トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 逆止弁
【発明者】 【氏名】南 和彦

【氏名】今西 岳史

【氏名】木村 一哉

【氏名】森下 敦之

【要約】 【課題】開弁後にハンチング現象を生じ難い逆止弁を提供し、ひいては圧縮機、冷房回路及び車輛の異音、振動及び圧力損失を低減可能とする。

【解決手段】弁座部材70とケース71と弁体とばねとからなる逆止弁33である。ケース71の連通口71bは、座面から他方向へ向かって延在する直線部分を有さず、軸方向に対して対称であり、座面側を頂角とする二等辺三角形状である。これにより、連通口71bの開口面積が座面から他方向へ向かう弁体のリフト長に対して比例関係未満となっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に開口する流路口をもつ流路と、該流路口周りに形成された座面と、該座面より軸方向側の周壁に開口された連通口とを有する弁ハウジングと、該弁ハウジング内で軸方向に摺動可能に設けられ、一方向に摺動して該座面に着座し、他方向に摺動して該座面から離座するシール面と、該シール面と直交する外周面とを有する弁体と、該弁体を該一方向に付勢する付勢部材と、からなる逆止弁において、前記連通口は、その開口面積が前記座面から前記他方向へ向かう前記弁体のリフト長に対して比例関係未満になるように形成されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】連通口は座面から他方向へ向かって延在する直線部分を有さないことを特徴とする請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】連通口は軸方向に対して対称であることを特徴とする請求項2記載の逆止弁。
【請求項4】連通口は座面側を頂角とする三角形状であることを特徴とする請求項3記載の逆止弁。
【請求項5】凝縮器と、該凝縮器に連通される吐出室を有する容量可変型圧縮機とを備えた冷房回路に用いられ、連通口が該凝縮器に連通されることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の逆止弁。
【請求項6】容量可変型圧縮機に組み込まれていることを特徴とする請求項5記載の逆止弁。
【請求項7】容量可変型圧縮機はクラッチレス方式で外部駆動源と作動連結されていることを特徴とする請求項5又は6記載の逆止弁。
【請求項8】容量可変型圧縮機は実質的に0%の吐出容量を実現可能なものであることを特徴とする請求項7記載の逆止弁。
【請求項9】弁ハウジングは、流路が形成された弁座部材と、流路口を内部に開口させるべく該弁座部材に嵌着され、連通口が形成されたケースとからなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は逆止弁に関する。この逆止弁は容量可変型圧縮機を備えた冷房回路やその圧縮機自体に用いて好適であり、特にその圧縮機がクラッチレス方式で外部駆動源と作動連結されている場合、実質的に0%の吐出容量を実現可能なものである場合に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】例えば、車輌用空調システムに用いられる冷房回路には、冷媒ガスを圧縮するための圧縮機が組み込まれている。かかる圧縮機は、通常、外部駆動源としての車輌のエンジンに電磁クラッチを介して作動連結されており、冷房負荷が生じたときのみその電磁クラッチによってエンジンと接続され、圧縮動作を行うようになっている。しかし、こうして圧縮機に電磁クラッチを併設すると、全体の重量の増加、製造コストの増加、更には電磁クラッチを作動させるための電力消費が避けられないという欠点がある。このため、近年、電磁クラッチを介在させることなく外部駆動源に直結し、外部駆動源の駆動中に常時駆動するいわゆるクラッチレス方式の容量可変型斜板式圧縮機が提案されている(特開平10−205446号公報)。
