トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 離脱防止管継手
【発明者】 【氏名】人見 誠一

【氏名】山本 和芳

【要約】 【課題】地震や地盤変動などによって、大きな曲げ荷重が接続部に作用しても、接続部の止水性能を保持できる離脱防止管継手を提供すること。

【解決手段】PE製継手本体2の受口21の開口端部側の内周面に設けられた環状凹溝22内にシール用ゴム輪4が装着され、このゴム輪4よりも奥側に位置する受口21の内周面22が奥部に向かって拡径する傾斜溝23を有し、この傾斜溝23内に、その内周面にほぼ符合した傾斜外周面31を有する管締付け用の割りリング3が遊嵌状態で配置されてなる離脱防止管継手1において、シール用ゴム輪4の最大肉厚部から受口21開口端までの距離(A)と、受口21内に挿入接続されるPE管の外径(B)との比が0.15以上とされている離脱防止管継手1。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリオレフィン系樹脂からなる継手本体の受口の一端部側の内周面に設けられた環状凹溝内にシール用ゴム輪が装着され、このゴム輪よりも奥側に位置する受口の内周面が奥部に向かって拡径する傾斜溝を有し、この傾斜溝内に、その内周面にほぼ符合した傾斜外周面を有する管締付け用の割りリングが遊嵌状態で配置されてなる離脱防止管継手において、前記シール用ゴム輪の最大肉厚部から受口開口端までの距離と、前記受口内に挿入接続されるポリオレフィン系樹脂管の外径との比が0.15以上とされていることを特徴とする離脱防止管継手。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、離脱防止管継手に関する。
【0002】
【従来の技術】接続される管の差口を、管継手の受口内に挿入するだけで簡単に接続可能で、しかも離脱防止機能を有する管継手として、特開平10−122461号公報に記載されているものがある。この離脱防止管継手は、円筒状の継手本体と、略Cリング状の離脱防止リングとを備えている。
【0003】ところで、たとえば上水用の実配管路においては、地震や地盤変動により曲げ応力が作用することがある。ライフラインである水道管路ではこのような曲げ応力が管路の接続部に作用しても十分な止水機能を保持できなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の離脱防止管継手では、受口内に装着されているシール用ゴム輪の位置が受口の開口端側に接近しているため、接続部に大きな曲げ荷重が作用した場合、曲げ荷重の程度によっては接続部の止水性能が低下する恐れがあった。
【0005】本発明者らは上記問題点に鑑みて鋭意検討した結果、受口内に装着されるシール用ゴム輪の位置を特定の範囲とすることで、接続部に大きな曲げ荷重が作用しても、すぐれた止水性能を維持できることを見いだした。
【0006】本発明の目的は、特にポリオレフィン樹脂管の配管用の継手部材として、地震や地盤変動などによって、接続部にかなり大きな曲げ荷重が作用しても、接続部の止水性能が低下することのない離脱防止管継手を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、ポリオレフィン系樹脂からなる継手本体の受口の一端部側の内周面に設けられた環状凹溝内にシール用ゴム輪が装着され、このゴム輪よりも奥側に位置する受口の内周面が奥部に向かって拡径する傾斜溝を有し、この傾斜溝内に、その内周面にほぼ符合した傾斜外周面を有する管締付け用の割りリングが遊嵌状態で配置されてなる離脱防止管継手において、前記シール用ゴム輪の最大肉厚部から受口開口端までの距離と、前記受口内に挿入接続されるポリオレフィン系樹脂管の外径との比が0.15以上とされているものである。
【0008】本発明における継手本体はポリオレフィン系樹脂製のものであり、たとえば中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが代表的なものとして挙げられる。
【0009】本発明におけるシール用ゴム輪の材質は特に限定されないが、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)やスチレン・ブタジエンゴム(SBR)などの耐熱性にすぐれた合成ゴムが望ましい。また、ゴム輪の断面形状は、内水圧によってシール性がより向上するセルフシールタイプのZ型パッキングが望ましい。
【0010】そして、このシール用ゴム輪は、継手本体の受口内周面に設けられた環状凹溝内に装着されるわけであるが、本発明においては、シール用ゴム輪の最大肉厚部から開口端までの距離と、継手本体内に挿入接続されるポリオレフィン系樹脂管の外径との比が0.15以上となるように環状凹溝の位置およびシール用ゴム輪の形状が決められている。このようにすることによって、挿入接続されるポリオレフィン系樹脂管の一部が曲がっても、ゴム輪の最大肉厚部によって支持され、地震や地盤変動などに起因する曲げ荷重に耐えることができる。
