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【発明の名称】 混合弁
【発明者】 【氏名】木村 安秀

【氏名】桑山 健太

【要約】 【課題】本発明の目的は、弁座と、該弁座に密着し進退、回動することにより流体通過口の開口面積を変える平面を有する弁体とで構成される混合弁において、操作力を小さくしつつ、水撃を効果的に緩和する方法を、安価でコンパクトに構成することにある。

【解決手段】シングルレバー式混合栓のように、弁座と、該弁座に密着し進退、回動する弁体とで流量と混合比を制御するよう構成される混合弁において、駆動軸の全揺動範囲を軸受け手段の進退垂直方向の軸中心より弁閉止側に設定すると共に、駆動軸からの入力の作用点を弁座の密着面と容器との摺動面の両面間に配置し、弁体を駆動する力の作用点と摩擦面の距離をできるだけ小さくしたため、弁体の食い込みに起因する摩擦面の損傷を軽減すると同時に、弁体の駆動力の増加を最小限に留めつつ水撃を効果的に防止することが可能となった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第一の流体通過口と第二の流体通過口とを設けた平面を有する弁座と、該弁座に密着し進退、回動することにより、前記第一及び第二の流体通過口の開口面積を変える平面を有する弁体と、前記弁体を動かす揺腕を備えた駆動軸と、該駆動軸の揺動、回転を支える軸受け手段と、前記駆動軸の操作部を外部に露出して、前述の全部材を収容するとともに、前記第一の流体と第二の流体の流入口と、混合された流体の流出口を設けた容器とで構成された混合弁であって、該弁体の有用な進退範囲に相当する前記揺腕の全揺動範囲を、前記軸受け手段の進退垂直方向の軸中心より弁閉止側に設定すると共に、前記全揺動範囲において、前記揺腕からの入力の作用点を、前記弁座の密着面と該密着面裏側の摺動面の両面間に配置した混合弁。
【請求項2】 前記駆動軸と前記容器を水密に保つシール手段と、前記弁体から前記容器内部へ混合された流体を導入する導入路と、前記容器内部を混合された流体の流路として使用し、前記流出口へ導出した請求項1に記載の混合弁。
【請求項3】 前記摺動面が、前記弁体の進退、回動の両摺動を受ける同一の平面である請求項1又は請求項2記載の混合弁。
【請求項4】 前記被駆動部を、揺動方向入力を受ける開閉方向被駆動部材と、回動方向入力を受ける回転方向被駆動部材とで構成した請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の混合弁。
【請求項5】 前記開閉方向被駆動部材と前記回転方向被駆動部材の空隙を前記容器内部への導入路として使用した請求項4記載の混合弁。
【請求項6】 前記回転方向被駆動部材が、前記弁体であり、該弁体の通水開口部の側壁に前記揺腕からの回転方向の入力を行っている請求項4又は請求項5記載の混合弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流路を構成する2平板の相対的な移動によって、2種類の流体の混合比や流量を変更する混合弁の水撃の低減に関する。特に水栓においては、湯水の開閉、混合用として多用されているレバー操作式いわゆるシングルレバー混合栓の水撃の低減手段に関する。
【0002】
【従来の技術】弁体の進退の移動速度を加減して水撃を低減する技術は、特開平9−14502に「給水孔、給湯孔及び吐出孔を備えた固定板と、該固定板側に開口した混合室を内部に形成した可動板とを摺り合わせ状に向い合せて内装し、前記混合室に嵌合したスライダーとレバーガイド内でピンを支点に回動するレバーを係合し、該レバーと連繋したレバーハンドルの操作によって可動板が固定板上で摺動されて混合水の吐水量及び温度を調節するシングルレバー式混合水栓に於いて、前記スライダーは上面に突出した軸受部を可動板の軸心に対し偏心して配置し、該軸受部に係合するレバー下端の突部は前記ピンの垂直軸線より偏心した範囲で回動し、止水時の突部を垂直軸線より円弧状に遠ざけることで止水間際の可動板の移動速度をレバーハンドルの移動速度より遅くしたことを特徴とするシングルレバー式混合水栓に於けるウォーターハンマー防止装置。」として開示されている。図25に該従来技術の代表図を示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のような従来技術の構成を取った場合、幾何学的には、揺動の一方端における単位揺動角度当たりの弁体の移動距離を小さくすることはできるが、実際には以下のような課題が有った。