【0003】同公報記載の圧縮機では、外部駆動源と直結される駆動軸に対して傾動可能な斜板が0%ではない吐出容量をもたらすようにその最小傾角が維持されるようになっている。このため、この圧縮機では、電磁クラッチを介さずに作動連結することで重量軽減等を実現しつつ、その外部駆動源の動力消費を極めて低減することができる。
【0004】また、この圧縮機では、図16に示すように、吐出室91と、この吐出室91に隣接する収納室92と、収納室92を冷房回路の図示しない凝縮器に連通させる吐出通路93とがハウジング90に形成されており、収納室92内に冷媒ガスの逆流を防止する逆止弁94がOリング95及びサークリップ96とともに設けられている。より詳細に言えば、この逆止弁94は、図17及び図18に示すように、弁座部材81と、この弁座部材81に嵌着されたケース82と、ケース82内で軸方向に摺動可能に設けられた弁体83と、ケース82内で弁体83を弁座部材81の方向に付勢するばね84とからなる。
【0005】弁座部材81には吐出室91と連通する流路81aが貫設されており、ケース82の内部に開く流路81aの流路口周りには座面81bが形成されている。また、座面81b周りの外周面には環状の凹部81cが凹設されている。ケース82の開口端内面には凹部81cに外周側から嵌着される凸部82aが形成され、座面81bより軸方向側の周壁には連通口82bが開口されている。
【0006】弁体83は、一方向に摺動して座面81bに着座し、他方向に摺動して座面81bから離座するシール面83aと、このシール面83aと直交する外周面83bとを有している。この逆止弁94では、図17に示すように、外部駆動源が停止されることで圧縮機が停止されれば、凝縮器側の高圧の冷媒ガスが連通口82bから弁体83を一方向に押圧し、ばね84の付勢力も手伝って弁体83を一方向に摺動させる。このため、シール面83aが弁座部材81の座面81bに着座し、流路81aと連通口82bとが連通しなくなる。このため、凝縮器側の高圧の冷媒ガスは吐出室91内に逆流しなくなる。
【0007】他方、図18に示すように、圧縮機の運転中は、吐出室91内の高圧の冷媒ガスが流路81bから弁体83を他方向に押圧し、ばね84の付勢力に打ち勝って弁体83を他方向に摺動させる。このため、シール面83aが弁座部材81の座面81bから離座し、流路81aと連通口82bとが連通する。このため、吐出室91内の高圧の冷媒ガスが凝縮器に吐出されることとなる。
【0008】こうして、かかる逆止弁94を備えた圧縮機では、停止中の冷媒ガスの逆流を防止することができるため、圧縮機内への液冷媒の貯留を防止するとともに、圧縮機内の過度の圧力上昇や温度上昇を防止し、圧縮機の耐久性を高めることができる。また、吐出室91から図示しないクランク室に流路が形成された圧縮機にあっては、停止中におけるクランク室の圧力上昇を抑制できることから、始動時における斜板の傾角増大、容量復帰が迅速となり、ひいては迅速な冷房効果を発揮することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、発明者らの試験結果によれば、上記逆止弁94では、連通口82bが座面81bから他方向へ向かって延在する直線部分である辺をもつ四角形に形成されていたため、弁体83が座面81bから離座して流路81aと連通口82bとが連通し始める開弁の後、ハンチング現象が発生しやすく、これに伴って圧力損失を生じやすいことが明らかとなった。
【0010】すなわち、流路81a内の圧力をP1、流路口とシール面83aとの間の圧力をP2、連通口82bの外の圧力をP3とすると、上記逆止弁94はP1とP3との差圧により開弁する。かかる差圧により、図19(A)に示すように、弁体83が座面81bから比較的僅かなリフト長h1だけリフトした時点で、流路81a内の冷媒ガス等の流体は既に比較的大量に流れ出てしまう。また、図19(B)に示すように、弁体83が座面81bからより大きなリフト長h2だけリフトした時点では、流路81a内の冷媒ガス等の流体はさらに大量に流れ出てしまう。つまり、これらの際、連通口82bは弁体83の外周面83bとの間で大きな開口面積を有してしまうことから、流路口とシール面83aとの間の流体が過剰に流れ過ぎ、P2が極端に低くなって弁体83を閉じる方向に引き寄せてしまう。こうして、弁体83はリフト長がさほど大きくない時点でふらふらすることとなる(ハンチング現象)。かかるハンチング現象は逆止弁94自体の異音や振動という不具合を発生させる。
