流動しにくい場合でも簡単に浸出させることが可能であり、作業性が良好である。なお、接着剤38を浸出させた後、固定用部材33と接着剤挟持部材34とは、ナット37を締付けることによって密着状態に保持されるため、施工後、固定用部材33と接着剤挟持部材34とが分離することもない。
【0041】次に、図7,8を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図7は第3実施形態の吊り下げ器具を示す斜視図、図8は前記吊り下げ器具の施工方法を示す説明図である。
【0042】本実施形態の吊り下げ器具40は、図7に示すように、配管41などを保持するための吊り下げ部材42、固定用部材43、接着剤挟持部材44、接着剤収容部45および浸出孔47を備えている。また、固定用部材43と接着剤挟持部材44とは互いにスライド可能に係合され、それぞれ隔壁43a,44aが形成されているため、固定用部材43または接着剤挟持部材44をスライドさせれば、接着剤収容部45の容積を減少させることができる。
【0043】したがって、図8(a)に示すように、接着剤挟持部材44をスライドさせれば、接着剤収容部45の容積が減少し、図8(b)に示すように、内部の接着剤46が浸出孔47から浸出して、固定用部材43の上面に広がり、接着可能な状態となる。この後、固定用部材43を上にして、デッキプレート48などに押しつければ、固定用部材43がデッキプレート48に固定されるので、この後、接着剤46が硬化すれば、吊り下げ部材42に、ダクト吊下用の吊りバンド25やワイヤー、あるいは配管41などを吊り下げることができる。
【0044】このように、本実施形態の吊り下げ器具40では、固定用部材43または接着剤挟持部材44のいずれかをスライドさせるだけで接着剤収容部45の容積が減少し、接着剤46を浸出孔47から浸出させることが可能であるため、作業者の負担も軽く、作業性に優れている。
【0045】次に、図9,10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図9は第4実施形態の吊り下げ器具を示す斜視図、図10は前記吊り下げ器具の施工方法を示す説明図である。
【0046】本実施形態の吊り下げ器具50は、図9に示すように、被吊下物を保持するための吊り下げ部材51と、固定用部材52とを備え、固定用部材52の上面には接着剤保持部52aが形成されている。また、接着剤保持部52aには、互いに混合させることによって接着力を生じる二つの接着素材53,54を加圧力によって破裂する被覆材で個別に被覆したものを、4個交互に配置している。
【0047】吊り下げ器具50を使用する場合、図10に示すように、施工現場において、二つの吊り下げ器具50の固定用部材52同士を互いに接近させることにより、各々の接着剤保持部52aに配置された接着素材53,54に加圧力および回転力を加えると、これらの加圧力および回転力によって接着素材53,54の被覆材が破裂して内部の接着素材53,54が流出するとともに互いに混ざり合って接着可能な状態となるため、それぞれの吊り下げ器具50を分離させれば、任意の場所に接着することができる。
【0048】このように、吊り下げ器具50を使用する場合は、接着剤を塗布したり、注入する必要がなく、器材などを用いることなく接着素材53,54の混合を行うことができるため、施工が簡単であり、作業者の手などが汚れるのを防止することができる。
【0049】次に、図11,12を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。図11は第5実施形態の吊り下げ器具を示す一部切欠側面図、図12は前記吊り下げ器具の施工方法を示す説明図である。
【0050】本実施形態の吊り下げ器具60は、図11に示すように、吊り下げ部材61、固定用部材62、接着剤挟持部材63および突起部64を備え、固定用部材62と接着剤挟持部材63との間には接着素材65を含浸させた柔軟な多孔質材料66が挟持され、多孔質材料66の内部には、被覆材68で被覆された液状の接着素材67が配置されている。また、接着素材65は、液状の接着素材67と混じり合うことによって接着力を生じる。
【0051】吊り下げ器具60を使用する場合、図12に示すように、接着剤挟持部材63を固定用部材62に向かって押しつけると、突起部64によって被覆材68が破られて接着素材67が流出して多孔質材料66内へ浸透していき、多孔質材料66に含浸させた接着素材65と混合した後、多孔質材料66の露出面から接着力を有する接着剤69となって浸出する。
【0052】したがって、接着剤挟持部材63を上にして、デッキプレート70に押し付ければ、接着剤69によって固定用部材62がデッキプレート70に固定され、この後、接着剤69が硬化すれば、吊り下げ部材61に、ダクト吊下用の吊りバンド25やワイヤー、あるいは配管71などを吊り下げることができる。
【0053】このように、本実施形態の吊り下げ器具60では、互いに混合させることによって接着力を生じる二つの接着素材65,67のうち、一方の接着素材65を多孔質材料66に含浸させ、残りの接着素材67を被覆材68で被覆して多孔質材料66に内蔵させているため、施工現場における接着素材65,67の混合作業は容易であり、混合作業中の接着素材65,67の漏出なども防止することができる。また、被覆材68で被覆された接着素材67は多孔質材料66で包まれた状態となるため、誤って被覆材68が破裂するのを防止することができる。