ア 従来技術に記載されている軸受部の力の作用点が、可動板の摺動面から遠ざかる方向に移動し、この作用点と摺動面の距離に比例して、可動板を進退方向に転回させるモーメントが発生する。
【0004】このモーメントは可動板を固定板に食い込ませる方向に作用するため、摺動面の損耗が激しくなると同時に、摺動抵抗を増加させ、レバーハンドルの操作力を大きくし、操作感を劣化させる要因となっていた。
イ 従来技術に記載されているように可動板内部に混合室を形成する場合、前記スライダーのような部品を用いて可動板上面に軸受部を構成する必要があり、混合弁全体の高さが大きくなると同時に、前述のアの問題点がより顕著になっていた。
ウ 従来技術に記載されているスライダーには、移動の案内をするレバーガイドが必要であり、部品点数の増加や混合弁全体が大型化するといった課題があった。
エ 更にスライダーの軸受部は、進退、回動の入力両方を受けているため、レバー先端を取り囲む立壁が必要であり、軸受部のスペースが大きくなっていた。本発明の目的は、操作力を小さくしつつ、水撃を効果的に緩和する方法を、安価でコンパクトに構成することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段および作用】本発明においては、前述の従来技術の用語を、固定板は弁座、可動板は弁体、軸受部は被駆動部、レバーは駆動軸として表現している。またスライダー、レバーガイド、ピンに該当する部品は無い。
【0006】本発明において課題を解決するために採用した手段は、弁座と、該弁座に密着し進退、回動することにより流体通過口の開口面積を変える平面を有する弁体とで構成される混合弁において、ア 弁体の有用な進退範囲に相当する前記駆動軸の全揺動範囲を前記軸受け手段の進退垂直方向の軸中心より弁閉止側に設定すると共に前記全揺動範囲において、前記駆動軸からの入力の作用点を、前記弁座の密着面と該密着面裏側の摺動面の両面間に配置し、弁体を駆動する力の作用点と摩擦力を発生させる面との距離をできるだけ小さくした。
イ 弁体の混合室を開放し、弁体の内部に被駆動部を配設し、弁体を駆動する力の作用点と密着面の距離をさらに小さくした。このとき混合室より流出した混合流体は、容器内全体を流れ、流出口より容器外部へ流出する。
ウ 進退、回動の両摺動共、弁体の上面と容器の内面で直接摺動させたためスライダーやレバーガイドが不要となった。
エ 進退、回動の駆動力が作用する部材を別々に設定することで、レバー先端を取り囲む立壁のスペースを不要とした。
エ 前記揺腕を弁体の通水開口部にまで陥入させ、揺腕の側面で弁体の通水開口部側面に直接入力できるようにした。
【0007】
【発明の実施の形態】好適な事例として、シングルレバー混合栓におけるバルブカートリッジについて詳細実施内容を説明する。図1に示すバルブカートリッジ30は、ケース1とキャップ7が各部材を収納する容器を構成している。ケースの上部開口1Eには、弁体20を駆動するレバー2の操作部2Aが露出しており、この操作部を揺動、回転させることにより、弁座としてのステーター6に密着した弁体20を進退、回動させ、吐水、止水、混合を調節する。図2に示すように、下面には第一の流体としての水の流入口30A、第二の流体としての湯の流入口30Bおよび混合された混合水の流出口30Cが開口している。図3は構成部品を示す分解図であるが、以下各部について、詳述する。
【0008】図4、図5に示す弁座としてのステーター6は以下のように構成される。第一の流体通過口の水側通水路6Aと第二の流体通過口の湯側通水路6Bが設けられている平面としてのステータ側密着面6Eには、ローター側密着面5Aが水密に密着しており、該ローター側密着面5Aが進退、回動することにより両通過口の開口面積を変え、混合比と吐水量の調節を行う。水側通水路6Aと湯側通水路6Bは三日月型の形状から徐々に形状変化しつつ、円筒形状の水側流入口6F、湯側流入口6Gとして下面に開口し、それぞれカートリッジ30下面の水の流入口30A、湯の流入口30Bへ連絡している。下面のパッキン当て面6Dにはパッキン8が当接され、湯水それぞれの流路をシールすると同時に、パッキン8が押し縮められる反力を受け、ステーター6をローター5に密着させている。混合水通水路6Cは混合水の流出路の一部であり、混合水の流出口30Cの直上に連通している。
【0009】図6に示すように、弁体20は、ホールダー4とローター5で構成される。ホールダー4はローター凹部5Dにはめ込まれており、レバー2の揺腕部2Cからの入力を被駆動部4A、4Bで受け、ローター5に伝えている。また、図20に示すホールダー4とローター5の隙間Dを通水管として使用している。本実施例では、弁体20をホールダー4及びローター5で構成しているが、一体的に形成してもよい。ローター側摺動面5Bは、ケース側摺動面1Dに密着し、パッキン8の締代による反力を支えている。