【0011】そして、本発明の離脱防止管継手を使用して管路を構成した場合、たとえば地震や地盤変動などによって接続部が30度以上に大幅に曲がっても接続部からの漏水は発生せず、十分な止水性能を有している。この理由は明らかではないが、以下のように考えている。
【0012】一般にポリオレフィン系樹脂はガラス転移点が常温以下であり、非晶性(無定形)部分の運動によって外荷重に対して変形しやすい。そのため、必要な管性能を持たせるために、ポリオレフィン系樹脂管では、その肉厚が従来の硬質塩化ビニル樹脂管などに較べて非常に厚くされている。このような構造のため、曲げ荷重が作用すると、挿入接続されるポリオレフィン系樹脂管の差口よりも、継手本体の受口の変形が起こりやすく、その結果、差口が直線的であるのに対して、受口が変形するため、シール用ゴム輪の圧縮率が低下してしまう。
【0013】すなわち、継手本体の受口開口端からシール用ゴム輪の最大肉厚部までの距離と、受口内に挿入接続されるポリオレフィン系樹脂管の外径との比が最低限0.15であることは、変形と強度のバランスの点で、シール用ゴム輪の最適な圧縮率を維持できる範囲で必須条件であると考えられる。つまり、同比が0.15未満になると、継手本体の受口内部の変形と差口の強度とのバランスが悪く、止水に必要なシール用ゴム輪の圧縮率を維持できないと推測される。
【0014】本発明においては、管締付け用の割りリングは、半径方向に拡縮自在となっており、材質としては金属製あるいは樹脂製のどちらでもよいが、耐水性などの面から、ポリアセタール、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂製のものが望ましい。そして、この割りリングの内径はその自由状態において、挿入・接続されるポリオレフィン系樹脂管の外径より少し小径とされ、その内周面の周方向に沿って複数の係止突条(たとえば鋸歯状のもの)を備えているのが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の離脱防止管継手の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の離脱防止管継手の第1実施例を示す半縦断面図、図2は図1の離脱防止管継手の使用状態を示す半縦断面図、図3はシール用ゴム輪の断面図である。
【0016】離脱防止管継手1は、継手本体2と、管締付け用の割りリング3と、シール用ゴム輪4とを備えている。継手本体2はポリエチレン樹脂製のものであり、その大径側は接続される樹脂管の挿入口を備えたソケット状の受口21とされ、この受口の挿入口側の内周面に環状凹溝22が設けられ、この環状凹溝22内にシール用ゴム輪4が装着されている。このゴム輪4は、所謂Zパッキングと呼ばれているものであり、図3に示すような断面形状を有している。シール用ゴム輪4よりも奥側に位置する受口21の内周面23は奥部に向かってテーパ面状に拡径されて傾斜溝24とされている。
【0017】傾斜溝24内には、管締付け用の割りリング3が遊嵌状態で配置されている。この割りリング3はその管壁の一部が切り欠かれており、傾斜溝24の内周面23にほぼ符合した傾斜外周面31を有している。割りリング3は直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂から射出成形法にて成形されたものである。直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂として、その曲げ弾性率が3630MPa、ノッチ付アイゾット衝撃値が25J/mの機械的性質を有しているものを使用した〔ポリプラスチック株式会社の「フォートロン」(登録商標):グレード0220U9〕。割りリング3はその自由状態において、その内径が後述する樹脂管5の差口51の外径より少し小さくなるようにされており、その内周面に多数の鋸歯状の係止突条32が設けられている。
【0018】つぎに上記離脱防止管継手1の使用状態を図2に基づいて説明する。図において、樹脂管5、7はともに密度が0.940以上の高密度ポリエチレン樹脂から押出成形されたものである。離脱防止管継手1の小径側の端面には樹脂管7の一端面がバット融着されて、離脱防止管継手1と樹脂管7とが一体化されている。そして、離脱防止管継手1の受口21内に挿入接続される樹脂管5の差口51の内周面側には短円筒状の補強部材6が内挿されている。この補強部材6は耐蝕性を有するステンレス鋼製のものである。
【0019】補強部材6は、図2に示すように、短円筒部61と折り返し部62とを備えており、短円筒部61の外径は樹脂管5の内径とほぼ同じか、樹脂管5の内径よりも少し小さくされている。短円筒部61の外周面の4箇所には、すべり止め手段としての小突起63が切り起こしされて設けられている。折り返し部62は、短円筒部61の一端部が外方に傘状に約150度折り返されてテーパ面とされている。そして、図に示すように、折り返し部62の先端が樹脂管5の差口51端面の外周縁を囲繞するようになっている。