【0011】また、こうして逆止弁94でハンチング現象が生じると、その逆止弁94はハンチング現象に反してより大きなリフト長を得るためにより大きな差圧を必要とし、これによって逆止弁94自体の圧力損失も生じてしまう。特に、逆止弁94が冷房回路における圧縮機の凝縮器側又は圧縮機の吐出室91の下流側に設けられる場合には、P1もP3も共に高く、これによりP2の低下の影響も受けやすくなることから、このハンチング現象が生じやすく、異音、振動及び圧力損失が冷房回路の大きな不具合となり、ひいては冷房回路を搭載する車輛の大きな欠点となる。
【0012】また、クラッチレス方式で外部駆動源と作動連結される圧縮機には、上記作用効果からかかる逆止弁94の装備が好ましい一方、この逆止弁94により異音等の不具合が生じるようであれば、その作用効果も減殺されてしまう。本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、開弁後にハンチング現象を生じ難い逆止弁を提供し、ひいては圧縮機及び冷房回路の異音、振動及び圧力損失を低減可能とし、さらにはこれらに基づく車輛の欠点解消を解決すべき課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の逆止弁は、内部に開口する流路口をもつ流路と、該流路口周りに形成された座面と、該座面より軸方向側の周壁に開口された連通口とを有する弁ハウジングと、該弁ハウジング内で軸方向に摺動可能に設けられ、一方向に摺動して該座面に着座し、他方向に摺動して該座面から離座するシール面と、該シール面と直交する外周面とを有する弁体と、該弁体を該一方向に付勢する付勢部材と、からなる逆止弁において、前記連通口は、その開口面積が前記座面から前記他方向へ向かう前記弁体のリフト長に対して比例関係未満になるように形成されていることを特徴とする。
【0014】本発明の逆止弁では、開口面積がリフト長に対して比例関係未満になるように連通口が形成されているため、リフト長が小さい時点では流路内の流体が従来程大量に流れ出ない。このため、流路口とシール面との間の圧力は極端に低くならず、弁体を閉じる方向に引き寄せ難いことから、ハンチング現象を生じ難い。このため、逆止弁自体において、異音や振動を生じ難く、大きな差圧を必要とせずに大きなリフト長が得られることから圧力損失も小さい。
【0015】かかる作用効果は連通口が座面から他方向へ向かって延在する直線部分を有さないことにより実現可能である。連通口は軸方向に対して対称であることが好ましい。こうであれば、流体が軸方向に対して均一に連通口から流れ出るため、組付ける圧縮機等の品質のばらつきを防止することができる。
【0016】実用的な連通口は座面側を頂角とする三角形状である。本発明の逆止弁は、凝縮器と、この凝縮器に連通される吐出室を有する容量可変型圧縮機とを備えた冷房回路に用いられる場合に効果が大きい。特に、逆止弁の連通口が凝縮器に連通される方が効果が大きい。本発明の逆止弁を容量可変型圧縮機に組み込むことが好ましい。冷房回路の配管の途中に逆止弁を設けるとすれば、その逆止弁の上流側の配管中で再膨張する冷媒ガスが圧縮機内に逆流するのに対し、圧縮機内に逆止弁を組み込めばそのようなことがなくなるからである。
【0017】本発明の逆止弁は、容量可変型圧縮機がクラッチレス方式で外部駆動源と作動連結される場合に有効である。圧縮機内への液冷媒の貯留を防止するとともに、圧縮機内の過度の圧力上昇や温度上昇を防止し、圧縮機の耐久性を高めることができるとともに、始動時における斜板の傾角増大、容量復帰が迅速となり、ひいては迅速な冷房効果を発揮することができるからである。
