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【発明の名称】 電磁操作弁
【発明者】 【氏名】平野 謙一

【氏名】新宮 康之

【要約】 【課題】消費電力を低減できる電磁操作弁の提供。

【解決手段】ソレノイドコイル3と、該ソレノイドコイルの孔内で遊動可能に配置されたプランジャ4とを備え、ソレノイドコイル3に励磁電流を供給することによりプランジャ4を軸方向移動させて弁体13の移動操作を行う電磁操作弁において、通電開始から一定時間経過後に抵抗値が上昇して所定値を超える特性を有するサーミスタ5を、更に備え、ソレノイドコイル3は、並列に接続された2個のコイル3a,3bに分割されており、サーミスタ5は、分割されたコイルのうちの一つ3bに直列に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルの孔内で遊動可能に配置されたプランジャとを備え、ソレノイドコイルに励磁電流を供給することによりプランジャを軸方向移動させて弁体の移動操作を行う電磁操作弁において、通電開始から一定時間経過後に抵抗値が上昇して所定値を超える特性を有する補正素子を、更に備え、前記ソレノイドコイルは、並列に接続された複数のコイルに分割されており、前記補正素子は、少なくとも1個の前記分割されたコイルに直列に接続されていることを特徴とする電磁操作弁。
【請求項2】 前記補正素子は、サーミスタであることを特徴とする請求項1に記載の電磁操作弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば油圧流体の圧力や流量のON−OFF切換、方向切換等の制御を行うための電磁操作弁に関するものであり、特にソレノイドコイルの通電時の消費エネルギーの低減に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の電磁操作弁として方向制御弁を例に挙げて説明する。この電磁操作弁の構造は、図5に示すように、1個の筒状のソレノイドコイル503と、固定鉄心507と、ソレノイドコイル503の孔内で遊動可能なプランジャ504と、プランジャ504の端面に接続されたプッシュロッド510と、流体の方向切換を行う弁体としてのスプール513と、スプール513の両端面を付勢する2個の弁バネ511a,511bとを主に備えている。そして、ソレノイドコイル503に励磁電流を流して通電すると固定鉄心507による磁気吸引力によってプッシュロッド510とプランジャ504とが軸方向移動して、スプール513の移動によって流体の方向切換を制御するようになっている。尚、他の例としてON−OFF切換弁ではスプールの移動により弁の開閉、比例電磁制御弁では励磁電流の値に応じたスプールの移動量により弁の開度を制御している。
【0003】図6は、ソレノイドコイルを通電するための従来の電磁操作弁の電気回路を示す回路図であり、ソレノイドコイルの抵抗値をRとする。外部切換信号が入力されると、ソレノイドコイルに励磁電流Iが流れ通電される。
【0004】図7は、ソレノイドコイルに励磁電流を流したときの、コイルにかかる電圧V、コイルに流れる電流I、消費電力W及びプランジャの位置の経時的変化を示している。図7に示すように通電の期間中、ソレノイドコイルにかかる電圧は、V=R・I、その消費電力はW=V・Iとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように電磁操作弁によってON−OFF切換弁や方向切換弁を作動させる場合、ソレノイドコイルを通電して切換弁のスプール等が移動する間、確実にこの移動動作を完了しなければならない。言い換えれば、スプールは弁バネの弾性力に抗して軸方向移動するため、励磁電流が流れ始めてからスプールが移動を開始して切換動作が行われるまでの間に消費される電力は多大なものとなる。このため、電磁操作弁の仕様は通電時に必要なソレノイドコイルの消費電力に基づいて定められている。
【0006】一方、スプール等の移動が完了した後はその移動状態(切換状態)を保持できるだけの小電力を供給すれば足りる。しかしながら、ソレノイドコイル通電中は、上述のように常にWの電力が消費されており消費電力の無駄が生じるという問題がある。