【0020】なお、補強部材6の材質は、鋳鉄、アルミニウムなどの金属製のものの他、ガラス繊維や炭素繊維などの補強繊維にて補強されたFRP製のものであってもよい。補強部材6の長さは継手本体2の受口21の挿入代とほぼ同一とするのが望ましい。これは、その長さが短すぎるとゴム輪からの締め力によるポリエチレン樹脂管のコールドフローを抑止する効果がなく、逆に長過ぎても、さらなる効果は期待できず不経済となるからである。
【0021】そして、樹脂管5の差口51を離脱防止管継手1の挿入口から奥側に向かって挿入すると、補強部材6の折り返し部62の外周面のテーパ面によって割りリング3が押し広げられるので、奥側まで挿入することができる。なお、継手本体2の受口21の奥部内周面には、補強部材6の折り返し部62の外周面が当接する当接段部25が形成されている。
【0022】この場合、割りリング3が、上述のとおり、曲げ弾性率が3630MPa、ノッチ付アイゾット衝撃値が25J/mの機械的性質を有している直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂製のものであるので、拡径によって塑性変形や割れを起こすことがなく、その弾性復元力によって樹脂管5の差口51の外径より少し小さい内径の元の自由状態まで縮径しようとする。
【0023】さらに、離脱防止管継手1は、折り返し部62の先端が割りリング3より奥側まで挿入されると、樹脂管5あるいは離脱防止管継手1に樹脂管5の抜け方向の力が作用した場合、割りリング3の鋸歯状の係止突条32の働きにより、樹脂管5の動きにともなって割りリング3も挿入口側へ移動してその外周面31が傾斜溝24のテーパ面23に押し当たり、割りリング3が縮径する。したがって、樹脂管5の差口51の外周面が割りリング3の内周面にしっかりと把持され、樹脂管5の抜け止めが確実に行われる。
【0024】また、樹脂管5の差口51内に、補強部材6の短円筒部61が圧入嵌合されることで、樹脂管5の差口51が内側から補強されているので、割りリング3やシール用ゴム輪4によって締付け力が長期間にわたって継続して樹脂管5に加えられても、樹脂管5の差口51がコールドフローによって寸法変形を起こすことがない。
【0025】
【実施例1〜3】上記樹脂管5、7として呼び径100mmのものを用い、図4に示すようにして、接続部の曲げ耐水圧性能を行った。図4に示すように、両樹脂管5、7の開口端を栓体8にて閉塞し、この閉塞した両樹脂管5、7の端部を所定の受け台9、9上に載置して支持する。なお、樹脂管7側の栓体は加圧ポンプPと接続され、被試験体内に所定の内水圧を付与できるようになっている。そして、継手本体2の受口21の外面を上方から押さえ治具Qにて押圧して、曲げ角度が30度になるように設定する。
【0026】そして、シール用ゴム輪4の最大肉厚部から受口21開口端までの距離(A)を変えることで、この距離(A)と、受口21内に挿入接続される樹脂管5の外径(B)との比を変化させた各離脱防止管継手1について、加圧ポンプにて2.5MPaまでの内水圧を負荷して1分間保持し、接続部からの漏れおよび異常の有無を確認した。なお、A/B比が0.05のものを比較例として同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】表1に示すように、A/B比が0.15以上であれば、接続部にかなりの曲げ荷重が作用しても十分に止水できることが明らかである。なお、呼び径が75mm、150mmおよび200mmの樹脂管5、7についても、上記と同様に性能評価した結果、ほぼ同様の性能を得ることができた。
【0029】本発明においては、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記実施例では、継手本体の一側にのみ樹脂管を接続するようにしたが、継手本体の両側に樹脂管を接続できる構造にしてもよい。
【0030】
【発明の効果】請求項1記載の本発明の離脱防止管継手では、シール用ゴム輪の最大肉厚部から受口開口端までの距離と、受口内に挿入接続されるポリオレフィン系樹脂管の外径との比が0.15以上とされているので、ポリオレフィン系樹脂管との接続部にかなり大きな曲げ応力が作用しても十分な止水性能を有しており、耐震性や耐地盤変動などに対してすぐれた接続部を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成10年7月27日(1998.7.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−46266(P2000−46266A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−210884