【0018】特に、容量可変型圧縮機は実質的に0%の吐出容量を実現可能なものである場合に有効である。ここで、実質的に0%の吐出容量を実現可能な圧縮機とは、特願平10−101449号のように、斜板の最小傾角が吐出反力による角度復帰を確実に可能とする臨界角度未満に設定されてなるものである。本発明の逆止弁に係る弁ハウジングは、流路が形成された弁座部材と、流路口を内部に開口させるべくこの弁座部材に嵌着され、連通口が形成されたケースとからなることが好ましい。こうして別部材で弁ハウジングを構成すれば、逆止弁を容易に製造でき、製造コストの低廉化を実現可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の逆止弁を車輌用空調システムに用いられる容量可変型斜板式圧縮機に組み込んだ実施形態を図面を参照しつつ説明する。この圧縮機では、図1に示すように、複数個のシリンダボア1aと軸孔1bとマフラ室1cと吸入室1dとが形成されたシリンダブロック1の前端にカップ状のフロントハウジング2が接合され、シリンダブロック1の後端には吸入弁3、弁板4、吐出弁5及びリテーナ6を挟持してリアハウジング7が接合されている。シリンダブロック1、フロントハウジング2及びリアハウジング7はアルミ系金属製である。
【0020】フロントハウジング2にも軸孔2aが形成され、シリンダブロック1の前端とフロントハウジング2とで形成されるクランク室8内には、軸孔2aに軸封装置9及びラジアル軸受10を介し、かつ軸孔1bにラジアル軸受11を介して駆動軸12が回転可能に支承されている。クランク室8内では、フロントハウジング2との間にスラスト軸受13を介して駆動軸12にラグプレート14が固定されている。ラグプレート14には後方に向かって一対のアーム15が突設されており、各アーム15には円筒状の内面をもつガイド孔15aが貫設されている。また、駆動軸12は斜板16の貫通孔16aを挿通しており、斜板16とラグプレート14との間にはばね17が設けられている。斜板16の前端には各アーム15に向かって一対のガイドピン16bが突設されており、各ガイドピン16bの先端にはガイド孔15a内を摺動しつつ回動可能な球状の外面をもつガイド部16cが設けられている。また、斜板16の前後周縁にはそれぞれ対をなすシュー18を介して中空状のピストン19が設けられており、各ピストン19は各シリンダボア1a内に収容されている。
【0021】フロントハウジング2から前方に突出した駆動軸12にはボス20がスプライン嵌合されており、ボス20はキー21によりプーリ22と固定されている。このプーリ22は、駆動軸12との間でボルト23により固定されているとともにフロントハウジング2との間で玉軸受24により支承されている。プーリ22にはエンジンEGと接続されたベルト24が巻きかけられている。
【0022】駆動軸12の斜板16よりやや後方にはサークリップ25によりばね26が設けられている。斜板16の最小傾角は吐出反力による角度復帰を確実に可能とする臨界角度未満に設定されており、最小傾角から最大傾角に向けての斜板16の復帰は、この斜板16の回転に伴って傾角増大方向に作用する回転運動のモーメントとばね26の付勢力に基づくモーメントとの協働によって確保されるようになっている。シリンダブロック1の軸孔1b内では駆動軸12の後端にスラスト軸受27及び座金28が設けられ、座金28と吸入弁3との間にはばね29が設けられている。
【0023】リアハウジング7の内側にはシリンダブロック1の吸入室1dと図示しない吸入通路により連通する吸入室7aが形成され、この吸入室7aはリテーナ6、吐出弁5及び弁板4に貫設された吸入ポート30により各シリンダボア1aと連通している。吸入室1dは冷房回路の蒸発器EVに配管により接続され、蒸発器EVは配管により膨張弁Vを介して凝縮器COに接続されている。また、リアハウジング7の外側には吐出室7bが形成されている。吐出室7bの後方には収納室7cが形成され、収納室7cとシリンダブロック1のマフラ室1cとはリテーナ6、吐出弁5、弁板4及び吸入弁3を貫通する吐出通路7dにより連通されている。マフラ室1cは冷房回路の凝縮器COに配管により接続されている。吐出室7bは弁板4及び吸入弁3に貫設された吐出ポート31により各シリンダボア1aと連通している。また、リアハウジング7には制御弁32が収納され、収納室7cには逆止弁33が収納されている。