【0007】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、弁体の移動制御を確実に行いながらソレノイドコイルに通電中の消費電力を低減して省エネルギー化を図ることができる電磁操作弁を提供することを主な目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルの孔内で遊動可能に配置されたプランジャとを備え、ソレノイドコイルに励磁電流を供給することによりプランジャを軸方向移動させて弁体の移動操作を行う電磁操作弁において、通電開始から一定時間経過後に抵抗値が上昇して所定値を超える特性を有する補正素子を、更に備え、前記ソレノイドコイルは、並列に接続された複数のコイルに分割されており、前記補正素子は、少なくとも1個の前記分割されたコイルに直列に接続されていることを特徴とするものである。
【0009】本発明では、ソレノイドコイルが並列接続された複数のコイルに分割されているので、電磁操作弁に励磁電流を供給した場合、分割された各コイルにかかる電圧及び補正素子と分割されたコイルとに係る電圧(V)は全て等しい。
【0010】ここで、本発明では少なくとも1個の分割されたコイルが通電開始から一定時間経過後に抵抗値が上昇して所定値を超える特性を有する補正素子と直列に接続されているので、直列に接続された補正素子と分割されたコイルの合成抵抗も通電開始後一定時間経過後に上昇する。この結果この直列接続された回路部分に流れる電流は減少する。
【0011】一方、補正素子が接続されていない分割されたコイルの電圧は通電期間中常に一定であり、このためこの回路部分に流れる電流に変化はない。
【0012】従って、補正素子の接続されていない回路部分に流れる電流と補正素子が直列接続されている回路部分の電流の合算電流(I)は、励磁電流供給後一定時間経過後に減少する。ここで、ソレノイドコイルの消費電力Wは、数1で表される。
【0013】
【数1】W=V・I【0014】このため、励磁電流供給開始から一定時間経過後に、ソレノイドコイルの消費電力が減少する。
【0015】ここで、通電開始後一定時間とはプランジャが軸方向移動を開始して弁体移動動作が完了可能な時間をいい、電磁操作弁の種類等によって任意の時間を定めることができる。また、抵抗値としての所定値は、減少後の前記合算電流が電磁操作弁のON状態、即ちプランジャの移動状態を維持できる電流値となる抵抗値であり、この値も電磁操作弁の種類等によって定められる。
【0016】このように、励磁電流の供給開始から一定時間経過後には既に弁体の移動は完了しており消費電力も小さくてすみ、消費電力をプランジャの移動状態を維持できる程度の電力値まで低減しているので、電磁操作弁の動作を確実に行いながら省エネルギー化が図られることになる。
【0017】本発明における補正素子は、通電開始から一定時間経過後に抵抗値が上昇して所定値を超える特性を有するものであればその構成は本請求項に係る発明では特に限定しない。また、通電開始から一定時間を経過したか否かの判断も任意であるがその判断方法は補正素子の種類によって定められる。例えば、補正素子として可変抵抗を用い、前記一定時間を時間計測によって判断して一定時間経過後に可変抵抗の抵抗値を上昇させるように構成することができる。この場合、予めプランジャの移動完了までの時間を計測しておくことにより、より確実な電磁操作弁の動作を保障しながら消費電力を低減できるという利点がある。また、一定時間経過後抵抗値が上昇する特性を有する素子を補正素子として用いることもできる。この場合には、時間計測等を行う必要が無く装置の簡易化を図ることが可能である。
【0018】通電開始から一定時間が経過する前の補正素子の特性については特に限定しないが、プランジャの移動動作を確実に行わせるため、当初の抵抗値は0とするか、或いは通電開始後抵抗値が0から徐々に上昇していくような特性の素子が好ましい。
【0019】このような補正素子として好ましくはサーミスタが挙げられる。即ち、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電磁操作弁において、前記補正素子は、サーミスタであることを特徴とするものである。