【0010】図7に示すように、通水開口5Cは略六角形の入水部と矩形の出水部を連続させた形状である。図8に示すように、止水直前には、水側通水路6A、または湯側通水路6Bの開口部の内側円弧を、該略六角形の頂部または直線状の辺が通過するため、図23、図24の特開平02−240465に開示されるような通常使用されている円形の開口形状に比べ、止水間際での開口面積の変化量が少なくなる。本発明は、図21の特開平06−272774に説明されるオープンタイプとして記載しているが、ホールダー4とローター5を水密に構成し、ステーターの混合水通水路6Cとキャップの混合水流出路7Aを水密に連絡すれば、図22に示す弁体の内部を混合水の流路として使用するクローズドタイプにも応用できる。
【0011】図9に示すように、レバー2の各部構成は以下のようになっている。操作部2Aは、ケース1の上部より外面に突出し、水栓のレバーが固定され、操作の入力を受ける。球状部2Bは、3軸方向の回転が可能なように、ケース1の軸受け面1Aとサポート3の軸受け面3Aで支持される。図10は止水状態におけるカートリッジ30の縦断面である。図11は全開状態におけるカートリッジ30の縦断面である。図10、図11に示すように、揺腕部2Cの先端は、弁体の開、閉方向への力の作用部を構成している被駆動部4A、4B間に陥入しており、揺動により各被駆動部を押している。
【0012】図11に示すように、被駆動部4A、4Bは、ステータ側密着面6Eとケース側摺動面1Dとの間に位置し、密着面5A、6E間または摺動面5B、1D間での摩擦力R1、R2と駆動力Fとの偏心量D1、D2を最小限に留めている。このため円筒形状をなす揺腕部2Cの先端は、揺動時にステーター側密着面6Eよりも下方へ突出し、混合側通水路6Cの入り口側開口内部まで進入する。駆動の際、ローター5には進退方向に転回させるモーメントM、つまり摩擦力R1、R2が大きな面の方向に食い込む力が発生し、この食い込み力により摩擦力が更に増加する。またローター5の位置によって、パッキン反力や水圧などに起因する密着力が変化するため、摩擦力の大きな面からの偏心量が小さくなるように揺動範囲を選定することが食い込む力を低減するのに効果的である。
【0013】これにより、ローター5がステータ側密着面6Eやケース側摺動面1Dへの食い込みに起因する該密着面、摺動面の両摩擦面の損傷を軽減すると同時に、弁体の駆動力の増加を最小限に留めることが可能となる。
【0014】図12に示すように、揺腕部2Cは操作部2Aの直線上にはなく、角度を持って球状部2Bに接続している。操作部2Aが最大に後傾した時、揺腕部2Cは進退方向に垂直の状態となり、弁体20の全開位置である最前部に位置する。操作部2Aが直立した時には、揺腕部2Cは弁体20の止水の位置である最後部に位置する。
【0015】これにより、駆動軸の単位揺動角度αに対する進退方向移動量が、最前部近傍S1に比べ、最後部近傍ではS2と小さくなる。同時に揺腕部2Cの力の作用点が上方へ移動するため、揺動中心から進退方向に対し垂直な方向の距離L1がL2のように小さくなり、操作部2A先端と揺動中心の距離に対する比、すなわちレバー比L/L1がL/L2のように大きくなる。
【0016】止水間際では水側、湯側流入口6F、6Gの静水圧が上昇するため、ステーター6の弁体20への押し付け力が増大する。そのため、前述の密着面、摺動面での摩擦力R1、R2が増加し、操作力が大きくなるが、前述のように止水間際でのレバー比が大きくなるように揺動範囲を設定することで、この操作力が大きくなる現象を緩和することができる。
【0017】また揺腕部2Cの先端は、全揺動範囲で、ローター5の通水開口5Cに陥入しており、駆動軸の回動方向入力は、該通水開口の側壁5Eに作用する。駆動軸の回動方向の入力については、従来技術では軸受部で受けていたため、レバー先端を取り囲む立壁が必要であったが、ローター5の通水開口部側壁5Eに直接作用させる構成としたため、該取り囲む立壁が不要となり、コンパクトな構成となった。
【0018】図13に示すように、レバー下部の突出部2Fは、先端にレバー2の揺動中心と同心の円筒面となる弁体20との接触面2Gを形成しており、レバー2が揺動しても、弁体20の上面すなわちホールダー上面4Cに接触した状態を保っている。このように接触状態が保たれるため、レバー2を操作する際のガタツキが少なくなり、高品位な操作感になる。