【0024】制御弁32では、図2に示すように、弁ハウジング41の一端にカバー42が固定され、カバー42の一端は蓋部材43により閉塞されている。弁ハウジング41、カバー42及び蓋部材43内には感圧室44が形成され、感圧室44内にはベローズ45が軸方向に伸縮可能に収納されている。弁ハウジング41の他端には固定部材46を介してソレノイド47が固定されている。ソレノイド47の内部では、固定鉄心48が弁ハウジング41の他端に固定されているとともに、固定鉄心48の他端側でソレノイド47の内面等に固定された収容筒49内に可動鉄心51が摺動可能に設けられている。可動鉄心51は他端側にばね室51aを有しており、ばね室51a内には可動鉄心51を一端側に付勢するばね50が設けられている。
【0025】弁ハウジング41及び固定鉄心48には軸方向に延在する軸孔52が貫設されており、軸孔52は弁ハウジング41の他端側と固定鉄心48との間において弁室53と連通している。感圧室44内でベローズ45の他端側と固定部材54により固定されたロッド55はこの軸孔52内を摺動可能になされており、ロッド55の中間には弁室53内に位置する弁体55aが固定されている。弁体55aと弁室53の一端側との間にはばね56が設けられている。ロッド55の他端は可動鉄心51の一端側と当接されている。
【0026】また、カバー42には開口42aが形成され、これにより感圧室44とリアハウジング7の吸入室7aとが検圧通路57により連通されている。さらに、弁ハウジング41には、弁室53よりベローズ45側の軸孔52に連通するポート41aと、弁室53に連通するポート41bとが形成されている。弁室53よりベローズ45側の軸孔52とクランク室8とはポート41aを介した給気通路58により連通されている。また、弁ハウジング41、固定鉄心48及び可動鉄心51は給気通路58を可動鉄心51内のばね室51aと連通させる相殺通路59を有している。他方、弁室53とリアハウジング7の吐出室7bとは、ポート41bを介した給気通路60により連通されている。そして、ソレノイド47のコイルは駆動回路61を介して制御コンピュータ62に接続されている。なお、63、64は制御弁32をリアハウジング7内に気密に収納するためのOリングである。
【0027】逆止弁33は、図3及び図4に示すように、吐出室7bに隣接する収納室7c内に圧入されている。収納室7cは、図3に示すように、奥に向かって先細りのテーパ面7xを有し、テーパ面7xの奥は外周が単純な円筒面7yに形成されている。逆止弁33は、図4に示すように、弁座部材70と、この弁座部材70に嵌着され、収納室7cの底面との間に間隙を有するケース71と、ケース71内で軸方向に摺動可能に設けられた弁体72と、ケース71内で弁体72を弁座部材70の方向に付勢する付勢部材としてのばね73とからなる。弁座部材70は真ちゅう製であり、ケース71及び弁体72はナイロン46の射出成形品であり、ばね73はばね鋼からなる。こうして弁座部材70とケース71とを別部材としているため、逆止弁33を容易に製造でき、製造コストの低廉化を実現している。
【0028】弁座部材70は、外面に軸方向に延在して収納室7cの円筒面7yと所定の締め代をもつ円筒面70yが形成された本体部70aと、この本体部70aの軸方向の一端側で一体に形成され、本体部70a側に収納室7cのテーパ面7xと整合するテーパ面70xをもつ位置決め部70bと、本体部70aの軸方向の他端側で小径にされつつ一体に形成された小径部70dと、小径部70dの軸方向の他端側でさらに小径にされつつ一体に形成された座部70eとからなる。