【0054】さらに、吊り下げ器具60では、接着剤挟持部材63に、被覆材68を破裂させるための突起部64を設けているため、接着剤挟持部材63を多孔質材料66に押し付けるだけで、突起部64で被覆材68を破裂させることが可能であり、接着準備作業が容易である。また、被覆材68は、突起部64以外の加圧力では破裂しない、比較的高強度の材料を使用することが可能となるため、過誤による被覆材破裂を防止することができる。
【0055】
【発明の効果】本発明により、以下の効果を奏することができる。
【0056】(1)被吊下物を保持する吊り下げ部材と、吊り下げ部材を支持体に固定するための固定用部材と、固定用部材に設けられた接着剤保持手段とを備えたことにより、接着剤保持手段で保持された接着剤を介して固定用部材は支持体に強固に固着されるため、被吊下物を確実に保持することができる。この場合、嵩張る磁石や打ち込みが面倒なアンカーなどが不要であるため、支持体の材質に左右されず容易に施工可能であり、予め接着剤を接着剤保持手段に保持させて固着作業を開始できるので、高い位置や狭い場所での施工性も良好である。また、固着力が減衰するおそれもなく、長期間に渡って安定した吊り下げ機能を発揮する。
【0057】(2)接着剤保持手段として、固定用部材に付設された接着剤挟持部材と、固定用部材と接着剤挟持部材との間に形成された接着剤収容部と、接着剤収容部の外周に設けられた接着剤浸出口と、接着剤収容部の容積を減少させる圧縮機構とを備えることにより、接着剤収容部の容積を減少させるだけで、接着剤浸出口から外に接着剤が浸出して接着可能な状態となるため、施工が容易である。
【0058】(3)固定用部材または接着剤挟持部材に、接着剤を浸出させるための浸出孔を形成することにより、接着剤をスムーズに浸出させることが可能となるため、施工性が向上する。
【0059】(4)圧縮機構として、接着剤挟持部材と固定用部材とを蝶番状に連結する蝶番部材を設けることにより、蝶番部材を中心にして接着剤挟持部材と固定用部材とが重なり合うように折り畳むだけで、接着剤収容部の容積が減少し、接着剤浸出口あるいは浸出孔から接着剤が浸出して、接着可能な状態となるため、施工性がさらに向上する。
【0060】(5)圧縮機構として、接着剤挟持部材と固定用部材とを接近可能に連結するネジを備えた構造とすることにより、比較的強い締付け力を発揮するネジの作用で接着剤挟持部材と固定用部材とを接近させ、接着剤を浸出させることができるようになるため、粘性が高く、流動しにくい接着剤でも簡単に浸出させることが可能となる。
【0061】(6)圧縮機構として、接着剤挟持部材と固定用部材との間に、接着剤収容部の容積を減少させるスライド部材を設けた構造とすることにより、スライド部材をスライドさせるだけで接着剤収容部の接着剤を浸出させることが可能となるため、作業者の負担を低減することができる。
【0062】(7)接着剤保持手段に、外部からの加圧力によって破裂する被覆材で被覆された接着剤を備えることにより、施工現場では、被覆材を加圧して破裂させれば接着剤が浸出して接着可能な状態となるため、接着剤を塗布したり注入する手間が省け、施工性が向上する。
【0063】(8)接着剤収容部に、接着剤収容部の収縮によって破裂する被覆材で被覆された接着剤を内蔵させることにより、接着剤収容部を収縮させるだけで、被覆材が破裂して接着剤が浸出し、接着可能な状態となるため、接着剤を塗布する手間が省けるとともに、作業者の手などが汚れるのを防止することができる。
【0064】(9)接着剤として、互いに混合させることによって接着力を生じる複数の接着素材が被覆材で個別に被覆されたものを用いることにより、強力な接着力を発揮するエポキシ樹脂系接着剤あるいは二液混合式の急速硬化型接着剤などの使用も可能となるため、支持体などの材質に最適な接着剤を用いて確実な固着を行うことができるようになる。
【0065】(10)接着剤として、互いに混合させることによって接着力を生じる複数の接着素材で構成されるとともに、接着素材の少なくとも一つを多孔質材料に含浸させ、残りの接着素材を被覆材で被覆したものを用いることにより、被覆材を破裂させ一方の接着素材を多孔質材料に移行させれば、接着素材が混合され、接着可能な状態となるため、施工現場における混合作業が容易となり、混合作業中の接着素材の漏出なども防止することができる。
【0066】(11)接着素材の少なくとも一つを含浸させた多孔質材料に、被覆材で被覆した残りの接着素材を内蔵させた構造とすることにより、被覆材で被覆された接着剤は多孔質材料で包まれた状態となるため、誤って被覆材が破裂するのを防止することができる。
【0067】(12)接着剤収容部を形成する固定用部材、接着剤挟持部材の少なくとも一方に、被覆材を破裂させるための突起部を設けた構造とすることにより、固定用部材と接着剤挟持部材とを接近させる際に、突起部で被覆材を破裂させることが可能となるため、接着準備作業が容易となる。また、突起部以外の加圧力では破裂しないような、比較的高強度の被覆材で接着剤や接着素材を被覆することが可能となるため、過誤による被覆材破裂を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
【出願日】 平成10年10月19日(1998.10.19)
【代理人】 【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
【公開番号】 特開2000−120937(P2000−120937A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−297276