【0019】更に球状部2Bの下部には、レバー2の揺動範囲内で軸受け機能に影響しない範囲に、切り欠き部2Eが設けられ、弁体20の上方通水空間を形成している。従来ほぼ完全な球形をなす球状部により占有されていたケース内部の空間を、該切り欠き部2Eにより通水路として利用する事が可能となり、球状部2Bを弁体に近接させても圧力損失の増加が最小限にとどめられる。
【0020】図14に示すように、操作部2Aには非円筒形状の凸部2Hが形成されており、後述する回動方向の突き当て位置Pにおけるレバー2の軸中心回りの自転を規制している。
【0021】容器としてのケース1の構成は以下のようになっている。図1に示す操作部2Aが露出するケース1の上部開口1Eは、弁体の有用な作動範囲に相当するレバー2の移動の案内となると同時に、レバー操作時のストッパーとして使用している。該ストッパーとしての突当て部の形状1Aは、図15に示すように、レバー2の移動範囲を包絡する面形状40の一部分と同形状の窪みとしている。レバー2の回動方向の突き当て位置Pにもストッパー形状40Cと同じ形状の窪みを形成している。
【0022】よって、操作部2Aへの過大な入力は、該突き当て面1Aで支えられるため、揺腕部2Cや被駆動部4A、4Bは弁体の駆動に耐える強度があればよい。
【0023】図16に示すように、回動方向の突き当て位置Pにおいては、操作部2の軸中心回りの捩りトルクTを、凸部2Hと球状部2Bとで支える曲げモーメントの入力に変換して受けるため、捩りトルクに対する破壊強度を上げることができる。
【0024】シール10の収納のため、図17に示される操作部と球状部の交線2Dが描く軌跡40Aに対し、所定の距離Dを持ってケース1のシール用溝1Cとサポート3のシール用溝(下面)3Bが形成されている。球状部の外周を周回する凸形状は、シール溝形状40Bを示す。従来は球状部の赤道面上にシールが配置されていたため、水圧を受ける面積が最大であった。該水圧は、そのまま球状部をシールに押し付ける力として作用し、駆動軸の操作力を大きくする一因となっていた。本発明のシール配置では、前述の水圧を受ける面積が縮小されている。
【0025】収容する容器の底面となるキャップ7を図18に示す。該キャップ7には、パッキン8の水側流路8A湯側流路8Bが貫通する穴7Bと、混合水流出路7Aが開口しており、混合水流出路7Aの周囲にはパッキン8の流出口シール8Cが陥入している。底面に突出するボス7Dは、バルブカートリッジ組み付けの際、位置決めや回り止めに使用する 。
【0026】図19に示すリブ7Cとケース1の内壁との間にOリング9を介装し図10のように水密にすることで、混合水はローター内部の通水開口5Cを経由して直接混合水流出路7Aから流出するだけでなく、ケース内部全体を流れ、一部はローター5の後方まで回り込んで流出する。これにより、流入した混合水の圧力損失を低減できる。
【0027】図21の従来の技術に示されるように、オープンタイプは、通常カートリッジ側面に流出口を設け、水栓本体とカートリッジの隙間を流路として使用しているが、図2の混合水の流出口30Cのようにカートリッジの底面のみに流出口を設ければ、図21のクローズドタイプと同様の使い方が可能となる。
【0028】
【発明の効果】本発明は、流体通過口を有する弁座と、該弁座に密着し進退、回動することにより、流体通過口の開口面積を変える平面を有する弁体とで構成される混合弁において、駆動軸の全揺動範囲を軸受け手段の進退垂直方向の軸中心より弁閉止側に設定すると共に、駆動軸からの入力の作用点を弁座の密着面と容器の摺動面の両面間に配置し、弁体を駆動する力の作用点と摩擦面の距離をできるだけ小さくしたため、弁体の食い込みに起因する摩擦面の損傷を軽減すると同時に、弁体の駆動力の増加を最小限に留めつつ水撃を効果的に防止することが可能となった。
【0029】弁体の混合室を開放し、弁体の内部に被駆動部を配設したため、弁体を駆動する力の作用点と密着面の距離をさらに小さくすることが可能となり、前述の効果が更に増大する。この場合は、駆動軸と容器を水密にすることで、容器内全体を流路として使用する。
【0030】進退、回動の両摺動共、弁体の上面と容器の内面で直接摺動させたためスライダーやレバーガイドが不要となった。
【0031】従来案内部材で受けていた弁体の回動方向の入力を、弁体の通水開口部の側壁に直接作用させたため、案内部材が不要となり、安価でコンパクトな構成にできた。
【出願人】 【識別番号】000010087
【氏名又は名称】東陶機器株式会社
【出願日】 平成11年6月2日(1999.6.2)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−346239(P2000−346239A)
【公開日】 平成12年12月15日(2000.12.15)
【出願番号】 特願平11−155204