【0029】この弁座部材70には吐出室7bと連通する流路70fが貫設されている。位置決め部70bは本体部70a側に外広がりのテーパ面70xを有している。小径部70dは外周面に被着部としての環状の凹部70cをもつ。座部70eには流路70fの内部に開く流路口周りで座面70gが形成されている。また、座部70eは、小径部70dよりさらに小径にされていることにより、座面70g周りで弁体72のシール面72aの外縁と離反する凹部70hとされている。
【0030】ケース71は流路70fの流路口を内部に開口させており、その開口端内面には凹部70cに外周側から嵌着される軸対称をなす一対の凸部71aが形成されている。これら凸部71aが嵌着部である。ケース71の開口端外面には、図5にも示すように、各凸部71aの外方にのみ位置し、収納室7cの内壁と当接する扇状をなす一対のフランジ71gが形成されている。各フランジ71gの肉厚は、図4に示すように、各凸部71aの肉厚を含んでおり、各フランジ71gの外側面は弁座部材70の本体部70aの外周面と面一である。かかるフランジ71gが抜け止め手段及び拡径防止手段である。
【0031】また、座面70gより軸方向側のケース71の周壁には連通口71bが開口されている。連通口71bは、座面70gから軸方向に沿って延在する直線部分を有さず、軸方向に対して対称であるとともに、座面70g側を頂角71cとしつつ他方側をその対辺71dとする二等辺三角形状である。かかる連通口71bは設計も容易であり、実用的である。こうして、連通口71bは、その開口面積が座面70gから他方向へ向かう弁体72のリフト長に対して比例関係未満になるように形成されている。また、ケース71の頂面内部にはボス部71eが突設され、ケース71の頂面には、図5に示すように、溝71hが径方向に凹設されている。なお、71iは射出成形時のゲート跡である。
【0032】弁体72は、図4及び図6に示すように、略コップ形状に形成されており、一方向に摺動して座面70gに着座し、他方向に摺動して座面70gから離座するシール面72aをその底面として有している。図10に示すように、ケース71の連通口71bの頂角71cは、この弁体72のシール面72aが弁座部材70の座面70gに着座したときにシール面72aと一致する。他方、ケース71の連通口71bの対辺71dは、弁体72のシール面72aが弁座部材70の座面70gに着座したときに弁体72のシール面72aと直交する周壁の上面より弁座部材70側に位置する。つまり、弁体72の外周面72fはシール面72aの着座時に連通口71bより他方側まで存在している。ケース71の内周面と弁体72の外周面72fとの間隙は数十〜二百μmである。そして、ケース71の頂面の溝71h内には、図5に示すように、ボス部71eを回避して抜き穴71fが貫設されている。こうして、図10に示すように、ケース71内は弁体72の背後にダンパ室71jが形成されている。ばね73は、この弁体72の周壁の内面とケース71のボス部71eの外面との間で振動しないように保持される。また、図4に示すように、弁体72の周壁の外周面72fのほぼ軸方向中央域には、離座時に連通口71bと連通する環状の溝72bが凹設されている。この溝72bが簡易に製造できる案内手段及び案内路である。
【0033】かかる弁体72は、以下のようにして製造される。まず、図7に示すように、コア部75aを有する第1型75と、コア部75aの外周側に位置し、軸方向に延在する合わせ面PLで互いに離れる方向に型開き可能な第1割型76及び第2割型77と、コア部75aの頂面側に位置する第2型78とからなる金型を用意する。ここで、第1割型76及び第2割型77としては、金型により形成されるキャビティC側に合わせ面PLに直交するとともに軸方向に延在する平坦面76a、77aをもつものを採用する。また、第2型78は型閉め時に第1割型76及び第2割型77内に位置しつつコア部75aより遠ざかる軸方向に型開き可能になされている。そして、キャビティC内に溶融樹脂を射出し、型開きにより弁体72を得る。得られた弁体72は、他に用意した弁座部材70、ケース71及びばね73とともに組み付けられ、逆止弁33となる。