【0020】サーミスタの特性は、図3に示す特性を有している。即ち、サーミスタは、図3に示すように、通電直後の抵抗値はほぼ0Ωであるが、電流が流れると発熱し、発熱により素子温度が素子に特有の所定値を超えた時点で抵抗値が急激に上昇するという特性を有している。このため、素子温度がこの所定値に達するまでの一定時間経過前では、補正素子としてのサーミスタと分割されたコイルの直列回路部分に流れる電流はプランジャの軸方向移動により弁体移動動作を十分に行える電流値を確保できる。また、素子の発熱により一定時間経過後に抵抗値が急激に上昇するので、弁体移動動作の完了後は直ちに合算電流値を減少させて、弁体移動状態を維持したまま消費電力を低減することができる。このようなサーミスタとしては、例えば正温度係数サーミスタ等が挙げられる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施形態について、以下図示例とともに説明する。本実施形態の電磁操作弁は、ON−OFF切換弁、方向切換弁等の切換弁の弁体の切換動作を行うものである。
【0022】図1は、本実施形態に係る電磁操作弁の概略構成を示す模式図であり、図2は電気系の回路図である。本実施形態の電磁操作弁は、励磁電流により機械的出力を可動部分に生じる電磁ソレノイドプランジャ装置部1と、前記機械的出力によってばね力を介して変位することにより流体の方向切換を行う方向制御弁装置部2と、予め与えられる入力信号に応じた出力電流を励磁電流として電磁ソレノイドプランジャ装置部1に供給する電流ドライバ装置を内蔵した電装ボックス17とから構成されている。
【0023】電磁ソレノイドプランジャ装置部1は、筒状のソレノイドコイル3と、ソレノイドコイル3の内孔中で一連の密閉チューブを形成する固定鉄心7と、この密閉チューブの内部に遊動可能に配置されたプランジャ4(可動鉄心)と、プランジャ4の図1における左側端面に同軸状に一体化されたプッシュロッド10とが設けられている。
【0024】筒状のソレノイドコイル3は、リード線9を介して 電装ボックス17に接続されている。筒状ソレノイドコイル3は、第1コイル部3aと第2コイル部3bとに分割され、固定鉄心7に同軸状に並べて配置されている。またこの2個のコイル部は、図2に示すように両コイル部は並列接続されている。そして、第2コイル部3bには補正素子としての正温度係数サーミスタ5が直列に接続されている。
【0025】方向制御弁装置部2は、流体の方向切換を行う弁体としてのスプール13と、スプール13と直列配置され、その両端面を付勢する2個の弁バネ11a,11bとを内蔵している。スプール13はプッシュロッド10により弁バネ11a,11bの弾性力に抗して変位駆動される。
【0026】電動ドライバ装置では、リミットスイッチ又は圧力スイッチ等により発せられる切換信号によりソレノイドコイル3(第1コイル部3a及び第2コイル部3b)に励磁電流を供給する。
【0027】図2に示すように、第1コイル部3aと並列接続された第2コイル部3bには正温度係数サーミスタ5が直列に接続されている。ここで、第1コイル部3aの抵抗値をRL1、第2コイル部3bの抵抗値をRL2、サーミスタ5の抵抗値をRとする。また、電源電圧をV,第1コイル部3a及び第2コイル部3bとサーミスタ5の直列回路にかかる電圧をV、第1コイル部3aに流れる電流をIL1,第2コイル部3b及びサーミスタ5に流れる電流をIL2と、IL1とIL2の合算電流をIとしている。
【0028】このように構成された本実施形態にかかる電磁操作弁の動作について図4を用いて説明する。図4は図2の回路に励磁電流が流した状態におけるV、IL1,IL2,I,プランジャ位置、及び回路全体の消費電力WLの経時的変化を示したものである。
【0029】スイッチがONとなり励磁電流が回路に流れ始めると、IL1、IL2、及び合算電流Iは数2の式で表された値となる。
【0030】
【数2】IL1=V/RL1L2=V/(RL2+R
=IL1+IL2【0031】ここで、サーミスタ5の素子温度と抵抗値の特性を図3に示す。図3からわかるように、サーミスタ5の抵抗値Rは、通電開始後はほぼ0Ωであり、通電によりサーミスタ5が発熱して一定時間Tを経過し、所定温度T℃を超えたときにRは急激に上昇してRXHに達するという特性を有している。
【0032】このため、励磁電流が回路に流れ始めてからサーミスタ5の素子温度がT℃に達するまでの一定時間Tは、サーミスタ5の抵抗値Rを無視して(数2式でR=0として)、サーミスタ5と第2コイル部3bに流れる電流と回路全体の消費電力Wは数3の式で表される。