【0034】ここで、弁体72の周壁の外周面72fには、図6(A)及び(B)に示すように、互いに対向しつつ軸方向に延在する対をなす平坦面72cが形成される。かかる平坦面72cにより把持が容易になり、誤組付けを防止することができる。また、かかる平坦面72cは、図8に示すように、弁体72の製造時に周壁に残存し得る金型の合わせ面PLにより生じる径外方向に突出するバリ72dをその円周内に確実に収納し、バリ72dがケース71の内面に引っかかることによる悪影響を防止することもできる。また、図9に示すように、弁体72の製造時にシール面72aに残存し得る金型の合わせ面PLにより生じる軸方向に突出するバリ72dは、図10に示すように、弁座部材70の凹部70h内に確実に収納し、バリ72dが座面70gに引っかかることによる悪影響を防止する。かかる弁座部材70の凹部70hは、座面70gが弁体72のシール面72aと当接する面積を小さくすることができるため、弁体72の離座性を向上させることもできる。
【0035】さらに、弁体72の周壁の上面には、図6(B)に示すように、径方向に延在する溝72eが凹設されている。弁体72を逆に組付けた場合には、かかる溝72eにより、逆止弁33の性能が発揮されず、検査において誤組付けを発見することができる。以上のように構成された圧縮機では、図1に示すように、エンジンEGが駆動されている間、ベルト24でプーリ22が回転し、駆動軸12が駆動される。これにより、斜板16が揺動運動し、ピストン19がシリンダボア1a内を往復動する。このため、冷房回路の蒸発器EVの冷媒ガスが圧縮機の吸入室7a内に吸入され、シリンダボア1a内で圧縮された後、吐出室7b内に吐出される。吐出室7b内の冷媒ガスは逆止弁33及びマフラ室1cを経て凝縮器COに吐出される。
【0036】この間、図2に示す制御弁32は、制御コンピュータ62による調整の下、感圧室44内におけるベローズ45の設定圧力と吸入室7aより検圧通路57で導かれる吸入圧力Psとのバランスにより、吐出室7b内の吐出圧力Pdの冷媒ガスを給気通路60、ポート41b、軸孔52、ポート41a及び給気通路58によりクランク室8に供給する。このため、クランク室圧力Pcが加減され、これによりピストン19に作用する背圧が変化するため、斜板16の傾角が変化し、実質的に0%から100%まで吐出容量を変化させることができる。
【0037】また、逆止弁33では、図11に示すように、吐出室7b内の高圧の冷媒ガスが流路70fから弁体72を他方向に押圧し、ばね73の付勢力に打ち勝って弁体72を他方向に摺動させる。このため、シール面72aが弁座部材70の座面70gから離座し、流路70fと連通口71bとが連通する。このため、吐出室7b内の高圧の冷媒ガスがマフラ室1cを介して凝縮器COに吐出されることとなる。
【0038】そして、流路70f内の圧力をP1、流路口とシール面70gとの間の圧力をP2、連通口71bの外の圧力をP3とすると、これらの間、逆止弁33はP1とP3との差圧により開弁する。かかる差圧により、図12(A)に示すように、弁体72が座面70gから比較的僅かなリフト長h1だけリフトした時点では、流路70f内の冷媒ガスは比較的少量だけ流れ出る。また、図12(B)に示すように、弁体72が座面70gからより大きなリフト長h2だけリフトすると、流路70f内の冷媒ガスはやや大量に流れ出る。
【0039】発明者らは、図16に示す四角形の連通口82bをもつ逆止弁94と、この実施形態の逆止弁33とについて、開口面積の比と流量の比とを比較評価したところ、図13が得られた。図13より、これらの際、従来の逆止弁94では連通口82bの開口面積がリフト長に対して比例関係であるのに対し、実施形態の逆止弁33では連通口71bの開口面積がリフト長に対して比例関係未満であることがわかる。
【0040】また、発明者らは、図16に示す四角形の連通口82bをもつ逆止弁94と、この実施形態の逆止弁33とについて、差圧と流量との関係を評価した。結果を図14に示す。なお、両逆止弁94、33はS点の差圧により開弁し始める。図14より、従来の逆止弁94を用いた比較形態の圧縮機では、リフト長が小さい時点で流路81a内の冷媒ガスが大量に流れ、これによりハンチング現象を生じているのに対し、実施形態の圧縮機では、リフト長が小さい時点で流路70f内の冷媒ガスが従来程大量に流れ出ないことから、ハンチング現象を生じないことがわかる。これは、実施形態の逆止弁33では、流路口とシール面70gとの間の圧力P2が極端に低くならず、弁体72を閉じる方向に引き寄せ難いからである。かかる作用効果は連通口71bが座面70gから他方向へ向かって延在する直線部分を有さないからである。
【0041】このため、実施形態の逆止弁33は、それ自体、圧縮機及び冷房回路全体にとっても、異音や振動を生じ難く、大きな差圧を必要とせずに大きなリフト長が得られることから圧力損失も小さいことがわかる。また、これらに基づく車輛の欠点を解消できることがわかる。また、実施形態の逆止弁33では、連通口71bが軸方向に対して対称であるため、冷媒ガスが軸方向に対して均一に連通口71bから流れ出るため、組付ける圧縮機の品質のばらつきを防止することもできる。
【0042】また、エンジンEGが駆動されている間でも、冷房が不要な場合、制御弁32では、制御コンピュータ62の指令に基づき、駆動回路61からソレノイド47への電流供給が停止される。このため、弁体55aがばね56に付勢され、制御弁32の弁開度が最大となり、吐出室7b内の高圧の冷媒ガスが給気通路60、58を介してクランク室8に導入される。このため、クランク室8内の圧力が上昇し、斜板16は最小容量となるまで傾角が変更され、ピストン19のストロークが減少する。こうしてピストンボア1aからの吐出流量が減少することにより、逆止弁33は流路70fと連通口71bとの連通を断つ。このように冷房不要時には、逆止弁33により圧縮機からの冷媒ガスの吐出が抑制され、圧縮機は0容量付近の最小容量にて運転される。
【0043】他方、エンジンEGが停止されれば、駆動軸12は停止し、制御弁32も働かない。そして、逆止弁33では、図10に示すように、凝縮器CO側の高圧の冷媒ガスが連通口71bから弁体72を一方向に押圧し、ばね73の付勢力も手伝って弁体72を一方向に摺動させる。このため、シール面72aが弁座部材70の座面70gに着座し、流路70fと連通口71bとが連通しなくなる。このため、凝縮器CO側の高圧の冷媒ガスは吐出室7b内に逆流しなくなる。
【0044】こうして、かかる逆止弁33を備えた圧縮機では、停止中の冷媒ガスの逆流を防止することができるため、圧縮機内への液冷媒の貯留を防止するとともに、圧縮機内の過度の圧力上昇や温度上昇を防止し、圧縮機の耐久性を高めることができる。そして、再度エンジンEGが始動されれば、駆動軸12が駆動され、制御弁32が働く。また、逆止弁33は、図11に示すように、吐出室7b内の高圧の冷媒ガスを凝縮器COに吐出する。
【0045】こうして、停止中は、吐出室7b内だけの冷媒ガスが給気通路60、58、ポート41b、41a及び軸孔52によりクランク室8に供給され、逆流してくる冷媒ガスをクランク室8にまで至らしめないため、クランク室8の圧力上昇を抑制でき、始動時における斜板16の傾角増大、容量復帰が迅速となり、ひいては迅速な冷房効果を発揮することができる。
【0046】したがって、実施形態の逆止弁33は、開弁後にハンチング現象を生じ難く、ひいては圧縮機及び冷房回路の異音、振動及び圧力損失を低減することができる。また、これらに基づく車輛の欠点を解消することができる。本発明の逆止弁は、上記実施形態のものに限定されることはなく、その連通口にしても、例えば図15(A)〜(C)に示す連通口71x〜71zの変形が可能である。なお、各図において、Lは弁体のリフト方向である。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成11年6月7日(1999.6.7)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開2000−346217(P2000−346217A)
【公開日】 平成12年12月15日(2000.12.15)
【出願番号】 特願平11−160051