【0033】
【数3】IL2=V/RL2=V・I=V・(IL1+IL2)=V・(1/RL1+1/RL2
【0034】このとき、電磁操作弁はON状態となり、図4に示すようにプランジャ4は固定鉄心7による磁気吸引力によって図1における左方向へ移動して流体の流路(ポート15)の切換動作を行う。
【0035】励磁電流を流してから一定時間Tが経過してサーミスタ5が発熱し素子温度がT℃を超えると、サーミスタ5の抵抗値はRXHに達し、その後その値を保持する。このため、サーミスタ5の抵抗値Rは無視できないものとなり、サーミスタ5と第2コイル部3bに流れる電流と回路全体の消費電力は数4式で表される。
【0036】
【数4】IL2=V/(RL2+RXH
=V・I=V・(IL1+IL2)=V・{1/RL1+1/(RL2+RXH)}
【0037】即ち、数4式及び図4からわかるように、第2コイル部3bとサーミスタ5の直列回路部分に流れる電流IL2は時間T経過後にサーミスタ5の抵抗値がRXHに達することにより減少する。このため、IL1とIL2の合算電流Iも減少し、その結果回路全体の消費電力Wも減少する。尚、時刻Tの時点では、合算電流Iが流れているため、プランジャ4は移動した状態を維持している。
【0038】次いで、更に時間T経過後(時刻T+T)の時点で、切換スイッチをOFFとして励磁電流の供給を停止する。これにより、V,IL1,IL2はいずれも0となり、プランジャ4は元に位置に復帰する。このため消費電力Wも0となる。
【0039】このように本実施形態の電磁操作弁では、サーミスタ5素子温度がT℃に達するまでの時間T経過前では、サーミスタ5と第2コイル部3bの直列回路部分に流れる電流はプランジャ4の移動により流体の切換動作を十分に行える電流値を確保できるとともに、サーミスタ5の発熱により時間T経過後に抵抗値RXがRXHに急激に上昇するので、プランジャ4の移動動作を維持したまま合算電流値Iを減少させて消費電力Wを低減することができる。即ち、図4から、プランジャの移動後の移動状態を維持した状態では、合算電流Iは励磁電流供給開始直後の約1/3で済み、この結果消費電力Wも励磁電流供給開始直後の消費電力の約1/3に低減されていることがわかる。
【0040】尚、本実施形態ではソレノイドコイル3を2つに分割して並列接続しているが、3つ以上のコイル部に分割して並列接続するように構成してもよい。また、この場合、コイル部の数より少ない数であれば、サーミスタ5を複数のコイル部に直列接続するようにしても本発明の効果は達成される。
【0041】また、本実施形態では同径の複数のコイル部を用い、固定鉄心7に並べて配置しているが、複数のコイル部を並列接続していれば、例えば図2(b)に示すように、異なる径のコイル部に分割し同心状に配置しても良い。
【0042】更に、本実施形態の電磁操作弁では補正素子として正温度係数サーミスタ5を用いているが、サーミスタ5の代わりに可変抵抗を用い、タイマ等で時間Tを経過した時点で可変抵抗の抵抗値を上昇させても本発明の効果は達成される。
【0043】
【発明の効果】以上説明したとおり、請求項1に係る発明は、通電開始から一定時間経過後に抵抗値が上昇して所定値を超える特性を有する補正素子を備え、ソレノイドコイルは、並列に接続された複数のコイルに分割され、補正素子は、少なくとも1個の分割されたコイルに直列に接続されているので、励磁電流供給開始から一定時間経過後に、弁体の移動状態を維持したままソレノイドコイルの消費電力を減少させることができ、省エネルギー化が図られるという効果を有する。
【0044】特に、請求項2に係る発明は、補正素子がサーミスタで構成されているので、前記一定時間経過前では、弁体移動動作を確実に行い、一方前記一定時間経過後には弁体移動状態を維持したまま消費電力を低減することができるという効果を有する。
【出願人】 【識別番号】000246251
【氏名又は名称】油研工業株式会社
【出願日】 平成11年6月4日(1999.6.4)
【代理人】 【識別番号】100092082
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正年 (外1名)
【公開番号】 特開2000−346228(P2000−346228A)
【公開日】 平成12年12月15日(2000.12.15)
【出願番号】 特願平11−157743